インド太平洋関連

韓国F-35A導入の見返り「衛星無償提供」は嘘? 「有償」だった事実がバレる

韓国メディアが、ロッキード・マーティンから40機のF-35A導入に対する見返りとして、軍事用通信衛星の無償提供・打ち上げを受けると言われていた衛星について、実は有償提供だったと報じている。

参考:‘공짜’라던 군통신위성, 알고보니 최소 수천억…방사청 간부 3명 징계 통보

F-35購入契約で結んだとされる見返りが、消えていく韓国

2014年の朴槿恵政権時に行われた、韓国空軍の第3次戦闘機選定事業(以下、3次FX事業)で、ボーイングが提案したF-15SE サイレント・イーグル、ロッキード・マーティンが提案したF-35A ライトニングⅡ、欧州が提案したユーロファイター・タイフーンの中から、F-35Aを選択した。

当時の韓国空軍の評価は、F-35A > タイフーン > F-15SEの順だった。タイフーンは、米国製戦闘機の運用経験しかない韓国空軍にとって、欧州製戦闘機・搭載される欧州製兵器の導入が負担だという部分で評価を下げ、F-15SEは、F-15Kと運用面で共通する部分で有利だが、性能自体は3機種の中で一番低いと評価された。

出典:Public Domain

F-35Aは、提案された3機種の中で、もっとも高価で、3次FX事業予算を超過するものだったが、第5世代のステルス戦闘機という点と、ロッキード・マーティンが購入の見返りに、韓国型戦闘機開発「KFX」に必要な技術の移転、無償での軍事通信衛星の提供、韓国企業から2000億ウォン分の製品を購入するという点を評価し、ロッキード・マーティンとF-35A購入契約を結んだ。

補足:2019年の監査院よる監査で、当時の3次FX事業予算内に唯一、収まっていたのは、ボーイングが提案したF-15SEのみで、F-35Aを選択すれば予算を超過することを知りながらも、ロッキード・マーティンの手を挙げたことは違法状態の可能性があり、これを公式に発表すればF-15SEを提案したボーイングと訴訟に発展し、「決定は間違いではない」という判定を下せば、前政権に免罪符を与えることに繋がり、ムンジェイン政権と与党から批判を受けるため、どの様な判断が下されるのか注目されたが、結局、機種選定方法に問題はあったが、違法ではないという雑な言い訳で問題を処理した。

KFXに必要な技術移転と、無償での軍事用通信衛星の提供と言う部分は、F-35A導入決定当時、盛んに韓国国防部や韓国メディアが、とりわけ強調して伝えた部分で、他のF-35A導入国の契約と比べて、非常に優遇された内容の契約だと自画自賛していた。

しかし、KFXに必要な技術移転の大半が米国政府に拒否されてしまい、残る「無償での軍事用通信衛星の提供」が一体、いつになれば実行されるのかが注目されていた。

当時の韓国メディアは、ロッキード・マーティンは、F-35Aの購入契約を結べば、軍事用通信衛星を1基提供すると言っておきながら、契約後に、費用が掛かり過ぎると言い出し、韓国政府に費用の負担を要求してきたのは、話にならない、契約違反だと報道した。

これに対し韓国政府は、ロッキード・マーティンに対し、提供される軍事用通信衛星の引き渡し遅延に対する賠償金を要求したと報道されていたが、その後、2019年中に、軍事用通信衛星打ち上げ・引き渡しを受けると韓国の防衛事業庁が発表した。

しかし、費用について、一体どうなったのか詳しい説明は行われず、謎が残ったままだった。

契約時と現在の価格の差分で、衛星設計・製作・打ち上げ費用を全てカバーする?

今回、韓国の監査院が、F-35A購入の見返りとして無償提供されるはずだった軍事用通信衛星は、実は無償ではなく、有償だったという監査結果を公表した。

韓国側に提供する衛星の費用を支払わないので、ロッキード・マーティンは衛星提供を延期し続けただけという言うのが真実だ。

出典:ロッキード・マーティン

韓国の防衛事業庁は、軍事用通信衛星の正確な価格について、ロッキード・マーティンの営業上の秘密という理由で明らかにしなかったが、防衛事業庁は、ロッキード・マーティンとの協議の結果、軍事用通信衛星に関する費用について、F-35Aを契約した当時の価格と、値下がりした現在の価格との差分で、衛星設計・製作・打ち上げ費用を全てカバーする方式で解決したとして、監査に対する再審を要求した状態だ。

監査結果に対する、再審を要求したと言うことは、軍事用通信衛星の無償提供と言うのは間違いではないと、防衛事業庁は主張したいのだろう。

もし、防衛事業庁が明らかにした協議結果が正確ならば、契約時と現在の価格の差分が、衛星に関する費用の原資になったとしても、これは無償ではなく有償だ。

最大の謎は、対外有償軍事援助(FMS)を通じて契約済の内容(条件・価格)が、F-35の価格が下がったからと言って、契約金額が減額されるという話を聞いたことがない。逆を言えば、韓国との契約は、F-35の生産にトラブルがあって、価格が上昇しても、その上昇分を韓国が負担する契約になっていると言う意味だ。

無謀にも、韓国の防衛事業庁は再審を要求したが、その結果、今度は一体どんな嘘がバレるのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 13日

    FMS調達で認められてるオフセット事業(有償、FMSの金額の25%まで可能、 つまり、125%の請求になる)
    元々は発展途上国で常態化してるワイロ要求への対策(国際的、アメリカの国内法的にも巨額ワイロは認められないから)
    ワイロが欲しい? じゃあオフセット事業を契約してね なんでも良いのよ(F-35関連以外、軍事関連以外でも)
     これで、F-35の導入機数が26機ぐらい(2個大隊+予備)に減るのは確実かもね。 韓国ではついてる予算が無い、新規予算請求が必要だから執行までは3年は必要だから  
    お値段:21億3000万ドル(約2兆4900億ウォン)+遅延損害倍送金などなど

    現在はKT(民間企業)と共用の衛星:ムグンファ5号(別名 コリアサット5号 2007年に打ち上げ)で運用できているANASISを軍事専用の通信衛星に移管する事業

    • 匿名
    • 2019年 6月 13日

    こっちに書いてたんかーい。あっちでもいいのに。
    ところで韓国とか関係なくF35使うところなら軍用GPSは有償じゃないの?
    契約上F35に含まれてるかはわからないけど。

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