インド太平洋関連

米印2プラス2、米国が印海軍の次期艦上戦闘機にF/A-18E/Fを提案

米国とインドは27日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をインドの首都ニューデリーで開催、長年保留されてきた「地理空間協力のための基礎的な交換・協力協定:BECA」に署名することで合意した。

参考:US offers F-18 fighters to India for Naval requirement

本命は海外製か?それとも国産なのか?謎が多い印海軍の新型艦上戦闘機調達

このBECA(Basic Exchange and Cooperation Agreement for Geospatial Cooperation)と呼ばれる協定に署名することで米国とインドは精度の高い地図、航海用海図、航空図、測地、地磁気、重力等のデータを共有することが可能になり、インドは米国が保有する軍事衛星や各種センサーが収集したデータを活用することで中国やパキスタンなどの動向を正確に知ることができ、ミサイルやUAVを使用した攻撃も精密さを向上させることができる。

この辺りまでは日本メディアも報じているが、今回の2プラス2による合意内容にはインドの米国製兵器購入に設定されている上限200億ドル(約2.1兆円)の引き上げも含まれており、米国側は印海軍が調達を予定している艦上戦闘機にボーイング製のF/A-18E/F BlockⅢとMQ-9Bシーガーディアンの組み合わせを提案したらしい。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Chris Cavagnaro/Released

輸出可能な第5世代戦闘機F-35Aや低コストの第4.5世代戦闘機F-16Vを揃えているロッキード・マーティンとは異なり、F-35Aよりも高価な第4.5世代戦闘機F-15EXと価格設定が中途半端で艦載機として開発されたF/A-18E/Fで勝負するボーイングは戦闘機受注の大半を米空軍と米海軍に頼っているため、米国政府もボーイング救済のため2プラス2の場でF/A-18E/F採用をプッシュしたのだろう。

ボーイングも印海軍の需要をモノにするためF-35B開発時に使用されたスキージャンプ台(パタクセント・リバー海軍基地)を使用してF/A-18E/Fの発艦テストを実施、スキージャンプ方式を採用した印海軍の空母にF/A-18E/Fは完全に適合したと主張するなど着々と印海軍への提案準備を進めている。

しかし最近になって印海軍の次期艦上戦闘機に強力なライバルが浮上した。

出典:NDTV

インド政府は国産戦闘機「テジャス」の海軍仕様機が空母「ヴィクラマーディティヤ 」への着艦に成功したことを受けて双発タイプの新型艦上戦闘機を10年以内に開発することを正式に決定したため、印海軍の次期艦上戦闘機は事実上F/A-18E/F、ラファール、国産双発艦上戦闘機の3機種で争われることなる可能性が高く、競争入札の開始が遅れれば遅れるほど国産機の開発が進み海外機は不利になることが予想される。

ハッキリ言ってF/A-18E/Fが印海軍の需要を逃せば、もはや同機を導入する国(導入を口にしたドイツを除く)は存在しないかもしれない。

そのため印海軍が次期艦上戦闘機調達のための競争入札を「いつ開始するのか?」に注目が集まっているが、インドの防衛機器導入計画はあやふやなので国産機開発の目処がつくまで競争入札の開始を遅らせることは十分ありえる。

果たして印海軍の本命は海外製の艦上戦闘機なのか?それとも国産の艦上戦闘機なのか?

管理人的には後者の可能性が高いのではないかと思っている。

関連記事:インド版F/A-18E/Fを開発? 印政府が海軍向け双発戦闘機の開発承認
関連記事:ボーイング、スキージャンプ台を使用したF/A-18E/Fの発艦テストを実施中

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Lt. Cmdr. Darin Russell/Released

カナダ政府、トルコ製UAV「バイラクタルTB2」のせいで大ピンチ前のページ

空自機を狙うことも可能、ロシアが千島列島に「S-300V4」を初展開次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    開発中のステルス無人機に搭載か? 韓国、高性能ターボファンエンジン開発に着手

    韓国の防衛事業庁は30日、無人機に搭載する高性能ターボファンエンジンを…

  2. インド太平洋関連

    また同じ箇所が故障? 韓国海軍、新型フリゲート艦「大邱」の推進システムが再び停止

    韓国メディアは、今年1月に故障した韓国海軍の最新鋭フリゲート艦「大邱(…

  3. インド太平洋関連

    オーストラリア海軍の再編計画、汎用フリゲートの検討候補にもがみ型が浮上

    オーストラリアのアルバニージー政権は海軍再編に関する分析結果を発表、こ…

  4. インド太平洋関連

    米国に武器禁輸を含む制裁を課されたカンボジア、米国製兵器は顧客の独立性を毀損するだけ

    カンボジアのフン・セン首相は今月10日、自国に対する経済制裁(武器禁輸…

  5. インド太平洋関連

    計画から40年後に結実!インド、国産戦闘機「テジャスMK.1」を実戦配備

    インド空軍は完全作戦能力に対応した国産戦闘機「テジャスMK.1(FOC…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    仮にF/A-18が採用されたら、元ロシア空母の上にアメリカ戦闘機が載る事になるのか
    すごい時代になるな

    20
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      それはないと思うよ
      でも見たいのよ(笑)この矛盾を許してくれ

      1
      • 匿名
      • 2021年 7月 04日

      F/A-18って白人国家専用の機体だろ。無いんじゃないかな。採用例はA/B型が唯一タイ王国にだけ。でもタイは日本同様に王室あるからな。

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    エンジン音の五月蝿さにインド人もびっくり

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    テジャス君は紆余曲折あったから頑張って欲しい感じはあるけど性能的にどうなんだろ

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      身内であるはずのインド空軍から「絶対採用したくない!次期戦闘機候補に名前挙げることすら許しがたい」と言ってたのでまあそのお察しということで・・・

      19
        • 匿名
        • 2020年 10月 30日

        あ、そんなレベルか。でも時間はある腹積もりだろうからもうちょいマシに仕上がるのでは?
        やはりライバルはKFXの艦載機バージョンか……(ねぇよ)

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    ラファールなら今までの資産がほぼそのまま使えるし、国産機なら色々大きな意味があるしで。
    そんな中でわざわざF-18を選ぶ必要性が薄いからなぁ。

    12
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      インド政府にとってはわざわざF/A-18E/Fを採用する必要性は薄いのでしょうが、アメリカ政府とボーイングにとっては倒産を避けるためにF/A-18E/Fの売り込みに必死なのですよ。
      インドを支援するためではなく、アメリカの利益のためにF/A-18E/Fを提案しているのです。
      なんたってアメリカ政府は、「アメリカ第一主義」しか考えていませんから。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    インドにテジャスの完成を待っている時間はあるのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      国産空母建造自体がインド時空に突入しているので、艦載機だけなら割と余裕が有るのではとも

      7
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    魔改造しとはいえキエフ級や国産の新型空母の規模でスパホは厳しいでしょう。
    搭載機数が少なくなるだろうし、スキージャンプ運用下では制限が多く
    大型の機体を活かせないどころか足枷になる。

    5
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      エレベーターも格納庫も要改修では…

      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      中国のJ-15でも指摘されてますが、スキージャンプ式ではペイロードが制限されるでしょ。
      F/A18E/Fがスキージャンプ発艦に適合を確認したとしてもその条件が提示されないと。
      同じことはテジャスとラファールにも言えることですが。

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    スキージャンプ発艦になるとはいえ
    F-35Cはどちら側も話題に出さなかったのかな?

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    インド時間ペースにずるずると巻き込まれてしまうと、先にボーイングのほうが倒れないか心配
    本命の国産機のめどがたつまで引き延ばしだよ、それがインド

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    兵器をできるだけ国産化するのはいいことではあるんだけど
    中国の脅威がもう国境までせまってるのですでに完成してる機体を採用するほうが良いのでは
    でも実戦でスキージャンプ運用されたこと無いF/A-18を信用できるのかわかんねえし難しいよな

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      対中国なら、艦載機は要らないのでは。

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    インドの時間はゆっくりと進むし、
    現在のインド・中国の紛争でも主力は陸軍、空軍
    海軍(艦載機の選定も含めて)の増強が差し迫るって状況はもっと先の話だと思います。 なのでインドとしては当分は放置では?

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    米海軍の艦載機って、新規開発とF18アップデートの両方とも議会に拒否されてなかったっけ?
    海外売込みは無理があるでしょうよ。いつまであるかわからない機体なんて採用できないと思うけど。
    T7採用してもらったんだから、もう少し腰を落ち着けて商談すれば良いとは思うけどね。
    米海軍と議会へのロビーで方向固めてもらうのが先じゃないかな?

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    テジャスって、あのデルタ翼で艦上運用は極めて厳しそうですが、どうなんでしょう?

    3
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    管理人さん、今朝の産経新聞の一面に対する見解も是非お聞かせください。
    ちなみの国防連の佐藤正久さんがイージスアショア代替え案について、自民党内部の議論をTwitterでちょっとだけ解説してました。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      自分のTwitterでやってろ

      14
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      あのヒゲ、お口だけだしな
      おっさんとはいえ議員としてはまだ新人だから力が無いのか知らないが
      さっさと有言実行しろよ

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    整備がさらにぐちゃぐちゃになって稼働率がさらに下がるだけだろ…

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    最近艦載機の新規開発が来てるな!
    まぁ、大体ちうごくのせいなんだけどな!

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    インドはカレーを作っていればよろしい。空母などを作って覇権を追求するな。中国を本気で怒らせたいのか?

      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      ほう、中国が怒ったらどうなるって言うんだ? 怒りたければ怒ってみろよ。
      クアッド同盟を相手に戦争するつもりか? 戦争になったとして、中国が勝つ見込みは薄いんじゃないのか?

      9
      • 匿名
      • 2020年 10月 31日

      中国人はもっとカレーの美味しさを追及してインドとの親和を深めなさい

    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    F−18ってエンジンが低出力で古臭い印象だけど機体自体は悪く無い印象
    エンジンを新たに互換性持たせて改良出来れば有りなんだろうけど、そういう話聞か無いからまず売れないだろうね

      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      >F−18ってエンジンが低出力で古臭い

      KF-Xに謝れwwwwwww

    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    F/A-18E/Fは、単体の性能によってではなく、友軍他機種とのコラボで戦う艦上機だし、
    スキージャンプ発進に適するように作られていないし、大型機だからサイズが合わないし、
    厳しい商談じゃないかな、と。ボーイングは値段を勉強するのかな?それでも厳しいかw

    • 匿名
    • 2020年 11月 01日

    F/A-18E.Fはスイスに売れる可能性は残ってるんじゃない?グリペン蹴っちゃったしね。後、中進国辺りに売れる可能性はまだ有るような。F-16VとSu-30.35って強力なライバル居るけど。

    • 匿名
    • 2021年 8月 26日

    グロウラーがセットで初めて魅力的な提案になるけど、ロシアからも兵器買ってるから無理だね

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP