インド太平洋関連

米英豪は無人潜水艦向けペイロードを共同開発、豪原潜取得にも変更あり

米国のヘグセス国防長官、英国のヒーリー国防相、豪州のマールズ国防相は「AUKUS協定の下でセンサーや兵器システムといった無人潜水艦向けペイロードを共同開発する」と発表、豪州のバージニア級原潜取得も中古艦ブロックIV+新造艦ブロックVIIの組み合わせから中古艦ブロックIVのみに変更された。

参考:Cutting-edge underwater tech for AUKUS forces to be developed through landmark partnership
参考:Joint Statement, AUKUS Defense Ministers’ Meeting
参考:日英防衛相会談について

米英豪がUUV向けペイロードを開発するならUUVのプラットフォームは実用化・量産化済みのゴーストシャークやスピアトゥースになるかもしれない

米英豪が締結したAUKUS協定の協力範囲は「原潜調達分野における協力=Pillar-I」と「先端技術分野における協力=Pillar-II」に分かれ、前者には豪原潜取得支援や原潜建造・保守に関わるサプライチェーンの構築、後者には先端技術(極超音速ミサイル、サイバー、AI、量子など)の共同開発が含まれており、米国のヘグセス国防長官、英国のヒーリー国防相、豪州のマールズ国防相はアジア安全保障会議が行われているシンガポールで「AUKUS協定のPillar-IIの下でセンサーや兵器システムといった無人潜水艦=UUV向けペイロードを共同開発する」と発表した。

共同声明はUUV向けペイロードについて「AUKUSパートナーの重要な海底インフラの保護、最先端の監視、偵察、攻撃能力の展開、兵站作戦の実施、対潜水艦戦、対水上艦戦、機雷対策、電子戦、沿岸海域での機動における優位性の強化を大幅に向上させることを目的としている」と説明し、米英豪はインド太平洋地域と欧州大西洋地域に配備する無人潜水艦戦力に共通のペイロードを採用することで大幅なコスト削減を実現したいらしい。

説明が簡素なので無人潜水艦=UUVの種類やサイズについては曖昧だが、おそらく今回言及されたUUV向けペイロードとは超大型無人潜水艦=XLUUVや大型無人潜水艦=LUUV向けのものである可能性が高く、米国(Echo VoyagerやOrca)や英国(MantaやProject Cetus)は超大型・大型無人潜水艦の研究開発で先行していたものの、豪州と2022年にGhost Shark(ゴーストシャーク)プログラムを立ち上げ、アンドゥリルと契約した「3年以内=2025年までに3隻のプロトタイプを手に入れる」という野心的なスケジュールを掲げた。

出典:Anduril

豪州とアンドゥリルは何年も研究開発で先行した米国と英国を追い抜き、世界で初めて超大型無人潜水艦の実用化と量産化に成功。コンロイ国防産業相は2025年9月「アンドゥリルは予算超過なしに3隻のプロトタイプを予定よりも早く納品した」「海軍向けにゴーストシャークを数十隻調達する」「最初の1隻目は2026年1月に納入予定だ」と、Andurilも「未だに世界中の海軍は自律性が海中戦にどのような変革をもたらすかを模索中だが、我々は大型自律型潜水艦構想を3年未満でやり遂げた」「既にオーストラリアでゴーストシャークの量産は始まっている」と表明し、ゴーストシャークの初号機は予定通り納入されている。

これを受けて豪国防省は2026年4月「Andurilと豪海軍が共同開発した超大型無人潜水艦(XLUUV)のゴーストシャーク、豪C2 Roboticsが開発した大型無人潜水艦(LUUV)のスピアトゥース、豪Ociusが開発した無人水上艇(USV)のブルーボトルで構成された戦力を海洋自律システム部隊=Maritime Autonomous Systems Unitと命名した」と発表し、世界で初めて水上・水中無人戦力の本格運用に移行しており、米海軍は超大型無人潜水艦=Orcaの開発に行き詰まったため、ゴーストシャークとスピアトゥースを取得してテスト中だ。

出典:C2 Robotics

英国はProject Cetusで開発した超大型無人潜水艦=エクスカリバを2025年2月に進水させたが、これは技術検証機で量産化する予定はなく、エクスカリバのテスト結果に基づいて実用タイプの超大型無人潜水艦を別に開発する予定だ。これとは別に防衛産業界主導でBAEシステムズとカナダ企業が超大型無人潜水艦=ハーンを開発してテスト中だが、まだ顧客を獲得できていないため微妙な立ち位置にあり、米英豪がUUV向けペイロードを開発するならUUVのプラットフォームは実用化・量産化済みのゴーストシャークやスピアトゥースになるかもしれない。

さらにAUKUS協定のPillar-I=豪州の原潜取得に関する計画にも変更が加えられ、従来のロードマップでは2027年頃を目処に米英の原潜が西オーストラリアでローテーションを開始、この取り組みを通じて豪州は原潜運用に不可欠な産業基盤や能力を確立、2030年代に米国からバージニア級を3隻購入、2040年代に米戦闘システムを搭載する英国設計のAUKUS級原潜を取得する予定で、米国から購入するバージニア級については2032年と2035年に米海軍が運用した中古ブロックIV×2隻の移転、2038年に新造艦のブロックVIIを売却することになっていた。

出典:U.S. Navy photo by John Narewski/RELEASED

共同声明は「豪州はサプライチェーン管理、運用および保守要件を簡素化し、コスト効率を最大化することでのバージニア級調達を合理化し、中古艦ブロックIVと新造艦ブロックVIIの組み合わせではなく中古艦ブロックIVを3隻取得する」と説明し、米国からの原潜取得をブロックIVに統一することで運用・保守を簡素化=ライフサイクルコストを圧縮したいのだろう。

ちなみに、防衛省は30日「シャングリラ会合出席のためシンガポールを訪問中の小泉防衛大臣はヒーリー英国防相と会談を実施し、日英防衛協力の着実な進展を歓迎するとともに次期戦闘機共同開発プログラム=GCAP を含む日英防衛協力のさらなる強化に向けて、今後も緊密に連携していくことを確認した」と発表。

Edgewingが2026年4月に発表した「初のGCAP国際共同契約の締結」は、本来予定していた複数年契約ではなく6月末までのつなぎ契約に過ぎず、これは英国のGCAP向け資金の拠出に必要な財政的裏付けが難航しているためで、選挙に大敗したスターマー政権による国防費増額(180億ポンド)と国防投資計画の5月中発表は不発に終わり、現在は7月7日~8日にトルコで開催されるNATO首脳会談に先立ち「国防費増額と国防投資計画を同時に発表する」と予想されている。

スターマー政権は国防費増額と国防投資計画の財政的裏付け=財源確保を巡って財務省と対立しており、スターマー首相も大敗した選挙戦の後始末、労働党内からの批判、党首選への圧力に晒されて、もはや国防費増額と国防投資計画について議論している場合ではないが、NATO首脳会談に向けてGDP比3.5%への道筋も示さなければならず、政治的スケジュールは本当にギリギリの綱渡り状態だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Secretary of War Pete Hegseth

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コメント

  • コメント (7)

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    • Z
    • 2026年 5月 31日

    日本も英国も国防に関しては、綱渡り状態が続きそうかな?

    2
      • 武蔵野
      • 2026年 5月 31日

      統一地方選で大敗し死に体のスターマー政権は言うに及ばず、衆院選で圧勝したとはいえ長期政権を見据え経済成長と物価高対策を両輪で進めなければならない高市政権も、社会保障を削減してまで軍事費増額するなんて政治的に出来ないですし、するべきでもないと思います。

      6
        • 負け惜しみは誰だ
        • 2026年 5月 31日

        消費税は、1%ごとに約2.5兆円の税増収が見込まれるそうです。一方、防衛を名目GDPの 3.5%にすると約21兆円になるそうなので、ざっくり消費税を8. 4%ほど増やせば賄えます。

        ということで、消費税を現在の10%から 19%にすれば良いんじゃないでしょうか(それによる景気減退は起きることは承知の上で)。

        4
          • 武蔵野
          • 2026年 5月 31日

          今の経済状況で大幅な消費増税など有り得ませんし、歴代最長政権が2回に分けてやっと5%上げたことを考えると政治的にも不可能と言って良いでしょうね。

          19
    • YF
    • 2026年 5月 31日

    AUKUSのオーストラリア、原潜取得計画は大分実現可能な案に修正してきましたね。同型艦3隻に統一することで補給・整備・乗員訓練を効率化でき、導入コストも大幅な節約になるらしいですが、AUKUS計画全体の総事業費を大きく変えるほどではないとの事なので、まだまだ紆余曲折ありそうです。

    13
    • あばばばば
    • 2026年 5月 31日

    アメリカの原子力潜水艦を中古で購入と聞いて「現状渡し、ノークレーム、ノーリターン」で整備されてない物が来るんじゃ
    もしくは引渡し前にドック入りさせるとして、何年後に引き渡されるのだろうか

    3
    • 中村
    • 2026年 6月 01日

     アメリカの原潜の建造ペースが上がらない限り
    、使える原潜の所属が移るだけで総数は変わらないって噺ですね。

     アメリカから買う以外に現実的な選択肢が無いが、アメリカに増産する余裕はまったく無い。日本の原潜保有に関する議論も此処に終始すると思います。

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