豪海軍とAndurilは無人潜水艦構想を3年で実用化し、両者は9月「Ghost Sharkを数十隻調達する」「既にGhost Sharkは量産中だ」「2026年1月に1隻目が就役する」と発表していたが、Andurilは「契約受注から7週間で量産バージョンの初号機が完成した」と発表した。
オーストラリアとAndurilは構想から量産開始までを3年でやり遂げ、無人潜水艦の輸出市場でポールポジションを獲得した格好だ
西側諸国、ロシア、中国では特大の自律型無人水中機=XLUUV(大型の無人潜水艦)実用化に向けて開発を進めており、豪海軍も世界のトレンドに追いつくため2022年にGhost Sharkプログラムを立ち上げ、Andurilと契約を締結して「3年以内=2025年までに3隻のプロトタイプを手に入れる」という野心的なスケジュールを掲げたが、2017年に設立されたばかりの新興企業=Andurilの素早さは伝統的な米防衛企業のものとは完全に別モノだった。

出典:Royal Australian Navy
AndurilはGhost Shark開発に使用するプロトタイプ=Dive-LDを契約締結から半年以内に引き渡し、Ghost Sharkのプロトタイプを2024年4月に引き渡し、Anduril Australiaも「3年で3隻のGhost Sharkを製造するというスケジュールは非常に野心的だったものの、この計画は予算(1.4億豪ドル)超過もなく予定よりも早く進んでいる」と述べ、豪海軍もリムパック2025にGhost Shark(ハワイまではC-17による輸送)を参加させて開発の順調さをアピールしていたが、豪国防省は9月「17億豪ドルを投資して新たなGhost Sharkを取得する」と発表した。
豪国防省は「今回の契約は今後5年間に取得するGhost Shark、保守、継続的な開発をカバーしている」「新たな投資でAnduril Australiaの雇用(120人)が維持され新たな雇用(150人以上)も創出される」「Ghost Sharkのサプライチェーンに加わっている豪企業は40社を超えている」「今回の投資によってサプライチェーンでも600人の新規雇用が創出されると見込まれる」「Ghost Sharkはステルス性を保ちながら長距離の情報収集、監視、偵察、攻撃作戦を行えるよう設計されいる」「Ghost Sharkは水上艦艇と潜水艦の能力ギャップを補完し海中戦闘能力を大幅に向上させるだろう」と説明。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith
コンロイ国防産業相も「Andurilは予算超過なしに3隻のプロトタイプを予定よりも早く納品した」と順調な開発作業を称賛し、マールズ国防相もシドニーで行われた記者会見で「海軍向けにGhost Sharkを数十隻調達する」「最初の1隻目は2026年1月に就役する」と、Andurilも「未だに世界中の海軍は自律性が海中戦にどのような変革をもたらすかを模索中だが、我々は大型自律型潜水艦=Ghost Shark構想を3年未満でやり遂げた。既にオーストラリアでGhost Sharkの量産は始まっている」と述べていたが、もうGhost Sharkの量産バージョンが完成したらしい。
Andurilは「17億豪ドルの契約受注から7週間後の10月31日、シドニーにGhost Sharkの生産施設がオープンし、量産バージョンの初号機が予定よりも早くラインオフした。この初号機は2026年1月に予定されている豪海軍への納入に向けて受け入れテストを行う」「この7,400㎡の生産施設はGhost Sharkと商用向けのDive-XLを大規模に生産し、豪政府の承認が得られる同盟国やパートナーに無人潜水艦を輸出するため建設された」「Ghost Sharkは低率初期生産が立ち上がったばかりたが2026年にはフルレート生産に移行する」と発表し、コンロイ国防産業相も「これは戦力は迅速に提供するための好例だ」と評価している。
因みに無人潜水艦分野の研究・開発は米国、英国、フランス、日本、韓国の方が先行していたものの実用化や量産化の域に達しておらず、特に米海軍のOrca(オルカ)プログラムはGhost Sharkよりも先に開発がスタートしたものの開発遅延とコスト超過を繰り返しており、オーストラリアとAndurilは構想から量産開始までを3年でやり遂げ、コスト超過もなし、全てを工程を予定より早く完了させ、無人潜水艦の輸出市場でポールポジションを獲得した格好だ。
関連記事:豪海軍とAndurilが無人潜水艦を実用化、Ghost Sharkの量産開始を発表
関連記事:台湾、Andurilと低コスト巡航ミサイル、無人潜水艦、自律型魚雷を共同生産
※アイキャッチ画像の出典:Anduril





















無人兵器関連に関してオーストラリア凄いですな〜。
有人艦艇の建造とはまるで真逆だ。
空輸出来る潜水艦とかポテンシャルがヤバい気がする
海域に戦力をピンポイントで集中展開出来るって事だから
>Andurilの素早さは伝統的な米防衛企業のものとは完全に別モノだった
誰か分解してどこの部品使ってるか教えてほしいな
SF映画のアルマゲドンにどうせ部品は全部台湾製だッ!ってセリフがあったけど
さすがに中国製じゃないよね
懸念は分かります。
しかし代替品を見つけられる範囲であれば製造国にこだわらず採用してノウハウ得てから置き換えるという方針もあります。
こういうことを言うと代替し難い部品によって生じた例や部品置き換えによる再調整の難を言われますが、概念自体が無い兵器ですからまず作ってみるハードルを下げることも必要です。それができない鈍足な伝統的企業とやっちゃう企業と両方あっていいと思います。
置き換え可能な範囲なのか全く分かりませんし、懸念はもっともだと思いますが。
潜水艦となると連絡を絶たれた状態でかなりの自律行動が出来ないと駄目でしょうからそういうシステムを既に作って組み込んであるという事になります。
今現在生産しているものは本来可能かもしれない機能の多くはまだ使えず、精々海中での哨戒活動とかしか出来ないのかも知れない。それでも取り敢えず実用化まで持っていき、テストを繰り返す事でその他のより高度な機能をつくり、鍛え上げた方が効率的でしょう。
最初から完璧性を計画は特にこれからみたいな先が見通せない時代には不向きだと思います。これもまた広義のドローンみたいなものだから当然なのでしょうyけど。
しかし仕事早いね……ってのが感想です。
サメ映画の次は暴走無人潜水艦が暴れる映画が流行る可能性が!
四方を海に囲まれたオーストラリアは人的資源損失を伴わない無人艦艇に相力を注ぐでしょうね
本邦もこういう方向に向かうのかもしれないですね
本邦でも長期運用型UUVとして2027年度完了を目指して開発中ですが、これもあくまで研究目的でそのまま量産される訳じゃないですからね。
尚更豪海軍とAndurilの実用化スピードには驚かされます。
そんなオーストラリアと本邦とで無人潜水艇の共同研究が行われる予定で、改もがみ型の件も含めて良い相手と組んだなと素直に感じます。
>ハワイまではC-17による輸送
西海岸からでも「じゃあハワイで合流ね」って命令で自走するUUVが現時点であったら怖すぎる。
ロシアの核搭載太平洋横断カミカゼ潜水艦の続報をそういえば聞かないな。
自己レス。すんません数日前にニュースになってましたわ。
>無人原子力潜水艇の「実験成功」 プーチン氏、米欧への不屈誇示か
>核弾頭を搭載できる無人の原子力潜水艇「ポセイドン」の実験が28日に行われ、成功したと主張した。
うさんくさい企業というのが個人的な印象ですが…
実際にモノを作れるのを見ると、オレ達は伝統的防衛企業とは違うんだぜ、
といううるさいアピールも伊達じゃないなと思います。
詳しくは知らないし、公開もされてないでしょうがこの艦は民生品で出来てるんじゃないか?
Andurilは民生品の活用を大いに喧伝してるし、ドローン迎撃機のAnvil(これは詳しく調べた
ことがあるんですが)は全面のカメラが思いっきりIntelのRealsenseだった。
要するに民生品を色々組み合わせて兵器システムを作ろう、という会社なんですよね。
AIに関連する兵器は開発出来るのに、国産で戦闘艦や戦闘機は開発出来ない・・・。日本との共同開発でオーストラリアが戦闘艦だけでなく、幅広い兵器の研究開発が出来れば、お互いに軍事技術の更なる、向上が見込めるかもしれない。
装備庁がやってる長期運用型UUVなんてまだ研究中だし実用化されるとしても10年ぐらいかかるんじゃないのってぐらい遅い
投資の世界だとこの手の華々しい宣伝する企業って何かを誤魔化してる事が多いので要注意なんですけどね
(それやらないとお金が集まらないのでしょうがないんですが)
デモンストレーションではまともに動いてるように見えるけど、実際に運用したらトラブルだらけとかよくある話
ある程度経つと企業立ち上げた時の開発スタッフが抜けてしまって開発陣がガタガタとかベンチャー企業はハイリスク案件です
まあ我が国はとりあえず研究試作の始まってる「戦闘支援型多目的USV」をしっかり進めて欲しいですね。
UUVと違ってほぼラジコンでも機能するから技術・運用のハードル低いし「半潜航(+短時間の完全潜航)が可能で最低限の航行能力と長期の稼働が可能な無人常駐センサー」はそれだけで海洋国の専守防衛には極めて有効でありながらうっかり鹵獲・コピーされてもあんまり侵攻の役には立たない装備ですし。