インド太平洋関連

トランプ再選ならE-737? 韓国、早期警戒管制機の追加調達を決定

韓国の防衛事業庁は26日、新しい早期警戒管制機を2027年までに海外から2機追加調達(約1,400億円規模)することを決定したと報じられている。

参考:2027년까지 1조6000억 들여 ‘하늘 지휘소’ 2대 추가 도입

韓国が早期警戒管制機の追加導入を決定、機種選定開始は来年から

今回の決定は増加し続ける中国空軍による韓国防空識別圏(KADIZ)への無断侵入に対応するため保有する早期警戒管制機を増強するという趣旨で、調達候補には韓国空軍が導入済みのボーイング製「E-737AEW&C」とサーブ製「グローバル・アイ」等が挙がっているが、韓国国防部や防衛産業界によれば韓国側に提示する折衷交易の内容が導入機種を左右すると言っている。

要するに韓国は早期警戒管制機を導入する代わりに相応の技術移転や早期警戒管制機製造の一部を韓国国内で行うことを要求しており、この内容が優れている方が有利になると言っているのだ。

サーブは韓国に対して自社の「グローバル・アイ」を採用すれば関連技術(国内整備に必要な技術関連)を韓国側に移転すると提案しているので、今のところ何も提案してこないボーイングよりは優位かもしれない。

補足:韓国は最近、海外から武器を導入する際に要求する折衷交易で国内に航空機MRO誘致を優先的に要求していく方針を掲げたばかりなので、サーブはこの辺りの事情を踏まえた提案を行っていると韓国側の評価が高い。因みに韓国側がMRO誘致を優先する理由は軍用機の整備海外依存率(F-16:76%/F-15K:94%/E-737:100%)高く、これを是正することを狙っているためだ。

さらに付け加えればサーブのグローバル・アイは2018年に完成したばかりの新鋭機に対して、ボーイングのE-737AEW&Cは大きなアップグレードが行われておらず故障が多いので運用維持費が高価だと韓国空軍が指摘しているため、運用当事者もグローバル・アイを望んでいるのだろう。

唯一、E-737AEW&Cがグローバル・アイに対して優位なのは機体が大型で余裕があるという点だ。

グローバル・アイはカナダのボンバルディアが開発したビジネスジェット「グローバル 6000」をベースに開発されたので、旅客機のB737-700ベースに開発されたE-737AEW&Cの方が機体サイズが大きい=搭載できる電子機器の量や長時間に及ぶ早期警戒管制任務の際の居住性に大きな違いが生じるが、電子機器については小型化が進んでいるのでレーダーの性能だけで言えば大きな性能差(※)は無いのかもしれない。

補足:ボーイングが韓国に提案する際にE-737AEW&Cのレーダーや電子機器を大幅にアップグレードすれば大きな性能差が生じるかもしれない

以上のように韓国国内ではサーブのグローバル・アイが優位だと見られているが、この早期警戒管制機導入には政治絡んでいるのでグローバル・アイを調達すれば文在寅大統領は苦しい立場に追いやられるかもしれない。

文在寅大統領は韓米防衛費分担金交渉を優位に進めるため、今後3年間に米国から購入する兵器を挙げて「韓国は米国の防衛産業から兵器を沢山購入している」とトランプ大統領にアピールしたことがあるのだが、この説明の中に早期警戒管制機が含まれているので、いまさら折衷交易の内容が優れていたからと言う理由でE-737AEW&C調達を蹴れば問題になるだろう。

出典:public domain 韓国の文大統領と米国のトランプ大統領

そのため11月の大統領選挙でトランプ大統領が再選に成功すればE-737AEW&C調達に落ち着き、再選に失敗すればE-737AEW&C調達は無かったことにしてグローバル・アイを調達するのだろうと管理人は思っている。

 

※アイキャッチ画像の出典:대한민국 국군 / CC BY-SA 2.0 韓国空軍のボーイングE-737 AEW&C

戦闘機を廃止したアイルランド、ロシアの脅威に対抗するため戦闘機導入を検討前のページ

インド、日本は数少ない友好国で自衛隊との演習は中国への圧力になる次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    韓国、豪州への自走砲K-9輸出はファイブアイズ構成国進出への第一歩

    韓国防衛産業はファイブアイズ構成国のオーストラリア市場に進出することで…

  2. インド太平洋関連

    タイ海軍が導入する潜水艦に中国海軍の保証を要求、断れば契約打ち切り

    タイ海軍のチュンチャイ海軍司令官は「中国海軍がCHD620の品質につい…

  3. インド太平洋関連

    韓国、ノルウェーの次期主力戦車に「K-2 黒豹」の現地生産を提案

    ノルウェーが来年に予定している次期主力戦車調達プログラムの受注を狙う韓…

  4. インド太平洋関連

    韓国、自走砲「K-9」豪州輸出に向けてコングスベルグとの協力を発表

    韓国のハンファディフェンスは12日、豪州への自走砲「K-9(AS-9)…

  5. インド太平洋関連

    インド海軍の次期潜水艦調達プログラムから独仏西露が脱落、残ったのは韓国だけ?

    インド海軍が予定しているAIP機関を備えた通常動力型潜水艦(プロジェク…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    飛んだら、すぐに降りる準備しないといけない国土に、早期警戒管制機がいるか
    さらに、以前の早期警戒管制機の改造費がないぞ

    1
      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      かの国は地上のレーダーが攻撃にさらされて機能不全に陥る可能性が高いので、早期警戒機は有用だと思うよ。
      ・・・まあ、実際はそれだけが理由じゃないだろうけど。

        • 匿名
        • 2020年 6月 30日

        うわさによると、シナでも悲観三原則があるらしい、
         べつに、韓国に防衛は要らないんじゃないか

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    サーブのはあのアンテナ部に全部が収納されてる
    E-737は制御系は機内
    現時点でもその能力には大きな差があると思います。
    イギリス空軍はE-3D(※)の後継機として、E-7A(E-737のオーストラリア空軍仕様)を採用を決定。・・・一応、サーブとエアバスも商談に噛んでた?
    ※ 日本だとE-767 中身(アンテナ、機器)はE-3Dと同じ。

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    最後の考察が特に参考になりました。
    いつも良い記事ありがとうございます

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    E-2Dは買えないのかな?
    まあC型から中身が一新された新鋭機らしいんで
    「向こう側」へ行って久しい韓国だと無理か

      • 匿名
      • 2020年 7月 01日

      所有してるP-3C(4)/P-3CK(4)への追加でE-2Dを検討してたけど、高額なのであきらめた(2015年頃 8機ぐらいを買うとかなんとか)
      Kは電波傍受機能がついてて黄海側(砂漠のP-3Bを改修した)、P-3Cはもっと前に新規購入、どっちもアップグレードはしていない(いつもの韓国)、
      で、S-3 バイキング(砂漠の)を買おうか? って話も出てた・・・今は知りません。

       S-3の機体は全金属モノコックで、F-3C/F-3Bのエンジンの輸送に(老朽化したC-2 グレイハウンドの替わりにLMが提案 非呼応時間は9,000時間ぐらいは残ってる)って話も有ったぐらいに頑丈だけど、対潜機器は古い(カナダのオーロラは使ってはいる 機体はP-3C、機器はS-3バイキング)・・・

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    対空ミサイルの長射程化によって早期空中管制警戒機は前線に出しづらい兵器になっている。

    敵による長射程対空ミサイルの飽和攻撃対策は日本も含め重要な課題では無かろうか?

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    K国の場合は導入後に気が付けば地上配備型のAEW&Cに為っているからどんなに優れた物を買っても大して変わらん。
    技術導入にはUSBと言う大敵が存在し、例えセキュリティを上げてもモラルまでは上がらん様な気がする。

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      まさに地を這う飛行機ですね。吉田戦車真っ青

        • 匿名
        • 2020年 7月 02日

        えっ、4機もあるの、
        空港に置いてても、稼働中なのは、防空にいいかもね、、地上局いらないからな
        あと、基地に置けるから10機以上は購入可能だね (笑)

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    今考えるべきは、増数では無く、導入済み4機の稼働率向上でしょ?
    1機はアンテナ丸ごと交換が必要らしいし、
    生産中止された部品もあるらしい。
    近代化改修も必要だろうし、お金の使い方が間違っているとしか思えない。

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      一応、部品は特注すれば作ってくれるそうだよ
      納期が最大2年とか意味不明なことになるけど(白目)

        • 匿名
        • 2020年 6月 30日

        この話は、
        ①E-737AEW&C導入時に余剰パーツ買わなかったせいで稼働率が下がる
        ②生産中止になったパーツも出始めさらに稼働率が落ちる
        ③機体丸々再注文すれば生産中止になったパーツも手に入るよね
        という流れだと思ってました
        特注効くなら意味がわかりませんね

          • 匿名
          • 2020年 6月 30日

          正確?には 
          1、韓国が勝手に発注後、4か月で部品が納品されると理解してた(※)
          2、いつもの韓国で購入時に予備部品を買っていない、機体側では予備エンジンも(E0737用は発電機が大型)
          ってだけです。
          で、追加発注が見込めなくなった2006年、部品のデリバリー時期が再設定された(最長の場合27か月 ※)
          ※ E-737(wiki)の出典:35
          特注では無く、単にデリバリー(納期)が再設定されただけです

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    お買い物リストにまた追加か。
    予算が潤沢なようで羨ましいわ。
    ちょっと前に軍の予算減らすとか言ってたのも何かの間違いかな。
    ところでピースアイの部品廃盤とかで騒いでたのはどうなった?
    この際だからSAABにしなよ。何かとお世話になるんだしさあ。

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    あのボーイングのまだ生産してたんだ
    ずいぶん前に主要パーツがラストオーダーって聞いた気がしたようなしなかったような

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    日本もE-767のようなワンオフ機体より世界で広く使われてバージョンアップが継続的に行われているE-737を選択するべきだったな

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      ボーイングのE-737AEW&Cは大きなアップグレードが行われておらず故障が多いので運用維持費が高価だと韓国空軍が指摘している

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      逆じゃね
      うちのはベース機が生産中止してたから違うだけでE3まんまなんだから
      アメリカから買うときは米軍の制式採用品を選択するのが正解

      2
        • 匿名
        • 2020年 6月 29日

        707が生産終了していたから767ベースで作ったE-3セントリー同等機。

        今作るなら787ベースになるのかな?

        0
          • 匿名
          • 2020年 6月 30日

          個人的にはMD-11ベースのが見たかった…てのは置いといて
          今作ってもベースは767じゃないかな
          まだ767の製造ライン稼働してるし、787は旅客用需要だけで十分やっていけそう

          1
      • 匿名
      • 2020年 7月 01日

      レーダー部分のやつはE-3と共通で細かなアップデートされてるんですが

      • 匿名
      • 2020年 7月 04日

      日本より新型とか自慢してたら実は全然アップデートしてなかったというお話
      日本は積極的アップデート&E-2D増勢、将来は国産かもなんだよね

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    日本はグローバル・アイはどうなんだろう
    以前のコンペの時にはまだなかったよね
    E-767っていつまで使えるんだろう

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      E-3が現役の限り使える
      E-3、E-767共に搭載機器は頻繁にアップデートしてるし、E-767は現在は大規模アップデート中
      (最も頻繁にアップデートしてる兵器じゃあないかな?)

      1
    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    韓国は対北朝鮮用に以前アメリカから飛行船の形をした有線偵察気球を買ったろ
    それで充分だろw

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP