インド太平洋関連

インドネシア、韓国と昨年結んだばかりの209型潜水艦建造契約をキャンセルか

インドネシアは韓国と結んだ潜水艦3隻の調達契約キャンセルを検討していると米国のThe Diplomatや英国のJanesが報じている。

参考:Indonesia Is Reconsidering Contract With South Korea for 3 Diesel-Electric Submarines

昨年、韓国と交わしたばかりの潜水艦建造契約をキャンセルか?

インドネシア海軍は1970年代にドイツから209/1300型潜水艦を2隻調達してチャクラ級潜水艦として運用しており、同国が策定した国防計画に従い新たに10隻の潜水艦を整備中だが、この事業の受注に成功したのが韓国だ。

この事業にはフランスやロシアに加え209/1300型潜水艦をインドネシアに輸出した実績をもつドイツも参加していたが、韓国は他国よりも広範囲の潜水艦建造技術移転と現地での潜水艦建造に必要な支援を提案、潜水艦調達に関する費用に関しても韓国政府が融資することで受注に成功した。

出典:public domain 韓国海軍の209/1300型潜水艦

韓国は昨年までにインドネシアと契約した3隻の209/1400型潜水艦(内2隻は韓国で建造、1隻はインドネシアで最終組立が行われた)を引き渡したが、新たに3隻の潜水艦建造契約をインドネシアから受注することに成功した。

しかし、この契約をインドネシアがキャンセルするかもしれないと海外メディアが伝えている。

インドネシアは経済停滞の影響で国防予算が縮小されると予想されているので軍も早急に支出を見直す必要に迫られており、そこで目を付けたのが昨年と韓国と交わした契約だ。軍は国防計画を見直した結果、潜水艦の総保有数を12隻から8隻に変更、そのため韓国との契約自体をキャンセルできないか検討に入ったと報じられた。

潜水艦をキャンセルするほど予算不足なのにF-16Vを新たに調達する余裕はある?

素直に受け取ればインドネシアの行動は正しく見えるが、色々と怪しい伏線もある。

インドネシアは昨年に米国から新たにF-16Vを購入すると表明、さらに第5世代戦闘機F-35Aを売って欲しいと要請するなど国防予算が足りなくなる国の行動とは思えない動きを見せておきながら、韓国に対してだけ予算がないと言う理由でKFX開発費支払いを一方的に停止したり、潜水艦建造契約をキャンセルするというのは一貫性に欠けていると言わざるを得ない。

関連記事:韓国激怒、戦闘機「KF-X」開発負担金を支払わないインドネシアがF-35A購入希望?

さらにキャンセルを検討している潜水艦建造契約は費用の85%を韓国政府が融資する条件なのでインドネシア側の短期的な負担は約3億ドル(契約総額は11億ドル)に過ぎず、国防予算が縮小される状況下では逆に歓迎されるべき内容なはずだ。それにも関わらずキャンセルすると言うのだからインドネシア側の意図が良くわからない。

無理やり理由を見つけて推測するなら、ドイツとトルコが組んで提案した214型潜水艦の存在が影響している可能性ぐらいだ。

出典:GDK / CC BY-SA 3.0 ポルトガル海軍の209型潜水艦

この潜水艦は209型潜水艦とは異なり燃料電池タイプのAIP機関を搭載したタイプで、韓国も自国海軍向けにライセンス生産を行っているが第三国への輸出用ライセンス生産は認められていない。

しかしドイツはトルコのSavunma TeknolojileriMühendislikve Ticaret(STM)社に214型潜水艦の第三国輸出用ライセンス生産を認めインドネシアに昨年提案させており、インドネシア側もAIP機関を搭載した潜水艦に興味を示したらしい。

問題は国防計画の見直しで潜水艦の調達総数が12隻から8隻に減じられたため、韓国と新たに結んだ契約が完了すれば潜水艦の総数は8隻に到達してしまう。そうなれば新たにドイツとトルコが提案してきたAIP機関搭載の214型潜水艦を調達することは国防計画が見直されない限り不可能になる。

要するにインドネシアは、韓国との契約をキャンセルしてトルコから214型潜水艦を導入したいと考えているのではないかという説だ。

あくまで管理人の推測なので当たっているとは思えないが、インドネシアの動きは怪しさ満点なので見ていて飽きることがなく今度はどんな手で話題を提供してくれるのか非常に注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain インドネシア海軍の209/1300型潜水艦

意外と安い? 第4.5世代戦闘機F-16C/D Block70「通称V仕様」の機体価格は約69億円前のページ

10万個の遺体袋を手配する国防総省、喝采の中で空母ルーズベルトから下船するクロジャー艦長次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    2032年頃に就役? 韓国、いずも型護衛艦を口実に軽空母導入前倒し検討

    韓国メディアは5日、韓国政府と軍はF-35Bを運用可能な韓国型空母の導…

  2. インド太平洋関連

    インド海軍の次期潜水艦調達プログラムから独仏西露が脱落、残ったのは韓国だけ?

    インド海軍が予定しているAIP機関を備えた通常動力型潜水艦(プロジェク…

  3. インド太平洋関連

    インド、ロシアと防衛装備の代金支払とスペアパーツの現地生産で合意か

    ロシアとインドは防衛装備の輸出に関連した支払方法とスペアパーツの現地生…

  4. インド太平洋関連

    インド、年内にフィリピンと超音速対艦ミサイル「ブラモス」輸出契約を締結か

    インド政府は超音速対艦ミサイル「ブラモス」を輸出するためフィリピンとの…

  5. インド太平洋関連

    台湾空軍からの評価が低いミラージュ2000-5、F-16V導入で早期退役?

    台湾は米国から新たに製造されたF-16V Block70を66機導入す…

  6. インド太平洋関連

    台湾の次世代戦闘機は2024年5月までに登場、KF-21に良く似た仕上がり

    台湾メディアの上報は13日「空軍は蔡総統が退任(2024年5月)する前…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 04日

    インドネシアは韓国と張り合うくらいに約束を良く守る国だからな。

      • 匿名
      • 2020年 4月 04日

      ナイス ジョーク

      • 匿名
      • 2020年 4月 04日

      それは世界中が知っている事実だ
      特にインドネシアでの高速鉄道計画は驚かされた

      1
      • 匿名
      • 2020年 4月 04日

      まさに狐と狸の化かし合い…
      ってそんな老獪なもんでもないよな
      コウモリ同士が唾飛ばし合ってるだけにしか見えん

    • 匿名
    • 2020年 4月 04日

    仮想敵国のオーストラリアの新・潜水艦事業がグダグダだから、先に空軍をって事かな?

    • 匿名
    • 2020年 4月 04日

    さて、『信頼と実績』の韓国潜水艦がキャンセルの危機だそうだぞ、オッペケ君?w

      • 匿名
      • 2020年 4月 06日

      209型潜水艦建造契約は芳しくないニュースが続いており、オッペケ君は引き籠ってしまった様子です。
      本記事と続き記事を見てどんなコメントをするか私も待っていたのですが。。。

      • 匿名
      • 2020年 4月 10日

      つうか記事に韓国が費用の85%融資とか書いてるよね
      散々韓国は実績があってまともな商売してる、ODAでプレゼントしてる日本とは違うと言ってたよね
      説明して欲しいなあ

    • 匿名
    • 2020年 4月 04日

    土.人後進国はワイロに弱いから南鮮が巻き返すのは容易だろ
    と言うか単純にワイロの催促なんじゃねーの?

    • 名無し
    • 2020年 4月 04日

    インドネシア、韓国から学ぶの巻き

    • 匿名
    • 2020年 4月 05日

    このインドネシアの日中韓に喧嘩売るような動き、ある意味凄いよね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 05日

    韓国に喧嘩を売ってもどうということはないし足蹴にするにはちょうどいいサイズ
    日米の後ろ盾もなくなって騙し放題

    • 匿名
    • 2020年 7月 06日

    209/214てドイツのHDWが提供してる潜水艦を何故他国から調達するのかて部分はやはり腑に落ちない。
    調達担当として見てインドネシア側の担当者がまともにやる気ないだろこれてなる

    • イルボン
    • 2020年 7月 06日

    209/214てドイツのHDWが提供してる潜水艦を何故他国から調達するのかて部分はやはり腑に落ちない。
    調達担当として見てインドネシア側の担当者がまともにやる気ないだろこれてなる

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP