インド太平洋関連

マレーシア空軍の軽戦闘機調達、インドのテジャスMK.1Aが勝利か

ヒンドスタン航空機のマドハヴァン最高経営責任者は3日、マレーシアとの交渉が最終段階に達しており「政治的な変化がない限りテジャスMK.1Aの導入交渉はまとまるだろう」と明かした。

参考:India’s Tejas aircraft emerges as Malaysia’s top choice for its new fighter jet programme

JF-17やFA-50よりもMK.1Aは優れた戦闘機でマレーシアが望む全てをカバーして予算要件をクリアした唯一の存在

マレーシア空軍の軽戦闘機調達(FLIT/LCAプログラム)にはインドのテジャスMK.1A、ロシアのMiG-35、韓国のFA-50、イタリアのM-346FA、中国のJF-17(JL-10ではなくJF-17を提案してきたらしい)、トルコのヒュルジェットの6社が名乗りを挙げていたが、ヒンドスタン航空機(HAL)のマドハヴァン最高経営責任者はIndian Express Limited紙に「テジャスMK.1Aが有力候補に浮上して調達に向けた交渉が進められている」と明かして注目を集めている。

出典:Public domain パキスタン空軍のJF-17

FLIT/LCAプログラムは軽攻撃/練習機として運用していた英ホーク108/208、練習機として運用していた伊MB-339CMを更新するという側面と、退役したMiG-29の穴を埋めるという2つの目的があり、マレーシア空軍は新たに調達する軽戦闘機に調達する軽戦闘機に視界外戦闘能力、空中給油能力、超音速飛行、国産化比率30%などを要求、JF-17、FA-50、テジャスMK.1Aが最有力候補だと噂されていた。

しかしマドハヴァン氏は「JF-17やFA-50よりもMK.1Aは優れた戦闘機でマレーシアが望む全てをカバーして予算要件をクリアした唯一の存在だ。しかもHALはSu-30MKMのMRO(メンテナンス、修理、オーバーホール)施設の提供も提案に含めている。ロシア以外で同機のサポートを行えるのは我々だけだ」とIEL紙に明かしているのが興味深い。

出典:Carl Brent/CC BY-SA 4.0 マレーシア空軍のSu-30MKM

どうやらマレーシア空軍はロシア制裁の影響でSu-30MKM維持に必要なサポートを受けられなくなっており、ここに目をつけたHALはSu-30MKIのライセンス生産を行なっている強みを発揮して「テジャスMK.1Aのパッケージに同機のMRO施設の提供を含めて中国や韓国の提案を上回った」という意味だ。

マドハヴァン氏は「マレーシアとの交渉はほぼ最終段階に達している。政治的な変化がない限りテジャスMK.1Aの交渉はまとまるだろう」とも述べており、HALはマレーシア側との交渉で相当な手応えと確信を得ているのだろう。

因みにマレーシアへのテジャスMK.1A輸出が決まればインドは国産航空機の海外輸出に初めて成功する。

関連記事:マレーシア空軍の軽戦闘機入札にインド、ロシア、韓国、イタリア、中国、トルコが応じる
関連記事:インド、エジプトに国産戦闘機「テジャスMK.1A」の現地生産を提案か

 

※アイキャッチ画像の出典:Venkat Mangudi / CC BY-SA 2.0 テジャス

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コメント

    • 無無
    • 2022年 7月 04日

    風が吹けば桶屋というか、ロシア制裁による棚ぼたというか、
    インド初の戦闘機輸出成功はすなおに称賛しとこう
    メインだけでなくサブのスホーイ整備のポイントが大きいのかはとにかく、輸出することでインドの経験値は高まり、さらに良い機体を生み出す可能性も見えてくる

    41
    • そら
    • 2022年 7月 04日

    最近テジャスが頑張ってるなぁ。
    いよいよ成熟したって事か。
    好きな機体だから、どんどん生息地を拡げて欲しい。

    13
    • ふりーだむふあいたー
    • 2022年 7月 04日

    ミグ21を代替する為に開発されたと言うことは、東西両陣営の武装を使えるんですか?
    そうなると、東南アジアやアフリカ諸国等も欲しがりそうですけど。
    詳しい方、教えてください。

    3
    • もり
    • 2022年 7月 04日

    韓伊は練習機寄り過ぎる、露は高価すぎる
    実質中印の一騎打ちだったのでは?

    11
      • vkgw
      • 2022年 7月 04日

      テジャスMK.1Aってまだ初飛行もしていないような……。
      インドはちゃんと納入できるのだろうか。

      11
    • 匿名
    • 2022年 7月 04日

    日本と同じく兵器輸出の後発組インドが戦闘機輸出か…
    主要国でまともな輸出実績が無いのは日本だけになってしまった様だ

    11
      • lo
      • 2022年 7月 04日

      とりあえず防衛装備移転3原則を撤廃しなければ、日本の防衛産業は朽ちていくばかりでしょうねぇ。

      13
        • あばばばば
        • 2022年 7月 04日

        防衛装備移転三原則は、移転の禁止を明確化する事と、移転を行う場合の審査と情報公開、再移転の事前同意の義務化ととても妥当なもの。
        これがなくなった場合、他国への侵略(またはテロ行為)において日本の兵器が用いられ、強く日本が国際社会に避難されることになるだろう

        問題なのは、企業による自発的な開発を行わせない、官公庁の認めと銃刀法や、航空法などの規制ではないだろうか

        3
          • ナカヤマきんにくん
          • 2022年 7月 04日

          >他国への侵略(またはテロ行為)において日本の兵器が用いられ、強く日本が国際社会に避難されることになるだろう

          ということは、他国への侵略やテロで普通に使われている武器は、アメリカやロシア製が多いが、アメリカやロシアは国際社会から非難されているのだろうか?私は、それほど大きな国際世論は聞いたことはないが。

          仮に非難されていても、蛙の面に小便とばかりに無視していればいいのではないのか?

          9
            • バクー油田
            • 2022年 7月 04日

            今兵器輸出でブイブイ言わせてるのは先の大戦の戦勝国や、韓国のような自称先進国ですね。
            つまり、日本は戦争で負けた事で国際的なプレゼンスを失ってるんですよね。
            もし戦後日本も武器輸出に力を入れてブイブイ言わそうとすれば、「また日本が云々」「反省していない云々」カードを使われてたでしょう。
            つまり、日本は戦争に負けたことで武器輸出で批判を受けた場合、蛙の面に小便とはならなかったんですね。
            今回のウクライナ侵攻で、ようやくロシアという「日独より下のランク」が出てきたので武器輸出が出来る環境は出来ましたし、軍備強化をしないことこそ罪みたいな雰囲気になってきましたし戦勝国から旧枢軸国が軍拡する事に関してオーソライズが出ましたので、これからですね。
            日本は活況の武器市場への進出は遅れてますが、遅れるしかない立場だったのが日本で、
            遅れるしかない立場になったのは戦に大敗したからです。
            なぜ飛鳥時代から脈々と有能なリーダーを輩出してきた日本が日露戦争より後になってからは、危機になると思考停止するような変な人間が軍や国の中枢を跋扈し、その結果、有史以来初めて戦争に大敗するわ、福一がメルトダウンさせるわ、30年も経済衰退させるわしてるのかという根本的な所を考える必要があります。

            9
              • 名無し
              • 2022年 7月 05日

              >今回のウクライナ侵攻で、ようやくロシアという「日独より下のランク」が出てきた

              ここが政治的に一番重要なんですね
              だから日本は立ち位置を明確にして今後行動をしやすくするためにウクライナに武器を送るべき

              1
                • ネコ歩き
                • 2022年 7月 05日

                年内とされる移転三原則改定が自民党提案通りに成れば、ウクライナへの幅広い防衛装備提供が可能になるはずです。
                閣議決定後の決断を急げば、少なくとも銃砲弾等から即応的に提供できるでしょう。
                武器支援国の動きを見れば、既に年内の戦争終結を前提にしたものではありませんので、日本の事情を知っていればですが、それでは遅過ぎるという海外批判は無いかと。
                有償無償に係わらず、保管機材でも砲や戦闘車両等は用途廃止の上で供与か貸与の手続きが必要になりますので、それらの提供が可能になるとしても早くて年度内というところでしょうか。

          • ネコ歩き
          • 2022年 7月 05日

          >企業による自発的な開発を行わせない
          そんな制約はありません。MHIのMAVが好例ですね。
          自主開発した防衛装備品の勝手な輸出や、特定技術流出を伴う勝手な海外企業との提携等が禁止されているだけです。

          2
      • バーナーキング
      • 2022年 7月 04日

      つーか買うのも売るのも西も東も(国内的には)自由自在、国土も人口も世界トップレベルで資源もそれなりにあって工業はじめとする高度産業も急成長中のインドがMake in Indiaを始めた時点でインドの兵器輸出が成功するのは予想された事態じゃないかな(さすがにこのタイミングでの戦闘機輸出は驚きの速さだけど)。
      国内法と国民の反戦意識に縛られ、東との防衛装備の売り買いはほぼ出来ず、西はアメリカから頭を抑えつけられてる日本と「後発組」なんて謎の括りで一緒にするのが間違いかと。国内環境だけでも今回のウクライナを機に改善して欲しいもんだけどなぁ。
      あと企業レベルではインドの工業界には日本企業が相当に投資・参入してるから無意味な兵器忌避とかしないでインドの兵器輸出に積極的に協力して様々なフィードバックを得て欲しいところ。

      4
    • ブルーピーコック
    • 2022年 7月 04日

    ロシア製航空機を採用している国は整備や部品をどうするのかと思ってたが、そう来たかァ〜~

    今回は中国との関係に波があるマレーシアだったからインドが競り勝ったんだろうが、中国の殲-16の部品がSu-30系列機に適合するなら今後、中国も似たような手を使って輸出を計ってくるかもだな。

    6
      • 2022年 7月 05日

      寧ろ中国がこのポジションを独占すると思ってたから、インドが選ばれたことに驚き。
      やっぱ陣営選ばず独自に動ける国は強いわ。

      2
    • 匿名
    • 2022年 7月 04日

    ついにインドにも追い越されたか…

    2
    • 2022年 7月 04日

    アジアで最初に超音速ジェット戦闘機を開発した国はインド。

    1
    • nemo
    • 2022年 7月 04日

    記事の内容と関係なくて申し訳ないんですが、このJF-17の画像はDCSでは?

    • ナイトアウル
    • 2022年 7月 05日

     Su-30のMRO施設が優位になるのは分かるけどHALはエンジン1割以上、機体も細かい部品とかロシア製部品に依存する契約があるはずだからインドだけで済む訳でも無い。この先のロシア動向次第では中国と同等にロシア依存部分で影響受ける筈なんだけどね、それがプラスになるのかインドとしては回避のもくろみがあるのかは気になる。

     テジャスもエンジンとかGEから購入しているし何かあったら制限食らう可能性有るのにインドネシアはリスク込みで選択するのか。

    • kpvt
    • 2022年 7月 05日

    しかしテジャスに乗せるBVRAAMってなんだろ
    国産のやつは進捗不明だし、いつも通りDRDOの強権的開発方針による圧倒的遅延に巻き込まれてるんだろうか…

    まあレーダーがイスラエル製EL/M-2052みたいだし、
    間に合わんならダービー買ってきて統合も簡単ですぐ終わるな

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