韓国とインドネシアはKF-21の開発協力で行き詰まっていたが、両国はINDO防衛展示会で「KF-21プログラム協定の改定に署名した」と発表し、韓国航空宇宙産業も「これで作業分担協定の交渉が再開でき、合意できればインドネシア人技術者が開発に復帰する」と明かした。
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両国にとって「今回の件を関係の後退にしたくない」「何とか意味ある形に収めたい」と言ったところなのかもしれない
韓国とインドネシアは2009年に戦闘機の共同開発に関する意向書に署名、韓国で2015年までに次期戦闘機=KF-X(現在のKF-21)の研究段階が完了し、本格的な開発に移行すると両国は「韓国が開発費用の80%を分担し、インドネシアが残りの20%を負担する」「インドネシアは2016年4月から負担する開発費用=総額1.6兆ウォンの支払いを開始する」「その見返りとして韓国航空宇宙産業はインドネシア人技術者100人を受け入れて開発に関与させ、プロトタイプと技術データへのアクセスを確保する」という合意内容に署名したが、インドネシアは2017年後半までに支払いを停止してしまう。

出典:KAI
表向きは「経済的な問題に直面して支払いが困難になった」「協力内容や支払い条件を見直したい」と主張していたが、インドネシアは韓国との協力を停止している間に正面装備への投資を飛躍的に増やしており、フランスとはラファールを54機~66機調達する契約を締結、今月11日に開幕したINDO防衛展示会ではトルコ製第5世代戦闘機=KAAN調達を正式に発表し、この2つだけ見ても投資額は200億ドルを軽く超えるため「経済的な問題」というのは方便に過ぎず、両国は13日「KF-21プログラムにインドネシアが参加するための協定の改定に署名した」と発表。
JanesやBreaking Defenseは「インドネシアは2016年の合意に反して何年も開発費用の支払いを拒否してきた」「2024年8月に韓国はインドネシアの要請を受けて開発費用の負担を1.6兆ウォンから6,000億ウォンに減額した」「韓国航空宇宙産業は『両国政府が協定改定に正式合意したため作業分担協定の交渉が再開できる』『作業分担の条件で合意できればインドネシア人技術者が開発に復帰する』と述べた」「この協定改定に署名した防衛事業庁も『インドネシア側は分担金支払いのための行政手続きを開始した』『支払いが再開されれば両国の防衛産業協力は再び勢いを増すだろう』と述べた」と報じている。

出典:Türk Havacılık ve Uzay Sanayii
インドネシアが「KF-21への関与を引き下げたい真の理由」は現在も不明だが、INDO防衛展示会でシャフリィ・シャムスディン国防相と会見した防衛事業庁のソク・ジョングン長官は「潜水艦、火力投射、防空システムなどの分野でもインドネシアと防衛産業協力を強化し、将来的には東南アジア全域で協力を拡大できるよう最善を尽くす」と述べており、インドネシアもKF-21への関与を完全に放棄するのではなく「安全保障分野における両国関係を維持しておきたい」と考えている格好で、両国にとって「今回の件を関係の後退にしたくない」「何とか意味ある形に収めたい」と言ったところなのかもしれない。
もうインドネシアがKF-21を50機調達するかは怪しいが、現在の外交関係や安全保障環境はダイナミックに変化する可能性があるため、管理人は数年後にKAANとKF-21の立場が入れ替わっていても驚かないだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:KAI
インドネシアは、リスクヘッジを兼ねているのか、並行して複数のプロジェクトを走らせていますね。
政治外交が絡む、高次の考え方なのかもしれませんが、末端の整備要員・部品調達をどのように行うのか興味深いなと。
インドネシアの人口は世界4位であり、人口3億人を超えていく事・GDPの上昇が予想されていますから、経済面で見ても各国繋ぎとめたいでしょうね。
インドネシアはもうKF-21は見限ったと思ってたけど、導入まで行くんやろか?
中々カオスな保有機種だけど、ここまで来たら中国製やスウェーデン製のも導入して、世界一多様な航空祭とか開いて欲しいw
周辺国に対しての正面装備での対抗戦力重視であとは政治的なバランスって感じですね。
プラボウォ現政権にとって前政権が引っ掻き回した関係を修復する(自身前政権では国防相なので無関係ではない)意味合いが大きいのではないかと。戦闘機はフランス、トルコとの協力関係に軸足を移しており、韓国が期待する導入は難しいのではないでしょうか。ところで、契約では支払遅延のペナルティがなく、インドネシアはずるずる引き延ばし、韓国はひたすらお願いしする立場だったのですが、契約改定でどうなったか気になります。
全く信用ならないですね…
高速鉄道プロジェクト同様に進捗と技術を第三国にLiveしそうですなあ。
自国製エンジン統合させてもらえる方を進めながら、
もう片方からは情報をジャストインタイムということかな
インド並みに整備士泣かせになりそう
狐と狸の化かし合いだよなぁ
どういう契約内容になってるのやら
戦闘機以外でも韓国という選択肢は完全に切るには惜しく「手打ち」ということでしょうね。
インドネシアとしては機体は購入できずとも技術が手に入るというのはかなり大きいと思います。
韓国のセールスポイントは各国の事情を研究した上で最適解を導き出して手持ちの技術と伝手を総動員してパッケージする能力が高い事で、インドネシアが個別の技術を手に入れても何だかなーって感じです。
インドネシアくんは分担金の他にナーガパーサ級潜水艦3隻分の建造代金も払う必要があるのでは?
開発に成功しても、完成した時点では単なる高い第4.5世代機でしか無いKF21 Block II だし、ステルス対応するそれ以降がいつ作れるかは全く不透明だし、技術移転いうても韓国がAESAレーダーの技術を(再輸出可能なライセンスで)出すとは思えんし、エンジンはアメリカ製だし、設計技術とか言われても、デジタルモックアップで遊ぶだけなら、韓国のKFX初期開発時の様に数億円規模の予算でできるお遊びだし。
インドネシアとして、貰えるものが支払うものに見合うものなのかは、よく吟味したいんじゃないかな?