インド太平洋関連

度が過ぎるパキスタンの情報戦、インドが弾道ミサイルでアフガニスタンを攻撃

パキスタン軍は「正気を失ったインドが弾道ミサイルでアフガニスタンを攻撃した」と発表、インドのミスリ外務次官は「本当に馬鹿げた主張」「これまでアフガニスタンの民間人を攻撃してきた国はどこなのか」と反論し、アシフ国防相は核兵器の使用について「パキスタンの選択肢は狭まっている」と述べた。

参考:MEA refutes Pakistani Army spokesperson’s claim about Indian missiles hitting Afghanistan: ‘ludicrous claim’
参考:Nuclear option not on the cards, says Khawaja Asif amid escalating tensions with India
参考:India’s military says Hindu temple targeted by Pakistan’s strikes

インドもパキスタンも真実を灰にしてインド洋に投げ捨てている

パキスタン軍は10日「インド空軍の戦闘機がパキスタン空軍のヌール・カーン基地、ショルコット基地、ムリド空軍基地に向けて空対地ミサイルを発射した」と報告、これを受けてパキスタン政府もインドに対する報復作戦=Bunyan-un- Marsoos(ブニャ・ヌン・マルスース作戦)の開始を発表、ダール外相も「過去3日間で見せたインドの振る舞いは許されない」「ヌール・カーン基地への攻撃を受けて我々は決断を下した」「もう我慢の限界で他に選択肢はない」「パキスタンはインドに反撃するだけだ」と述べた。

パキスタン軍はブニャ・ヌン・マルスース作戦の一貫としてインドの電力網、アダムプールに配備されていたS-400、パキスタンに対するテロ攻撃に関与したラジューリのインド軍情報部訓練施設、インド軍の旅団本部、ウリ補給施設、アダムプール、ユーダンプール、パタンコート、スラトガル、シルサの空軍基地、デヘランギャリの砲兵陣地、ビーアスのBrahMos貯蔵庫を攻撃したと主張したが、インド側は「敵の攻撃を効果的に阻止して被害はない」と述べて「パキスタンの攻撃成功はプロパガンダに過ぎない」と一蹴。

この4日間で両国に共通するのは「敵は民間人を無差別に攻撃している」「自分達は事態のエスカレーションを抑制するため攻撃を軍事目標に限定している」「悪いの民間人を狙う敵の方」という理屈で、この論法はウクライナとロシアの戦いと共通し、これは自国の立場を正当化するための方便でしかない。

パキスタンメディア=DAWNは「戦争において真実は最初の犠牲者だ」「インドメディアは事実を抹殺するだけは満足せず、ヒステリックで戦争を支持するインド人のニュースキャスターらはSNSの過激な投稿や評論家に煽られ、真実を粉砕し、踏みにじり、引き裂き、細かく切り刻み、焼却した灰をインド洋に投げ捨てようとしている」と指摘し、インドメディアの報道やSNSのフェイクニュース(インド海軍がカラチ港を破壊した、パキスタン空軍のF-16やJF-17を撃墜した、パキスタン空軍のパイロットが捕虜になった、インド軍がラホールを制圧したなど)を批判したが、パキスタン側も真実を灰にしてインド洋に投げ捨てている。

パキスタン統合軍広報局は「インドが自国のシク教徒や少数民族を抹殺するため自国領地域に弾道ミサイルを発射した」「この争いに周辺諸国を巻き込むためアフガニスタンを弾道ミサイルで攻撃した」「もはやインドは正気を失っている」と主張したが、インドのミスリ外務次官は「本当に馬鹿げた主張だ」「過去1年半の間にアフガニスタンの民間人と民間インフラを攻撃してきた国はどこなのか」「こんなことをアフガニスタンの人々が改めて思い出す必要もない」「パキスタンの主張は嘘、フェイクニュース、プロパガンダに満ちている」と反論。

パキスタン国営放送=Pakistan Televisionも「インドの卑劣な攻撃でシェイク・ザイード国際空港が被害を受けた」「インドはパキスタンとUAEの友好の象徴を破壊しようとした」と訴えたが、興味深いのは「民間インフラへの攻撃は簡単に防空シールドを貫通出来てしまう」という不思議な点で、恐らく同じことやれば「その空港を敵軍が使用していた」というアプローチを採用するだろう。

因みにアシフ国防相は核兵器の使用について「今のところ考えていない」「そのような事態になれば傍観者も影響を受けるだろう」「パキスタンとインドの軍事衝突は当該地域を越えて広範囲の破壊につながる可能性がある」「インドが作り出した状況を考えるとパキスタンの選択肢は狭まっている」と述べ、このまま戦いがエスカレーションすればどんな選択肢も排除できないことを示唆した。

追記:インド軍はパキスタン軍の報復作戦について「パキスタン軍のドローンは民間人、住宅地、ヒンズー教寺院などの宗教施設を標的にしている」と述べ、敵は民間人や民間インフラを無差別に攻撃していると批判した。

関連記事:パキスタンがインドへの報復作戦を開始、我慢の限界で他に選択肢はない
関連記事:印パ衝突3日目、ウクライナとロシアの戦いと同じように情報戦が活発
関連記事:エスカレーションする印パの衝突、インド軍がパキスタンの軍事目標を初攻撃
関連記事:パキスタン、双方の戦闘機125機が1時間以上も視界外戦闘を繰り広げた
関連記事:米空軍も恐れるPL-15の実戦投入はほぼ確実、ラファール撃墜も濃厚
関連記事:パキスタン軍、インド空軍のラファール、Su-30、MiG-29撃墜を主張
関連記事:インドが軍事行動を開始、パキスタンはインド空軍機を3機撃墜と主張
関連記事:パキスタン国防相、インドがインダス川に建造物を作れば攻撃すると断言
関連記事:パキスタン国防相はインドとの戦争勃発を警告、神に衝突回避の手助けを祈る
関連記事:インドが軍に作戦上の自由を認め、パキスタンは36時間以内の軍事衝突を予告
関連記事:インドとパキスタンの間で数日以内に戦争勃発の可能性、アシフ国防相は否定
関連記事:インドがインダス川堰き止め工事を予告、パキスタンは水を巡る戦争を示唆
関連記事:インドとパキスタンの軍事的緊張、カシミールの実効支配線付近で両軍が衝突
関連記事:核兵器保有国間で新たな紛争の可能性、インドもパキスタンも強硬姿勢

 

※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defence/GODL-India

パキスタンがインドへの報復作戦を開始、我慢の限界で他に選択肢はない前のページ

米陸軍の改革に救済なし、適応できない主要企業が撤退しても構わない次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    台湾製の武装ドローン「Revolver860」がポーランド経由でウクライナへ

    海外では「台湾企業が製造する武装ドローン「Revolver860」がポ…

  2. インド太平洋関連

    対中国用の軽戦車開発を検討中のインド、韓国製自走砲「K-9」を流用?

    インドは中国の軽戦車「15式」に対応するためロシアから125mm対戦車…

  3. インド太平洋関連

    クアッドに対抗? ロシア、中国、イランがインド洋北部で海上演習を実施か

    ロシアのイラン駐在大使を務めるレヴァン・ジャガリアン氏は今月8日、ロシ…

  4. インド太平洋関連

    グリペン有利を覆すことに成功? フィリピンがF-16V導入を匂わせる

    フィリピン軍の合同参謀本部議長を務めるギルバート・ガペー陸軍中将は7日…

  5. インド太平洋関連

    韓国が保有する主力戦車「K1E1」の約2割で照準器が故障中、しかも修理不可能?

    実質的に韓国陸軍の地上戦力において中心的役割を果たす戦車「K1/K1E…

  6. インド太平洋関連

    タイがMQ-1CクラスのDP-20Aを発表、BZK-005のライセンス生産か

    タイ企業がバンコクで開幕した防衛装備の見本市で国産UCAV「DP-20…

コメント

  • コメント (19)

  • トラックバックは利用できません。

    • NIVEA万能論
    • 2025年 5月 10日

    こうなってくると先日の「計125機の戦闘機が1時間以上に渡って戦闘を繰り広げた」も信憑性が怪しくなりますね。
    信じた人もかなりいたようですが。

    34
      • 名無し三等兵
      • 2025年 5月 10日

      計125機 → 計125ソーティと解釈すれば、まあ、そんなもんかとも思えますね

      16
    • 真実はいつも
    • 2025年 5月 10日

    情報戦はもうどの階層でも当たり前になってますね。
    日本は平時でさえ中露(たまに米)からのSNS工作でひっちゃかめっちゃかにされてる有様で、実際に弾が飛び交う段階になったら扇動された国民によって内部から瓦解するんではないかと危惧しています。
    ゲラシモフドクトリンや超限戦を理解して危機感を抱いている人間は防衛省や政府与党の中にどれ程いるんだろうか。

    35
      • NIVEA万能論
      • 2025年 5月 10日

      >「敵は民間人を無差別に攻撃している」「自分達は事態のエスカレーションを抑制するため攻撃を軍事目標に限定している」「悪いの民間人を狙う敵の方」

      これらは別に今始まった訳ではなく、戦争当事国が昔から使ってきた手法であって特に目新しいものではありません。
      ただウクライナ戦争において一方の主張だけが事実であるかのように報道され、それを信じる人が大量発生した事実を鑑みれば「戦時プロパガンダは依然としてきわめて有効」という事が再認識されましたね。

      なおゲラシモフドクトリンの内容も目新しい点は特になく、それこそ東西両陣営が昔から常套的に使ってきた手法の焼き直しに過ぎませんよ。

      33
    • あまつ
    • 2025年 5月 10日

    こりゃ下手すると「敵が核兵器を使用した」ってデマで核報復を行う可能性が出て来ちゃったね。
    既に第3次大戦は始まってしまっている、ってのは願い下げだが。

    24
    • もへもへ
    • 2025年 5月 10日

    >真実を灰にしてインド洋に投げ捨てている。
    表現がうまい
    ここでありきたりな真実は死んだとかじゃなくて、ちゃんとローカライズして表現するあたりに高度な知性を感じる。

    40
    • nk
    • 2025年 5月 10日

    情報戦にプロパガンダとsnsの発達と共にさらに酷い有様になりましたね、本格的に地上戦も始まる可能性が極めて高いのでロシアウクライナと同じく結局は戦線は嘘を付かないで見ていくしか無さそうですかね。

    10
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2025年 5月 10日

    2週間ぐらいしないとはっきりした事がわからないでしょうね

    2
    • カシミールは中国共産党政府の核心的利益
    • 2025年 5月 10日

    もうそろそろ仲裁で双方に顔が利く習近平主席の出番ですね
    トランプ大統領よりも先にノーベル平和賞狙いで動いたりして

    1
      • ラ王
      • 2025年 5月 10日

      中国じゃ地政学的に仲介役としての体裁が取れないと思う
      インドとの仲が悪すぎる

      37
      • 病まんと
      • 2025年 5月 10日

      カシミールに関しては中国は当事者の一人ですからねぇ
      この前のミサイルの事もあってパキスタンからは無用の期待、インドからはヘイト買って余計干渉しにくくなったかも
      寧ろ共産党からしたら中国が今回の戦争に巻き込まれる可能性に危機感を抱いているかもしれません

      21
        • そらまめ
        • 2025年 5月 11日

        なんかアルメニアVSアゼルバイジャンのときのロシアみたいなポジションですね

        1
    • 愛国戦線
    • 2025年 5月 10日

    本邦敗戦後、ブラジルの日系コミュニティでは日本が勝利したとする「勝ち組」が現れた。その主張は、「日本が新型兵器により連合国艦隊を壊滅させた」といったデマ(というか創作)が主であった。
    翻って現在、SNSの発達によりそうした流言飛語が波及する余地は無くなったかに思われたが、実態としてむしろ正反対の経過を辿りつつあることは無念極まる。
    こんなとき私はいつもカエサルのあの有名な警句を思い出す。

    17
    • たむごん
    • 2025年 5月 10日

    核保有国同士が、これをやってるのは怖いものですね。

    パキスタンは特に、インド=パキスタンを比較すれば国境からの縦深の長さが違う上に、イスラマバード・ラホールが印パ国境に近いという背景があるのかなと…

    (日本人はメディアを信用しすぎると言われていますが)印パの国内感情が高まりすぎれば、自国で制御できなくなりますが、そのあたり大丈夫なんでしょうかね?

    9
    • たら
    • 2025年 5月 10日

    サッカー選手をみてれば、まあ、真実が透けて見えるよね

    0
    • ゴモラ
    • 2025年 5月 10日

    停戦だってよ……、おめでとう!!!まあ、……、もう失ったものが多すぎたが…、

    6
    • a.k
    • 2025年 5月 10日

    インドとパキスタンが即時停戦に合意しましたね。
    アメリカがどこまで仲介したのかは判りませんが、臨時速報的なニュースではまだその辺りの具体的な事は何も出ていませんけど。

    10
    • 朴秀
    • 2025年 5月 11日

    両国ともトップがまともでよかったです

    あとはお互いの国民が納得するかですかね
    痛み分けということで大人しくなってほしいところですが

    5
    • 航空太郎
    • 2025年 5月 12日

    パキスタン側の報道の支離滅裂っぷり、整合性のなさ、ファンタジーっぷりはどんどん突飛になってきてますね。
    あと、小競り合いが続いているのは、パキスタン軍側が末端までの指揮命令の徹底ができてない証左に思えます。
    インドの方は、NavICベースでの全軍の情報・兵器体系刷新ができているので、そういうミスは起きにくいですから。

    1
  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP