インド太平洋関連

台湾向けに発注されたMQ-9Bの価格は約5,400万ドル、F-16Vと同価格帯

自衛隊の試験導入が決まっているMQ-9Bについて興味深い数字が登場、どうやらFMS経由で調達する台湾向けMQ-9B(SkyGuardianバージョン)の価格は約5,400万ドルで、F-16Block70/72とほぼ同価格帯だ。

参考:Contracts For May 1, 2023

通信関連や訓練・保守などのサポート費用は含まれていないので台湾が負担する取得コストはもっと高額になる

米国務省は2020年「台湾に4機のMQ-9Bを売却する可能性を承認した」と発表、最大6億ドルの取引にはMQ-9B(SkyGuardianバージョン)×4機、固定式の地上管制装置×2基、移動式の地上管制装置×2基、スペアパーツ、訓練や保守などのサポートを含まれているが、ここから台湾とジェネラル・アトミックスが交渉を開始したため最終的な取引額は不明だ。

出典:GA-ASI MQ-9 Block5の非武装バージョンPredator B

しかし米空軍は今月1日、台湾向けのMQ-9B×4機、固定式の地上管制装置×2基、スペアパーツ、支援機器などを調達するため「2億1,760万ドルの契約をジェネラル・アトミックスに授与した」と発表、これを単純に4機で割ると1機辺りの取得コストは5,440万ドルになり、米空軍が2021年に16機発注した際のMQ-9A(Block5)の機体単価4,940万ドルと比較すると妥当なのかもしれないが、通信関連や訓練・保守などのサポート費用は含まれていないので台湾が負担する取得コストはもっと高額になるだろう。

因みにNATO加盟国のルーマニアは3.21億ドルでTB2×18機を取得すると発表、1機あたりの取得コストは1,783万ドルと予想されるため「TB2はMQ-9Bの1/4程度の費用で導入できる」という意味になり、国防総省は2020年にF-16V×90機(FMS経由分)をロッキード・マーティンに49.4億ドル=1機辺り5,490万ドルで発注しているため、MQ-9Bの取得コストはF-16Vとほぼ同価格帯になる計算だ。

出典:Lockheed Martin 2023年1月に初飛行したバーレーン空軍向けのF-16V

MQ-9BとF-16Vは飛行特性も実施可能な任務も大きく異なるため、同じ価格ならF-16Vを導入した方が良いという話にはならないので注意してほしい。

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※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI MQ-9 SkyGuardian

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コメント

    • マサキ
    • 2023年 5月 05日

    ※同じ価格ならF-16Vを導入した方が良いという話にはならないので注意してほしい。

    管理人さんの注記がなければ、反射的に「同じ値段なら、戦闘もできるF16でいいじゃん」と思ってしまった。
    このサイトで色々なニュースを見て、現時点での無人機の長所は情報収集能力で戦闘機とは別のジャンルの兵器(単なる代替ではない)と分かっていたつもりだが、どうしても攻撃力ばかりに目が行ってしまった。

    10
      • 通りすがり
      • 2023年 5月 05日

      そもそも、パイロットという最も生産に時間が掛かる高コストなパーツのこと失念してる

      14
        • 名無し三等兵
        • 2023年 5月 05日

        ただ、この手の無人機には地上オペレーターと言う専任操作員が必要なので
        徘徊型自爆ドローンなどと違って厳密にはパイロット不用な無人機では無いのです。
        遠隔操縦型無人機とでも呼ぶべきでしょうな。

        5
    • ひろゆき
    • 2023年 5月 05日

    自主開発したほうが良さそう

    2
      • APFSDS
      • 2023年 5月 05日

      台湾の自主開発ドローン騰雲と併用するそうです。

      リンク

      10
        • ひろゆき
        • 2023年 5月 05日

        教えてくれてありがとう

        5
    • 2023年 5月 05日

    FMSとかいう米帝ボッタクリ商売システム利用すんのいい加減にやめようぜ
    日本も台湾も防衛力が弱くなる一方じゃないか

    4
      • ASDF
      • 2023年 5月 05日

      開発費や製造設備構築費用との関係で自国需要のためだけに自主開発するとFMSより高くなるぞ
      外販のためには経験豊富な既存メーカーと政治家・官僚の政治力をも駆使して戦うのを覚悟せねばならん

      35
        • くらうん
        • 2023年 5月 05日

        同意です。
        自国で開発製造するノウハウが少ないものについては、将来的な自主開発も視野に入れつつ当面は海外製のものを採用するのが最適。
        特に米国製兵器はその性能や相互運用性の観点からほぼ唯一の選択肢となる場合も未だ多い。

        29
      • 通りすがり
      • 2023年 5月 05日

      FMSがぼったくりって…ひょっとしてギャグ?

      7
        • 匿名希望係
        • 2023年 5月 05日

        まあ未納や遅滞やカタログの切り替わりタイミングも古いカタログしか見せないとか割とあるからね。

        6
      • ネコ歩き
      • 2023年 5月 05日

      調達機数からいっても、台湾の運用構想にはMQ-9Bが現時点での最適解なんでしょう。防衛力強化に資するから導入するんだと思いますよ。

      機体規模・飛行性能・搭載機能・時間当たりカバーエリアの観点から、MQ-9Bシリーズと比較すべきトルコ製UAVはTB2ではなくバイラクタルAkinciです。
      AkinciはMQ-9Bシリーズより安価になると言われていますが、輸出開始はいま少し先の話ですし今後の展開と評価を待たねば優劣は判断できません。

      5
    • XYZ
    • 2023年 5月 05日

    これだけ高価だと使用したい任務に投入を躊躇しませんかね?

    最近のアメリカは実験要素が高いように感じます。
    ステルス機なんかアメリカ以外で戦時にあれだけのメンテナンスが戦地で維持できるとは思えません。
    実戦で使えてなんぼなのが兵器だと思います。

    9
      • れんちゃ
      • 2023年 5月 05日

      むしろ日本みたいに戦時じゃないからリーパーを投入出来るのでは?そりゃジャンジャカ落とされる様な状況なら投入を躊躇うのも分かりますが…
      あと、最大高度を取った場合は地域紛争レベルでは手出し出来ない位置にいるのでリーパーは比較的安全だと思いますよ。それのせいでお高いとも言えるのですが。

      7
    • れんちゃ
    • 2023年 5月 05日

    日本の場合は高度な分析が必要な広大な領海&日本海における北朝鮮の沿岸や海上実験監視があるので25k-50kftの高度を取れて6000km近い距離を飛べるリーパーやシーガーディアンを導入するだけの意味があるんですよね。逆を言うと、アメリカや日本、イギリス、イタリアみたいな国以外ではそこまで重視するかは分からない装備でもあるんですが…
    安価な物や別ベクトルな物は日本の企業でも開発を進めているので、それらで代用が可能になったら入れ替えも考えるだろうし、そう心配する様なものでも導入規模でもないかと。

    21
    • TA
    • 2023年 5月 05日

    人間って性能考えたらある意味安いのかもしれん

    4
      • XYZ
      • 2023年 5月 05日

      現時点どころか、この先半世紀くらいは圧倒的に高性能かつ安いでしょうね。

      兵器と違い、国によって信じられないくらい価格差があり安い国では本当に安い。
      現在進行形でそれを武器に人命軽視でゴリ押ししている国がありますけど。

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