ノースロップ・グラマンのAN/ALQ-257(IVEWS)とL3ハリスのAN/ALQ-254(VIPER SHIELD)はAN/APG-83搭載のF-16向け電子戦システムで競合しており、トルコはIVEWSを選択したが、台湾の国営メディアは「国防部がVIPER SHIELDの調達に13.3億ドルを割り当てた」と報じた。
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台湾の改修機が新しい電子機システムをどの様に搭載するかは蓋を開けてみるまで分からない
第5世代戦闘機の開発で出遅れた欧州では第4世代機の生存性を向上させるため、未知の信号に対しても機上で瞬時に解析を行い無線周波数を特定し、再プログラムが可能なデジタル無線周波数メモリ(DRFM)やデジタル周波数技術ジェネレーターを駆使して広範囲に自機の位置や速度を偽装した誤信号をばら撒く電子戦システムを開発、これにミサイル接近警報システム、レーダー警報受信機、フレア・チャフディスペンサー、ダミーデコイを統合したものをデジタルステルスと呼ぶ場合もある。
米空軍も第5世代機への更新が思うように進んでおらず、F-15Eの電子戦システムをAIと機械学習を応用したコグニティブタイプの統合型電子妨害システム=Eagle Passive/Active Warning Survivability System (EPAWSS)に更新中で、AN/APG-83に換装したF-16C/Dにもノースロップ・グラマンが開発したAN/ALQ-257(IVEWS)を統合する予定だ。
ノースロップ・グラマンはIVEWSの特徴について「AN/APG-83の機能を損なうことなく同時使用が可能」「IVEWSは最先端の脅威を検知し、識別し、対抗することが可能」「これを装備したF-16単独でエミッターの正確な位置を特定することが出来る」「特に飛行ルート上で作動する対空レーダーや迎撃ミサイルの対処に役立つ」「IVEWSはF-16に第5世代機と同等の電子戦能力を提供でき、競合し混雑する電磁スペクトル環境での生存性を大幅に向上させる」と説明したが、IVEWSの能力がEPAWSSに匹敵するものかどうかについては明言を避けた。
AN/APG-83を搭載したF-16向けの電子戦システムにはL3ハリスが開発したAN/ALQ-254(VIPER SHIELD)も存在し、昨年11月のドバイ航空ショーで「VIPER SHIELDが2025年第四半期の量産開始に向けて12月に開発マイルストーンをクリアする見込みだ。Block70/72を発注した5ヶ国はVIPER SHIELDを受け取ることになる」と述べたことがあり、Block70/72を発注した5ヶ国とは台湾、スロバキア、モロッコ、ブルガリア、バーレーンのこと、つまり新造機向けの電子戦システム供給は「L3ハリス=VIPER SHIELDの独占状態」という意味になる。
但し、トルコは発注を予定している「Block70の新造機×40機」と「Block70へのアップグレードキット×79機分」にIVEWSを選択したと報じられており、ポーランド空軍が予定しているBlock50+/52+のアップグレードにはノースロップ・グラマンとL3ハリスが自社の電子戦システムを売り込み中で、台湾の国営メディア=中央通訊社は9日「国防部の予算計画によるとVIPER SHIELDの調達に13.3億ドルを割り当てている」「台湾空軍はF-16VにVIPER SHIELDを搭載することを望んでいる」と報じているのが興味深い。
このVIPER SHIELD調達が「新造機向けなのか」「改修機向けなのか」は不明だが、台湾メディアは過去「旧型機からBlock70/72にアップグレードした機体では内蔵タイプのIVEWSやVIPER SHIELDを利用できない」「IVEWSやVIPER SHIELDのポッド式が登場するまで旧式のALQ-184を使用し続けなければならない」と報じたことがあるものの、ノースロップ・グラマンは「IVEWSを内蔵するのに機体側のモールドライン変更は必要ない」と述べており、改修機向けにIVEWSを発注すれば良いだけのように思える。
ただ台湾の改修機はBlock20がベースなので、トルコ(Block50+)やギリシャ(50/52+)の改修機とは条件が異なる可能性もあるため、台湾の改修機が新しい電子機システムをどの様に搭載するかは蓋を開けてみるまで分からない。
因みに台湾は昨年9月に国産潜水艦「海鯤號(Hai Kun)」を進水させ、2024年4月に海上試験を開始、2024年末までに海軍への引き渡しを予定していたものの湾内試験で70項目以上が合格せず、現地メディア=上報は6日「国産潜水艦の海上試験が延期された」「湾内試験の完了は最も楽観的な予測でも2025年3月末になる見込み」「1番艦の完成は4年遅れの2029年頃になる」と報じている。
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※アイキャッチ画像の出典:L3 Harris
ウクライナ戦争を教訓にすれば、最も必要なのは戦闘機や潜水艦ではなく、大量の地対空ミサイルと地対艦ミサイルだと思うんだが、潜水艦の国産よりミサイル類の国産を急いだほうがいいのではなうだろうか。いざという時に売ってくれるとは限らないし、ミサイルの国産化は急務のように思える。
台湾って自前で防空ミサイルも地対艦ミサイルも開発して配備してるんで適当な事言わないほうが良いですよ
潜水艦は極めて重要かと
存在する、と言うだけで敵海軍の展開自由度が相当変わるんじゃないですかね
潜水艦だって素直に外国が売ってくれれば、国産に拘る意味はないですけど、台湾の場合は、売ってくれないことが問題ですからねえ。
F16が、ベストセラー機として残っているのは、嬉しい気持ちになります。
インフレ・装備向上により、初期から価格は高くなっていますが、実戦経験・整備ノウハウなどが蓄積された名機ですね。
今後も、活躍に注目しています。
F-16は電子戦システムも選択肢があっていいね。F-15だとほぼEPAWSS一択だし。運用されている機数、運用している国数
も全然違うけど。
結果論ではありますが、本邦もF-2なんて失〇作作らずに素直にF-16を調達していればなぁ、と思ってしまいます
結局は自国での戦闘機開発も、経済、技術の衰退で夢と消えちゃいましたし
大金かけて残ったのは拡張性も発展性も何もない局地戦用の対艦ミサイルキャリアーというのはなんだかなぁ
F-2も試作機の初飛行が29年前、初正式配備から24年前で現在とだいぶ状況が違いましたからね。
F-16Vが飛び始めた頃には日本はF-35と次世代機に舵を切ってましたし。
F-16改じゃなくて、オリジナルの機体がよかったな。
エンジンが作れなかったからと日米貿易摩擦のせいだけど、性能が落ちてもフランス製エンジン使うとかすればよかったのに。
もしくは割り切って、運動性能なしのミサイルキャリアを作るとか。
全く同感ですねー
性能微妙でもフランスとか中国みたいに頑張って自国製の戦闘機作ってほしかったなぁ
韓国のK2戦車やK9自走砲の輸出の大成功を見てても思うのは、たとえ最初はバカにされようとも、
歯を食いしばってやり遂げることがやっぱり重要なんだなと
日本がそういったチャレンジ精神を持ってくれることを期待したいですが、防衛利権やらで難しそうですかね
当時だと完成が怪しいRRだろう。
実際完成しなかったし
F-35いれてるんだからいまさらだろう
少なくともF-2は失敗作ではないぞ。失敗作ならこんなに長い間運用されてない。
問題がないわけではないが、それはアメリカがF-16ベースにさせたのにロクに情報開示しなかったことが主な原因。
>アメリカがF-16ベースにさせたのにロクに情報開示しなかった
これのソースは?
私がちっと前にJ-Wingかなんかの当時の開発者の手記で、「なんといっても助かったのはF-16の開発記録のデータだった」と書いてあり、そこまで開示したのかと思いましたが。
F-2開発時にアメリカはFBWのデータは全部開示しなかったんじゃなかったかなと。確かそう聞いてます。そりゃそうでしょうね。
F-2は国産化にこだわりすぎてコストコントロールに失敗したのがいかんでしょう。対艦ミサイル4発積むのに数千億かけてどーすんだと思いましたね。SH-60でしたように機体だけF-16のライセンス生産してレーダーと電子装備関係だけ日本製にすれば良かったと思います。
そもそも戦闘機開発なんてコストコントロールに成功した案件ほぼ無いでしょ
そもそも近年の戦闘機開発なんてコストコントロールに成功した案件ほぼ無いでしょ
対艦ミサイルキャリアーとか言ってるけど普通にAAMは使えるし何か一部の機能だけにフォーカスしてもね。あの時に対艦ミサイル搭載して航続距離を担保するのはF-16では無理だったし対艦ミサイル搭載を減らして運用する前提なら何期必要なのかって話にもなってくる。
少なくとも新しい機能を統合しようと思えば出来るわけだし金掛けるかどうかの判断なので別に現状で終わりな訳ないでしょ。
機体本来の問題より、装備運用に問題がありそう。
存在意義と言っていいASM-3(無印)→苦労して開発して完成した時には性能が陳腐化してて実用に耐えませんでした!とか、「将来性がないので生産機数を減らそう」→「価格が高すぎる」「機数が少ないから大規模な近代化改修の効果が少ないから小改修で済まそう」という負のループ。
新型国産戦闘機も同じ目に遭いそうで。
当時の技術や環境、情勢を考慮せずに今の視点からだけ見るとこういうとんちんかんな発想が湧いてくるのか
おそらくネタ発言なのだろうけども
そういえば台湾は発注した兵器が届いてないというのがな
ウクライナなんてどうでもいいから台湾に送ってやって
>「1番艦の完成は4年遅れの2029年頃になる」
最初はやはり時間が掛かりますね。
ただし中国は039C型潜水艦を約8隻建造中で、さらに新型の潜水艦も建造中なので、時間が掛かり過ぎると戦力差は拡大する一方ですが…。
そして中国は4ヶ月に1隻のペースで原潜も進水させている。
最近の中国軍の軍備調達は何を聞いても規模が圧倒的過ぎて唖然としますね
まともに船の整備もできない西側盟主の自称グローバル覇権国家の立場がないです(某氏風
中国は相変わらず餃子を茹でまくってますね。
しかし不動産バブル崩壊を始めとして経済の失速が明らかないま、この軍拡ペースでどこまで耐えられるのかは見物です。
F-16のバリエーションは魔窟なので「新型EW装置そ内蔵可能な機体」の条件がよくわからないですよね。
アメリカ空軍はF-16 CM/DM CCIPが主力なので、少なくともこのモデルにアップグレード可能な機体は内蔵可能と取れますが、A/B型の期待フレームを使ったAM/BMはSABRレーダーは内蔵できても新型EW装置の内蔵可否が未だに不明です。
AM/BMを保有していた国はほとんどがF-35にアップグレードが予定されているのでA/Bアップグレード需要が台湾にしかない点も他国のアップグレード情報が流れにくい理由になってそうです。