インド太平洋関連

インド、露イスカンデルと同じ迎撃回避能力を備えた弾道ミサイルの試射に成功

インドの国防研究開発機構(DRDO)は22日、ロシアのイスカンデルや中国の東風12と同じ敵迎撃を回避する能力を備えた短距離弾道ミサイル「プラレイ」の初テストに成功した。

参考:Why Pralay quasi-ballistic missile, tested by DRDO today, will be a ‘game-changer’ for Army

弾道ミサイルもコース変更能力を備えたモノが次々と開発されているため従来の防空システムにかかる負担は増える一方だ

インド陸軍は命中精度が高い地上発射バージョンのブラモスを保有しているものの破壊力不足(弾頭重量が200kgと少ない)と同程度の射程を備えた短距離弾道ミサイルより調達コストが高価な点を問題視し、ブラモスよりも破壊力を高め調達コストも安価な短距離弾道ミサイル「プラレイ(弾頭重量370kg~700kg)」の開発を進めているのだが、インドの国防研究開発機構(DRDO)はプラレイの初テストに成功したと22日に発表して注目を集めている。

出典:Hemantphoto79 / CC BY-SA 3.0 地上発射バージョンのブラモス

現地メディアも初テスト成功に関心を示しており、取材に応じたDRDOの元技術者は「2つの点でプラレイはインド陸軍にとってゲームチェンジャーとなる」と話しているのが興味深い。

インド陸軍にとって射程500km程度の地上目標に対する攻撃手段は巡航ミサイルのブラモスに限定されていたのだが、プラレイが実用化されれば弾道ミサイルによる攻撃オプションが加わるため敵側の負担が増えるという点と、プラレイがロシアのイスカンデルや中国の東風12と同じ「敵の迎撃を回避する能力=目標への着弾過程で単純な弾道コースに変化を加えて弾道ミサイル迎撃を困難にさせる技術」を備えているためブラモスと同時に使用すれば敵防空シールドを貫通しやすい点が「インド陸軍にとってゲームチェンジャーとなる」という意味だ。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 短距離弾道ミサイル「イスカンデル」

まだプラレイの開発は続いているので実用化には時間がかかると思われるが、極超音速兵器だけでなく弾道ミサイルもコース変更能力を備えたモノが次々と開発されているため従来の防空システムにかかる負担は増える一方だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defence / GODL-India

防衛省、次期戦闘機向けエンジンのデモンストレーター開発とテストで英国と協力前のページ

期限を切ってきたロシア、新しい安全保障条約に関するNATOとの交渉は1月開始次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    ミャンマー軍、技術的な問題と西側諸国の制裁で導入したJF-17が飛行停止

    反ミャンマー政府系新聞のIrrawaddy紙は25日、中国とパキスタン…

  2. インド太平洋関連

    完成した機体の引き渡しはいつ? 韓国空軍の戦闘機KF-16アップグレード作業に遅れ発生か

    先月、韓国政府が戦闘機KF-16のアップグレード事業で数千億ウォンの被…

  3. インド太平洋関連

    台湾、国産潜水艦の建造は中国による妨害で予定通り進むのか不透明?

    台湾の国産潜水艦建造は本格的な船体の組み立て作業を控えているのだが部品…

  4. インド太平洋関連

    2032年頃に就役? 韓国、いずも型護衛艦を口実に軽空母導入前倒し検討

    韓国メディアは5日、韓国政府と軍はF-35Bを運用可能な韓国型空母の導…

  5. インド太平洋関連

    インド、第5世代戦闘機の試作機が2026年までにロールアウト可能

    インドの国防研究開発機構(DOD)は政府に第5世代戦闘機「AMCA=A…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 12月 23日

    >極超音速兵器だけでなく弾道ミサイルもコース変更能力を備えたモノが次々と開発されているため従来の防空システムにかかる負担は増える一方だ。

    日本も方針転換しようぜ。

    8
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      >日本も方針転換しようぜ。
      既に高速滑空弾を開発中です
      陸上や海上、水中発射の超音速巡航ミサイルは開発していないものの、空中発射のASM-3Aであれば採用されていますし

      14
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      やらいでか

      2
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      回避能力があると言っても慣性飛行する弾道ミサイルである以上急激な進路変更は出来ないし
      道中レーダーに映らないような軌道を取ったりもできない
      なので上でも言われてるように高速滑空弾や極超音速誘導弾を作ろうという話になる

      4
        • 匿名
        • 2021年 12月 23日

        相手が迎撃できないならば充分でしょ
        極超音速滑空体よりは開発ハードルも低そうだし
        持ってて損はない

          • 匿名
          • 2021年 12月 23日

          自衛隊でもATACMSを購入しようという話はあったがなんだかんだで取りやめになった
          今まで弾道ミサイルを運用してたなら「持ってて損はない」かもしれないがもっと迎撃しづらい兵器が登場している状況ではそうではない(と防衛省が判断した)だけの話だろ
          実際高速滑空弾はプロトタイプから実戦配備しようって感じのロードマップだし

          2
            • 匿名
            • 2021年 12月 24日

            別に保有を否定する根拠にはならない

    • 匿名
    • 2021年 12月 23日

    様々な兵器がコモディティ化しているな。
    今世紀後半は、戦争の世紀か?

    3
    • 匿名
    • 2021年 12月 23日

    うちの会社も唐突なコース変更で現場を混乱させるんだけど。
    そうか、世界のトレンドだったのか!

    10
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      ミサイルは会社と違って軌道変更しても最終的な到達点は変わらないのでそこは・・・(無慈悲

      21
    • 匿名
    • 2021年 12月 23日

    こういうの防衛しようと思ったらレーザーくらいしかないのかな?
    対空ミサイル増やすのはコスト的に厳しいだろうし。

    1
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      それこそ迎撃ミサイルの技術的検討は50年代から始まってるが、肝になるのは正確な探知が可能か、精度の高い誘導が可能か、それらに要する時間の短縮と言われている
      光の速さのレーザー砲はベストのようで、まだ有効射程が足りないから決め手にはならない

      3
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      この類のミサイルにレーザーがそこまで効果あるのかなという疑問

      多分早期探知して最終コースに入る前に撃墜するのが一つの回答なんじゃないかな
      つまるところ米軍が計画してる例の衛星計画とそれに連動するデータリンクによるエンゲージオンリモートでの迎撃がそれに相当するとは思うけど

      3
      • 匿名
      • 2021年 12月 23日

      PAC-3とかが対応するような終末迎撃は特に問題ないのよ。結局こっちに突っ込んでくるだけだから。
      それ以前の迎撃コースが困難になるって話。

      4
    • 匿名
    • 2021年 12月 23日

    盾側に技術のブレイクスルーが起きないと辛いな

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP