インド太平洋関連

韓国、米海軍採用の127mm艦砲「Mk.45」関連部品を1億ドル分受注

韓国の現代ウィア(現代自動車グループ)はBAEシステムズから最大1億ドル規模の艦砲部品を受注したと明らかにした。

参考:현대위아, 美 BAE에 1억달러 규모 함포 수출 따내…국내 최초

BAEシステムズ、韓国の現代ウィアから5インチ艦砲「Mk.45 Mod4」の部品を調達

現代自動車グループの現代ウィアはBAEシステムズと最大1億ドル(約106億円)規模の艦砲部品供給契約を結んだと発表、今後10年間に渡りBAEシステムズの米国子会社(ユナイテッド・ディフェンス)に5インチ艦砲部品(106種類)を納入する予定だと明らかにした。

現代ウィアは今回の受注に関して「韓国海軍向けにライセンス生産してきた5インチ艦砲や76ミリ艦砲の実力が評価された」と話しており、今後もBAEシステムズとの関係を維持して輸出を拡大させていくと語った。

今回、現代ウィアが受注した5インチ艦砲部品はBAEシステムズが米海軍向けに製造している5インチ艦砲「Mk.45 Mod4(62口径)」である可能性が高く、この艦砲は米海軍(アーレイバーク級駆逐艦:フライトIIA DDG-81以降)、海上自衛隊(あたご型護衛艦、あきづき型護衛艦、あさひ型護衛艦、まや型護衛艦、3900トン型護衛艦)、豪海軍(ホバート級駆逐艦、ハンター級フリゲート)、韓国海軍(李舜臣級駆逐艦、世宗大王級駆逐艦、 仁川級フリゲート、大邱級フリゲート)などに採用されている。

出典:海上自衛隊 護衛艦まや

海自向けのMk.45は日本製鋼所がライセンス生産したものを調達しているため現代ウィアが製造した艦砲部品の供給を受けることはないが、米海軍や豪海軍の艦砲部品の需要(新規製造+保守パーツ)だけ100億円というのは中々の金額だ。

では、なぜBAEシステムズは韓国の現代ウィアからMk.45の部品調達を行うことになったのか?

今回の契約は韓国政府とBAEシステムズが結んだオフセット契約(何の品目のオフセット契約かは明かされていない)の結果で、韓国がBAEシステムズから調達した装備品代金の一部を韓国国内に再投資する契約を実行する際に選ばれたのが現代ウィアからのMk.45部品調達という意味だ。

出典:陸上自衛隊

日本も陸上自衛隊の水陸機動団向けにBAEシステムズから水陸両用強襲車輌「AAV7A1 RAM/RS」を58輌導入(計408億円)しているが、日本の場合は契約内容が公開されていないのでオフセットが設定されているのかは不明、さらに言えば日本が武器調達でオフセットを要求(管理人が確認したもので言えば米国からRQ-4グローバルホークを調達する際にオフセットを珍しく要求したが成立しなかった)することは稀なので恐らく設定されていない可能性が高い。

因みに米国ではFMS(対外有償軍事援助)を管轄する国防安全保障協力局(DSCA)が米国製防衛装備品の価格競争力を取り戻すためFMSの改革に乗り出しており、米国製防衛装備品に一律的に課していた3.5%の手数料を2019年6月以降、3.2%に引き下げ輸送費に関してもコストを削減(具体的な数値は不明)したと表明、さらにDSCAはFMSで締結された契約の管理という名目で1.2%の手数料を課していたが、これも1.0%に引き下げることを予定している。

注目すべきはFMSを通じて米国製防衛装備品を調達する国からのオフセット要求(技術移転要求や再投資等)にも今後は「迅速に対応(関連機関との協議や調整・承認手続きの迅速化・簡略化)していく」とDSCAが表明しており、日本も国内の防衛産業維持や発展のために国産防衛装備品の輸出を促進するならオフセットを活用すべきではないだろうか?

海外市場では武器を購入する見返り(オフセット)を要求する行為は日常的に見受けられており、日本も活用すべきだと管理人は思っている。

関連記事:日本のF-35導入費用が安くなる?米国、対外有償軍事援助の改革に着手

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    確かに装備輸出進めていきたいなら一から始めるんじゃなくてまずオフセット契約から始めて海外での採用実績積んで行くのは有効かも

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    106種類の部品ってどの部分なんですかね。
    当然のことですが品質監査は実施しているのでしょうが、当初ロットは真面目に作っても、相手が安心して品質管理が甘くなると手抜きをする業者が、中国・韓国・東南アジアには多い経験があります。
    自衛隊は国内ライセンス生産なら安心ですが。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 28日

      記事が艦砲ネタだからちょっとずれるけど、
      住友によるminimi,m2,74式のデータ改ざんが発見されたから、「国内ライセンス生産だから」って無条件に信じちゃうのはだめだと思うよ
      このへんを担保するのに、クロスチェック的なしくみを設ける必要が必要だと思う。

        • 匿名
        • 2020年 8月 30日

        確かに。
        住友の銃身ってその後どうなったの?

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    国内産業の保護と雇用維持を選んだ訳ですね。
    しかしこれはアメリカ相手に貿易黒字が加速してしまうので同じ内容は日本はやらないでしょう。
    アメリカとの貿易摩擦を抱えているのは日本も韓国も同じはずなのに、日本は優等生を演じ韓国はあくまで主張のみを繰り返すと。
    性格出ますよねえ、国民性というべきか。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 28日

      別に日本は米国以外からも防衛装備品を購入してるから、対米黒字を理由に全てを否定するのは間違ってるよ。例えば記事でも触れているように英国のBAEからAAV7やイタリアのレオナルドからIFF関連機器を購入したりしてるので、この辺でオフセットを要求すればいんじゃない?

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 28日

        否定しているわけではないんですけどね。
        むしろ積極的にやっていただきたいなと思っています。

        1
    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    物々交換みたいな?>オフセット
    韓国がこれの利用を積極的にやってる理由に、外貨準備に不安があるからってのは関係しているのかな。

      • 匿名
      • 2020年 8月 28日

      オフセット契約の場合は、物々交換だけでは無く技術提供を求める場合や「購入する兵器の金額ベースで○○%は輸入国側で生産させてくれ」と言ったケースもある
      単なる物々交換なら、それはバーター取引(最近の実例だと、インドネシアがロシアから戦闘機を買う条件をして代金の一部をパーム油で支払うと言って色々あった件)

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    兵器は単に安くて質の高いもの作っても、売れるわけではないって典型例だよね
    政治的後押しや業界商慣習への理解無しに防衛装備品輸出は夢のまた夢

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    買うというお約束だったと。
    これで品質検査でアウトしなきゃいいけど。

      • 匿名
      • 2020年 8月 28日

      受入検査厳しいと思いますけど全品じゃないですからねえ・・・

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    相変わらず風呂敷は大きいですよね。パーツ受注で1億ドル、あくまで最大ってのがね…。
    実際そこまで需要が有るのかは疑問だけど、頑張って品質検査を合格できるもの納品して下さい。

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    韓国だから粗悪品だと判断する気は更々無い、オットーメララ社の76mm砲のコピー等で腕を磨いているから技術の下積みは出来ていると思う。

      • 匿名
      • 2020年 8月 28日

      粗悪品だったよな
      韓国内メディアが呆れ果てていた

      1
        • 匿名
        • 2020年 9月 01日

        不思議なことに韓国軍向けだけ粗悪品なんだよ
        輸出品では大きな品質問題起きたなんて情報ないからな

    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    >海自向けのMk.45は日本製鋼所がライセンス生産したものを調達しているため現代ウィアが製造した艦砲部品の供給を受けることはないが、
    ここ大事。

    にしても管理人さんのアンテナの高さには脱帽。
    毎日楽しみにしてます。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 28日

    そういえば日本も5インチ砲の部品アメリカへ輸出してなかったかな
    なんか部品供給先の分散に熱心みたいだ

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