インド太平洋関連

互いに戦力増強を続ける印中、今度はインド軍が砲兵を含む部隊を追加配備

インド陸軍の北部担当司令官は2日、戦力を増強させる中国軍に対抗するため新たに砲兵を含む複数の部隊をジャンムー・カシミール州のラダック地域に追加配備したと明らかにした。

参考:Northern Commander in Ladakh, Army moves more troops amid standoff with China

まさに鏡合わせ、戦力を増強させる中国に対抗するためインドも新たな部隊を追加配備

インドと中国は現在、互いが領有を主張するインド北部のラダックやシッキムで軍が睨み合いを続けており、中国は1万人以上の兵力に加え戦車や榴弾砲を配備するなど戦力を増強をしてきたが、インド陸軍も新たに砲兵を含む複数の部隊をラダックに追加配備したと明らかにした。

北部担当司令官の話によれば、ラダックを管轄するインド陸軍第14軍団指揮下には2つの歩兵師団と砲兵旅団が配備されているので兵力や装備の面で展開している中国軍に劣ることはないが、万が一に備えてて第14軍に余裕のある予備部隊を与えるため、この地域の外から新しい部隊を投入したと言っている。

因みに第14軍団が所属するインド北軍には歩兵師団主体の第15軍団と第16軍団がいるが、山岳地帯ばかりの北軍(第14軍団を含む)には戦車師団が配備されていない。

出典:public domain カナードを装備したインド空軍の戦闘機 Su-30MKI

さらにラダック空域で中国空軍の戦闘機によるパトロールが増加しているため、インド空軍はミラージュ2000とSu-30MKIを投入してパトロール飛行の回数を増やしていると言っている。

補足:中国はラダックに近いガリ空港の拡張工事を行い、ここに中国空軍の戦闘機J-11もしくはJ-16を展開させている。

このように両国は互いに戦力を増強しあっているが、インドは武力ではなく外交交渉による問題解決を図る方針だ。しかし中国は軍を撤退させる条件にインドが同地域のインフラ開発を中止することを挙げており、この地域のインフラ開発を止めることは無いと公言しているインドとの溝は深く、果たして外交交渉による問題解決が可能なのか謎だ。

現地印メディアは政府間による交渉も現地の軍司令官同士による交渉も不調で、今のところ何の進展も見せていないと報じているため今回の対立は長期化する可能性が高い。さらに相手が戦力を増強すれば鏡合わせのように自軍も戦力を増強し合うのでインドと中国の国境沿いは一触即発の状態と言ってもよく、何かの間違いが起これば一気に大規模な衝突に発展しても不思議ではない。

関連記事:緊張感が高まる印中、中国がインド領に居座らせている部隊に戦車を配備

関連記事:状況は悪化するばかり? インド軍と中国軍が投石や棒で殴り合う動画が流出

アフリカの地で往年の名戦車M60とT-55が激突か?

トルコがリビア政府軍を支援するためトルコ陸軍の戦車部隊を派遣いているのが確認されたと報じられている。

参考:Turkey transferred tanks to Libya for military action against Haftar’s forces

トルコがリビアに送った戦車はドイツ製のレオパルト2や国産のアルタイではなく米国製のM60A1だ。トルコにはM60A3をアップグレードした「サブラ」もあるのだがリビアの首都トリポリで確認されたのは正真正銘、旧式化したM60A1らしい。

出典:KIZILSUNGUR / CC BY-SA 3.0 トルコ陸軍のM60A1

これは戦力をケチったのではなく、恐らく反政府軍が使用している戦車が旧ソ連製のT-55なのでM60A1で十分と判断したのだろう。

しかしリビア陸軍は反政府軍についているので、リビア政府軍に残った兵士が戦車を直接扱うことは難しくトルコ軍の兵士によって運用されている可能性が非常に高い。そのため武器の支援から始まったトルコのリビア内戦介入は遂にトルコ軍が自ら戦闘に加わるところまで拡大しているのが良く分かる事例だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Richard Watt/ OGL v1.0 インド陸軍が装備するL118 105mm榴弾砲

各国の第4世代戦闘機を調達するエジプト空軍、今度はタイフーンを導入前のページ

奇妙な協力関係、トルコの第5世代戦闘機「TF-X」にロシアがエンジン提供次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    韓国、MQ-9リーパーに相当する国産無人航空機「MUAV」の量産を開始

    現在海外市場で最も人気が高い離陸重量5トン前後の中型無人航空機市場に、…

  2. インド太平洋関連

    新たに米国制裁を招く恐れがある案件、インドがMiG-35調達に向けて一歩前進

    インドは100機以上の第4.5世代戦闘機「MiG-35」を調達するため…

  3. インド太平洋関連

    アタック級潜水艦の遅れに直面する豪州、46億ドルを投じてコリンズ級潜水艦を延命

    オーストラリアのピーター​・ダットン国防相は11日、アタック級潜水艦の…

  4. インド太平洋関連

    本当に国産化率76%? 韓国の次世代潜水艦2番艦が進水間近

    韓国政府が運営している情報公開システムに島山安昌浩級潜水艦2番艦(名称…

  5. インド太平洋関連

    ADEX 2023、現代ロテムが新型装甲車やK2のアップグレードを披露

    現代ロテムはADEX 2023で30トン級装輪装甲車、海外輸出を狙った…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    絵に描いたような緊張感の高まりってやつだな
     
    両軍素手で殴り合いしてるとこに変装したCIA職員が紛れ込んで銃でパンっと撃っちゃうと…
    なんて映画の冒頭部分のような事が起こらなきゃいいけどね

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    ラダックの住民はインドと中国のどちらがいいんでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    T-55対M-60A1。
    どんな戦いになるのだろう。楽しみ。
    この組み合わせって過去実際にあったのでしょうか?

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      第四次中東戦争とイラン・イラク戦争で

        • 匿名
        • 2020年 6月 04日

        で、結果はどうなったのですか?
        もしかして定番の一方的に…。

          • 匿名
          • 2020年 6月 04日

          >定番の一方的に…。

          M60A1はT-62対抗だし、実際鹵穫したT-62に対して優越してるって結論だけど、それだけだよ
          中東戦争じゃ歩兵陣地からATMに撃たれてM60はよく燃えたし、ハルダウンした105㎜砲装備のシャーマンにやられたT-55もいたよ

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    中陰関係はどちらから出ても偽と誤情報だらけ。
    ここで事実を掴めるか報道出来るかでジャーナリストの実力が出る

    往年の東西戦車対決は果たして…
    普通ならM60だが用兵次第だろう

    • 匿名
    • 2020年 6月 04日

    どっちが勝っても人が死ぬんだから楽しみとか言うなよ
    そんなのだから軍ヲタは反社会の劣化版あつかいされるの。

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      ただ、コロナでの騒動を見るに、普段の言動に反して左翼が強権願望で、右翼が慎重論だったような。

      • 匿名
      • 2020年 6月 05日

      所詮カタログミリオタは「兵器カッコいい!」位しか脳内に浮かばないからね
      そこに何千何百の人命が失われるとか考える事すらできないのがミリオタの業だわ

    • 匿名
    • 2020年 7月 01日

    個人的に選挙で勝利した世俗派を反政府軍って言うのに違和感があって、旧議会派って感じなのでは思ってしまう

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP