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Block4開発遅延、航空幕僚長が現行のF-35AにJSM運用能力はないと言及

防衛省は13日「F-35Aに搭載可能なJSMを受領した」と発表したが、森田雄博航空幕僚長は17日の会見で「まだF-35AからJSMを発射できないのか?」と質問され「JSM運用に必要なソフトウェア開発が完了していない」と説明し、現行のF-35AがJSMの運用に対応していないと認めた。

参考:2026年3月17日の空幕長会見 ノルウェーからのF35A搭載の最新ミサイル「JSM」納入の意義など

具体的な開発状況について明言できないのは、Block4のソフトウェアがいつ完成するのか誰にも分からないから

ノルウェーはF-35プログラム出資国の立場を活かし、Kongsberg Defence&Aerospace製のNSMから派生したJoint Strike Missile=JSMのF-35統合を計画、米国製のJASSMやLRASMはF-35のウェポンベイに収まるサイズではないためステルス性を犠牲にして機外に搭載する必要があるものの、JSMはF-35A/Cのウェポンベイに収まるためステルス性を維持したまま海上と陸上の目標を遠距離から攻撃することができ、ノルウェー、オーストラリア、日本、米国、ドイツがF-35A向けの巡航ミサイルとして調達を予定している。

出典:Forsvaret

ノルウェー政府は2025年4月「計画された52機のF-35Aを全機引き渡された初めての国となった」「さらにKongsberg Defence&Aerospaceからも初めてJSMが納品された」「オーランド空軍基地でJSMの備蓄作業が開始される」「JSMはF-35のウェポンベイに搭載可能な同クラスのミサイルとして唯一の存在で、ノルウェーの他にもオーストラリア、日本、米国も調達を予定している」と発表したが、問題はF-35AにJSMの運用能力が備わっているかどうかだ。

F-35への統合作業は2020年に開始され、F-35AのウェポンベイからJSMを安全に切り離すため模擬投下テストを地上で行い必要なデータを収集、2021年にF-35Aベースの特殊試験機=AF-01を使用して飛行中の機体からJSMの投下(切り離し)に成功したのだが、JSMの運用能力は「開発中のBlock4に関連している」と言われており、今のところF-35AがJSMの初期運用能力=IOCを獲得したという公式のアナウンスはなく、具体的なIOC獲得時期も明かされていない。

出典:Royal Air Force. UK Crown Copyright

英国もミーティアやブリムストーンのF-35統合を進めているものの、IOC獲得時期は当初「2020年代半ば」と報告していたが、2022年2月「早くても2027年頃になる」と、2024年1月「2020年代末になる」と遅延を繰り返しており、これもBlock4の開発遅延に関連していると言われているが、公式の詳しい説明がないので実際のところは謎に包まれている。

防衛省は令和6年度概算要求の中で「F-35A能力向上改修=JSM搭載×29機分」として234億円を計上し、最終的に294億円で予算が成立しているため、JSMの運用能力を獲得するには何らかの改修(1機あたり10億円)が必要なのは確実で、ノルウェー国防省の高官もJSM初納品について「必要なソフトウェアが供給されるまでの間、備蓄を積み上げる機会が得られ迅速な運用の基盤が築かれる」と述べており、個人的にF-35AにJSMの運用能力はまだ備わっていないと予想していた。

森田雄博航空幕僚長は17日の会見でNHKの記者が「F-35AにJSMはいつ配備されるのか」と質問すると「JSMを運用するためF-35A側のソフトウェア開発が進められている状況だ」「我が国が少しでも早くJSMの運用を開始できるよう調整を進めていく」と、さらに「では、現時点でF-35AからJSMを発射できないということなのか?」と質問されると「そうですね、 適切な運用といったところであります。ですので、機体側のソフトウェア開発を待って運用することになると考えております」と回答。

さらに記者が「これは(F-35AでJSMを運用するための)ソフトウェア開発がまだと認識してよろしのか?」と質問し、森田航空幕僚長も「おっしゃるとおりだ」と認めたため「分かりました。今のところ(F-35AがJSM運用)能力を獲得したとはいえないということでよろしのか?」と質問すると、森田航空幕僚長は10秒以上も考え込み「JSM自体の、えー、そのフルの能力を発揮できないといった認識であります」と回答。

記者が「では、その(F-35AでJSMを運用するためのソフトウェア)開発がいつ頃終わるのか目処がついているのか?」と問いただし、森田航空幕僚長は「重ねてになりますが、我が国が少しでも早くJSM運用を開始できるよう、引き続き米国政府等と調整を進めてまいりますが、具体的な開発状況に関する事項につきましては他国との関係もあるため、お答えできないことをご理解いただきたいという風に思います」と述べたため、日本でも公式に「現在のF-35AにはJSMの運用能力がない」と確認された格好だ。

森田航空幕僚長が「F-35AがJSM運用能力を獲得したとはいえないということでよろしいのか?」という質問に10秒以上も考え込んだのは、用意された資料に「この質問に対する回答」が用意されていなかった可能性が高く「JSM自体の、えー、そのフルの能力を発揮できないといった認識であります」という頓珍漢な回答になったのだろう。

出典:Forsvaret

NHKの記者は「F-35AがJSM運用能力を獲得したとはいえないのか」と聞いたのに「JSMの能力がフルに発揮できない」と回答したため、JSMとJASSMを間違える、F-35Aを35と呼ぶ記者に意味が通じてない気がする。恐らく森田航空幕僚長は「JSM自体は完成しているが機体側が対応していないので能力がフルに発揮できない」「F-35Aの高度なセンサー・フュージョンや射撃管制システムと完全に連動させた高度な戦術運用ができない」と言いたかったのだろう。

どちらにしても言い方が間接的なだけで「現在のF-35AにはJSMの運用能力がない」と暗に認めており、具体的な開発状況について明言できないのは、Block4のソフトウェアがいつ完成するのか誰にも分からないからだ。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Matthew Arachik

米空軍のシュミット中将は2024年4月の公聴会で「Block4で予定されている多くの能力は2030年代まで実現しない」「そのためBlock4自体を再構築することになった」「再構築されたBlock4は産業界が本当に提供可能なもので構成されなければならず、必須能力の提供のみに焦点を当てる」と明かし、戦術空陸軍小委員会のウィットマン委員長も「私は過剰な約束と過小な成果にうんざりしている」「Block4は現実を反映してほしい」「現実的に何ができるのか理解すべきだ」と言及。

政府説明責任局(GAO)は2025年9月に公開した報告書の中で「Block4の再構築=アップグレード計画のダウングレード」に触れ「Block4はF135の改良と熱管理システムの能力向上を必要とせず、2031年までに実現可能な機能(電子戦、兵器、通信、ナビゲーション機能)に重点を置く」「F135の改良と熱管理システムの能力向上に依存する機能の一部は将来のアップグレードまで延期され、戦闘ニーズを満たさなくなった機能も削除される」と説明。

出典:U.S. Air Force photos by Jill Pickett

さらに「我が国だけでなく同盟国・パートナー国の安全保障にとってもF-35は極めて重要だが、生産開始から20年が経過した現在も過剰な約束と期待外れの成果を繰り返している」「国防総省は2025年秋までにBlock4の主要サブシステム調達文書を正式化する計画だ」「この文書には承認されたBlock4の能力リストが含まれる見込みだ」「現時点でダウングレードされたBlock4の推定コストは不明」「担当者は2025年後半まで新たなコスト見積もりは完了しないと述べている」「当初予定より55%も増加した開発費用165億ドルからコストがどう変化するか予想できない」とも指摘した。

2025年秋までに正式化されるはずだった「Block4の主要サブシステム調達文書」は現在も登場しておらず、本当にBlock4のソフトウェアがいつ完成するのか謎に包まれている。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Duncan C. Bevan

因みに森田航空幕僚長は会見の中で「令和9年度(2027年)にJASSM-ERが納入される予定だ」と明かしたが、これを運用するF-15J改修機について「2027年度に予定していた改修機の配備が遅れる」という報道があるものの、防衛省は報道を否定して「2027年度に配備される」と主張している。

日本がF-35AでJASSM-ERを運用するのかどうかは不明だが、JASSM-ER、LRASM、JAGM、SiAWの統合もBlock4の開発遅延の影響を受けて2030年代初頭になる可能性が高い。

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※アイキャッチ画像の出典:防衛省・自衛隊

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コメント

  • コメント (15)

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    • emp
    • 2026年 3月 20日

    アメリカはたかがミサイル載せるだけでどんだけかかるのか?
    イスラエルに統合を依頼した方が早そう

    13
      • 通りすがり
      • 2026年 3月 20日

      アメリカ基準じゃ他のプラットフォームが大量にあるし、F-35の立ち位置的にも長距離ミサイルの統合は相当優先度が低いんだろうなぁ。最悪載せなくてもいいと思ってそう。

      3
        • ななし
        • 2026年 3月 20日

        先日のイランでのF-35被弾云々の話しを受けて、長距離ミサイル統合の優先順位が高まると良いのですが。

        7
    • せい
    • 2026年 3月 20日

    日本独自でF-2に載せる方向に向かった方が早そう

    29
      • ななし
      • 2026年 3月 20日

      むしろそっちの方がBlock4よりも早くできたりして(笑)

      7
      • 2026年 3月 20日

      そうなるとF-2C/D(仮)が欲しいですね。レガホ→スパホの様にF-16の改修型として日本向けをF-2、他をF-16**で…製造は以前の日米分担では無理でしょうから欧州あたりに工場を…単発機でペイロード大なので日本以外でも需要はありそうですが…

      1
    • トクメイキボウ=サン
    • 2026年 3月 20日

    無人機に発射させようぜもう

    7
    • トーリスガーリン
    • 2026年 3月 20日

    まぁ半ば分かっていたことではあったけど、積み上げる備蓄がちゃんと使えるようになって欲しいですね

    JSMはこの通り、トマホークは搭載艦の改修が必要
    つまるところ日本が現在保有する長距離打撃能力は12式能力向上型(地発対艦) のみという感じですかね
    もう少ししたら島嶼防衛のあれが来るけどまずは教導分ですし…と思ったら26年度中には2部隊新編するの?早いですね

    19
    • たむごん
    • 2026年 3月 20日

    対艦攻撃能力の低い、現代戦闘機ですか…。

    F-2・F-15などの方がマシだったという、オチにならないことを願っています。

    極東は対中国を想定しなければならず、欧州のように時間の余裕もないですから、本当に勘弁して欲しいものですね。

    15
    • 朴秀
    • 2026年 3月 20日

    ミサイルの備蓄分を買ったと思えばまあ

    部品が腐る前に統合できるかは別問題ですが
    現状だとASM-1の方が役に立ちますね…

    18
    • YF
    • 2026年 3月 20日

    自衛隊から正式にJSMはまだ運用出来ないとアナウンスあったのは良かったと思います。
    JSMが運用出来ないのがblock4を待たないといけないのか?現行システムとメーカーとで認証が取れてないだけなのか?よくわからないのです。
    メーカー側がF-35で運用出来るとうたってる以上F-35での試射ぐらいはやってるはずですよね。
    大きさだけウェポンベイに入るの確認して後はシミュレーションで確認しただけなんですかね。
    それとも撃てるけど能力を最大限発揮出来るのがblock4待たないといけない事なのか。

    ミサイルの備蓄が増えるのは単純に良い事ですが、いつ使えるようになるかわからないミサイルというのも困ったものですね。
    輸送機使ってまで納入したので、ある程度使える目途が立ったのかと思いましたが。

    10
      • kitty
      • 2026年 3月 20日

      しかし、10秒間も返答に詰まると言うのはいただけません。
      「まだ使えませんが何か」くらい言ってのけるくらいにはなって欲しい。

      7
      • 中村
      • 2026年 3月 20日

       ウェポンベイから落とせる事は確認してるんだから終末誘導の赤外線シーカーでマーベリックの射程なら使えるとか?

       INS使って的まで真っ直ぐも可能かも知れない。

      2
    • あばばばば
    • 2026年 3月 20日

    VLSに搭載して投射するプランがあったらしい(計画中止)し、投資して護衛艦に搭載する。もしくは地上発射型の投射装置を開発してもらうというのはどうだろうか。
    弾薬を扱う所轄がややこしい事になるけど、あるのに使えないよりはましではないだろうか。
    多分F-35へのインストールよりは早くおわるだろう。

    0
    • YY
    • 2026年 3月 21日

    口ごもりに対して期待を込めた見方をすると、
    MiG-29とiPad火器管制下のHARMのように、目標を見つけて発射する事は出来る。
    が、F35のセンサー能力をフルに使った、JSMの期待する性能には到達しない。
    と言う感じであれば良いなぁ。と思いました。

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