インド太平洋関連

最大の特徴は無人機の統合、インド陸軍が次期歩兵戦闘車の調達に関するRFIを発行

インド陸軍は旧ソ連製のBMP-2を更新するため次期歩兵戦闘車(Futuristic Infantry Combat Vehicles:FICV)調達に関するRFI(情報提供依頼書)を発行した。

参考:Indian Army wants new combat vehicles to carry attack, surveillance drones

軽戦車、次期主力戦車に続き次期歩兵戦闘車調達に関するRFIを発行したインド陸軍

インド陸軍は旧ソ連製の歩兵戦闘車「BMP-2」を複数回に分けて調達(大半がインド国内で製造された)を行い2,000輌以上のBMP-2が運用されているのだが、これを更新するため次期歩兵戦闘車(Futuristic Infantry Combat Vehicles:FICV)調達に関するRFI(情報提供依頼書)を発行した。

この次期歩兵戦闘車はガンバージョンと呼ばれる標準仕様、指揮通信仕様、偵察仕様の3バージョンで構成されておりインド陸軍はFICVを計1,750輌調達する計画だ。

3バージョンで構成された次期歩兵戦闘車の共通部分は30mm機関砲と対戦車ミサイルを搭載している点で標準仕様は乗員3名+兵士8人、指揮通信仕様と偵察仕様は乗員3名+兵士4人を収容できることが要求されているのだが、最も注目すべきはインド陸軍がFICVに無人機の運用能力を要求している点だろう。

※垂直離着陸に対応したUAVとはクワッドロータータイプのドローンの他に固定翼もタイプも含まれる

現地メディアによればインド陸軍は戦場のトレンドになった無人機を次期歩兵戦闘車で活用するため偵察仕様には垂直離着陸に対応した小型UAV(滞空時間60分以上)を1機搭載して収集した戦場状況を他の戦力(戦闘車輌、自走砲、攻撃ヘリなど)とリアルタイムで共有できることを要求、さらに標準仕様と指揮通信仕様には移動中の目標も攻撃可能な徘徊型UAVの搭載を要求して同機搭載のEO/IRセンサーが収集した情報もFICV全体で共有できることを望んでいるらしい。

要するにインド陸軍が調達を予定している1,750輌のFICVにはもれなくUAVが搭載されているという意味で、空から収集した戦場状況をリアルタイムで共有するFICVは対戦車ミサイルを視界外で運用できるようになる=つまり敵主力戦車と遭遇しても遠距離から安全に対処(徘徊型UAVでそのまま攻撃することもできる)可能になるというわけだ。

因みにインド陸軍はFICVの調達時期を明確にしていないもののRFIに応じる企業に対して契約締結から2年以内に75輌~100輌のFICV供給を要求しており、今回発行されたRFIは次期主力戦車(FRCV)と時とは異なりインド企業のみが応じることができるらしい。

出典:Prime Minister’s Office / GODL-India

但しインド企業が海外企業とコンソーシアムを構成することについては特に制限している様子がないので軽戦車調達プログラム(350輌調達予定)、次期主力戦車調達プログラム(1,700輌調達予定)に続き次期歩兵戦闘車調達プログラム(1,750輌調達予定)も海外企業による受注競争の対象になる可能性を秘めており、戦闘車輌関連の開発に関わる企業にとってインド需要は完全にバブルと言っても良いだろう。

関連記事:インドの軽戦車調達に挑戦する韓国、ハンファディフェンスが軽戦車「K21-105」を提案
関連記事:ロシアと韓国が軽戦車で競合、インド陸軍は125mm滑腔砲搭載のスプルートSDを希望か
関連記事:2030年までに1,700輌を調達、インド陸軍が次期主力戦車に関するRFIを11ヶ国に送付

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※アイキャッチ画像の出典:Flickr経由/cell105/ CC BY 2.0

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    インド時空に迷い込むと二度と出られないとか言われてた頃からすると、びっくりするくらいハイペースで明確なビジョンのある調達してますね最近のインド軍。

    12
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      中国なんかもそうだけど金かけられるようになると加速度的に速くなるね

      7
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      インド人もビックリ!

      3
      • 匿名
      • 2021年 6月 25日

      インド時空は、契約がされてから実際に支払いやら量産が始まるまでの迷走の事じゃないの?
      契約までは大抵スムーズだよ、問題はその後のインドの厚かましい後出し条件闘争

      7
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    発想が進んでるなあ
    未来の戦場を予想してコンセプトを組み上げる
    場当たり的ではいかんね

    8
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    インドが想定する無人機の活動高度が気になる。
    その高度によって対パキスタンか対中国かそれ以外の用途かがわかりそう。

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    単にデータリンクだけならわかるんだが、IFVにUAVの運用を統合する意味が全くわからんな。
    普通にハンビーやトラックで運用する方がコストも低く、機動性や汎用性も高いだろう。

    何でも屋は大方、器用貧乏にしかならない。

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      視点がおかしい。UAVを運用したいんじゃなくて
      IFVの認識範囲広げて兵員の安全性上げるのが目的のUAVなのに
      トラックに乗せてどーすんだよ。兵員は荷台に乗せるのか?

      11
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    そういえば陸自の89式装甲戦闘車って後継ないの?

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      去年の3月頃に某ブログで新装甲戦闘車が試験場で目撃されたと画像付きで説明してたから多分それが後継なんじゃないかな

      4
        • 匿名
        • 2021年 6月 24日

        フランスみたいに装輪に極振りしてるわけじゃなく、ちゃんと装軌車両の開発はやってるんだよな
        でも肝心の10式の配備があまりにも遅い今、装軌歩兵戦闘車までちゃんと揃えられるのかどうか…
        せめて共通戦術装輪車でもそこそこ揃えられたらなぁ

        1
          • 匿名
          • 2021年 6月 25日

          せっかく作った機甲師団も島嶼防衛の大戦略のもと事実上の棚上げになってますから、装軌装備に関しては更新以上のものは当面出てこないかもしれないですね。↑で触れてる試験車両も見た目は89式と大差なかったし。あるいは想定戦場が後退して南九州の平野部を舞台に大規模な地上戦をするような話が出てきたら装甲重視に戻る可能性も…?

            • 匿名
            • 2021年 6月 25日

            南九州は、大きな平野部に乏しい印象な上に、東側の宮崎平野・大隅平野や湾奥の国分平野は中国方面からの侵攻だと使い難いでしょうから、候補になるのは川内平野・出水平野辺りかな?
            しかし、その先にすぐ先に隘路があるから、上陸地点としては不向きかも。
            上陸地点としては、中九州や北九州の方が向いているような気がします。

            2
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    実際ヘルファイアみたいのじゃなくて、こういうのに乗っけられるような対戦車ミサイルって射程どんなもんなの?
    UAVで飛躍的に実質射程伸びたりするなら良いね

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      やろうと思えば、最近の米露の攻撃ヘリの様に射程100km級の小型対地巡航ミサイル(全長2m、発射重量100kg程度か)だって統合は可能だろうな
      それよりは小型軽量のミサイルでも、例えば日本の中距離多目的誘導弾(26kg)でも最低4km以上の視程外射程は有りますし
      とはいえ、各車両ごとにUVAを搭載するかどうかはドクトリン次第と云えるのではと。データリンクに接続できるのならば、必ずしも各車レベルでUVAを運用する必然性は無いでしょうし

      1
      •   
      • 2021年 6月 24日

      ハイドラロケットが誘導弾になるご時世

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    韓国がイキイキしてます

    日本も輸出出来る商品あればなぁ

    2
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    うーん全車に分散して搭載する必要はあるか?
    例えば本文に出てくる指揮通信タイプに集中して搭載してキャリアにする手もあると思う
    または文字通りキャリアを作ってもいい
    リスク分散を狙ってるのか?

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      別におかしくとは思わないけど?

      高価でもないし嵩張るものでもないし、認識力を拡張してくる便利なUAVを個別に装備すれば便利じゃない?

      4
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      UAV運用が目的じゃないからだろ。
      ペリスコ感覚で各車で手軽に使えるのが狙いなんだろうに
      集中搭載してどうする。

      4
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      通信に障害が起こる事もあるし、地形に阻まれて無線が通じない事もある、妨害もある
      末端で使えた方が普通にいいと思うが

      1
      • 匿名
      • 2021年 6月 25日

      立派な何億円もするようなやつではなくて、安値で小型のものを載せて、手軽に使えるようにするのだと思われ。
      それこそ一部の偵察車両に載っている伸縮するメインサイトの延長みたいな。

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    >インド陸軍がFICVに無人機の運用能力を要求

    本邦にお声が全く掛からない原因が判明しましたね
    他のプロジェクトで弾かれてるのも同じ理由でしょう

    3
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      今までここの記事で何を学んできたの?

      インドから日本に声がかからないのは事実だが、問題の原因はオフセットに対応できない点が足を引っ張ってるだけで無人機とは無関係だろ

      8
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      インドが直接声をかけるのはインド企業です
      以下本文より
      因みにインド陸軍はFICVの調達時期を明確にしていないもののRFIに応じる企業に対して契約締結から2年以内に75輌~100輌のFICV供給を要求しており、今回発行されたRFIは次期主力戦車(FRCV)と時とは異なりインド企業のみが応じることができるらしい。

      7
      • 匿名
      • 2021年 6月 25日

      インドに関してはUS-2移転計画の交渉過程で日本側の事情都合は熟知したでしょうね。
      現状では互いが同意できる条件での防衛装備品移転契約は難しいという双方の認識かと。
      こういった経験を踏まえ、防衛装備庁では担当商社が対象国の調達計画やニーズを調査し、日本が事業参加可能な案件を官民一体で探るてな施策を開始しています。
      日本側の事情都合が今のままなら、結果に結びつくには山あり川ありで困難な道でしょうけどねえ。

      4
    • 匿名
    • 2021年 6月 25日

    まずは新幹線をなんとかしてからですな.

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 25日

    搭載される小型UAVは、基本は越境しての強行偵察用かな
    地理的条件を考えると、特殊なものになるのだろうか 

    • 匿名
    • 2021年 6月 25日

    日本も武器輸出を進めていくなら現地企業との協力が不可欠ですね。
    こう言う場合どう言う基準で現地企業を探すんでしょう?

    1
      • A
      • 2021年 6月 25日

      ・約束通りお金を払うこと、
      ・うそをつかないこと。
      ・秘密をばらさないこと。
      できるかなぁ?

      1
        • 匿名
        • 2021年 6月 26日

        そういう日本式ルールのほうがガラパゴスなんだって自覚して、
        現地人をコントロールするノウハウを
        過去の植民地経営に長けた欧米人との違いはここだよ

    • 匿名
    • 2021年 6月 25日

    偵察仕様車に小型UAV(滞空時間60分以上)1機ですからこれは簡単に消耗して良いセンサーじゃないでしょうね。
    偵察車のUAVで広域を監視し、強行偵察を消耗前提の徘徊型多数投入でできるようにする構想かなと妄想。

      • 匿名
      • 2021年 6月 26日

      あれば便利だけど、なくて死ぬほど困るもんでもないし
      まさしく消耗も想定したUAVだと思うけど。
      UAV無しでは偵察が成立しないならそれこそ複数積むでしょ。

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 26日

    これからは無人機との連携、あるいは対策を抜きにした兵器とかあり得ないし売れもしないってことに

    すでに世界の定説

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