Airbusは2024年のファーンボロー国際航空ショーで「A330neoベースのA330MRTT+計画を開始する」と、パリ航空ショーでも「A330MRTT+のローンチカスタマー契約が締結に近づいている」と述べていたが、25日「タイ空軍がA330MRTT+を正式発注した」と発表した。
参考:Royal Thai Air Force orders next generation Airbus A330 MRTT+
タイ空軍は最大2機のA330MRTT+を取得する可能性がある
市場で入手可能なフライングブーム方式対応の空中給油機はBoeingのKC-46AとAirbusのA330MRTTしかなく、日本やイスラエルは米空軍が採用したKC-46Aを競争入札なしで発注したものの、シンガポール、カナダ、韓国、アラブ首長国連邦、インドネシアではKC-46AとA330MRTTを対象にした競争入札を実施した上でA330MRTTを選択肢し、KC-46AはA330MRTTとの競争入札で全敗している格好で、その原因は幾つかあるものの最大の要因はKC-46Aの信頼性と将来性に起因している。

出典:DoD Photo by U.S. Army Sgt. James K. McCann
KC-46Aの信頼性を大きく損なっているのは空中給油システムの構成要素=リモートビジョンシステム(RVS1.0)と空中給油ブーム(ARB)の不具合で、ムーブの遠隔操作に不可欠なRVS1.0の映像は光の加減で見えにくくなったり、映像自体に歪みが発生するためオペレーターがブーム操作を誤って給油対象機を損傷させるリスクがあるため、米空軍とBoeingはRVS2.0の開発を決定して「2024年3月から交換作業に入る」と発表したものの、RVS2.0の開発作業とリリース時期は遅延を繰り返している。
ARBは剛性値を高くしすぎた設計や制御システムの不具合で燃料を移送するノズルが給油を受ける機体の受け口に固着する現象=ノズルバインディング問題を引き起こしており、2020年にはKC-46Aのブームが給油口から外れてF-15Eのキャノピーを直撃しそうになり、2024年6月にKC-46Aから給油を受けていたF-16Cの給油口と機体構造が損傷し、2024年8月に給油を受けていたF-15Eが損傷してKC-46Aもブームを失い、2025年7月にもF-22に給油中だったKC-46Aがブームを失う事故が発生。
Posted to the Air Force amn/nco/snco Facebook page. This is the KC-46 that landed at Seymour-Johnson after the accident the other day. pic.twitter.com/0s4Svb92Ir
— Steven Fortson (@zaphod58) July 12, 2025
RVS2.0と新型ブームの交換開始は2027年に予定されており、BoeingはKC-46Aの基本的な能力=安定した空中給油システムの完成に手間取っている格好だが、AirbusのA330MRTTには致命的な欠陥が報告されておらず導入国の評判も上々で、フライングブーム方式の自動空中給油システム=A3R開発も完了し、認証機関からもA3Rを使用したF-15やF-16への自動空中給油(日中に限定)が承認され、年内には夜間の自動空中給油に関する認証も取得予定で、A3Rを無人機への自動空中給油に対応させるA4R、自律的編隊飛行システムのAF2、プローブ&ドローグ方式の自動空中給油システムの開発も進められている。
この差がKC-46AとA330MRTTの信頼性と将来性に大きな影響を及ぼしているのだが、米空軍を含む空中給油機を運用国では「もっと多くの燃料を搭載できる空中給油機が必要」という認識が高まり、Airbusは2024年のファーンボロー国際航空ショーで「燃料消費量の削減と航続距離の増加が見込める第2世代のA330MRTT=A330neoベースのA330MRTT+計画を開始する」と正式に発表、パリ航空ショーでも「A330MRTT+のローンチカスタマー契約が締結に近づいている」「現在生産中の初号機は2028年までに納品されるだろう」と述べたが、タイ空軍が最初の顧客になるらしい。

出典:Alex Cheban/CC BY-SA 4.0
Airbusは25日「タイ空軍が正式にA330MRTT+を発注した」「A330neoからの転換作業は2026年に開始されて2029年までに納品される予定だ」「タイ空軍からの発注はこのプラットフォームへの信頼性を裏付けるものであり、9ヶ国によるA330MRTTの運用実績、34万時間以上の飛行を積み重ねてきた実績に基づいている」と発表、この契約には追加購入のオプションが設定さてているため、タイ空軍は最大2機のA330MRTT+を取得する可能性がある。
因みにAirbusは「A330MRTTに対するニーズが非常に高いため生産能力の増強を検討している」「ここでの検討とは『検討以上のこと』を意味する」「産業上のボトルネックを解消するため投資を行えばA330MRTTを年6機~8機(現状は年4機~5機)生産できる」と、A330MRTTの市場シェアについても「米国を除くと90%以上」「これまでに11ヶ国から85機のA330MRTTが発注されている」と述べており、米空軍の大量発注でKC-46Aの生産数はA330MRTTを上回っているものの生産数と評価が一致しておらず、RVS2.0と新型ブームの交換開始で生産数と評価が一致してくるのかは蓋を開けてみないと分からない。
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※アイキャッチ画像の出典:Airbus





















日本では採用が難しいのは残念なところ
政治の問題もあるけど、空港などの滑走路の重量制限などのインフラ的に難しいのだっけ?
いっそシステムだけ積み替え……は流石に無茶だなぁ
整備委託できんから開発費出してもA350MRTT作るのが無難に
散々いらないと言われてたC-17よりデカいですからねA330MRTT
小牧基地には物理的に離着陸はできるけど、法的・リスク的にはよろしくないですね
A330MRTTとKC-46A、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い
単に信頼性の問題なんですけどね
KC-46Aの評価が悪くて性能が劣っていても
我が国にとって米軍が使ってるという安心感は金では買えません
それに空中給油機に高性能は必要ないと思います(負け惜しみ)
単機の性能が劣っているなら数でカバーすれば何とかなるでしょう
(給油しようとすると壊れる(信頼性が低い)のだけは擁護できませんが)
エアバスの給油システムをC-2に積みたいわ
無人機への補給ならもっと未来的に、機体下部にパイロン付けてSF作品みたいにドッキングして補給とかして欲しいな
A330neoを採用するエアラインとメンテ事業者に助成金出して整備委託先を作れば良いのでは?
A320系の整備を行っている事業者ならA330の整備認定を取るのも大変ではないし
欧州へ派遣された空自部隊と共に行動したアメリカのPMCであるオメガ社のKDC-10が、A330MRTTとKC-46Aに導入されている遠隔操作式の機材を導入して後付けで取付け問題なく運用しているという記事を読むと米空軍何やっているの?という気分にさせられます
へえと思って探したんですけど、
>A330MRTTとKC-46Aに導入されている遠隔操作式の機材を導入して後付けで取付け問題なく運用しているという記事
これが見つけられませんでした。
実績のあるKC-10が民間に払い下げられて、活躍していることに不思議はないのですが、見つけた記事では、従来の人力コントロールでした。
すいません履歴で調べましたが見つけられませんでした
Air Mobility Command C-17 Completes First Commercial Air-to-Air Refuel
でググりますと出てきます、その中の文章で
「DC-10ベースの給油機からC-17が給油する光景は、KC-10自体がアメリカ空軍から退役したばかりであることから、よく見かける光景でしょう。しかし、オメガのKDC-10Bでは、全く異なる給油技術が採用されています。機体後部に物理的なブーム操作員ステーションを設けるのではなく、遠隔空中給油オペレーターステーションから機体前方に向けてブームを操縦します。高度な光学センサーシステムを用いることで、従来の方法と同じ手順で、ブームを安全に受給機の燃料レセプタクルへと誘導することができます。」
という所から判断した次第です
KC-10は目視、KDC-10はTRVSという遠隔視野システムを採用しているためその点に関する記述かと。
時系列的にも
RARO(KDC-10)→TRVS(KDC-10RAROから換装)→RAROII(KC-767)→ARBS/EVS(A310/A330)→RVS(KC-46)でオメガが改修したという話も見当たらないのでA330MRTTとKC-46Aとは全く別物の遠隔給油システムが引き続き使用されていると思います。
よくわかりました。
ありがとうございます。
オメガ社のKDC-10は元々オランダ空軍の機体で、DC-10旅客機から改造してテレビカメラ式映像式のRORO遠隔給油システムを積んでますね。
RORO遠隔給油システムの改良版が日本やイタリアのKC-767に使われていて、KC-46Aと比較すると旧世代の給油オペレーションシステムですが、アメリカ空軍のKC-Xがスキャンダルまみれにならなければ15年は早くKC-767のまま導入できたかもしれません。
勉強になりました
KC-46Aは技術的な問題といより典型的なマネジメントの問題という感覚
B社の製造体制がアレなのもそうだけど、米空軍も米空軍で後出しで仕様追加したりスケジュールの遅れがあるのに予定通りするから試験急いでねとか中々に無茶なことやってる
こういう時に米国一点張りは辛いねえ・・・。いっそ国産で給油機作りますか?
ゴミ買わされる我が国に幸あれ
あれと向こう数十年付き合うのは致し方ないと諦めてるんですが、アップグレードの費用はやはり取られるんですよね
そこだけはちょっと納得いかないところ、まぁ契約時に盛り込んでなければ(欠陥ありの)仕様通り納入されたものをアップグレードするしないは買った側の自由だよねってのはその通りなんですが…(´・ω・`)
ま、まあ欧州兵器だってダメなのがないわけでもないから
何処のでも良いのもあれば悪いのもあるわけで、「今回のは駄目だったな」と割り切るしかないなぁ…