インド太平洋関連

インドネシア国営通信、財務相が承認したのJ-10購入費用ではなく来年度予算

海外メディアは「インドネシアがJ-10を購入する」「プルバヤ財務相もJ-10購入予算を承認した」と報じているが、インドネシア国営通信は「プルバヤ財務相が承認したのはJ-10購入予算ではなく来年度予算で、どうやってJ-10購入に資金供給するのか把握していない」と報じている。

参考:Indonesia set to receive Chengdu J-10 fighter jets from China
参考:Purbaya belum mengetahui detail anggaran pesawat jet J-10 Chengdu

契約締結、資金供給、機体製造の3つが確認されているのはラファールだけ

インドネシアは5月のマクロン大統領の訪問に合わせてラファール、軽フリゲート、スコルペヌ型潜水艦、CAESARなど170億ユーロを超える契約締結を発表、既にラファール取得(計42機)への資金供給は始まっており、インドネシア空軍のパイロットもフランスで訓練中なのだが、Alert5は「インドネシアは中国から中古J-10を42機購入する計画だ」「関係筋によれば両契約に関する正式発表は6月に開幕する防衛展示会で行われる予定らしい」「この取引が実行に移されればF-15EX購入の取り組みは終了し、武器輸出を優先事項に掲げるトランプ政権にとっては大きな後退になるだろう」と報告。

出典:Boeing

オーストラリア国営放送のABC NewsもAlert5の報告を引用し「インドネシアは米国の制裁を懸念してSu-35購入を断念し、米国とフランスから戦闘機を導入することを決めたが、来月の防衛展示会で中古のJ-10購入計画を発表するかもしれない」「このJ-10は輸出条件を満たすために改修される可能性が高い」「この情報について公式な確認は取れていない」「この件についてコンロイ国防産業相は『メディアの憶測にコメントはしないが、私はインドネシアが何十年も世界中から装備品を調達してきたことを指摘したい』と述べた」と言及。

Bloombergも「インドネシアのドニ―・エルマワン・タウファント国防次官が水曜日、空軍関係者が中国を訪問した際にJ-10の販売を提案してきた」「まだ評価は暫定的なもので技術評価を実施したり、この提案を検討するための人員を中国に派遣してはいない」「政府はJ-10が空軍の運用要件を満たし、既存のシステムに統合可能を調査している段階だ」「もしJ-10の性能が我々の要件を満たし価格も手頃だと判明すれば導入しない理由はない」「我々は如何なる同盟にも縛られていないためどの国からも武器を購入できる」と報じたが、6月のINDO防衛展示会で発表されたのはJ-10ではなくKAANに関する合意だった。

出典:Türk Havacılık ve Uzay Sanayii

この政府間合意は7月の国際防衛産業見本市で正式な商業契約締結に繋がり、インドネシアのKAAN取得が現実味を帯びてきたものの、インドネシア国防省の報道官は9月「Perisai Trisula Nusantara defense vision(プラボウォ大統領が国防相時代に導入した統合防衛構想)にJ-10Cが合致するか評価を続けている」「我々は少なくとも42機のJ-10C調達を検討している」と明かし、インドネシア国営通信のAntaraは15日「インドネシアが中国からJ-10を購入する予定」と報じて注目を集めている。

海外メディアも「インドネシアが中国からJ-10を購入する」「インドネシアがJ-10購入契約を締結した」「プルバヤ財務相はJ-10購入予算として90億ドル以上を承認した」などと報じているが、国営通信を含む現地メディアの報道とはニュアンスが異なっており、インドネシアが中国からJ-10を購入するという報道の根拠は「まもなくジャカルタの上空を飛行するだろう」というシャフリ国防相の発言で、取得規模、資金調達、調達スケジュールなどは何も明かしてない。

出典:L.G. Images / Public domain J-10B

さらに興味深いのはプルバヤ財務相の言及で、Antaraは15日「プルバヤ財務相は国防省によるJ-10購入予算の詳細を知らないと認めた」「財務省はシャフリ国防相が要求した資金90億ドルを承認したが、この資金をJ-10購入に充てるのかどうか明言を避けた」と報じ、現地メディアは「プルバヤ財務相は『来年度予算は既に承認されている』『そのため国防省は既にかなりの資金を持っている』『正確な数字は忘れてしまったが90億ドルぐらいはあったと思う』『インドネシアは既に他の航空機を発注しているため現予算計画でJ-10購入がカバーできるのか不透明だ』『J-10を来年以降に購入するつもりなのか確認しなければならない』と述べた」と報じている。

要するにプルバヤ財務相が承認したのは「J-10購入予算」ではなく「来年度予算」のことで、財務省が2026年度予算で国防省に提供した90億ドル以上の資金は「J-10購入費用」ではなく「航空機調達に関連した費用の総額」で、そもそもプルバヤ財務相は「2026年度予算で提供した90億ドル以上の資金でJ-10購入を購入する」とは聞いておらず、控えめに言っても「シャフリ国防相はJ-10購入を示唆したもの調達計画も財源確保も不透明」という感じだ。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Albert Morel

因みにインドネシアのF-15EX取得は「2023年に署名した24機の売却覚書」で動きが停まっており、この覚書に署名には当時のプラボウォ国防相も参加したものの正式な商業契約締結には至っておらず、契約締結、資金供給、機体製造の3つが確認されているのはラファールだけだ。

関連記事:インドネシア国防省、少なくとも42機のJ-10C調達を検討している
関連記事:トルコ防衛産業は絶好調、インドネシアへのフリゲート艦輸出にも成功
関連記事:インドネシアがトルコから第5世代戦闘機を購入、KAAN輸出契約を締結
関連記事:インドネシア国防次官、J-10の性能が要件を満たし価格も手頃なら導入
関連記事:豪国営放送、インドネシアが中国からJ-10を42機購入する可能性
関連記事:インドネシアがボーイングからF-15EXを24機調達、売却に関する覚書に署名

 

※アイキャッチ画像の出典:L.G.Images / Public domain J-10B

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コメント

  • コメント (5)

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    • 名無し
    • 2025年 10月 18日

    なんか中国て高速道路といいインドネシアに良いように踊らされてない?

    17
    • A1BEdM
    • 2025年 10月 18日

    中古J-10B導入の場合、調達断念したカタールの中古ミラージュ2000の代わりなのかな。
    パキスタンの導入したC型に比べればパッシブ・フェーズドアレイ式レーダーでPL-15ミサイルは運用できないけど、エンジンは中国のWS-10ではなくロシアのAL-31だから、Su-27とSu-30を運用しているインドネシアには扱いやすいだろうし、中継ぎ目的ならPL-12ミサイルでも十分だろうか。

    ジェーンズによると97億ドルの内、中国の取引は31奥ドル(22型ミサイル艇とYJ-12E対艦ミサイル含む)で、内16億ドルがJ-10に割り当てみたいですね。ラファールの時と同じで海外融資による費用捻出の可能性が高いみたいです。別の報道だとトルコのKAANに12億ドル、イタリアの退役空母ジュゼッペ・ガリバルディに4.5億ドル割り当てがあるようで。

    4
    • DEEPBLUE
    • 2025年 10月 18日

    インド以上に整備士が死にそうな編成

    11
      • Authentic
      • 2025年 10月 18日

      プラボウォ大統領は自分の全方位外交に自信を持ってるから大統領だけ俺の巧みな全方位外交って満足してそう
      上の画像でも真ん中でドヤ顔してるし

      3
    • 神田明(仮名)
    • 2025年 10月 19日

    インドネシアはLNG等の輸出をしている為、東南アジアでは比較的金持の筈ですが借金で破滅しそうに見えます。

    3

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