インド太平洋関連

トルコが狙うアジアの無人機市場、マレーシアもトルコ製UCAVを選択

トルコとイスラエルはアジアの無人航空機市場でしのぎを削っており、マレーシアは9日「トルコ航空宇宙産業が開発したAnkaを調達する」と発表したため注目を集めている。

参考:Malaysia picks Turkish defense firm in drone deal

顔ぶれが変わらない戦闘機市場に比べてUCAV市場のラインナップは非常に華やかで、MQ-9が絶対的な強者ではないという点が面白い

安倍元首相の国葬参列のため来日したトルコのチャブシオール外相は「日本が武装可能な無人航空機(UCAV)を含むトルコ製装備品を購入したいのであれば、そのニーズに応えることは我々の喜びになる。マレーシアやインドネシアなどのアジア諸国もトルコ製装備品に強い関心を示している」と述べていたが、マレーシアはMALE-UAS調達機種にAnkaを選択した。

MALE-UASとは中高度を長時間飛行できる無人航空機のことで、有名どころで言えば米国製のMQ-9、MQ-1C、トルコ製のTB2、Akinci、Anka、Aksungur、Karayel、イスラエル製のHermes450、Hermes900、HeronTP、HeronMK.IIなどが該当し、マレーシアが選択したのはトルコ航空宇宙産業が開発したMQ-1クラスの無人航空機「Anka/アンカ」だ。

トルコ航空宇宙産業が2010年に非武装のISR向けUAVとして実用化したAnkaは改良が重ねられ、最新モデルのAnka-Sは衛星通信に対応したUCAVに生まれ変わっており、TB2ほど注目を集めていないがトルコ軍、チェニジア軍、カザフスタン軍(共同生産)に採用され、マレーシアからも受注を獲得したためアジア進出においてはTB2で有名なBaykarより先行している。

出典:Ronite/CC BY-SA 4.0

個人的に興味深いのはパキスタン(TB2、Akinci、Shahpar-2)、インド(Hermes900)、タイ(Hermes900)、カザフスタン(Anka)、フィリピン(Hermes900)、韓国(MUAV/2023年量産開始)、台湾(MQ9と騰雲II型/2023年量産開始)といったアジアの国々がMALEタイプのUAV/UCAVを次々と導入している点と、トルコとイスラエルがアジアの無人航空機市場でしのぎを削っている点だ。

主要なNATO加盟国(英国、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、スペイン、ドイツだけはHeronTPを選択)はMQ-9を選択しているものの、ポーランドやルーマニアなどはTB2が食い込み始めており、米国の影響力が及びにくいアジアでは導入コストが高価で運用制限がつくMQ-9には人気がなく、オーストラリアとインドは決定していたMQ-9の導入を撤回している。

出典:Airbus 2022 EURODRONE

さらに欧州、ウクライナ、パキスタン、アラブ首長国連邦、エジプト、シンガポール、韓国、台湾のように独自のUCAVを開発する国(共同体)も出てきているため、顔ぶれが変わらない戦闘機市場に比べて無人航空機市場のラインナップは非常に華やかで、米国製のMQ-9が絶対的な強者ではないという点に面白みを感じてしまう。

因みにインドネシアは進めていた国産UCAV「Black Eagle」の開発を最近中止したため、関係の深いトルコからUCAVを導入する可能性が高いと管理人は予想している。

関連記事:来日中のトルコ外相、UCAVを含むトルコ製装備品の導入を日本に提案か
関連記事:カザフスタン、MQ-1Cに匹敵するUCAVアンカをトルコと共同生産
関連記事:インドネシア、国産UCAV向けの精密誘導兵器をトルコと共同開発
関連記事:オーストラリア国防省、MQ-9B SkyGuardian導入計画の中止を発表
関連記事:タイ海軍、イスラエルからヘルメス900×7機を1.2億ドルで導入
関連記事:インド、1機1億ドルもするMQ-9B調達を保留して国産UCAVを優先

 

※アイキャッチ画像の出典:Turkish Aerospace Industries

ウクライナを支援する西側諸国、統合された多層式防空システムを提供前のページ

英国がウクライナ支援を発表、数週間以内にAIM-120AMRAAMを提供次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    タイ議会がF-35A調達資金を来年度予算から除外、空軍は予算復活を訴える

    タイ議会の下院は2023年度予算からF-35Aの調達資金を除外したが、…

  2. インド太平洋関連

    インドに最適な戦闘機は「グリペンE」? 技術移転が可能でコストは「ラファール」の半分

    スウェーデンに拠点を置く航空機・防衛産業企業のサーブ社は、自社の戦闘機…

  3. インド太平洋関連

    フィリピンを巡りインドはミサイルを輸出、中国は10億ペソを超える軍事機器を寄贈

    中国は南沙諸島の領有権で対立するフィリピンに10億ペソを超える軍事機器…

  4. インド太平洋関連

    弾道ミサイル迎撃も可能? 韓国、ミニイージス艦と呼ばれる「次期駆逐艦」設計に着手

    韓国型次期駆逐艦(KDDX)とは、韓国の国内技術のみで開発するイージス…

  5. インド太平洋関連

    韓国、MQ-9リーパーに相当する国産無人航空機「MUAV」の量産を開始

    現在海外市場で最も人気が高い離陸重量5トン前後の中型無人航空機市場に、…

  6. インド太平洋関連

    抜け目のない韓国、F-15Kの近代改修を行うなら今直ぐ発注すべき

    韓国の電子戦機開発やKF-Xに関する話題や、韓国メディアによる韓国空軍…

コメント

    • ブルーピーコック
    • 2022年 10月 13日

    開発難易度が高くないなら自国で造っちゃおうって国と、採用国の多さと実績があって安いならコレで良いじゃんって国で分かれてる感じかな。
    クズルエルマのレベルになると工業基盤の無い国には辛かろうから開発国は少なくなるだろうけど。

    13
      • けい2020
      • 2022年 10月 13日

      戦時になって部品とかの入手性が下がっても、自国でコピーして生産できそうなやつなんかは
      裏側の評価ポイントになってるかもしれませんね

      2
    • 無無
    • 2022年 10月 13日

    アジア圏なのに
    笑うしかないほど蚊帳の外だから温かく見守ろう、これもなんぼかは中華の海洋進出を阻むだろう

    3
    • 名無し
    • 2022年 10月 13日

    安いんだから研究がてらトルコ製UAV我が国でも手に入れた方がいい……よくない?

    3
      • 匿名
      • 2022年 10月 13日

      多分米国から「海保でMQ-9運用し始めたけど、米国製が一番だろ?」という与圧が入るでしょうね。

      1
      • G
      • 2022年 10月 14日

      歩兵部隊運用クラスのものはそう思いますが、短距離でも滑走路が必要なクラスのものは潮風にさらされることを前提としていない(まともな防錆処理されているかどうかさえ怪しい)ことが厳しそうですね
      ですので海洋運用を前提に開発されているTB-3の仕様(敵航空戦力や海上戦力への対策含む)やコスパがどうなるか期待したいところ

      3
    • ななし
    • 2022年 10月 13日

    日本もAnkaを安価に導入するのか?

    8
      • 五月
      • 2022年 10月 13日

      Ankaが安価なのは世界広しといえわが国だけですからね^^

      1
    • 名無し2
    • 2022年 10月 13日

    無人攻撃機で島に上陸した敵兵を攻撃するなら敵艦や敵機を追い払わないと使えないし、追い払えたら島だから放置しておけば攻撃するまでもなく餓死すると思うんです。もし海空優勢取れてない状態で突っ込ませるならクズルエルマのようなある程度ハイレベルな機体でないと中国相手には島を取り合うには力不足のような。

    4
    • a
    • 2022年 10月 13日

    円安で滅びゆく我が国はトルコ製も高すぎて導入できません(泣)

    5
      • A
      • 2022年 10月 13日

      円安って強敵だねー。

      4
      • ブルーピーコック
      • 2022年 10月 13日

      通貨安で滅びるならドイツはもう死んどる

      7
    • 匿名
    • 2022年 10月 13日

    UCAVなら、日本も国内生産すればいいしゃん。

    2
    • hoge
    • 2022年 10月 13日

    日本の場合、非常時にメリケン国の協力が死活的に重要なのでMQ-9以外の選択肢は無いでしょう。
    歓心を買うという側面もあるし、反面「おいテメーんとこのクソ高えシロモノ買ってんだから判ってんな?」という恫喝もあるでしょう。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
PAGE TOP