インド太平洋関連

インドネシア財務省、中古J-10B調達のため16億ドルの対外借入を承認

Janesは16日「インドネシア財務省がJ-10B、22式ミサイル挺、CM-302を海外融資によって調達する計画を承認した」「国防省はJ-10Bの資金調達枠として最大16億ドルの対外借入が認められ、この計画を支援する金融機関を積極的に探している」と報じた。

参考:Indonesia seeks foreign loans for J-10 fighters, naval systems

インドネシアの武器調達は契約締結や契約発効に辿り着かないことが多く、その多くは財務省が承認した融資枠に基づく調達資金の確保が躓くパターン

海外メディアは「インドネシアが中国からJ-10を購入する」「インドネシアがJ-10購入契約を締結した」「プルバヤ財務相はJ-10購入予算として90億ドル以上を承認した」などと報じているが、国営通信を含む現地メディアの報道とはニュアンスが異なっており、インドネシアが中国からJ-10を購入するという報道の根拠は「まもなくジャカルタの上空を飛行するだろう」というシャフリ国防相の発言で、取得規模、資金調達、調達スケジュールなどは何も明かしてない。

インドネシア国営通信=Antaraは15日「プルバヤ財務相は国防省によるJ-10購入予算の詳細を知らないと認めた」「財務省はシャフリ国防相が要求した資金90億ドルを承認したが、この資金をJ-10購入に充てるのかどうか明言を避けた」と報じ、現地メディアは「プルバヤ財務相は『来年度予算は既に承認されている』『そのため国防省は既にかなりの資金を持っている』『正確な数字は忘れてしまったが90億ドルぐらいはあったと思う』『インドネシアは既に他の航空機を発注しているため現予算計画でJ-10購入がカバーできるのか不透明だ』『J-10を来年以降に購入するつもりなのか確認しなければならない』と述べた」と報じている。

要するにプルバヤ財務相が承認したのは「J-10購入予算」ではなく「来年度予算」のことで、財務省が2026年度予算で国防省に提供した90億ドル以上の資金は「J-10購入費用」ではなく「航空機調達に関連した費用の総額」で、そもそもプルバヤ財務相は「2026年度予算で提供した90億ドル以上の資金でJ-10購入を購入する」とは聞いておらず、控えめに言っても「シャフリ国防相はJ-10購入を示唆したもの調達計画も財源確保も不透明」という感じだが、Janesは16日「インドネシア財務省がJ-10B、22式ミサイル挺、CM-302を海外融資によって調達する計画を承認し、この計画を支援する金融機関を積極的に探している」と報じた。

“本計画に精通した情報筋がJanesに提供した文書(財務省から国防省宛ての書簡を含む)によればJ-10B、22式ミサイル挺、CM-302向けに総額31億ドルの融資枠が承認された。特に国防省はJ-10Bの資金調達枠として最大16億ドル、CM-302の資金調達枠として最大10億ドルの対外借入が認められており、この資金は海外の輸出信用機関、二国間債権者、民間融資機関によって供給される可能性がある。インドネシアは中国人民解放軍で運用されていたJ-10Bを調達する計画で、CM-302は沿岸防衛用の地上配備型対艦ミサイルとして取得する予定だ”

この分野に精通するJanesの情報なので一般メディアの報道より信憑性が高く、インドネシアのJ-10取得に向けた動きを最初に報告したAlert5も「インドネシアは中国から中古J-10を42機購入する計画だ」と、オーストラリア国営放送のABC NewsもAlert5の報告を引用し「このJ-10は輸出条件を満たすために改修される可能性が高い」と指摘していたため、インドネシアはインドとの紛争で注目を集めた最新のJ-10CではなくJ-10Bを中古機体と調達する可能性を高め、J-10B×42機の購入資金が16億ドル(1機あたりの取得コストは約3,800万ドル)というのも妥当に見えてくる。

出典:Dassault Aviation ラファール調達に関する合意書への署名

因みに一般的な武器調達の動向において「資金調達の細部」を報じられることは殆どないが、インドネシアの武器調達は意向書署名から商業契約締結や契約発効に辿り着かないことが多く、その多くは財務省が承認した融資枠に基づく調達資金の確保が躓くパターンで、この事を熟知しているDassaultはインドネシアが発注したラファール購入代金の支払いが実行されるまで一切の製造作業を行わず、Airbusもインドネシアが「A330MRTT取得を決定した」と発表しても「契約締結を楽しみにしている」と述べるに留めていた。

Janesもインドネシアの武器調達に関しては「その調達資金はどこから供給されるのか」に注目していることが多く、インドネシアの武器調達が比較的順調に進むのは二ヶ国間関係に基づく「契約全体をカバーした融資」を提供された場合が多い。

関連記事:インドネシア国営通信、財務相が承認したのJ-10購入費用ではなく来年度予算
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※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru/CC BY 4.0

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コメント

  • コメント (6)

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    • 9kg9o5
    • 2025年 10月 20日

    インドネシア空軍が現在運用している戦闘機はT-50、F-16、Su-27、Su-30で、今後運用予定の戦闘機はKAAN、KF-21、ラファール、F-15EX、J-10B。
    J-10Bを買う理由が無いよね。中国の高速鉄道の債務免除の代わりに買うのかしら。

    11
    • Kaeru
    • 2025年 10月 20日

    デビットカードみたいだなインドネシア

    10
      • kitty
      • 2025年 10月 20日

      そのうちリボ払いで軍備を整える国が出てきそう。

      7
    • Fっカス
    • 2025年 10月 20日

    結局また中国から借りるのか?高速鉄道は「走る利息爆弾」らしいが、J-10Bはさしずめ「空飛ぶ利息爆弾」

    5
    • DEEPBLUE
    • 2025年 10月 20日

    インドネシアとしても別の中国製品の方が良いと思いますけどねえ・・・。ただでさえ煩雑な空軍機材なのに

    3
    • インドネシアはいつも
    • 2025年 10月 21日

    つき合わせで良い条件を引き出そうとしているようにしか見えないインドネシア
    なかなか正式契約になるまでにいたらない。
    今回も、どこまで本気なのか分からない。

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