インド太平洋関連

米海軍が豪州の無人潜水艦を採用、ゴーストシャークに続きスピアトゥースも取得

豪海軍は超大型無人潜水艦のゴーストシャーク、大型無人潜水艦のスピアトゥース、無人水上艇のブルーボトルで構成された水上・水中無人戦力の本格運用に移行し、米海軍もゴーストシャークの採用を発表していたが、豪C2 Roboticsは1日「米海軍にスピアトゥースを引き渡した」と発表した。

参考:C2 Robotics Secures Export Sales of its Speartooth Large Uncrewed Underwater Vessel
参考:Aussie Submarine sold to US: C2 Robotics commissions first US export LUUV
参考:Josh Fagan

スピアトゥースの成功は「オーストラリアの水上・水中無人戦力はAndurilに依存しておらず、豪企業もトップティアレベルで成長を続けている」と証明している

豪国防省は4月、Andurilと豪海軍が共同開発した超大型無人潜水艦(XLUUV)のゴーストシャーク、豪C2 Roboticsが開発した大型無人潜水艦(LUUV)のスピアトゥース、豪Ociusが開発した無人水上艇(USV)のブルーボトルで構成された戦力を海洋自律システム部隊=Maritime Autonomous Systems Unitと命名し、「これは海軍がより統合され、高度なテクノロジーを駆使した未来戦力に移行する上で重要なマイルストーンになる」「これらのシステムは持続的かつ長距離にわたるISR(情報・監視・偵察)および打撃任務に最適化されている」と発表。

出典:Palmer Luckey

要するに「豪海軍は水上・水中無人戦力の試験的運用から正式部隊による本格運用に移行した」という意味で、数十隻規模で調達するゴーストシャークは世界初の量産型XLUUVであり、最大航続距離は3,700km以上、最大積載量は約11.4m³、魚雷用弾頭や各種センサーなど搭載ペイロードを変更可能な自律型水中エフェクターのカパーヘッド、自律型海底監視ネットワークシステムのシーベッド・セントリーを運用でき、有人潜水艦の代わりに軽魚雷や重魚雷を使用した対潜戦が可能な無人潜水艦だ。

豪C2 Roboticsのスピアトゥースも全長8m、航続距離2000km、長さ2.7mのペイロードベイを備え、長時間の水中作戦に対応し、大量生産と大量配備を可能にする革新的なコスト(推定25万ドル)を実現しているらしいが、Ghost Sharkほど情報が公開されていないため対潜戦が可能なLUUVなのか、ISR向けのLUUVなのかは分からないが、2025年10月「我々は豪国防省の支援を受けて国外でスピアトゥースのデモンストレーションを実施してきた」「潜在的な顧客はスピアトゥースが『箱から取り出せばすぐに使えること』に感銘を受けた」「顧客名を明かすことは出来ないがスピアトゥースの初輸出契約を確保した」と発表していた。

出典:C2 Robotics

そして1日「我々は米海軍に初めて納入されるLUUVとしてスピアトゥースの運用開始式典を行った」「スピアトゥースは情報収集、監視、偵察、攻撃といった任務において拡張性とコスト効率に優れた水中能力を提供するよう設計されている」と発表し、2025年10月に発表していたスピアトゥースの初輸出契約が米海軍だったため注目を集めている。

運用開始式典に参加してキャンベラ駐在米海軍武官のジョシュ・フェイガン大佐もlinkedinへの投稿の中で「実戦配備の準備が整った無人潜水艦のスピアトゥースを確認した」「これは単なる構想ではなく実海域に作戦投入されている実機であり、さらなる能力向上に向けた開発も進められている」「オーストラリアが海洋無人・自律システム分野の開発を全速力で推し進めていることが明確に見て取れた」「革新的な設計を真の自主防衛能力へと具現化させている」「意欲的で熟練した現地のエンジニアや技術者たちとの交流も素晴らしいものだった」「豪独自のソフトウェアとハードウェアがオーストラリアの防衛を担っていくのだ」と言及した。

出典:Anduril

米海軍はXLUUV=オルカが開発遅延を繰り返しているため、2025年4月に競合環境における作戦の有効性を最大化する新たな無人潜水艦(Combat Autonomous Maritime Platform=CAMP)の調達を発表、今年3月にゴーストシャークのベースとなったAndurilのDive-XL(ゴーストシャークとほぼ同一プラットフォーム)の採用を発表したばかりだが、米海軍がLUUVとしてスピアトゥースも採用したため、もし本格的にDive-XLとスピアトゥースが導入されれば水上・水中無人戦力市場におけるAndurilと豪企業の優位性は盤石なものになるだろう。

無人潜水艦分野の研究・開発は米国、英国、フランス、日本、韓国が先行していたにも関わらず、後発のAndurilと豪企業が一気に先行国を追い抜いてしまったのは「リスク覚悟で自社資金による開発」「デュアルユース技術と市場で入手可能な商用部品」「早く試して改善点をフィードバックしてもらうという開発体制」のおかげで、これらの特徴は伝統的な防衛企業にはない発想だ。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith

さらに戦場の優位性はますます「ハードウェア定義型兵器」から「ソフトウェア定義型兵器」に比重を移しており、Andurilはゴーストシャーク量産時に発表した声明の中で以下のように述べている。

“未だに世界中の海軍は自律性が海中戦にどのような変革をもたらすかを模索中で、断固たる行動に出た海軍はほとんどないが豪海軍は例外だ。大型自律型潜水艦=ゴーストシャークは構想から生産までを3年未満でやり遂げた。彼らはゴーストシャーク戦力の調達に向けてAnduril Australiaに17億豪ドルの契約を正式に授与した。既にオーストラリアでゴーストシャークの量産は始まっている”

出典:Anduril

“この大胆な成果はスピードと能力追求のリスクを豪海軍がAndurilと共有すると決断したことで実現し、豪海軍は従来の調達方法に依存せずゴーストシャークの開発に多額の資金を投入してくれた。彼らがここまでリスクを冒す理由も明白だ。オーストラリアの自国海域は長年に渡って中国海軍の直接的な脅威に晒されており、ゴーストシャークの量産開始は自律的な海洋戦力自体の幕開けを意味し、差し迫った安全保障上の問題に対処する自律型海洋兵器の可能性を示す画期的な機会になるだろう”

“ゴーストシャークは産業面でも重要な教訓をもたらした。豪海軍とAndurilは互いのプロセスに互いの人員を組み込んで真の協働を実現した。端的に言えば進歩を達成するのにシステム全体を刷新する必要はないが、創造的で決断力があるリーダーシップは不可欠で、ゴーストシャークの成功は従来の調達方法=10年単位の計画や予算サイクルに頼らなくても「手頃な価格で高性能な海中戦力を数年で実現できる」と証明している。但し、Andurilもゴーストシャーク開発において重大なリスクを受け入れている”

“豪海軍と正式契約を交わす数ヶ月前、Andurilは自社資本を投じてUUVのスタートアップ企業=Dive Technologiesを買収した。我々がもつソフトウェアとDive Technologiesの設計が組み合わさることで強力な相乗効果が生まれると信じていたからだ。Dive-LDやDive=XLから発展したゴーストシャーク開発は「緊急性、革新性、連携が集結した時に何が起きるか」を証明している。海中戦の将来は決断が遅く、アプローチが煩雑で、必要以上に精巧である必要はない”

さらにスピアトゥースの成功は「オーストラリアの水上・水中無人戦力がAndurilだけに依存したものではない」「水上・水中無人戦力を供給する豪企業がトップティアレベルで成長を続けている」と証明しており、米海軍がスピアトゥースを採用したこともラッキーパンチではないはずだ。

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※アイキャッチ画像の出典:C2 Robotics

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コメント

  • コメント (11)

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    • おもち
    • 2026年 5月 03日

    オーストラリア相変わらず凄いなぁ。
    こういうのを見ていると有人艦艇の建造はからっきしなのに何故無人艦艇は真逆なんだろう?
    不思議だ。

    13
      • ドゥ素人
      • 2026年 5月 04日

      有人の場合はやはり人命優先な分だけ慎重にならざるをえませんが、無人の場合は「とりあえずやってみる」ができる分だけアドバンテージがあるのではないでしょうか?
      あとは豪では失敗を「成功の確率を上げる部分的な成功」と考えられる人が責任者でいるのかもしれません

      14
    • AKI
    • 2026年 5月 03日

    空母が戦艦から海戦の主役を奪ったように、UUVがウヨウヨいる海域には駆逐艦が近づけなくなる未来も近いですね。
    恐ろしいペースで駆逐艦を建造する中国には、この分野で勝つしかないというか、勝てなくてもお互いに接近拒否出来る環境を作りたいところ。

    23
      • 名無しのILOVEJAPAN
      • 2026年 5月 04日

      中国のAD2戦略に対する有効な対抗策、と言うか、シーレーンの防衛に資する兵器に一番近いかも知れませんね?
      今のところはですが?
      この世界では日進月歩、と言うか、イタチごっこですから、いつまでその有効性が続くかは分かりませんが?
      中国の野望と傲慢な七段階線の赤い舌、台湾侵攻、シーレーンを守る為に日本に必要な技術だと思いました。
      豪との技術提携や一定数の採用によるリバースエンジニアリングを考えてみても良いのではないかと?
      政府や自衛隊がどう考えてるか?それ次第ですが。

      13
      • nachteule
      • 2026年 5月 04日

       そんな事は無いと思いますよ、航空機やミサイルが発達したからと言って有人艦が全く接近出来無い訳でも無い。陸上車両がドローン対策したようにアンチ魚雷装備の性能向上とかはアクティブ/パッシブ共に発展するでしょう。恐らくAN/SLQ-25や曳航具4型は艦の針路とかとシンクロ出来るように自走式のUSV(モノによっては可潜機能になるかもしれない)に代わるでしょう。エネルギー源は電力ならkw級ワイヤレスかワイヤード、もしくはハイブリッド駆動とかになるかもしれない。
       水上艦にサイドスキャンソナーが装備されるとか曳航式ソナーが発展するとかも有り得そうですし、艦隊の先陣を切る潜水艦みたいな役割を高性能なUUVが行う事になるかもしれない。新しいモノが出てくるなら当然対抗手段も出てきて当たり前の世界ですよ。

       

       

      1
    • 無印
    • 2026年 5月 03日

    アメリカは、海外から艦艇を導入するにはしがらみがあって無理っぽいのに、無人潜水艦は例外なんですかね?

    4
      • 航空万能論GF管理人
      • 2026年 5月 03日

      AndurilはゴーストシャークのベースとなったDive-XLの製造ラインを米国に持っています。今回、米海軍が取得したスピアトゥースはオーストラリアで製造されたものですが、もしスピアトゥースを本格的に大量調達すると決定すれば、恐らくC2 Roboticsは米国国内で製造拠点を構築する可能性が高いですね。さらに付け加えるならAUKUSのTier2で何等かの特例や優遇があるのかもしれません。

      あと米海軍艦艇の国外建造(上部構造の主要部品製造も含む)を禁止したバーンズ・トレフソン法は無人潜水艦には適用されません。

      バーンズ・トレフソン法が制定された1960年代には無人潜水艦は存在しないため米海軍艦艇は有人艦艇を想定しているのが明白な上、無人潜水艦は法律上「Naval Vessel=海軍艦艇」ではなく「Unmanned Maritime System=無人海洋システム」と扱われるためバーンズ・トレフソン法は適用されません。

      32
        • 無印
        • 2026年 5月 03日

        なるほど~、詳しい説明ありがとうございます。

        9
        • 名無し
        • 2026年 5月 03日

        一旦無人艦艇として国外で造船されたモノを、米国内で有人化の艤装(偽装)を行えば、バーンズ・トレフソン法回避になるのかな?
        などと解説を読んでいて思っちゃいました。

        1
    • 足柄
    • 2026年 5月 03日

    空のラジコンはペイロードが大したことないから許されてるけど
    海のラジコンは成りすましテロが捗りすぎて不味いな

    4
    • NHG
    • 2026年 5月 04日

    いいなぁ
    もがみが豪海軍に採用されたのが省力化(少人数化)で、その究極ともいえる無人化なども注力しないと次はないかもと思えてくる
    陸も空も海も無人化ガンバレよ自衛隊

    5

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