インド太平洋関連

再掲載|タイ空軍に手酷くやられた中国空軍、グリペンがSu-27に圧勝

中国空軍がロシアから導入した戦闘機「SU-27SK」と、タイ空軍がスウェーデンから導入した戦闘機「グリペン C」との間で行われた空対空戦闘のシミュレーション結果が最近公表されたと、米国の「Military Watch Magazine」が報じている。

※本記事は2019年12月27日に公開した記事の再掲載です。

参考:How Swedish Made Gripen Fighters Managed Beat China’s Soviet Built Su-27SK Flankers in Beyond Visual Range Combat Simulations – Lessons for the PLA

タイ空軍のグリペンに「視界外戦闘」で一方的にやられた中国空軍

中国空軍とタイ空軍は定期的に共同訓練演習中「Falcon Strike(ファルコン・ストライク)」を実施しているが、最近、2015年の演習に参加したといわれる人物が中国の西北工業大学で講演した際、中国空軍がロシアから導入した戦闘機「SU-27SK」と、タイ空軍がスウェーデンから導入した戦闘機「グリペン C」との間で行われた空対空戦闘の模擬結果(スコア)を公開した。

出典:Alert 5

このスコアによれば、初日の効果的な攻撃(要するに撃墜数)は「中国:0-タイ:16」で、中国空軍のSU-27がタイ空軍のグリペンに一方的な敗北したことを示しており、2日目も「中国:1-タイ:9」と初日と同じ傾向を示したが、3日目からこのスコアは逆転傾向を示している。

出典:Alert 5

さらに交戦距離別での攻撃成功率を示す資料は、衝撃的な数値を示した。

視界内戦闘での攻撃成功率(%)は「中国:86 – タイ:12」で、30km以上の視界外戦闘では「中国:14 – タイ:64」、50kmを越える視界外戦闘になると「中国:0 – タイ:24」という数字を叩き出す結果となり、中国空軍に多くの戦訓を残したと講演者は話したと言う。

まず中国が演習に参加させた「SU-27SK」は、中国では「J-11」と呼ばれており、大きく分けてロシアから部品を輸入し中国で組立てた「A型」と中国で国産化(無断複製)された「B型」があるが、どちらが参加したのかについては不明だが、1980年台にソ連(現:ロシア)で運用が開始された「SU-27」の海外輸出モデルで、多くのダウングレードが施された機体だが空中での優れた機動性は健在だ。

出典:public domain 中国空軍の戦闘機「J-11A」

ロシアでは適時アップグレードを施しながら使用し、SU-27の発展型「Su-35」を開発するなど機体も性能も進化を遂げているが、中国の「SU-27SK」は大規模なアップグレードを受けておらず、少数に対する限定的なアップグレードしか行われていないため、電子機器をアップグレードしたグリペンの最新型「Type C」を装備するタイ空軍に手酷くやられたというのが実態だ。

補足:J-11Aに対するコックピットや射撃管制システムのアップグレードや、J-11Bの搭載レーダーをAESAレーダーに換装し、長射程空対空ミサイル「PL-15」を統合したアップグレードが確認されているが、保有機全てにアップグレードが施されているのかは確認されておらず、2015年時点でこれらのアップグレードが行われていた可能性は非常に低い。

特に、視界外戦闘ではグリペンが搭載しているレーダーや電子装置、使用する空地空ミサイルが、中国のSU-27SKを圧倒した結果を生んでいる。

恐らく演習に参加したSU-27SKは、セミアクティブレーダー誘導方式の「R-27」を使用していたため、発射後もミサイルを目標に誘導し続ける必要があったのに対し、グリペンは打ちっぱなしが可能な「AIM-120」を使用していたため、視界外で互いにミサイルを発射しあっても、敵のミサイルを回避するための機動で差がついたのだろう。

出典:Alan Wilson / CC BY-SA 2.0 タイ空軍の戦闘機「グリペン」

さらにグリペンには電子妨害装置や曳航式のデコイなども装備されているため、中国の「R-27」による攻撃を無効化する手段が幾つもあり、30kmを越えた視界外戦闘の攻撃成功率が極端に下がったのだ。

講演者によれば、中国空軍のパイロットは敵ミサイルを回避するための経験が少なく、教科書通りの回避機動しか行えず、特に2対2の戦闘シナリオで状況や敵の脅威を正確に判断することが出来なかったとも語っている。

しかし視界内戦闘では、中国のSU-27SKはタイのグリペンを圧倒しており、SU-27がもつ空中機動性の優位さを存分に発揮している。

これは機体設計の思想が異なることもあるが、いくら機体を小型・軽量化しても、エンジン出力が小さければ空中の機動性に制限がつくことを示した例で、小型のグリペンが抱える性能的な限界を露呈したのかもしれない。

将来の空中戦は視界外で発生し、一度も敵機を目視すること無く終わる?

結局、中国のSU-27SKはタイのグリペンに手酷くやられてしまったが、この結果は将来の空中戦闘が、ますます視界外で行われることを暗示しているのかもしれない。

中国やロシアは戦闘機に搭載する空対空ミサイルの射程距離を延長することに積極的で、すでに米国が使用するAIM-120の射程を大きく越える「PL-15」や「R-37M」を実用化しており、電子装置やレーダーについても米国が安心できるほどの性能差は、もはや存在していない。

出典:storm / stock.adobe.com

米国も中露の長射程化した空対空ミサイルの脅威を感じており、これをミサイルギャップと呼んで新しい空対空ミサイル「AIM-260」の開発に取り組んではいるが、まだ開発の初期段階にあるため実用化されるには、もう暫く時間がかかるだろう。

中国は「PL-15」に満足することなく、欧州が開発したラムジェットの一種「ダクテッドロケット」を採用し、マッハ4.0+の速度と長射程化を実現した「ミーティア」の中国版「PL-21」の開発・実用化を行っており、そろそろ本格的な運用に入る可能性が高く、米中間のミサイルギャップは簡単に埋まりそうにない。

そのためファルコン・ストライクで起こったことが、米国と中国の間で再現されない保証はどこにもなく、これは東シナ海で中国と問題を抱える日本にも言える話だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain スウェーデン空軍所属の戦闘機「グリペン」

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    軍事研究2019年10月号によるとAN/APG-77での最低探知距離は、J-16が355km、Su-35が241km、J-20が112km、F-35Aが60km、F-22が40km。
    5世代機相手だと、長射程化したAAMの利点を活かし切れない感じ。

    日本がステルス機を狩るために、予測型目標検出処理や予測型最適誘導制御の研究が行っているのも、この問題に対処するためですね。
    ちなみに予測型目標検出処理の効果は、現状だと従来処理に比べ追尾開始距離が1.5倍だとか。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    いくらインファイトが強くても【そこ】にたどり着くまでに大損害やそもそも辿り着けないとお話にならないからね。
    それを強く意識したのがF-35の開発だったんだろうけどミサイルの長射程化で中露に負けてる上に、今以上の長射程ミサイルをF-35に内装出来ない。 
    かといって外に搭載するとせっかくのステルス効果が減少するという問題に直面している。
    そういった対策がF-15のミサイルキャリア運用なのかもしれないが長射程ミサイルで負けてるならそれも不安。
    除法が本当だとするなら中露と同等か以上のミサイルを実用しないと優位は取れない。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    >>中国は「PL-15」に満足することなく、欧州が開発したラムジェットの一種「ダクテッドロケット」を採用し、マッハ4.0+の速度と長射程化を実現した「ミーティア」の中国版「PL-21」の開発・実用化を行っており、そろそろ本格的な運用に入る可能性が高く、米中間のミサイルギャップは簡単に埋まりそうにない。

    ミーティアはコピー可能かもしれないが、日英で共同開発中のミーティア改のAESAはコピーできないぞ。
    いまだにF-2のAESAがコピー出来ないように。
    英国は格段に命中率を向上させたミーティア改を世界中のF-35採に用国に売りまくるだろうが、そうなったらF-35は完全に無敵モードになる。

      • 匿名
      • 2020年 8月 10日

      そもそもPL-15にもAESAを搭載しているのでコピーをする必要がない。
      あと、F-2より性能が良いAESAを中国戦闘機はすでに搭載している。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    2020年代はF-35+JNAAMで対応できるハズ。2030年代はF-3+低RCS対処ミサイル誘導制御技術採用の国産ミサイルで対応できると思ってる。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    なりふり構わず技術をパクって開発し、比較試験を行っている姿勢は脅威に他ならないでしょ。
    日本も国防しっかり頼みます。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    いつも的確な論評に感心してます
    映画やアニメを真に受けて、戦闘機をドッグファイト能力の優劣のみで判断するメカヲタクにはうんざりしてますから。
    ネットワーク戦闘の時代、戦闘機単独での勝利などあり得ないって理解しないとね

      • 匿名
      • 2019年 12月 27日

      ステルスだとお互いレーダー使えばそれだけで自分の存在を相手に知らせることになるのでアウト、なので優位な状況を生かすなら相手のレーダーを探知しつつ目視で相手を見つけロックオンだろう。ミサイルの射程の長さは大きな差にはならないかも。

        • 匿名
        • 2019年 12月 27日

        述べてる前提が戦闘機(部隊でも)単独or単種運用に思えるのは気のせいですかね? w

        • 匿名
        • 2019年 12月 27日

        AN/APG-77だと、F-35Aで60km、F-22でも40kmで探知出来る様です。
        日本の先進統合センサ・システムの様に、今後ステルス機対策が進んだら、目視だと更に厳しくなるかも。
        SRAAMが主要兵器となる距離での戦いは多く成るとは思うけど。

        • 匿名
        • 2019年 12月 29日

        最新のAESAレーダーなら周波数拡散で瞬時に前方をスキャンするから簡単には発信源を探知されないはず、スキャンの時間をできるだけ短くするためにも素子の高出力かは必須の技術。
        バイスタティックレーダーはレーダーアンテナが2か所以上必要だからスマートスキンでもない限り今の戦闘機には載せられないしミサイルのシーカーには使えない、ステルスは当分有効な技術。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    フィリピン空軍のFXに影響を及ぼすためだったりして。
    せっかくドゥテルテ大統領を立てたのに、米製のFー16なんか選ばれたらイヤだろうから。

    • 匿名
    • 2019年 12月 27日

    ステルスファイターはミサイルをウエポンベイに格納するのですが、AIM120を規格化してしまったことが原因では?
    スパローサイズならもう少し射程も伸ばせたはずで、ステルスさえ有れば探知されず、探知されなければ、どうと言うことはない。と考えたのでしょう。でも意外と中露の対策は早く、全ては米国の読み間違えによるのでしょう。

    • 匿名
    • 2019年 12月 28日

    接近戦でもグリペンが勝ちそうに思えたが、小型軽量なだけでは現代戦はダメだと言うことか⁉ 必ずしも敵の背後に付く必要はないからな。

      • 匿名
      • 2019年 12月 28日

      そこは推力の差かな
      小さく回るだけなら当然小型機のほうが有利だけど、早く旋回を終えるのはそこと直結しない上に失われた運動エネルギーの回復ができなければ次の回避起動はまともにできないから

      • 匿名
      • 2019年 12月 30日

      対空ミッション﹙あと出来れば燃料1/3消費﹚での重量が判らないので、仮に搭載量を最大離陸重量の半分で推力比を計算すると、

      グリペン:80.5kN vs 10,400kg → 約0.79
      J-11A :264kN vs 24,690kg → 約1.09
      F/A-18E:195.8kN vs 22,245kg → 約0.90
      F-16C :132kN vs 13,880kg → 約0.97
      F-2A :132kN vs 15,814kg → 約0.85

      搭載量の想定が、グリペンやF-2Aに不利な形になっているかも知れないけど、取り敢えず目安に。

    • 匿名
    • 2019年 12月 28日

    自衛隊もF-15のPre-MSIPは現代戦では役に立たないという事だな。
    一刻も早くF-35に置き換える必要がある。

      • 匿名
      • 2019年 12月 29日

      J-20相手ならグリペンでも全領域で勝てそう。
      そのうちもしかしたらひょっとして完成する可能性がわずかにあるK-FX相手なら、いい勝負をするかもしれない。

    • 匿名
    • 2019年 12月 30日

    中国機は近接戦闘になる前に有視界外戦闘で大方が撃墜されていると言う事だな

      • 匿名
      • 2019年 12月 31日

      中国機だけでなく、例えばF-15JのPre-MSIPでも似たような結果になったかも。

    • 匿名
    • 2020年 8月 09日

    何だかこのシュミレーションの結果おかしくないか?
    視程外でグリペンにボコボコになったのはまあ分かる。それが急に接客戦になった途端フランカー圧勝って。
    基本的に空中戦で機体も搭乗員も求められるスキル的には相手が目視出来ようが、出来まいが一緒。
    まあ接近戦では勝敗の有無は技能と気合いチームワークであって、機体の能力や搭載兵装の差では無いと言う意見は一理有ると思うけど。

    何が言いたいかって、記事の内容を見ると中国空軍のフランカーの性能もだけど、搭乗員の質もあんまり良く無いような印象の書き方なのにこの結果。タイ空軍が接近戦での戦術•訓練をサボりまくったか。このままでは国に帰れないと焦った中国側と楽勝wwwとタイ空軍側が舐めてかかった結果なのか?それともあんまりボコボコにしちゃうと南シナ海でガチでヤリ合う時に強くなってると困るから、接近すれば何とかなると思わせる為にワザと負けたか?
    それとも中国空軍搭乗員の接近戦の技能だけが異常に高かったのか? 真相はどうなってる?

      • 匿名
      • 2020年 8月 09日

      その疑問を解決する術はないだろうね
      ただ結局は戦うのは人間なんだから、戦ってるうちに相手の戦い方や自分の短所を分析してお互いに対策し続けるだろね負けてる側は特に
      後半、中国軍側のキルレートが飛躍的に上がったのは中国軍側がタイ空軍の弱点か対策できる穴を見つけてそれがうまく回ったと考えるのが自然だと思う
      タイ空軍も対策するだろうから、もうちょい演習を続けてたら結果はまた違ったものになってたと思う

      あなたはタイ空軍の慢心や手加減によってこの結果が引き起こされたと考えてるみたいだけど、それ無意識に中国空軍が訓練の中で実力をつけたかもしれない可能性を排除してるように見える
      それこそが最大の慢心だよ。連中も必死なんだから敵を過小評価すべきではないし、敵の失点に期待するような考え方は良くない

      • 匿名
      • 2020年 8月 09日

      近距離ならSu-27にもアクティブ誘導式ミサイルはあるし、標準にIRSTを使えるので
      ミサイルを発射された事に気付けないグリペンは回避行動をとる事なく撃墜判定出されたものと思われます。

      • 匿名
      • 2020年 8月 10日

      >それとも中国空軍搭乗員の接近戦の技能だけが異常に高かったのか?

      この推測は間違っていない。
      中国空軍は打ちっ放ち式のBVR-AAMを、2000年代まで保有していなかった(2007年頃にPL-12やR-77を運用開始。)
      なので、中国空軍はBVR戦闘を重視せず格闘戦をずっと重視してきた。
      今の中国空軍はPL-12やPL-15を運用しているので、BVR戦闘への対応を進めているけどね。

    • 匿名
    • 2020年 8月 09日

    ははぁ~ン、さては盆休みだな?
    よい休暇を

    • 匿名
    • 2020年 8月 10日

    これからは高性能レーダーと長距離射程のAAMの勝負になるって言うなら、「専守防衛」で撃たれるまで撃てない空自は絶対勝てないってことになるんじゃ?ステルスだって敵が気付かずに撃ってこなきゃこっちから撃てないんだし手の出しようがない。

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