トランプ政権は台湾政府が提出した国防支出パッケージ(約6.2兆円)について「迅速に承認する必要がある」と呼びかけてきたが、野党は約3.9兆円に減額した独自の国防支出パッケージを可決させ、米国の高官は「金額が縮小された国防支出パッケージに失望した」と述べた。
参考:Taiwan parliament approves extra defence spending but less than government wanted | Reuters
参考:US disappointed in Taiwan’s smaller defense budget, official says
参考:國防特別條例排除商購 林佳龍:美方盼國會補救
減額されたとは言え7,800億台湾ドルの追加支出が確定したため、台湾の国防支出はGDP比約3.66%になる
2025年にトランプ政権が再登板してNATO加盟国にGDPに占める国防支出を5.0%まで引き上げるよう要求、NATO加盟国は2025年6月の首脳会談で「国防支出=3.5%」と「軍事インフラとしても活用できる分野(重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤など)への投資=1.5%」を組み合わせた総額5.0%の新支出基準で合意。

出典:NATO
これを受けて国防総省のコルビー政策担当国防次官は「NATOが5%の国防費目標を達成するため非常に強いコミットメントを示した」「これは世界中の同盟国、特にアジアにとって新しい基準となるだろう」と言及、ヘグセス国防長官もシャングリラ会合で「この地域の安全を保証してきた米国の役割に頼るのではなく、米国の同盟国はより大きな軍事負担を受け入れる必要がある」と発言し、2026年1月に発表した国家防衛戦略(NDS)の中でも「5.0%が国防支出の新基準だ」と明記してきた。
メディアの報道では米国が要求する国防支出の基準について「5.0%」と「3.5%」が用いられ混乱すると思うが、総額5.0%を構成する「軍事インフラとしても活用できる分野への投資=1.5%」はトランプ大統領の5.0%要求を満たすために考案された「都合の良い数字」でしかなく、軍事インフラとしても活用できる分野の明確な基準も定義されていないため会計処理の変更、例えば港湾施設への投資を防衛・安全保障関連への投資としてカウントできるため「各同盟国が柔軟性をもって支出できる」と表現される部分だ。

出典:U.S. Department of Defense
米国が要求する国防支出の新基準が5.0%であっても核心的な数字は従来の国防支出に相当する「3.5%」で、オーストラリア、韓国、台湾、日本も新基準に準じた国防支出へのコミットメントを求められており、台湾も「2026年までに3.5%、2030年までに5.0%を達成する」と約束済みで、トランプ政権も昨年12月に総額110億ドルの武器売却パッケージを発表し、賴清徳総統が昨年11月に提出した総額1.25兆台湾ドル=約6.2兆円もの国防支出パッケージ(防衛強靭化および非対称戦力強化の特別予算)を立法院が承認するかに注目が集まっていた。
トランプ政権は繰り返し「国防支出パッケージを迅速に承認する必要がある」と呼びかけてきたものの、野党の国民党や民衆党は「政府案の説明は不明瞭で汚職につながる可能性がある」と主張し、独自に総額7,800億台湾ドル=約3.9兆円の国防支出パッケージを提出して可決させたため、米国の高官は「金額が縮小された国防支出パッケージに失望した」「我々の立場としては縮小された分の資金調達が不可欠だと考えている」と述べている。

出典:總統府/CC 表示 4.0
米国が失望したのは野党案の国防支出パッケージが当初予定の2/3に減額されたことだけでなく、米国製兵器の直接商業売却(約1,000億台湾ドル)や台湾国内での共同生産・ライセンス生産(約2,500億台湾ドル)への資金供給を排除しているためで、AI意思決定支援システム、部隊共通状況認識や戦術ネットワークの端末約12万台、VTOL UAV、対ドローンシステム、汎用弾薬、対弾道ミサイル、各種ドローンなどが調達できなくなり、賴清徳総統が提唱した統合型防空システム“T-Dome”の構築に大きな影響が出ると懸念されている。
日本の防衛省はドローン数千機を活用した沿岸防衛体制シールドの構築を目指しているが、台湾にも同じような構想(特に名称はない)があり、政府案の国防支出パッケージには沿岸攻撃ドローン20万機超と無人艇1,320隻の調達や生産基盤の構築費用も含まれていたが、これも野党案の国防支出パッケージで排除している。

出典:Military News Agency, ROC
結局のところ野党案の国防支出パッケージは対外有償軍事援助(FMS)による調達への資金供給しか認めていないため、直接商業売却による米国製兵器や部品の調達、国産化した兵器の国内調達、米企業と台湾企業による共同生産といった部分がバッサリ切り捨てられ、台湾メディアもFMS依存=調達の柔軟性やスピードが失われ調達コストの高騰や納入遅延リスクが高まり、その結果として継戦能力(レジリエンス)が低下し、中国のグレーゾーン作戦や侵攻に対する抑止力が弱体化すると危惧している。
Andurilと予定していた無人潜水艦=Dive-LD、自律型水中エフェクト=コッパーヘッドM、低コスト巡航ミサイル=バラクーダ 500の共同生産、Kratosと予定していた低コストミサイル=Mighty Hornet IVの現地生産も影響を受ける見込みで、台湾政府=民進党は通常予算や追加の予算措置で野党が削減した部分をカバーしてくる可能性もゼロではないが、立法院は野党が多数を占めているため計画遅延は避けられない状況だ。

出典:Anduril
もしDive-LD、コッパーヘッド、バラクーダ 500、Mighty Hornet IVを技術移転による共同生産ではなく、FMS経由による完成品の輸入になれば調達コストが増加し、調達にかかる時間が非常に長くなり、ブラックボックス化=整備権限の問題で運用に問題をきたし、この調達に投資する資金は国内雇用や産業基盤に何ら寄与しないため、野党がやっていることは台湾の資金を米国に流して国防計画全体の進捗を遅くさせるだけとも言える。
ちなみに台湾の国防支出は通常予算のみでもGDP比3.32%(行政院はNATO基準で計算した値だと明言)もあり、減額されたとは言え7,800億台湾ドル(2026年〜2033年の8年分)の追加支出が確定したため、台湾の国防支出は通常予算と国防支出パッケージを合わせるとGDP比約3.66%になるので「3.5%」を超える格好だ。

出典:首相官邸
日本の2026年度予算における防衛関連費はGDP比で1.9%だが、これは2022年度のGDPで計算した数字で、NATO基準=支出を行う当該年の名目GDPで計算すると「2026年度は1.5%」「補正予算込みでも2.0%に届かないかもしれない」となり、2025年度に前倒し達成したと主張する「2.0%(補正予算込み)」ですらNATO基準では推定1.6%程度だ。
日本の国防支出額は米国のインド太平洋地域における主要同盟国の中で最下位、欧州を含めた西側主要国のなかでも断トツの低さ(2.0%を下回る国は日本のみ)なので、米国製兵器の納入順位において不利な扱いを受けるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:軍事新聞通訊社





















単純にアメリカの兵器生産力が疑われているのでは?納期未定だし。
共同生産だってアメリカ依存の部品が1個でも来なかったら打つ手が無くなる
難しい話だなぁ
軍事に注ぎ込みすぎて国民の不況を買い、政治が荒れて結果的に何も進まなければ意味は無いし、かと言って備えを怠って有事に間に合わなくても被害を被るのは国民だし
台湾は本来一番近い日本ともっと連携すべきだったけど、政治的にも国の成り立ち的にも無理な話だったから米国が頼みの綱だったけど、その米国からこう言われたらね
日本も数字上は低くはあるけど、軍事に掛ける情熱の差が米国とは次元が違うレベルで乖離してる事をもっと説明していって欲しいね
それでもジワジワ変わっていってるんだから、長い目で見て欲しいわ
この状況下で軍備減額とか無いわー
全く他国の事をとやかく言える立場じゃない本邦けど
とは言え、アメリカ製品だろ予定通りに届かないのがほぼ確定しているけどな
拙いのは送金した金が別のものに変わって、自国で使えるという詐欺みたいな契約を結んでいたのがスイスの現状だもんな
この状況下でといっても、例えばウクライナ戦争で疲弊しきっているはずのロシア相手に狂ったように軍備増強に投資しまくる欧州の姿勢が妥当と言えるかは甚だ疑問ですけどね。
台湾経済、めちゃくちゃ調子いいですからね。
日本目線で見れば、(日本と同じく)対米貿易黒字解消の一環として、米国製武器の購入を期待されていた面もあるのかなあと。
だからアメリカ製兵器は納期未定なんだって。台湾のような一触即発で納期未定は壊滅的なデメリット
仰る通りですね。
納期は本当に基本なわけですが、アメリカ製武器この問題が解決できない限りどうしようもないなあと。
とはいえ台湾の世論は日本のネット上で言われているほど対中強硬路線で一致団結している訳ではなく実は台湾有事に対する危機感も希薄で、世論調査で頼清徳政権に対する支持が不支持を上回る事は稀なんですよね。
前回の総統選挙でも対立候補が分散して票が割れたから勝利したのであって、もし決選投票の制度があれば頼清徳氏が負けていた可能性は少なからずあります。
国防支出の減額が可決されたと聞いても個人的には全く驚かないですね。
情報ありがとうございます。
不人気政策は、政治体力を使いますからね…。
仰る点について、世論調査かなり厳しいのであれば、世論の反感を強く買う政策は、実行を期待できないですね。
あちらにも親中派が居ますしね。
それとは別に、
軍事においては、楽観論は御法度とは言え
人民解放軍の幹部たちすら海を隔てた場所を攻めるのは極めて困難だと思ってるはずでしょうしね。
口が裂けてもしゃべれないでしょうけども。
仰る通りですね。
(習主席に極めて近いとされてきた)中国軍の制服組トップ・張又俠氏、軍高官も相次いで粛清されているんですよね…。
権力闘争のみが理由であるのか、少し不気味に感じて注視してるのですが、万が一がないことを願っています。
もうこの際、世界に向けて思い切って財政破綻宣言しちゃえばいんじゃないすかね。
実質今の日本は事実上の破綻寸前なんだし。
そうすりゃ少なくともアメリカのご希望通りの予算増額は不可能ですという理由付けにはなろう。(ヤケクソ)
日本が破綻寸前とかないわ、利払い対GDP比、債務対株式時価総額比、債務と資産総額で比較したら破綻可能性は無視できるレベルで低い、日本が破綻寸前なら米中露以外の主要国は皆破綻してるよ
本当に破綻しない確信があるなら、減税するかしないかで揉めないですよ。
黒字でも資産が十分にあっても、破綻はあり得るんですよ。
国家財政とGDPは別物です。
日本は、自民党(財務省)の “財政健全化指向”と野党の人気取りがせめぎあっているのであって、財政破綻を恐れて減税しないのではないと思うけど。
>本当に破綻しない確信があるなら、減税するかしないかで揉めないですよ。
何の反論にもなってない、破綻寸前であるなら減税など議論の余地すらない
>黒字でも資産が十分にあっても、破綻はあり得るんですよ。
机上の空論として理論上はあり得るが現状は破綻可能性を無視できるレベル
債務の殆どが自国通貨建ての国内保有で利払い能力が十分にあり保有資産総
額を鑑みればこれで破綻寸前なら米中露以外の主要国は皆破綻している
>国家財政とGDPは別物です。
国家財政を推し量る指標として用いているだけでGDPが全てとか言ってない
自国通貨建てだから大丈夫ではないですよ。
高市氏も総理になる前は、積極財政だのと大風呂敷を広げてましたが、
いざ総理になったらだいぶ発言が後退していました。
現実がヤバいことを認識したからです。
大切なのは事実かどうかではなくて、多くの投資家がどう見ているかです。
経済とは物理的な実態があるわけではなく、多くの人々の心の中にあるものなので、
既に日本人も含めて世界中が、日本の財政が危ないという認識になってしまってます。
俺様だけが知っている真実では意味がないのです。
米国債や対外資産とその運用益がたんまりあるのに「破産したのでもう借金は払いません」とか国際社会に言ったらB-52で石器時代に戻されても文句言えないんじゃ無いですかね?
国民党党首が北京を訪問した効果が出てきたようですね。
FMSによる購入金額が減ればトランプ政権が定める兵器引き渡し順序が下げられ北京政府が得をするというのがたまりません。
外野からすれば最大野党の中国国民党党首の訪中と一つの中国と言う考えが露骨に反映された物って感じ。最低限の戦力増強とアメリカのご機嫌を損ねない程度にFMSによる調達への資金だけは確保、ウクライナのように継戦能力を底上げするような所への予算は上手くカットしている感じだよな。
中国寄りの中国国民党へのリコールとか全く成立していない辺り国民として中国との関係はどう考えているんだろうか。
台湾は台湾本島と中国大陸の沿岸に位置する金門島の住人とでは考え方が全く違う。
台湾本島には所謂、外省人やその子孫も少なくないが住民のアイデンティティは「台湾人である」と考える人が多い。これが金門島を中心とした金門県になると中華民国が大陸を統治していた時代は福建省であり、中華民国が大陸から撤退する前から一貫して統治下にあるために住民のアイデンティティは「台湾人」ではなく中国本土に近い「中華民国人」であるという意識が強い。
さらに金門県は中国本土からの観光客による観光産業が主力で通貨も新台湾ドルの他に人民元が流通する。インフラである水道も中国本土からパイプライン(2018年に開通)で引いているために金門県の県長は親中派が就任することが多く、金門県への一国二制度の導入を求めることを度々呼びかけることなどが問題になっている。
トランプ大統領の訪中が終わるまで引き延ばすことはできなかったのでしょうか?
タイミングが悪すぎるように思えます。
ヘグセス長官が「日本の努力を評価する」って言ってる位ですから、今のペースで良いんじゃないですかね。
中国には「アメリカが煩いので」、アメリカには「中国と揉めるので」と言ってペース調整してトランプの任期切れを待てば良いと思います。
問題なのは台湾が頼んだ武器が届くかですよね。まだ来てない武器が兆単位なかったでしたっけ?
ある意味、中国とアメリカの両方の顔色窺った感じですかね。台湾の今の政治状況を反映してると思います。
NATO基準だと5%(3.5%)は2035年までの目標の数値なので、日本もそれに合わせて段階的に引き上げていくしかないでしょうね。
”Andurilと予定していた無人潜水艦=Dive-LD”
日本も、東シナ海/台湾海峡などで運用するミゼットサブが必要になるのでは?。
中共側が待ち構えている(であろう)海域で哨戒活動するわけですね。
無人でなくても良いので、小さく見つかりにくい船体で、などと思います。
推進機関とか、色々と解決すべき課題はありますが。