シンガポールの防衛産業企業「STエンジニアリング」は15日、アラブ首長国連邦の造船企業「アブダビ・シップビルディング・カンパニー(ADSB)」からオフショア巡視船(OPV/沿岸海域で運用されるIPVよりも大型で航行性能の高い艦艇)建造に関する契約を受注したと発表した。
UAE海軍の戦闘艦艇調達にアジア企業が食い込むことに成功したとう事実が非常に興味深い
もう少し情報を補足するとUAE海軍はフィンカンティエリ(伊)の支援を受けたADSBからファラジ2級巡視船(550トン/分類上OPVだがフリゲート艦が装備する76mm砲、対艦ミサイルのエグゾセ、艦対空ミサイルバージョンのMICAを装填した垂直発射装置、各種電子戦装置などを備えているため実質的にはコルベット艦と言って差し支えはない)を2隻調達、この後続プログラムとしてUAE海軍はファラジ3級巡視船×4隻を35億ディルハム/約1,080億円でADSBに発注(今年5月)した。

出典:Fincantieri ファラジ2級巡視船
ファラジ3級巡視船も分類上OPVで全長もファラジ2とさほど変わらない60m前後、各種火砲、ミサイル、電子戦装置が搭載されると報じられているため、前級と同様にコルベット艦相当の戦闘能力を有している艦艇になると予想されているが、これまでフランスとイタリアが独占してきたUAE海軍向け艦艇の契約をシンガポール企業が受注したため注目を集めている。
UAEのADSBは艦艇の建造経験を徐々に積み上げてきているが艦艇の独自設計や各コンポーネントの国産化には至っておらず、選択可能なコンポーネントの統合経験も浅いため再びフィンカンティエリの支援を受けてファラジ3級巡視船を建造するのではないかと予想されていたが、シンガポールの防衛産業企業「STエンジニアリング」はADSBからファラジ3級巡視船の設計、搭載コンポーネントの統合、建造に必要は各種技術支援に関する契約を受注したと今月15日に発表した。
勿論ファラジ3級巡視船の建造自体は現地のADSBで行われるが、UAE海軍の戦闘艦艇調達にアジア企業が食い込むことに成功したとう事実が非常に興味深い。
日本ではあまり知られていないシンガポールのSTエンジニアリングは世界100ヶ国以上(米国、英国、スウェーデン、フィンランド、アラブ首長国連邦、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ブラジルなど)に防衛装備品やサービスを提供、24ヶ国46都市(北米、欧州、アジア、中東地域)に100を超える子会社や関連企業を所有しているアジアでも有数の防衛産業企業で売上高は50億ドル(売上の内訳は76%がアジア、19%が米国、残り5%が欧州と中東)を突破している。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Eric M. Garland II/Released
特に2001年に進出した米国では民間航空会社や米軍向けの航空機整備拠点(MRO)の運営、沿岸警備隊向けの艦艇建造や米海軍の艦艇補修事業の受注などで20億ドル以上の売上(2020年度実績)を記録しており、最近では米陸軍のM2ブラッドレー後継車輌開発プログラム(OMFV)にSTエンジニアリングの子会社が挑戦すると噂されていたが予備設計フェーズに進む5つのチーム(GD、エルビット・システムズと組んだBAE、ハンファディフェンスと組んだオシュコシュ、複数の米企業と組んだラインメタル、米企業のポイントブランク)の中に同社の名前はなかったため選考で落選したか提案を断念したかのどちらかだ。
ただSTエンジニアリングは防衛分野のニュース(兵器単体というよりプログラム全体の一部に食い込む感じ)の中で登場回数が確実に増えており、個人的な感覚ではアジアに拠点を置く防衛産業企業の中ではハンファディフェンスに次ぐ存在感(これまで輸出に積極的ではなく現在も試行錯誤が続く日本の防衛産業企業や兵器類を海外メディアが取り上げる機会は非常に少なく基本的に潜水艦か護衛艦の進水を報じる程度/管理人が情報収集する範囲での話)があるのではないかと思いはじめている。
どちらにしても「STエンジニアリングがファラジ3級巡視船建造に関する契約を受注した」というニュースがドバイ航空ショーの会期中に発表(恐らく狙って発表したものと思われる)されたため、海外メディアも関心を示しているのが何とも宣伝上手と感じてしまう。
関連記事:米陸軍が次期歩兵戦闘車の予備設計に進む5チームを発表、噂のシンガポール企業は含まれず
※アイキャッチ画像の出典:ADSB
トンガリコーン
貧弱な武装だと?このとんがりコーンめ!
ACVではSAICと組んだテレックス2で最後はイベコBAEと一騎打ちしたよね
ちなみにシーステート性能ではテレックスが上だったというからシンガポールの造船技術って結構なもんでしょ
日本の政府と防衛産業関係者は爪の垢を煎じて飲むべきだな
シンガポール企業が防衛産業ビジネスで成功しているなんて初耳、、、なんか武器の輸出ビジネスって日本が殻に閉じこもっていた間にすげー多様化してて驚き以外に言葉がないよ。
勝手に先進国が武器ビジネスを独占しているイメージを抱いてたけど認識を改めないとついていけんな。
何処の国と勘違いしてるのかわからないけど、シンガポールはG7じゃないだけで日本とは比べ物にならないレベルの情報先進国だし一人辺りGDPでは1.5倍位向こうが高い紛うことなき先進国だよ
STエンジニアリングは岡崎市消防本部に配備されている
レッドサラマンダーを作ったところだと言うとピンとくる人が多い気がする
ファラジII、世界の艦船のコルベット特集で計画段階のスペックを見た時は「なんだこの21世紀版条約型水雷艇は・・・」と眉に唾つけてたんだけど、本当に完成してしまったね・・・
最近は電子装備の小型化と省人化のせいか、一昔前の汎用艦なみの装備を載せた1000トン以下くらいの船がわらわら出てきていますけど、正直乗員はたまったものではない気がする
>仏伊独占
占ってどこだって思っちゃった。
巡視船て書いてあるから海保に配備されてるようなのを想像してたら、サール4.5型みたいなミサイル艇だった。
日本で
はやぶさ型の排水量を倍にしてVLS積んだら
↑ごめんなさい書き途中で送信してしまいました…
巡視船て書いてあるから海保に配備されてるようなのを想像してたら、サール4.5型みたいなミサイル艇だった。
日本で該当する船となるとちょうどいいのがない。
はやぶさ型の排水量を倍にしてVLSと対空ミサイル積んだらスペックだけはそれっぽくなるけども。
実質はコルベットなのに、OPVを名乗るのは、ある種のマーケティング戦略なのだろう。
OPVを探している相手に、重武装をアピールして採用を狙う。
哨戒艦だろうと、めいっぱい重武装にしたい需要があることを的確に突いてる。
日本の次期哨戒艦の話題でも、武装をもっと積みたい願望を押さえきれないコメが大量に並ぶことを考えると、わかってやってますな