インド太平洋関連

量産化に向けて順調なテジャスMK.1A、プロトタイプが初飛行に成功

ヒンドスタン航空機(HAL)最高経営責任者のマドハヴァン氏は今年1月「6月からテジャスMK.1Aの飛行テストに取り組む」と言及していたが、複数の現地メディアは「テジャスMK.1Aのプロトタイプが初飛行に成功した」と報じている。

参考:Tejas MK1A Gizlice İlk Uçuşunu Yaptı
参考:বিশ্বকে ধোঁকা দিয়ে TEJAS MK-1A-এর গোপন ফ্লাইট পরীক্ষা ভারতের

MK.1A量産に向けたスケジュールに大きな遅延はなく「今のところ予定通り進んでいる」と言っていい

インドの国産戦闘機テジャス開発は1980年代に始まり政治的問題や技術的問題で紆余曲折を経験した影響で計画は大幅に遅延、普通なら中止に追い込まれてもおかしくはない状況を忍耐強く乗り切り、開発から約40年後の2021年1月に完全作戦能力を獲得したテジャスMK.1の実戦配備が始まったが、MK.1を再設計したテジャスMK.2の開発が進んでいる。

出典:Dipjyotimitra14 / CC BY-SA 4.0 テジャスMK.2の完成イメージ

MK.1よりも全長が延長(1.35m)されたMK.2はカナード翼追加による失速特性と燃費の改善、S字ダクトやステルスコーティングを採用することで正面方向のレーダー波反射率を抑制、推進力と燃費が改善されたF414INS6(最大推力IN20/85kN→INS6/98kN)、国産AESAレーダー、デジタルレーダー警告受信機、電子妨害ポッドなどの統合が予定されており、特に国産AESAレーダー「UttamAESA」はEL/M-2052を上回る検出レンジと同時追尾能力に加え電子妨害に対する耐性も備えているらしい。

ただMK.2実用化までには時間がかかるため、インド空軍はMK.2に採用予定の新技術(国産AESAレーダー、デジタルレーダー警告受信機、電子妨害ポッドなど)をMK.1に統合した「MK.1A」を83機(単座73機+複座10機)発注済みで、HALのマドハヴァン氏は「2024年引き渡しに向け今年6月から飛行テストに取り組むつもりだが、COVID‑19の感染状況やイスラエルから届くシステムの状況にも左右されるため多少の遅れが生じるかもしれない」と述べたが、複数の現地メディアは「テジャスMK.1Aのプロトタイプが初飛行に成功した」と報じている。

出典:Venkat Mangudi / CC BY-SA 2.0 テジャスMK.1

テジャスMK.1AのプロトタイプはMK.1の量産機(SP-25)を改造して作られ、今後30ヶ月間に渡りMK.1Aに統合された新技術や変更点のテストに従事するらしい。

既にMK.1Aは複数の国に提案されているため「インド空軍への2024年引き渡し」を守って開発が順調だとアピールする必要があり、今のところ大きな遅延はなく「予定通り進んでいる」と言っていいだろう。

因みにMK.2のプロトタイプ製造も始まっており、2023年初頭にロールアウトが行われ1年後の2024年に初飛行を予定している。

関連記事:印ヒンドスタン航空機、テジャスMK.1Aの製造は順調でMK.2も2024年に空を飛ぶ
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※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defence/GODL-India テジャスMK.1

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コメント

    • 匿名
    • 2022年 7月 10日

    開発開始から初飛行まで40年もかかる仕事が許されてしまうインドという国は、何から何まで二流なんですね。
    そういえばインドの国産空母も、建造開始から10年以上経過してもまだ建造中ですよね。インド人には計画性が無いのでしょうか? 物事を深く考えずに、思い付きで場当たり的に仕事をしているとしか思えません。

    6
      • おわふ
      • 2022年 7月 10日

      釣り針大きすぎ。

      50
      • インド時空
      • 2022年 7月 10日

      インドは第1次産業と第3次産業は強いけど、
      第2次産業が強い国ではないから、単純に技術力と大規模プロジェクトのノウハウが足りないんだろうね

      11
      • ブルーピーコック
      • 2022年 7月 10日

      J-8戦闘機(MiG-21の独自改良型)の開発に19年かかった中国は、今どんな感じでしたっけね

      6
      • ido
      • 2022年 7月 10日

      じゃあ、ズムォルト級とかって何なんですかね?ジェラルド・R・フォード級のエレベーターは?思い付き場当たり的とかろくにほかのことと比較してないあなたに言われたくはないと思うけどね。

      1
        • バーナーキング
        • 2022年 7月 11日

        いや、そこでそいつらを持ち出すのはどーなんだ…。
        「完成こそしたけど事業としては結局微妙」な例と「一つ解決したけどまだまだ予断を許さない」例にしか見えんのだけど。

        3
    •        
    • 2022年 7月 10日

    デルタ翼としては珍しい高翼機
    故に機動性はやや劣り攻撃機よりの特性であろうが
    今の時代はあんまり関係ないか
    空母艦載での高迎え角対策はカナードで解決か

    2
    • APFS
    • 2022年 7月 10日

    トルコの方は何とかしそうな感じが出てきたけど、インドはエンジンどうなるかな?
    イギリス、アメリカ、フランス、ロシアの技術協力は話は出るけど結局ライセンスの問題でうまくいってないし。
    昨年から出ているラファールのオフセットによるエンジン開発がうまくいかなかったら、技術移転での開発進行はもうダメかも。

    2
    • くらうん
    • 2022年 7月 10日

    インドは戦闘機の種類が多くなりすぎ。
    整理統合どころかさらに増えそうなんだけどその辺どう思ってんだろ。

    6
    • 名無しみくす
    • 2022年 7月 10日

    どうでもいいがF414というGE製エンジン搭載のテジャスは果たしてインド機と言って良いのだろうか。
    かつてインドの核ミサイル開発時にアメリカがインド制裁行ったように、気に食わない外交したらF414売らないよ。アメリカはいつでも恐喝してインド政治に干渉できるようにしたテジャスは、毒まんじゅうではないか。
    なんでインドは自慢げにマレーシアとかに売ってんだろ? 心臓部は他所の製品なのに

    2
      • バーナーキング
      • 2022年 7月 11日

      一線級の戦闘機用のエンジン自力で開発出来る国なんて数えるほどしかないんだし、
      エンジンという重要かつ比較的可換性の高い部品を性能重視で国産より輸入選ぶのは珍しい話じゃないでしょ。
      アメリカですら必要とあらばP-51にロールスロイスのエンジン積んだ訳で。

      2
    • 通りすがり
    • 2022年 7月 10日

    じゃグリペンは? 

    3
    • ブルーピーコック
    • 2022年 7月 10日

    クルト・タンクを招聘して作ったマルート以来のインド国産機が初飛行。関係者は嬉しいだろうな。
    ただ、中国の航空機開発能力に遅れをとらないためには、次は国産エンジンに着手して成功しないとな。エンジンはホント鬼門だから頑張ってほしい

    7
      • 匿名
      • 2022年 7月 10日

      先進他国の技術を良い意味でも悪い意味でも盗むことへの容赦の無さが今の中国を支えている気がしますが、そういう方面のインドの姿勢ってどうなんでしょうかね…。

      2
    • makumaku
    • 2022年 7月 11日

    インド初の国産空母ヴィクラントがいよいよ就役間近だそうです。こちらも長かったですね。
    リンク

    • ナイトアウル
    • 2022年 7月 11日

     イスラエルからのシステムってどれを指すんだろうな。イスラエルが作る装備は今のウクライナに取ってかなり有益で有るにも拘らずロシアへの配慮から全く供給されない。

     将来的にイスラエルのコア技術使っていると、対ロシアには使えませんと言うケース出てきそうな気がする。

    • 南極1号
    • 2022年 7月 12日

    主翼平面形が気になります。逆ダブルデルタというか胴体近くの前縁の後退角が小さくなっている。
    これはF-16XLとアブロバルカンに似ていますね。単に視界確保の意味だけなのでしょうか?
    また、カナード付きのMK.2は操縦席が前方に移動しているので胴体が長くなっているようです。
    かなりの設計変更と思われます。

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