インド太平洋関連

フィリピンの攻撃ヘリ選定にシコルスキー参戦、廉価版S-70i ブラックホークを提案?

迷走を続けるフィリピンの攻撃ヘリ調達プログラムに米国のシコルスキーが名乗りを挙げて注目されている。

参考:Sikorsky set to pitch armed Black Hawk for Philippine requirement

シコルスキーが劇的に安価なS-70iに武装を施してフィリピンのニーズを満たすか

フィリピンはゲリラ掃討用途に2.6億ドル(約280億円)の予算で武装ヘリを6機~9機程度調達することを希望しており、この要求にトルコが応えて攻撃ヘリ「T129 ATAK」を6機提案したのだが同機のエンジンが米国制裁の影響で入手できなくなり、今度は米国政府が攻撃ヘリ「AH-1Z」と「AH-64E」を提案したがフィリピンの予算を無視した内容(AH-1Z:4億5,000万ドル/AH-64E:15億ドル)だっためフィリピンが拒否している。

出典:出典:public domain AH-64Eアパッチ・ガーディアン

そんな八方塞がりのフィリピンに救いの手を差し伸べようとしてるのが米国のシコルスキーだ。

シコルスキーは英国のジェーンズに対し「フィリピンの要求を満たした提案を行う」と語ったが何を提案するのかについては明らかにしなかった。しかし同社はフィリピンの輸送ヘリ調達プログラムにUH-60の発展型「S-70i」を提案して受注を勝ち取った実績があるので、武装型のS-70iを提案する可能性が高いと報じられている。

シコルスキーは16機の輸送型S-70iを2億6,500万ドルで受注しており1機あたりの価格は約1,650万ドル(約17.5億円)で米軍が運用しているUH-60(約5,000万ドル)よりも劇的に安い。

これはS-70iが米国ではなくポーランドの工場(シコルスキーの子会社PZL Mielec)で製造されていることと、米国政府を通したFMS(対外有償軍事援助)方式ではなくDCS(直接商業販売)方式で行われる取引なのでFMS手数料がかからないこと、フィリピン向けに高価で不要な装備をごっそりと外したことでが影響している。

出典:public domain

このフィリピン向けの廉価版S-70iにスタブウイング(小翼)を取り付けて、対戦車ミサイルランチャーやロケット弾ポッド等を携行できるようにしたものをシコルスキーが提案するのではないかとジェーンズは言っているのだ。

因みに9機の武装型S-70iを2.6億ドルで収めた場合、1機あたりの価格は約2,800万ドル(約30億円)で、敵の機甲師団を相手にするにはAH-1ZやAH-64Eが必要かもしれないが、フィリピンが国内のゲリラ掃討に使用するなら武装型S-70iで十分だろう。

ただフィリピンも興味を示していたトルコの攻撃ヘリ「T129 ATAK」は国産エンジンの開発に成功したらしいので、再びフィリピンに交渉を持ちかけてくるかもしれない。

関連記事:フィリピン、米国が提案したAH-1ZもAH-64Eも高価すぎて購入拒否

 

※アイキャッチ画像の出典:Alan WilsonCC / BY-SA 2.0 PZL Mielecが製造したS-70i

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 23日

    貧国の日本にもこういう装備が必要かもしれない

    1
    • 匿名
    • 2020年 6月 23日

    Hondajetは5億円と高価、でも、サービス体制が車と同じになるのではと欧米企業が脅威に感じた
    それは、東南アジアなどで、ヘリ事業が欧米の企業、軍事企業にとっておいしいらしい
    日本は、Hondajetのようにサービスの行き届いた安価なもの作りでアジアを救わねばならない・・

    そりゃ・・、日本の防衛ヘリ事業も阻止したくなる欧米の利権なんだよ

    • 匿名
    • 2020年 6月 23日

    ゲリラが多いんだね、フィリピンは、、、かつては、毛思想の被れたものも
     いかに、思想が綺麗ごと言おうと、人が去っていく共産党主義の現実

    • 匿名
    • 2020年 6月 23日

    フィリピンって安価な新品すら買うのキツいイメージなんだが?
    弾以外は中古でそろえたほうが良いんじゃ?と思う。
    例えばA-10とか

      • 匿名
      • 2020年 6月 24日

      フィリピンがA-10維持出来る訳が無い。

      3
      • 匿名
      • 2020年 6月 27日

      最近になって特殊部隊用に光学サイト付けたグリースガン調達してるくらい予算がない国だからなあ。

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    >米陸軍で余剰装備となっていた観測/軽戦闘ヘリコプター「OH-58Dカイオワ」70機を
    >ギリシャに無償譲渡(輸送費のみギリシャが負担)している。

    そうだから、フィリピンも譲って貰ったら?

    1
    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    機体だけだと安いんやな
    まぁゲリラ相手なら飛んで機関砲撃てりゃ何でも良さそう

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    既に輸送型S-70iを運用してるなら常識的には攻撃型S-70i改で決まりだろうね
    でもここで賄賂や接待で覆るのもフィリピンだろうけど
    でトルコ機が不良品で結局どっかの中古品買うことになったりまでが定番だったり

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    UH-2を輸出してやればいい。一機12億円でs-70Iより安い。それかUH-1jの中古を譲れば?武装型UH-1でいいだろ

      • 匿名
      • 2020年 9月 06日

      S-70iよりほんの僅かに安いから何だと言うんだ、その分UH-2は大幅に低性能
      というか12億は陸自向け目標価格で既に超過しておりS-70iより高くなってる
      輸出だと更に上乗せなのでS-70iに全く勝てない、そもUH-2は武装オプション
      ないし、UH-1Jなんか低性能過ぎて論外でしょう

      4
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