フィリピンのブラウナー参謀総長は2025年2月「潜水艦導入の意思」を再確認し、Fincantieriは16日「フィリピン海軍にU212NFSを提供するためTKMSと提携した」と発表、これでフィリピン海軍に提案された潜水艦は4隻目(スコルペヌ型、S-80Plus、KSS-IIIPN、U212NFS)になった。
参考:Fincantieri and thyssenkrupp Marine Systems partner for Philippines submarines project
日本は最も競争力を発揮できる潜水艦市場で全く存在感がない
フィリピン国防省のホセ・ファウスティーノ長官は2022年10月「マルコス大統領が任期中に取得すべき装備リストに潜水艦2隻を含めた」「リストは大統領の承認が必要なものの(承認は)最優先事項だ」「既にフランス、韓国、日本などからオファーを受け取っている」と明かし、ブラウナー参謀総長も2025年2月「少なくとも2隻の潜水艦取得が我々の夢だ」「フィリピンは群島国家なので潜水艦なしの防衛は非常に困難だ」と言及。

出典:Brazilian Navy/CC BY-SA 4.0 ブラジル海軍のスコルペヌ型潜水艦
フィリピンは潜水艦導入に合わせて潜水艦部隊を創設するための包括的な支援、潜水艦を運用する基地整備、メンテナンスに必要な技術移転を求めており、Naval Groupはスコルペヌ型潜水艦を提案して「スービック湾の再開発地区にメンテナンスや訓練のための拠点を建設し、フィリピン海軍の自主的な潜水艦運用体制を確立する」「さらにフィリピン企業が潜水艦のサプライチェーンに参加できるよう尽力する」と発表。
NavantiaもS-80Plusを提案して「レイテ島西海岸のオルモックに潜水艦基地を建設し、フィリピン人による潜水艦のメンテナンス体制を支援する」「これはオルモックにとって何千もの雇用を創出する機会になるだろう」「さらに導入契約を100%カバーするスペイン政府の融資保証が提案に含まれている」と、Janesは2023年9月「Hanwha Oceanがフィリピン海軍の要求要件を満たすため新たな提案を提出した」「KSS-IIIPNは最新の推進システムとリチウムイオン電池を搭載しており、フィリピンの主権と海洋権益を守る防衛能力強化を約束できる」と報じていたが、この戦いに新たな挑戦者が登場して注目を集めている。

出典:Hanwha Aerospace Europe
Fincantieriは16日「フィリピン海軍に高度な潜水艦を提供するためThyssenKrupp Marine Systemsと産業協力協定を締結した」と発表し、TKMSと共同でU212NFSを提案するらしい。
この提案には「イタリア海軍による運用支援の保証」が含まれており、Fincantieriも「これによりフィリピン海軍は前例のないレベルの訓練、戦闘教義、ロジスティクスの恩恵を受けることができる」「このパッケージには専門的な産業訓練や運用訓練も含まれる」「フィリピン海軍は体系化され高度な技術もつ潜水艦要員を迅速に育成できるだろう」と述べている。

出典:海上自衛隊
因みにファウスティーノ長官が言及した「日本からオファー」は今のところ確認されておらず、海外メディアも「スコルペヌ型、S-80Plus、KSS-IIIPN、U212NFSの争いだ」と報じ、日本は最も競争力を発揮できる潜水艦市場で全く存在感がない。
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※アイキャッチ画像の出典:Fincantieri
潜水艦だけでなく部隊創設から支援となると日本には荷が重いだろう。
日本は輸出用の潜水艦を作ってないからしょうがないね
他の潜水艦大国でも本国使用の潜水艦は余程緊密な同盟国にしか売ってないし
完成品販売と乗員育成に運用用のインフラ整備までなら行けそうですが、「さらにフィリピン企業が潜水艦のサプライチェーンに参加できるよう尽力する」で引っかかるのでしょうね。
むしろ敷居が低かったカナダに対してさえ、日本は手を上げなかったんですから、単純にリソースの問題だと思います。
カナダにしろフィリピンにしろ、潜水艦を自国生産するには産業基盤が弱すぎるため、基本的に全艦輸出になると思われます。
一方で日本の潜水艦のサプライチェーンは、年1隻に最適化されていて、余剰の能力も艦齢延長の余波で整備工数の増加に振り向けられていると思います。
一方で、アメリカの軍用造船業界の現況でも再三取り沙汰されますが、高度機密の塊である潜水艦の作業員、技術者の採用には慎重なバックグラウンドチェックが必要で、しかもそれをある程度技術が習熟した者の中から選抜する以上、人的リソースの補充は容易ではありません。まして人手不足で且つ3Kの現業職が忌避される昨今の風潮での人材確保は至難です。
また海外からの受注の場合、日本語のみで済んだ技術マニュアル、トレーニングマニュアル類の翻訳、現地法令向けの微改修など、同一設計の艦でも膨大な作業が発生します。
何より、これらの製造基盤、サプライチェーン、人材に投資したとして、自衛隊以外の需要が、フィリピンやカナダ以降に確保できるのか、受注する側としては見通しがない以上躊躇してせざるを得ないのだと思います。潜水艦に対する需要は水上艦のそれより遥かに少なく、追加の投資に対する見十分な返りが期待できないというのが製造側の本音だと思います。オーストラリアの場合、戦略上のメリットもあり、政府としての後押しも強かったですし、一応ライセンス生産として、日本側のサプライチェーン負担が全数輸出より少なかったため製造側も応じたのだと思います。
韓国は、外需主導型の経済にも関わらず、自動車、シロモノ、半導体などの主要輸出品目が軒並み厳しい競争にさらされて伸び悩んでおり、公式発表される経済状況の華やかさ(一人当たりGDPの日本越えなど)は統計操作の粉飾によるもので、」実態は極めて厳しい状況にあり、新たに兵器輸出が国家政策として推進されています。つまり、政府としての動機の強さに大きな差があり、それはさまざまな優遇措置となって、日本との差になっています(要は、シロモノ、半導体でやったことのトレース)。
結局、輸出しても、さして日本の調達価格はさして下がらないでしょうからメリットは無いと思います。大体フィリピンの使い方で、3000tもある大型潜水艦が必要でしょうか?ドイツの200系くらいが調達・維持しやすい筈です。フィリピン向けの新規設計など論外だと思います。
今の日本経済の最大の課題は、莫大な貿易赤字を如何に減らすかなのです。
その意味で、潜水艦輸出は外貨獲得という非常に大きなメリットありますよ。
その点は韓国も同じような状況で、だから兵器輸出を頑張ってるんです。
こんな特需の状況で、今稼がなくてどうするんだと?
所詮はドイツ製のライセンスである韓国製と、最大の敵が陸続きかつ、(一応は)二大海軍国(日米)が付いているから海の心配はそんなにしないでいいという韓国の事情(陸軍≫海軍)と
中国海軍という量的に圧倒している敵に対して、伝家の宝刀が如く水面下から確殺できる決戦兵器として自国製の潜水艦を運用している日本とで状況は同じ目線で言えないかと。
ドイツ製のライセンス品の詳細データが漏れたところで、国防への影響は低い韓国と、潜水艦の詳細データが漏れたら国防への影響がデカすぎる日本では潜水艦輸出のハードルは雲泥の差です。
そもそも川崎・三菱に追加の潜水艦を作る余裕がない、輸出用のダウングレード版を作った経験もない、売る気もない、海幕はやる気がない
のないない尽くしなので潜水艦輸出は厳しそうですね。
>こんな特需の状況で、今稼がなくてどうするんだと?
理屈はその通りだけど、ビジネスとして検討するとまた違うという事で
大量受注しても「納期を守らないとだめ」なわけで
納期を守ろうとすると生産設備自体を増やさないとダメになるかもしれずで、その辺りを考慮しないと
設備を追加しないで良いなら、入札に挑みやすいはず
でも設備投資が必要だ、となると「こんな特需の状況」が問題になってくる
特需、つまり一時的なバブルにすぎないのならば今後、投資した資金その他のリソースに見合うだけの稼ぎが得られるのかどうか
維持費だってかかるわけで、採算が取れないなら企業としてはそれは飲めない
今回だけで全て取り返そうとすると、商品単価が跳ね上がり過ぎるだろうから難しいだろうし…
ちなみに韓国造船業も、民間の船に関しては(営業部門が建造現場の事を考慮せず)契約獲り過ぎて結構納期守るのに滅茶苦茶苦労してる
(設備投資して生産能力向上を図る場合は赤字になってしまうので、企業としては出来ない)
貿易赤字は2022年の約20兆円から2023年は約9兆円、2024年約5兆円と急速に改善されつつあり
トランプ関税で原油価格が下がったので今年はされに改善されるでしょう
たかが1000億もしない潜水艦数隻の輸出でしかも利益があるかどうか分からない案件に手を出すのはいかがなものでしょうか
海外案件は容易く泥沼化する可能性があり、それで貴重な国産生産能力をもった企業の屋台骨が傾いたら、それこそ国難であります
それと個別企業や個人の利益と、貿易収支は別次元の概念で、1000億円の輸出は相当な額ですよ。
だからこそトランプは、米国景気悪化の懸念があるにも関わらず、関税関税と言ってる訳です。
やり方が拙すぎるという問題はあるにしても。
ですからトランプは日米間の貿易不均衡を問題にしています。
つまり、今後は更に米国からの輸入を増やさざるを得ず、日本の貿易赤字は膨らむ可能性があります。
従って、国を挙げて輸出産業を育てないと、経済的に詰みます。
日本は国全体として見れば海外投資で稼いでる(所得収支黒字、経常収支黒字)んで貿易赤字が続いても詰まない
アメリカも同様で莫大な貿易赤字で放出されたドルを他国政府が通貨価値維持の為に保有したり、民間企業が世界一の自由主義経済に投資する為にアメリカに環流させる事で経済が回っているので詰まない
よってトランプの策は資金の流れを破壊して植民地時代の貧しさに戻る愚策
対中はいくらでもやって良いけどね
戦争始まって急に止まるよりはずっと良いので
日本の経常収支は黒字です。
原因は日本企業が日本国内に投資せず、海外に投資して結果現地法人が儲かってるからですよ。その金は日本に入ってこなくて、そのまま現地に再投資されてます。
本来ならその金が日本国内に投資されてれば、日本のGDPになります。
がそうなってないのです。
つまり今の経常収支の黒字は、あまり喜ぶべき状況ではないです。
もちろん赤字よりだいぶマシですが。
それは国内で金が十分に回ってないという問題であって貿易収支も経済収支も関係無いです
金融資産として貯め込まれてるからGDPになっていないと言うのと全く同じですね
経常収支黒字である以上日本が詰む事は無いという事実に変わりはありません
どうも詰むという意味のとらえ方が違うようですね。
対外純資産が大量にあり、金融所得もあるから、完全に破綻はしない。
という意味ではそれはそうかもしれませんが。
日本経済が既に30年も停滞し続けてるのは、事実なんですけど。
潜在成長率が既に0.5%未満にまで低下している状況です。
このまま輸出産業が育たないと、そろそろマイナス成長が常態化しますよ。企業は海外で稼いで資産を貯めこみ続けています。しかし日本国内にはその利益は還元されないので、庶民の暮らしは、悲惨なことになります。
日本の貿易赤字は、莫大というほどのものでもありませんし、直近の発表では黒字に転じています。
何より、日本は金融収支が大幅な黒字で、経常収支は数十兆円の黒字です。
主に円借款の返済と米国債の金利によるものですが、これらの借款の返済金は再度円借款として途上国に貸し出され(再投資)、現地でのプロジェクトで日本企業の受注として、その一部が日本に還元されています。(低利融資なので、決して悪どいわけではありません。極力現地の雇用を優先するとおもに、技術移転もしています。)
つまり日本としては、陸上兵器や戦闘機など数による量産効果のある製品の輸出に精を出す動機はありますが、潜水艦はそこまでの動機が無いというのが実情です。水上艦は、技術的敷居が低く、かつ市場も大きいので積極的です。
まぁ陸上兵器は国際的に見て2流ですので、あえて買いたいというニーズは出ないでしょうが。(ただし、レーザー兵器、レールガンといった先進兵器が将来の戦場環境に有効に適合し、高性能かつ競争力のある価格である場合、ニーズは出てくるかもしれませんが。)
10式戦車は、ウクライナ戦争で明らかになった戦車に対する要求の変化(アジリティや戦略機動性)に合致していますが、何せ地雷対策とかまるで念頭にない国内仕様ですので、商品として売り出す場合は、相当の仕様変更が必要でしょうね。(三菱のやる気次第。国は支援しないでしょう)
だいぶ様変わりしたとはいえ、武器輸出には一定のアレルギーが残っています。戦闘機や戦闘艦といった大物については、厳しい戦略環境の現実と、経済的な事情から一定の理解を示しますが、直接殺傷兵器について積極的になれない部分もあります。
軍事産業はそんなに儲かるものではないですよ
ゴルゴ13にすら、日本の潜水艦製造現場はカツカツだとか描かれてしまいましたからね。
コルゴで取り上げられるレベルだと相当の困窮度でしょう。
ターンキーで完成品を輸出するならともかく海外オフセットのサポートなんか無理難題。
リソース不足
需要の見通しが立たない
調達価格も下がらない
3行で済む話なのに、投稿する前に一度推敲したら?
JTCは官庁みたいなもので株式会社と言っても利益の拡大を目的としてませんからねえ。中の人は海外進出のような余計なリスクを取るより何もしないで平穏に暮らすほうがいいのだろうと思います。防衛ブームで株買った人はその辺わかってない。
”少なくとも2隻の潜水艦取得が我々の夢だ”
2隻では少ないのでは?。実戦に使うつもりなら、4隻は必要では?。
目的は、南シナ海で、中共原潜と向き合うことかな?。
AIPは?、待機に使うのかな?、原潜と向き合うときのブースト用かな?。
フィリピンの意図は見えないですが、目的によるのでは?。
候補4種類のうち、3種類は排水量が大きいような気がします。
勝手なことを言うと、ドイツ/ノルウェーの210型をベースに二次電池を
リニューアルした形が良いような。このようなフネを4隻以上で。
排水量は1,000t程度だし、安全深度が500mあるし、比較的にせよ、安価でしょうし。
二次電池はリチウム型か、開発が間に合えば、やや安全?なナトリウム型でしょうか。
4種類のうちで、近いのは、スコルペヌ級でしょうか?。そんなふうに思ったり。
うーん、日本の潜水艦は通常型にしては大型ですからねえ。
日本の防衛環境にはともかく輸出競争力があるかというと少し疑問な気もします。海自も潜水艦の大型化ばかり考えてないで日本近海用の1000トンクラスの小型潜水艦の整備を勧めてもいいと思いますね。輸出用も兼ねて。
海自というか自衛隊の場合、まず人が足りないという前提が一番大きいから…
あと数も決められてしまってるからなぁ…
同じ人数を投入するなら、大型艦の方がやれること多いし性能だって上がるから、わざわざ小型艦をとはなりずらいだろうなぁと
少人数で動く小型艦が出来たところで、艦長とかの幹部はその数だけ必要になるわけで…
即席育成難しい高級士官の数を急に増やすのも難しいだろうし…
所で1000t級で、周辺の強国の中国やらロシアやら(一応友好国だけどとりあえず韓国)の潜水艦隊と渡り合えるんだろうか…?
真面目な話、よく分からないんですけど大丈夫なんでしょうか?
潜水艦乗りが22隻体制への移行で確保が難しいという話なので、フィリピン海軍兵士を「研修生」で将来の幹部要員候補として受け入れるとかのオフセットを用意すればワンチャン?!
行き着くとこまで行けば、「やまと」方式でフィリピン海軍の最新鋭潜水艦運用ががッ。
湾岸警備隊には格安で巡視船供与してますし。
輸出型でどれだけ手抜きするかわかりませんが、KSS-IIIも7億ドルで決して安い製品ではないと思いますよ。
たいげい型も円安とインフレで、9番艦は1番艦の1.5倍というたいげいにせいや(要審議)という値段になっています。
>日本近海用の1000トンクラスの小型潜水艦の整備
まず無いですね。その任務を担うとすれば、長期運用型UUV(+戦闘支援型USV) という構想でしょう。
逆に何でエジプトとはすんなり進んでいるのか不思議。
日本の潜水艦がほしいようなところは自前で大型の通常動力潜水艦あるいは原潜を保有しているのでニーズがない
日本はフィリピンの国防力強化に継続支援をしていますが、内容は哨戒機巡視船やレーダーで所謂殺傷能力を持った兵器じゃないんですよね。恐らく今回もその流れで、露骨な武器支援をして中国を刺激したくないのではないかと思います。
卵が先か、鶏が先か
売れるかどうかわからない輸出仕様を作る余裕は無いし
輸出仕様でなければ、外国に売るわけには行きません
現行防衛装備移転三原則運用指針の規定での潜水艦海外移転は、「政府間共同開発」又は「相手国政府と日本企業との共同開発」以外不可です。
仕様に関しては最新技術の移転は不可でしょうね。例えば「おやしお型」の設計をベースにAIP搭載艦とするぐらい。豪州の競争入札に提案したプランは実際そうでした。
ですから海外移転する潜水艦は(相手によりけりですが)最新建造艦に劣る輸出仕様になるのは確実です。