インド太平洋関連

タイの戦闘機導入を巡るスウェーデンと米国の戦い、空軍はGripen取得を推奨

タイはF-16Block15 ADFの後継機を選定している最中で、スティン国防相と空軍は議会に選定結果を報告して「Gripen E/Fの取得」を推奨したものの「スティン国防相はオースティン国防長官の招きで訪米する予定だ」とも報じられており、まだ最終結論には至っていない。

参考:Air force chooses Swedish jets over US F-16s

スティン国防相とオースティン国防長官の会談が重要な意味をもってくるのかもしれない

タイ空軍は第102戦闘飛行隊が運用中のF-16Block15 ADFを退役させる予定で、後継機候補としてGripen E/FとF-16 Block70が噂されているものの、タイ政府はインド、マレーシア、サウジアラビアといった国々が採用したのと同じオフセットポリシー(法律による相殺契約の義務化)を政府調達に導入したため、防衛装備品を供給する国は二国間貿易の中で契約額と同等の経済的見返りを提供しなければならない。

出典:Palácio do Planalto / CC BY 2.0

SAABは2024年3月「Gripen提供を正式に提案する」「これはタイ政府のオフセットポリシーを十分満たす内容だ」と発表、Bangkok Post紙も「韓国航空宇宙産業(KAI)が訪韓中だったスティン国防相にFA-50を提案した」「KAIのカン・グヨン社長はFA-50についてF-16に匹敵するマルチロール機でありながら取得コストはF-16の半分だと述べた」「FA-50の飛行コストは1時間あたり5,000ドルに過ぎない」と報じていたが、後継機選定は最終結論に近づいているらしい。

Bangkok Post紙は10日「タイ政府はスウェーデンからGripen E/Fを、米国からF-16 Block70を購入するよう働きかけられている」「スティン国防相と空軍は来年度予算の審議過程で後継機選定プロセスの経過を報告した」「その中で両機の長所と短所、SAABとLockheed Martinから提案されているサポート内容を説明した」「この結果を首相に報告して決断を求める予定だ」「空軍はF-16 Block70ではなくGripen E/Fの取得を推奨している」と報じており、まだ最終決定が下された訳では無いもののFA-50は後継機候補に含まれておらず、空軍はF-16 Block70ではなくGripen E/Fを希望している。

出典:Air Force photo by Christian Turner テストを受けるスロバキア空軍向けのF-16 Block70

スティン国防相はF-16 Block70導入の懸念点について「米大使から導入に関する融資内容の説明を受けたが金利の高さが気になる」と述べているものの、スティン国防相はオースティン国防長官の招きで訪米する予定だとも報じられており、米国も引き続きタイの安全保障に一定の影響力をもつことを望んでいるはずだ。

そのため空軍の判断が必ずしも尊重されるという訳ではなく、セター首相が中国に偏らない立場を戦闘機導入で示すならF-16 Block70を選択する可能性があり、スティン国防相とオースティン国防長官の会談が重要な意味をもってくるのかもしれない。

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

因みにSAABでCEOを務めるヨハンソン氏も「Gripenは期待された輸出量に達しておらず、本当に悔しい気持ちで一杯だ。もし安全保障や政治といった要素が除外され公平な競争であれば、Gripenの海外輸出はもっと上手くいっていただろう。多くの国において米国の影響力はとてつもなく大きく、海外市場で米国を負かすのは簡単ではない。これが政治力だ」と述べ、Gripenが売れないのは「競争が政治力の影響を受けるからだ」という認識を示したことがある。

関連記事:タイ空軍のF-16後継機、韓国航空宇宙産業がFA-50Block20を提案
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB

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コメント

    • どねつくぼうし
    • 2024年 7月 13日

    タイ空軍は以前に運用中のグリペンとF-16の比較だとグリペンはアンダーパワーで運動性に劣ると評価していた筈ですがそれでも推挙する理由はどの辺にあるのでしょうね?
    ランニングコストの低さ故なのかそれともアビオに優越性でもあるのか…

    9
      • バーナーキング
      • 2024年 7月 13日

      仰る通りランニングコスト、特に整備における人的コストとか自己完結性とかですかねぇ。

      12
      •  さ
      • 2024年 7月 13日

      順番待ち問題の可能性も

      2
    • nachteule
    • 2024年 7月 13日

     流石に量産開始したばかりで最新の4世代機の中ではまだ安いかもと言われているKFー21の提案はしなかったか。

     冗談は置いておいて提案されたのシングルエンジン機ばかりだけどやはりコスト的な物なんだろうか。

    1
    • きりる
    • 2024年 7月 13日

    韓国兵器並の経済的合理性とオフセットを提案してから政治の横槍とか言わないと
    今のトレンドは長槍なんで単発機だろうとペイロードが無いと厳しい、F404系じゃ将来性がなさすぎる

    妄想なら日米で共同開発して
    F-2A/BとF-16E/FのハイブリッドにF9搭載してFBLで軽量化と電磁波対策した余裕のあるエアフレーム
    そんで米帝さんに自制してもらって凝すぎないこと

    1
      • 名無し
      • 2024年 7月 13日

      政治力があれば、KC-46だって随契でお買い上げしてもらえるんやで。

      4
      • 戦略眼
      • 2024年 7月 13日

      F-16Block15 ADFの機体寿命が残っていないのかな?
      残っているなら、Block70に改修すればいいのに。

      2
    • pil
    • 2024年 7月 13日

    東南アジア情勢に疎いのですが。そういえばタイの仮想敵って何なんでしょうか?
    タイには巨大な中国人コミュニティもあり、中国とも良好な関係のイメージがあります。
    中国を刺激しないためにラファールとかのヨーロッパ系から選ぶのならわかるのですが、
    正直アメリカのF-16が候補にあることが意外でした。

    1
      • PKF
      • 2024年 7月 13日

      ベトナム戦争でオーストラリアと並んで最後まで派兵したベトナムに、国境線のタイ人イスラム教徒が絡む治安最悪な隣国でイスラム教国マレーシアかな。
      ミャンマーとカンボジアは上手く外交しているし

      3
      •  さ
      • 2024年 7月 13日

      タイ人は周りを強力な国に囲まれながらも苦労して独立した歴史をつないできた辛く苦い経験がある
      中国がどれだけ強大で、かつ大変に気まぐれな国であることも深く理解してる

      国際社会から、今のご時世で中国と良好な関係にある(=中国寄り過ぎる)とみなされているのなら
      アメリカなどから購入して外交的なバランスを取ろうとするのはむしろ必然では?

      6
    • 匿名希望係
    • 2024年 7月 13日

    性能で普通に負けるやろ>グリペン
    こう言っては何だがミニマム・タイフーンなんだし。

    2
      • バーナーキング
      • 2024年 7月 13日

      「ミニ」というのはそれはそれで「性能」なんですよ。

      15
    • POW
    • 2024年 7月 13日

    空軍がグリペン押しなのは現在運用しているグリペンC/Dの評価が高いからかもしれませんね。

    5
      • 事実
      • 2024年 7月 13日

      これ
      安い、小さい、軽い、整備が容易、ランニングコスト低い、電子機器の拡張性が高い(素は最低限に近い?)、、、

      D/FではミニF16を目指してしまった?

      5
      • 匿名希望係
      • 2024年 7月 13日

      後制限が比較的緩いんでしょうね

      3
    • メンボー
    • 2024年 7月 14日

    グリペンファンとしてはここはグリペンが採用されてほしいなぁ
    どこもかしこもF-16というのは…

    4
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