オーストラリア海軍はアンザック級フリゲートの後継艦=26型フリゲートとイージス戦闘システムの組み合わせたハンター級フリゲートの国内建造を決定し、これまで数々の困難に直面してきたが、8月24日にオズボーン海軍造船所で起工式が行われ、1番艦の本格的な組み立て作業が始まった。
参考:‘Keel laying’ for Australia’s first Hunter class frigate | Defence Ministers
参考:Australia lays down keel for first Hunter-class frigate
参考:Australia lays keel for first Hunter Class frigate at Osborne
参考:Hunter Class Frigate Project – the Path to Designing and Building an Australian ASW Frigate
参考:2021-2022 Additional estimates
今後のアップグレードにおいて余裕のない発電能力はボトルネックになる可能性が高いため、将来的な発電能力の強化は避けられないだろう
オーストラリアは造船業界の雇用維持とアンザック級フリゲートの後継艦を調達するため2016年に新型フリゲートの国内建造(SEA 5000)を決定、このプログラムの船体設計にBAEシステムズ、ナバンティア、フィンカンティエリが、戦闘システムにロッキード・マーティンとサーブが名乗りを上げ、2018年にBAEシステムズ提案の26型フリゲートとロッキード・マーティン提案のイージス戦闘システムを組み合わせハンター級フリゲート建造を選択した。

出典:Royal Australian Navy
オーストラリア海軍の要件を盛り込んだハンター級フリゲートはイージス戦闘システムにサーブ・オーストラリア製が開発した独自の戦術インターフェイスを組み込んだ戦闘管理システムを採用、ここに国産のCEAFAR2 フェーズドアレイレーダー、Mk.41 VLS×32セル、NSMランチャー、MU90、5インチ砲など統合し、ベース船体よりも約1,000トンほど拡張した8,000トン程度で収める予定だったが、要件が首尾一貫していなかったため設計作業に遅れが生じ、追加要素を反映したハンター級フリゲートの予備設計案は10,000トン(最終的なサイズは8,800トンから1万トンまで諸説あり)になってしまう。
重量が25%以上も増加して船体が大型化したにも関わらず主機構成が26型(MT30×1基/MTU4000×4基)と同じだったため航行速度が低下し、燃費とランニングコストが悪化、さらにAESAレーダーと推進システムの両方に十分な電力を供給を行うのが難しく「常にレーダーと推進システムのどちらに電力を優先供給するべきか選択しなければならない」と指摘される始末で、このような問題を修正するため建造開始=鋼材切断は18ヶ月遅れの2024年6月に、引き渡しも2029年末から2032年に繰り下げられ、2024年の国防戦略見直し結果によって調達数も9隻から6隻に削減されている。

出典:Royal Australian Navy/LAC Jonathon McCaffrey
このような困難を経験したハンター級フリゲートも1番艦を構成するブロックの建造が進んでおり、オーストラリア政府は24日「南オーストラリア州オズボーン海軍造船所でハンター級フリゲート1番艦の起工式を行った」「1番艦を構成する22のブロックのうち20のブロックが建造中で、オーストラリア海軍は2030年代初頭までに初のハンター級フリゲートを受領する予定だ」と発表、ジェーンズも「オーストラリアがハンター級フリゲート1番艦の本格的な組み立て作業を開始した」「26型フリゲートベースのハンター級フリゲートは全長151.4m、排水量8,200トンの規模だ」と報じた。
ハンター級フリゲートの最終的なサイズが幾つになるのかは不明だが、これまで登場した問題を未解決のまま建造しているとは考えにくく、もし満載時が8,200トンなら航行速度の低下や燃費の悪化という問題も許容範囲内に収まっている可能性が高く、電力問題もMT30×1基とMTU4000×4基の構成は変更せず、電力管理システム=Power and Propulsion Management System(PPMS)のアルゴリズムを変更して「推進優先」か「レーダー優先」かを選択できるようにしたらしい。

出典:Royal Australian Navy/LAC Jonathon McCaffrey
さらに電力消費が大きいCEAFAR2の給電方法も見直され、変圧器で電圧を下げた440V系統ではなく発電機からの直接給電=690V系統に変更して電力効率と信頼性を高めた結果、電力問題は「重大な未解決問題」ではなくなったものの、ハンター級フリゲートは電力供給能力に余裕がある状態ではなく、状況に応じて「速力を落としレーダーをフル能力で運用するか」「レーダー能力を制限して速力を最大まで上げるか」を選択しなければならず、これは今後のアップグレードにおいてボトルネックになる可能性が高いため将来的な発電能力の強化は避けられないだろう。
ちなみハンター級フリゲートはアンザック級フリゲートの後継艦で、もがみ型フリゲートは2024年の国防戦略見直し結果で勧告された汎用フリゲート枠での採用なので、この両者は完全に別ものである。
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※アイキャッチ画像の出典:Royal Australian Navy/LAC Jonathon McCaffrey




















当たり前っちゃ当たり前だけど、初期装備の対艦ミサイルがハープーンじゃなくNSMなところに時代を感じる
ハープーンも今年で生産終了しましたからねー。50年近く生産してきました、息の長いミサイルでしたけどようやく世代交代です。
優先モードの切り替え、いいんじゃないですか。
オーストラリアの造船業は主に公的な受注によって生き延びている
状態でしょう。
ここから成長の時代を迎えるということも、多分ないでしょう。
量が担保しにくいと分かっているなら、まず質を落とすべきです。
質で劣るものでいいから、作り続けることを優先した方がベターだ。
ちなみに改もがみ型も日本仕様、オーストラリア仕様ともに未起工と思われます。
日本では珍しく予定通りに行かないパターンかなぁ
今長崎造船所ではASEVを建造中だから、それが進水した後に起工し始めるのだろうけど、改もがみ型の1番艦でも28年就役になるはずだし、オーストラリア向けは30年就役なので、全然間に合う。
現代の造船業で使われる「ブロック工法」では、船体ブロックを造り始めた日付が起工日です。
例えば三菱重工長崎造船所で建造中のASEVの一番艦の起工日は昨年の7月でしたが、ドックが空いたのは昨年の12月でした。
ドックが空く前に起工出来るのです。
防衛装備庁の発表だと「まだ起工されておりませんが、作業は予定どおり進捗しております」とのこと
起工=ブロック製造開始定義だとまだブロックも作り始めてないことになるけど、予定どおりの作業=事前のブロック製造の可能性もある?
おそらく鋼材を切り出してる段階でしょう
上でも書かれてますが船体ブロックを作り始めた段階が起工なので、今は材料を用意してるんでしょうね
軍艦建造の匠が、資材置き場に積まれた鋼材を、カンカンとハンマーで叩きながら、
「ここだ!」
っておもむろに切り出し始める光景を無想した。
オーストラリア海軍向け新型FFM用のseaRamをレイセオンが受注とか、海自向け新型FFMのソナーを沖電気が受注とかニュースになっていますから、コンポーネントの調達は進んでいるのでしょう。
3年くらいは遅延しそうだし、まともに動かなそう
ホバート級はそんなに大改造しなかったのに、何でハンター級はこんな無茶したのやら
ホバート級はターター・システムを搭載していたパース級駆逐艦の後継で「防空艦(海自だとBMDを担うイージス艦)」という位置づけだったのでSEA4000計画としてアーレイバーク級派生型(米)、アルバロ・デ・バサン級派生型(西)、ザクセン級派生型(独)、45型派生型(英)の4案が提案され、アルバロ・デ・バサン級をベースにオーストラリアの要求仕様を組み込んだホバート級が建造されることになりました。
逆にハンター級は「汎用艦(海自だとむらさめ型やたかなみ型)」という位置づけでありながら、船体設計と戦闘システムを個別に選択するという方式を選んだことや国産の多機能レーダーの搭載を絶対としたことが迷走の要因になっていると思います。
イージス・システム搭載で32セルってどうなんだろって思わなくもないですが、元々フリゲート艦として設計した物なのなら妥当なんですかね。
オーストラリア海軍の強化は日本の安全保障にも影響あるので、この先は順調に進んで行って欲しい物です。