インド太平洋関連

台湾もGLSDB購入を打診、ウクライナ向けを優先するため早くても3年後

台湾は2022年末にHIMARSで運用可能なGLSDB(地上発射型小口径爆弾)の購入を打診、これに米国側も反対しなかったものの「ウクライナ向けの生産を優先する」と説明され、いつ入手できるか分からないと現地メディアが報じている。

参考:射程150公里陸射小直徑炸彈 美方同意售台但優先提供烏克蘭

ウクライナ侵攻の影響でM109A6の調達を断念し、GLSDBの購入もウクライナ向けの後だと言われた台湾

台湾は2019年にM109A6の購入を米国に要請、2021年に売却の承認が得られたためM109A6×40輌、支援車輌、砲弾(155mm砲弾にGPS誘導能力を後付するM1156キット×1,700を含む)、関連機器などを7.5億ドルで発注したが、米国はウクライナ侵攻が勃発すると「生産上の理由で引き渡し開始を2023年から2026年に変更する」と台湾側に通知した。

出典:public domain M109A6

これを受けて台湾側は「2026年引き渡しを受け入れて契約を維持するか」「契約を破棄して代替装備の調達を行うか」を検討、最終的にM109A6の契約をキャンセルしてHIMARSの追加調達(11輌→29輌)を決定、中国が台湾海峡を渡るための最短ルート=福建省の沿岸地域に上陸部隊を集結させるのを防ぐためATACMS(2020年に売却を承認済み)導入に加え、ボーイングが開発した最大射程150kmのGLSDB(地上発射型小口径爆弾)導入を検討、2022年末に購入を打診したらしい。

これに米国側も反対しなかったらしいのだが「ウクライナ向けの生産を優先する」と説明され、いつ入手できるか分からないと現地メディアが報じている。

出典:SAAB GLSDB

2022年11月頃にボーイングは「サーブと共同開発したGLSDBがウクライナ支援の新たな選択になる」と言及、米国はGLSDBを含むウクライナ支援を2月3日に発表しているのだが、2022年末の時点で「ウクライナ向けの生産を優先する」と説明しているためGLSDBのウクライナ提供は発表より随分前に決まっていたという意味で非常に興味深いが、ウクライナ侵攻の影響でM109A6の調達を断念し、GLSDBの購入もウクライナ向けの後だと言われた台湾にとって面白くないだろう。

正式に提供が決まったGLSDBは低率初期生産を立ち上げる最中で、Bloombergは業界関係者の話を引用して「最初の納品は契約締結から約9月後になる」と報じているため「GLSDBがウクライナに到着するのは最短でも10月頃」になるのだが、米国側は台湾側に「GLSDBを入手できるのは早くて3年後になる」と説明しており、台湾陸軍は正確な納品スケジュールが通知されるまで予算要求を待たなければならないと現地メディアは指摘している。

M109A6を製造するBAEは当時「予定通り台湾にパラディンを提供できる製造能力がある」と表明していたが、各国がウクライナに提供したM109の数は74輌以上で、これの運用・維持に大量のスペアパーツや予備砲身が必要になっているため米国の判断は正しかったのかもしれない。

因みに台湾国防部は発注済みのスティンガー×250発(2026年までに引き渡し完了)についても「需要が急増しているため引き渡しが遅れる可能性が高い」と発表している。

関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB

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コメント

    •  
    • 2023年 3月 21日

    どうでもいいウクライナに入れ込んで本命の台湾を見捨てるなどアメリカの戦略ミスと言わざるを得ない。
    アメリカが東アジアの安定に寄与しないとなれば東アジアにアメリカの仲間は日本以外いなくなるだろう。

    7
      • おわふ
      • 2023年 3月 21日

      ウクライナ単体ではなく欧州危機と考えると、重要性が変わると思います。
      アジアの日本としては台湾に入れ込みたくなりますけどね。

      42
      • FXA-05D
      • 2023年 3月 21日

      ウクライナは「今そこにある危機」ですので「どうでもいい」は言い過ぎでしょう。
      何よりこれを見逃すことは「力による現状変更を黙認する」というメッセージを送ることになり、あなたのいう「本命の台湾」への武力行使のハードルを取り払うことにつながります。
      よってアメリカがウクライナを支援することは必ずしも戦略ミスとは言えないでしょう。

      54
        • gepard
        • 2023年 3月 21日

        ロシアが仕掛ける消耗戦で西側の戦力の備蓄が枯渇すれば台湾に介入することは難しくなる
        そして兵器・弾薬の生産能力は中国ロシア側が有利であるため、生産競争になれば西側は敗北する可能性が高い

        更に力による現状変更はコソボ介入やイラク戦争で西側陣営がすでに行っているため、結局どの陣営が力による現状変更を行うかに過ぎない。中国が台湾にいつ侵攻するかは不明だが、九段線の主張を見ればわかるように中国は西側が作った国際法など守るつもりはなく、力によって抑止されているとみるのが妥当だ
        ウクライナを見捨てれば台湾も危うくなるというのは詭弁だ

        17
      •  
      • 2023年 3月 21日

      ロン・デサンティス?

      5
    • あらら
    • 2023年 3月 21日

    輸入は、何かあると確保の保証がない。国産も輸入パーツをライセンス生産できない分はおなじだが、まだましなので最先端と大量に必要なものは国内開発は維持すべき

    13
    • 58式素人
    • 2023年 3月 21日

    パラディンと同じ39口径長の155mm砲でよければ。
    日本のFH70を譲ってあげたいですね。
    法的に問題なのだろうけど、今進行中の防衛法案の進行状況はどうなのでしょう。
    法案のついでに、売却/供与可能な相手先として”国家”だけでなく、”日本の認める地域”
    も対象に入るように改定してはどうでしょうか。
    日本にも今現在、台湾関係の法律があるのでしょうから。
    無理かな?。

    3
      • 匿名希望係
      • 2023年 3月 21日

      正直手に入らないのは別に良いとして
      サブプラン提示できないのがな
      日韓の防衛産業に類似品をアメリカ軍が買い取ってFMS提供とかぐらいできないの?とは

      2
        • 774rr
        • 2023年 3月 21日

        台湾が欲しいのは砲戦能力だけじゃなくって
        アメリカ様による軍事力に裏打ちされた安全保障だよ
        せやからK9とか99式じゃ話にならない

        勿論、日本や韓国が台湾に自走砲売るよ!って言ったら喜びはするだろうけど。。。
        本当に欲しいのはアメリカ様との繋がりやからね

        22
          • 匿名希望係
          • 2023年 3月 21日

          米経由のFMSでぎりぎり米とのつながりは確保してるじゃんよ。
          必要な軍事力を提供できないのにも問題はあるからね。

          1
    • おわふ
    • 2023年 3月 21日

    日本もミサイル開発を急ぎたいところ。
    トマホークもいつになるか分からない。

    砲弾の輸出は企業にやる気がないので、国内分だけでも備蓄を増やして欲しい。

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