台湾の国防安全研究院は昨年、中国軍が使用する小型ドローンの脅威を警告してRWSを統合したアンチドローンシステムの開発を提案していたが、国防部は「1.4億ドルの費用を投じてアンチドローンシステムを配備する」と19日に発表した。
参考:Taiwan military to post anti-drone defense systems at 45 locations
小型ドローン対策に本腰を入れてきた台湾、防衛拠点45ヶ所を保護するためアンチドローンシステムの大規模導入を決定
一口にドローン(無人機)と言っても種類やサイズによって対処方法が異なるのだが、台湾の国防安全研究院が問題視しているのは米陸軍が定めた基準で「Group1」に該当する小型ドローンのことを指しており、主に近距離での電子光学センサーによる戦場監視、レーザーによる精密誘導兵器の誘導、電子妨害による敵通信の阻害、味方の通信中継、徘徊型弾薬と呼ばれる自爆攻撃などに使用されタイプで、Group1には手軽に購入可能な商用ドローンも数多く含まれる。
重量 | 作動高度 | 作動速度 | 代表機種 | |
Group1 | 9kg以下 | 360m以下 | 185km/h以下 | RQ-11 |
Group2 | 22kg以下 | 1,000m以下 | 460km/h以下 | ScanEagle |
Group3 | 600kg以下 | 5,480m以下 | 460km/h以下 | RQ-7 |
Group4 | 600kg以上 | 5,480m以下 | ー | RQ-5 |
Group5 | 600kg以上 | 5,480m以上 | ー | MQ-9 |
このタイプの飛行能力は非常に平凡だが、機体が小さく低高度をゆっくりと飛行するため「戦闘機や弾道ミサイルなどの対処に最適化された防空システム=パトリオット」では検出することは難しく、仮に検出できても自然界に存在する飛行物体なのか小型ドローンなのかを識別できないため対処するのが困難だと言われており、各国は小型ドローンを識別可能なアルゴリズムの開発、専用レーダーと電子光学センサーを組み合わせた検出技術、精密射撃が可能なRWS(リモートウェポンステーション)を組み合わせたアンチドローンシステムの開発を進めている最中だ。
フランス軍はカナダ企業が開発したドローン検出システムとコングスベルグ製のRWS「M151」をVAB装輪式装甲車に搭載した野戦防空車輌をテスト中で、ドイツ軍はNATO高高度即応統合任務部隊にドローン検出レーダー「Spexer2000/3D」を統合したRWS搭載のボクサー装輪装甲車を派遣、効果が証明されれば本格的な量産配備を行う予定だ。
ロシア軍は全地形対応軍用車両GAZ-2330にRWS「Arbalet-DM」を搭載した特殊車輌「TIGR-M」を製造、ドローン検出レーダーは周囲2.5km、RWSに搭載されたIRセンサーも周囲1.5kmの小型ドローンを検出することが可能で、2020年に実施されたテストでは10機以上のドローンを無力化することに成功したと発表しているが本格的な量産配備には至っていないらしい。
据え置きタイプのアンチドローンシステムで有名なのはイスラエルの「ドローンドーム/Drone Dome」で、同システムのAESAレーダー「RPS-42」はRCS値0.002㎡の小型ドローンを3.5km離れた距離から検出可能、韓国が開発に成功した国産アンチドローンシステムはDJI製ドローン(Phantom4 Pro/約30cmの大きさでRCS値は0.01㎡未満)を8km先で検出することに成功、小型ドローンを検出する能力としては世界最高水準だと言われている。
少々説明が長くなったが小型ドローンの脅威に対処するには2つのアプローチ(ハードキルとソフトキル)があり、電子妨害によるソフトキルは対策(技術的な側面と運用上の工夫)のシーソーゲームなのでハードキルとの併用が望ましく、目標を直接破壊するには「機体が小さく低高度をゆっくりと飛行する小型ドローンの検出技術」と統合されたアンチドローンシステムが不可欠で、台湾国防部は防衛拠点45ヶ所(軍事基地、港湾施設、空港、離島、ミサイル基地など)を保護するためアンチドローンシステムの大規模導入を決定したという意味だ。
因みにアンチドローンシステムの構築(どんなシステムかは不明)は国家中山科学研究院が担当、必要な資金供給は2026年までに終える予定だがシステムが配備を終える時期については不明。
追記:ウクライナにおける小型ドローンへの脅威に両軍とも「肉眼監視とMANPADSの組み合わせ」か「電子妨害機器」で対処しており、米中央軍のマッケンジー米海兵隊大将も「大型UAVの脅威に対処できるシステムはあっても、電気モーターで静かに作動する小型ドローンに対応した検出システムも無力化する方法も持っておらず、全兵士がカウンタードローンに関するスキルを身につける必要がある」と述べ、2024年までにカウンタードローンのスキルを身につけさせるため訓練アカデミー「Joint Counter UAS Center of Excellence」を創設する予定だ。
まぁ小型ドローンへの対処方法に関する正解(レーザー兵器やHPM兵器が有力視されているものの実用化や普及までには相当時間がかかる)はまだ見つかっておらず、イスラエルのスマートシューター社が開発したコンピュータ制御の照準機能付きスコープ「SMASH(スマッシュ)」に関心を示す国も増えており、現段階では人海戦術での対処が手っ取り早いのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Kongsberg Defence & Aerospace AS
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台湾、なんのかんの言うて国産武器を作れるのが強い
将来的にはイスラエルみたいな立場を手に出来る?
韓国並みに頑張れるかでは。今の総統は西側諸国への兵器輸出には前向きらしいが。
値段や信頼性とかイマイチ見えてこないから何とも言えないな。
こういう分野でどんどん先に行けてフットワークの軽い台湾と、もし共同開発とか出来たら…。
私達日本にとっても、学ぶ所が大きいのではないでかしら?
兵器は矛と盾の関係ですからね。
両方手にした者が勝つ。
日本もこういうのを本気で考えて欲しい。特に迎撃のコストを考えて。
ウクライナではロシアの小型ドローンをスティンガーなどで攻撃してるけど、割に合わない。
ウクライナは各国から無制限?に援助されているからできるけど、我が国の有事にそうなるとは限らないから。
必ず相手の兵器より安い装備で迎撃できるのが理想。戦争のコストは後世に残る負の遺産だからね。
(もちろん、負けたらもっと大変だけど。)
因みに、日露戦争(1904年)の戦費調達の国債償還は、最後のお支払いは1988年だったらしいからね。
>因みに、日露戦争(1904年)の戦費調達の国債償還は、最後のお支払いは1988年だったらしいからね。
日露戦争での日本の負債は総額約16億円。
ポンド建てとかドル建てだけど、金額固定なので、インフレのおかげで後の方の返済は経済的負担が微々たるものに。
インフレについては、
刑事コロンボとかでも数十ドル﹙数千円レベル﹚とかで高額商品扱いしてて、ちょっと違和感。
「高出力マイクロ波照射技術の研究」は4年度予算が86億円なので台湾の1.4億ドルが総額なら累計ではもっとつぎ込んでるはずですね
HELはまた別枠です
この辺り、日本もまだまだ研究段階っぽいですね
リンク
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陸自もこういう装備の配備進めんとね…
ドローン検知に人海戦術かあ、中国以外が使う言葉とは思わんかったが
兵士としては少し発見が遅れたら自分がやられるという恐怖の瀬戸際だね
徘徊型弾薬は近づいてくるから機関銃で対応できるかもしれないが、支援型が少し離れた所から監視してくるのは機関銃も当たらんし厄介
ドローン狩り用のドローンが絶対に出てくると思う
>ドローン狩り用のドローンが絶対に出てくると思う
その実証実験の事なら、このサイトの2021.07.27の記事にあるよ。
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レイセオンが自社製徘徊型UAV「コヨーテ・ブロック3」を元に、「non-kinetic effector/非運動エフェクター」と呼ばれる装置を搭載し、実証用UAVを作成。
その実証用UAV1機で、﹙サイズ・機能・機動性・滞空性などの異なる﹚10機のドローンで構成された群れと空戦し、10機全てを撃破(無力化)。
空戦後に回収・再使用できる所まで米陸軍にデモンストレーションしたとの事です。
陸自の10kwと100kwの対ドローンレーザーが2023年には開発完了するみたいだが、出てくる情報の量が少なすぎる。車両に取り付けての試験は始まってるらしいが…
この辺の情報公開はもっと説教的に取り組んでほしいね
正直外国も契約情報とか逐一プレスリリースしてる訳じゃなくて
メディアや企業側が食いつくかどうかだけの気がするが…
色んな国の情報が取り上げられるから量が多くは見えるがそもそも定量的に情報公開の程度が比較されてるのか?
防衛省はあくまでも軍事のプロであって、報道のプロではない。
仮に防衛省が躍起になって情報を公開しまくっても、日本のマスコミが無反応では空回りするだけ。
問題にすべきは日本のマスコミのやる気(積極姿勢)と質(正確さ)だと思う。
海外に比べて日本のマスコミのこういうところはがっかりさせられることがある。
単にスポンサーが望んでないだけかもしれないが。
本能的に防衛=悪のスタンスを持つメディアもあるけど、防衛省が積極的に情報発信をしないと報道も出来ないのでは?
防衛省HPに報道発表資料があるけど、びっくりする位少ないし研究開発に関しては乏しい。
財務省を非難する向きもあるけど、防衛省自体が必要性を訴えて世論形成する努力は必要と思いますよ。
防衛省の情報が少ない
→「このあたり詳しくうかがいたいのですが…」
→独占取材のチャンス
だと思うのですが…
防衛省が突っぱねてるならまだしも、マスコミにやる気が見えるとは言えないかと。
マスコミ側としては防衛情報を積極的に報道すると、軍国主義の再来と罵られる可能性があるからやらないとかなのかな?
独占取材でぺらぺら喋る様な職員がいた方が問題だと思います。
メディアが日本の行く末を憂うことを期待するよりも、日本の防衛を担う防衛省が目的を果すために情報戦略を展開することが重要だと言っているのですが、おかしなことを言っていますか?
防衛省が情報発信を改善しても、それを受信するのは元々軍事に感心の高い層で、一般には響かないかも。
最近だとワイドショーでもウクライナのネタが一定割合あるから、今だと感心を示す層拡大のチャンスかも知れないけど。
独占取材でぺらぺら喋る様な職員がいた方が問題:広報担当等を通じて発信する情報を厳選するものかと思ってましたが、今って酒の席などでやりとりしてる?
メディアが日本の行く末を憂うことを期待するよりも、日本の防衛を担う防衛省が目的を果すために情報戦略を展開することが重要:むしろマスコミと防衛省の二人三脚で展開していくべきかと思います…が、
採算が取れないと判断されれば協力は結べないから、マスコミは始めからいないものと考えて、防衛省単独で…という事でしょうか?
それなら話はわかりますが。
はぁ。逐語的な揚げ足取りですか。
では真似をして。
マスコミと二人三脚とはどういう意味でしょうか?
大本の防衛省が情報提供·開示に積極的と見えないのが問題と言っている。
防衛省が発信しているのにメディアが無視しているのならメディアを責めるべきでしょうが、発信もしないのに突っ込んで報道しないメディアが問題と言われているのが無理筋と言っているのてすよ。
>防衛省が発信しているのにメディアが無視しているのならメディアを責めるべきでしょうが
この枝の元ネタが開発関係の情報云々だけど、その手の情報を趣味誌以外が報じているのは稀な印象。
X-2の事を報道特集した事とかあるから、皆無とは言わないけど。
防衛装備庁技術シンポジウムとか、参加が難しいから、メディアに詳細を報じて欲しいけど、趣味誌でも取り上げてくれるのはどのくらいか。
兵器の開発関係だと、メディアを責めるべき余地はありそうですね。
これは、国民の意識の違いだね。
欧米では、納税したお金の使われ方に納税者は大いに関心があるので、統治者は義務感を持ち発表するし報道機関も納税者に伝える使命感から盛んに報道する。
一方、日本の納税者は、「お上のやることに口出ししない」という国民性からか、あまり興味を示さないので報道機関も伝える使命感に欠けるし、統治者も公表する義務感がない。
結局、日本の納税者たちが声を出し行動しない限りは、情報提供者側は動かないわけで、マスコミのせいにするのは責任を転嫁しているだけだと思う。
あと、実用化までこぎ着けて欲しい。
ドローン関連は、実験止まりが多い印象なもので。
遠距離の低RCSドローンを見つけるには偵察ドローンで対抗するしかないような気がしますね。
ドローン搭載用のEO/IRやレーダーの小型化軽量化省電力化とバッテリーの開発競争が激しくなりそうですね。
日本もそのあたりの国内向けの支援をして欲しいですね。
探知距離自体は、地上だろうが空中だろうが、見通し線内では変わらないだろうから、
探知エリアの小ささをセンサー側が移動する事でカバー、といった感じでしょうか?
そうですね。
ドローンに搭載できるアンテナの利得や電力の小ささを距離自体を縮める事で探知確率を上げられないかな?と。
ただ、据え置きや車載とは文字通り出力の桁が違いますし、電力制限があるのでGroup1でドローンを見つけようとすると光学系による画像認識がメインになりそうな気がします。
RWS自体は兵士の保護に重要なので、PKO用だけでも準備してほしいところ。
UAVの脅威を一覧表にしたものは初めて見ました。
低高度を低速で飛ぶUAVは、分隊単位の部隊で対処しないと、
と思っていたのですが、RWSを使うのは良い方法ですね。
但し、機銃弾で片付かない場合、安価に行こうと思うとVT信管が欲しいですね。
以下は妄想です。
VT信管の最小は40mmですので、40mm擲弾銃と組合せ出来ないかと思います。
RWSに機銃と擲弾銃を連装して(これは既にある)、銃塔の動きを高速化し、
距離計と弾道計算機を一体化させた照準器(小銃用は既にある)を付属させる。
UAVはやたらに来るものと思われるので、ミサイルよりは安く付くと思います。
>VT信管の最小は40mm
それは真空管起因の最小サイズかと。
今だと30mmでも近接信管があるみたい。
> 今だと30mmでも近接信管があるみたい。
A-10の使い道、見つかったな
ウクライナ軍投稿の動画なんかを見ていると、やはり対UAV戦のネックは検出能力なのかなという気がします。14年の東部紛争の頃から「ドローンに全く気づいていない親露派武装勢力/ロシア兵をを一方的に奇襲爆撃する」動画が頻繁に投稿されていましたが、あれは現場の兵士からしたら恐怖でしょう。まぁ最前線ですから砲弾が突然降ってくるのも仕方ないことではあるのでしょうが…
日本はUAV戦における攻撃能力の構築では世界の後塵を拝していますが、センシング技術では未だ世界に並び立つ地力を持っている国と思います。この分野の研究開発にも投資できるように開発費拡充が実施できるといいですね。
HPMの試験映像は公開されてたしニュースでも報道されてたけどね…
すごいかっこいいけれど、この小さなレーダーでRCSの小さなドローンをどれくらいの距離で発見できるのかな。
狭い領域を守る用途のようなので、バイラクタルTB2みたいに数キロ先からミサイルを撃ってくるタイプのドローンには対応できなくて、動画にあるマルチコプターのような真上まで来るドローンに対処するものなのでしょう。これはこれで有用そうだけれど費用対効果が問題ですね。
そろそろ対ドローン用対空ドローンとか出てこないかなぁ。
飛行機も偵察機から爆撃機、戦闘機へと進化したし。
group1なら拳銃レベルの小型火器で充分そうだ。
昨年、レイセオンが米軍相手にデモンストレーションの実証実験をしたようです。
『ドローン対策に悩む米陸軍の救世主? レイセオンが1機のUAVで10機のドローン無力化に成功』
リンク
>レイセオンは「non-kinetic effector/非運動エフェクター」と呼ばれる装置を搭載した1機のUAVで10機のドローンを無力化することに成功した。
>レイセオンは自社の徘徊型UAV「コヨーテ・ブロック3」のプラットフォームに何らかの装置を搭載して種類(サイズ、機能、機動性、滞空性など)の異なる10機のドローンで構成されたスウォーム(群れ)と空中で交戦、
>10機全てを撃破(無力化)したコヨーテは回収され再使用できることを米陸軍のデモンストレーションで実証してみせた
とのことです。