日本関連

豪軍の衛星通信プログラム、三菱電機が参加するTeams AUSSATは受注を逃す

オーストラリア軍の衛星通信を巡る戦いに日本の三菱電機も「Teams AUSSAT」の一員として参加していたが、宇宙分野に対する「豪州最大の投資(推定30億豪ドル)」と言われていた契約はロッキード・マーティンが獲得した。

参考:Lockheed Martin to deliver Defence satellite communication system
参考:Lockheed wins race for Australia’s biggest space tender

ロッキード・マーティンの提案はA/LM2100シリーズの実績に加え、現地産業界への投資計画でも他社を上回っていたのかもしれない

オーストラリア軍の衛星通信は米軍のWideband Global SATCOM(WGS/米国、カナダ、豪州、ニュージランド、デンマーク、ルクセンブルク、オランダの7ヶ国が利用)と商業衛星に搭載された通信機能でカバーされているのだが、無人戦力の普及が進むと予想されている将来に備えて「独自の大容量高速通信に対応した軍事向け通信衛星」を熱望しており、30億豪ドル/約2,450億円を投資してJP9102/SATCOMプログラムを進めていた。

出典:Boeing Australia

この入札にボーイング、エアバス、ロッキード・マーティンといった防衛産業界の巨人に加え、豪オプタスが主導するTeams AUSSATも参加しており、昨年2月に「日本の三菱電機がTeams AUSSATに参加する」と発表、オプタスのロスマリンCEOも「今回の協力は長年の両社間で培われたパートナーシップに基づくもので、レイセオン、タレス、三菱電機が提供する最高の設計・製造・打ち上げ環境を確保できたことに感激している」と発言。

三菱電機・オーストラリアのジェレミー・ニーダム社長も「オーストラリアと日本の防衛協力がかつて無いほど強化されている現在、この関係を拡大するチャンスを得たことを嬉しく思っている」と述べていたが、豪国防省は約1年間に及ぶ検討の末「9102プログラムの勝者にロッキード・マーティンを選択した」と発表したため、Teams AUSSATは30億豪ドルとも言われる契約を逃してしまった。

ロッキード・マーティンは「契約を受注すればビクトリア州に本プログラムを進めるための現地拠点を開設して多くの雇用をもたらす」と約束、今回の決定を受けてInovor Technologies、EM Solutions、AV-Comm、Linfox、Shoal Group、Ronson Gears、Calytrix Technologies、Conscia、Clearbox Systems、DXC、Blacktree Technologyといった現地企業が計画参加を表明しており、ロッキード・マーティンの提案はA/LM2100シリーズの実績に加え「現地産業界」への投資計画でも他社を上回っていたのかもしれない。

関連記事:豪軍の衛星通信を巡る戦いに三菱電機が参入、ボーイング、エアバス、ロッキードと競合
関連記事:富士通、エアバスやタレスと共同で英陸軍の次世代戦術通信システム受注に挑戦

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain Wideband Global SATCOM

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コメント

    • 通りすがり
    • 2023年 4月 03日

    近年の米兵器大量導入の流れからしてロッキードがボーイングだろうなとは思ってた
    それにしてもボーイングは大変そう
    軍事はロッキード、民間はエアバスにごっそりもってかれて、体力持つんだろうかって気が…

    16
    • まつ
    • 2023年 4月 03日

    三菱の打ち上げ失敗がひびいたのかもね。
    信用喪失。

    3
    • まつ
    • 2023年 4月 03日

    三菱の打ち上げ失敗 響いてるのかもね。

    4
      • 名無し
      • 2023年 4月 03日

      三菱電機と三菱重工の区別がつかないとは…

      74
    • ブルーピーコック
    • 2023年 4月 03日

    潜水艦からこっち、オーストラリアは自国生産と呼び込みに心血を注いでるけど、自動車の現地生産すらしなくなったオーストラリア産業界にとって、軍事産業は降って湧いた希望なんだろうかね。

    11
    • lang
    • 2023年 4月 03日

    そもそも外国で事業ってスーパーハイリスクだと思うようになりました
    中国にインドネシアの電車取られたときはちょっと残念だったかもと思いましたが、よくよく考えると代金が払われるかもわからない、外国政府から無理難題つきつけられたり、そもそも欧米ですら最近は政治安定してないし

    これから不況期に突入するのに契約結ぶとか失敗する未来しかなさそうですし、余計なことはしない方がいいと思います

    4
      • sage
      • 2023年 4月 03日

      地震大国であることを忘れずに。さらに為替問題や各種税金、エネルギーコストと、物理的距離だけでなく国内外に分散するのもリスク回避の一つと思います。
      拡大や挑戦を諦めた企業に未来は無いと思いますが。

      10
    • 折口
    • 2023年 4月 04日

    豪州の宇宙安全保障で前から思っていたんですけど、日本が使ってる準天頂衛星システムの軌道ってちょうど豪州大陸の外周を囲むように回ってるんですよね。まぁ実質的にはGPS一本でも困らないんでしょうけど、船舶の位置評定や航空機運用等々に関してあって邪魔になるものではないので(QZSSとGPSはシステムが互換している)、軌道を共有したりシステムを共同運用する方向に話が行くといいのかもしれないですね。もちろん機密情報の共有や日本の宇宙政策の柔軟性へのハードルなど課題もある話なのですが

    5
      • ブルーピーコック
      • 2023年 4月 04日

      クアッド絡みで、気候変動対策を目的として地球観測データを共有する「日米豪印衛星データポータル」を開設しています。現在は英文かつ政府所有の衛星データのみですが。
      やっぱり気候とか地形とか天気とかって重要ですよね。何でとは言いませんが。

      7
        • 折口
        • 2023年 4月 04日

        ありがとうございます!宇宙行政関連は追ってるつもりでいたのですが、今まで全く気づきませんでした。やはり宇宙インフラは有効に、多目的に使わないとですよね…

        2
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