EUが加盟国の再軍備を加速させるためSAFE融資を開始し、来年には欧防衛産業界に30兆円を越える資金が流れ込み始めるため、非加盟国の動きは慌ただしくなっており、英国やカナダに続きトルコと韓国もSAFE参加を申請、さらにEUの報道官は「日本も参加を申請した」と示唆した。
参考:EC Midday Briefing: SAFE Defence, Gaza, Russia Assets & Eurozone Q&A
参考:Canada Reaches Deal to Join EU’s Flagship Defense Program
日本がSAFEへの参加に関心を示していることは「防衛産業の活性化」「武器輸出の拡大」「日欧間の防衛産業協力」の観点から非常に興味深い動きだ
EUは欧州再軍備計画の一環として「加盟国の再軍備を加速させる融資プログラム=Security Action for Europe」を立ち上げ、これに大きな注目が集まっているのは「トリプルAに格付けされるEU債券を通じて再軍備に必要な資金を調達できる」「財政状況が厳しい加盟国にとってソブリン市場よりも有利な条件(10年間の元金返済猶予/最長45年返済)で資金を調達することができる」という点で、トリプルAに格付けされていないEU加盟国にとっては「SAFE融資を活用するれば資金調達コストを大幅に削減できる」という意味だ。

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
但し、SAFE融資を受けるには幾つかの条件(最低でも加盟国2ヶ国が共同購入するもの、購入する装備品が欧州域内で製造されていること、構成部品の域外調達が装備品価格の35%以下であること、装備品の設計権限がEU域内にあるか移転されることなど)を満たす必要があり、SAFE融資の対象になる装備品は「大きなビジネスチャンス」に恵まれるため、域外国の防衛企業にとって欧州市場にどうアクセスするかが大きな課題で、主要な米防衛企業は「欧州企業との提携」による現地生産、米国製システムの欧州化、欧州独自の戦闘管理システム統合を推し進めて欧州市場での生き残りを模索している。
逆に英国とカナダは「EUと交渉してSAFEに正式参加する(欧州域内での製造や域外調達35%以下の免除)」というアプローチを採用したが、SAFE参加には「どの程度の取引を見込んでいるかという推定に基づく手数料の支払い」が必要で、英国は手数料の金額(67.5億ユーロ)で交渉が決裂したものの、カナダは1,000万ユーロの支払いでSAFEへの正式参加を果たしており、この手数料は今後も取引規模を調査して更新されていくため「半永久的に1,000万ユーロの支払いでSAFEに参加できる」という意味ではない。

出典:EU
恐らく英国の手数料が高額なのは「BAE経由で米国製システムや構成部品が欧州に流れ込んでくる」と警戒された可能性が高く、英政府がEUと再度交渉を行うのか、米防衛企業と同じようにBAEが欧州企業と提携して生き残りを図るのかは未知数だが、手をこまねいて「域外調達35%以下の立場」に甘んじることはないだろう。
さらにトルコと韓国もSAFEへの参加を申請済みだが、EUのトーマス・レニエ報道官も13日のブリーフィングで「トルコと韓国がEUとの二ヶ国間交渉開始に関心を示していることを確認している」「これは日本にも当てはまる」「カナダとの交渉がまとまったので次のステップはトルコと韓国の申請を検討することだ」と述べ、日本からの参加申請はいつ受け取ったのか、プロジェクトの締め切りが過ぎていても交渉は可能なのかという質問に「まだ加盟国19ヶ国からの申請を評価している最中なので何が出来るのかは断言できない」「何れにせよ日本を含む非加盟国がSAFEに参加可能と覚えておくことが重要だ」と回答。
当初予定のSAFE融資=1,500億ユーロ(現在は1,900億ユーロ)にはベルギー、フィンランド、フランス、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スペイン、ラトビア、エストニア、リトアニアを含む18の加盟国が融資を申し込み、11月末までに「詳細な国防投資計画」をEUに提出、これが承認されれば2026年2月に融資契約を締結し、欧州域内の防衛産業企業に30兆円を越える資金が流れ込み始めるため、非加盟国がSAFEの恩恵に肖りたいなら早く参加条件を満たす必要があるものの、フォンデアライエン委員長は「当初予定の融資には応募が殺到し、一部の加盟国は第二弾融資の実施を求めている」と明かしている。
既に第二弾融資はEU内部で検討に入っており、もし第1弾融資と同じ規模の融資が行われるなら欧州防衛産業界には60兆円を越える資金が流れ込む計算で、ここにはSAFE融資に頼らないドイツの4,002億ユーロ=約73兆円(2041年まで防衛装備品の調達に投資予定の総額)は含まれておらず、乱暴な計算ながら130兆円以上が流れ込む市場を無視する防衛企業などは存在しないだろう。

出典:Edgewing
SAFEに参加して装備品の構成要素や素材を輸出できるようになるだけでも相当な恩恵が予想され、システム自体を持ち込んで「共同調達の機会」を獲得できれば大きなビジネスチャンスになり、GCAPがSAFE融資対象になるなら欧州域内で新たな採用国を獲得するのにも役立つかもしれない。
まぁ、SAFE第二弾融資の実施有無や規模、これが第三弾、第四弾、第五弾と継続されるのか決まっていないので断定的なことは言えないが、日本がSAFEへの参加に関心を示していることは「防衛産業の活性化」「武器輸出の拡大」「日欧間の防衛産業協力」の観点から非常に興味深い動きだ。
関連記事:カナダは欧州再軍備計画への参加交渉で合意が成立、英国は交渉決裂
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※アイキャッチ画像の出典:小泉進次郎





















なんとなくEU圏での装備調達優先購入権のための手付けな気がする>日本の申請
これは面白いですね
陸戦兵器は韓国等が取るでしょうけど、海関連で日本が取れれば良いですね
(その前にSAFEへの参加が承認されればの話ですが)
調べたところ、
・融資を受けられるのは、加盟国のみだが、共通調達には加盟候補国、加盟申請国や、日本をはじめ、EUと安全保障・防衛パートナーシップを締結した国も参加できる
・調達契約では、最終製品の部品の推定コストに対し、EU、EEA (欧州自由貿易連合)/EFTA (欧州経済領域)加盟国およびウクライナ以外の地域から供給される部品コストは、35%を超えてはならない。
なので、この融資計画に参加しようと、35%ルールは存在するので、EU債が使える以外あまり変化がないと思います。
SAFEに参加しても、しなくても、日本製を売るには、現地生産が基本で、言い換えれば参加しなくても現地生産を認めれば売れます。
SAFEに入ることで加盟国の間で日本製が意識されるようになれば十分なメリットになると思いますが。
艦船だって韓国企業の方が優位にあるでしょうし、問題が無い企業だけとは言わないが欧州域内での造船企業だって数多ある。
日本が強みを持つSiC繊維カーボン繊維とかタウルスと技術協力検討中の川重のミサイルエンジンとかはそれなりに現実味が有る物だと思う。後は三菱の新型水陸両用車や三菱MT1200静油圧・機械式トランスミッション(HMT)、新明和の固定翼無人飛行艇とか欧州に無い物で攻めるぐらいがせいぜいじゃないかな。
指標にはなりますが、民間船と艦船の建造能力はまた別の話になります。
韓国民間造船の受注量は国庫ぶち込んで不死身のダンピング作戦使ってたりしたので、他国との比較はちょっと難しいですね。決して能力が低いわけではないのですが。
個々の部品単位では一定の需要はあるが、完成品となると途端に魅力を失う日本製品群ェ…😭😭😭
GCAPが実用化出来る頃(2030年前後)に、武器の輸出が解禁になればいいなぁ、と思っていたら、想像以上に早く解禁になりそうで驚くしかない
反対ではないんだけど日本には日本の戦いがあるので
正直ビジネスと呼べるくらい外国に武器を売却してる余裕があるとは思えない
融資計画に参加しても現地生産が基本となるので、国内生産ラインにはあまり影響がないと思います。(一部部品を除く)
ライセンス等の権利移転とかの対応の話をされているのであれば、その面での負担は増加すると思います。
当たり前ですが有事に兵器は消耗するので、生産ラインは「平時に必要な分だけ、備蓄できる分だけ作って終わり」では足りないし、それやっちゃったらラインが止まるので充足率が上がったら赤字にならない低レートまでライン絞ることになる。あるいはラインを止めちゃって他の装備に転用するか、いずれにせよいざ有事に「おい、もっと作れ」と言われても対応できなくなっちゃいます。
ですが輸出先があればラインをフルレートで動かし続けられますので有事には輸出を絞るか止めるか(契約や輸出先との交渉次第)、場合によっては輸出済み分を逆輸入することだってできる訳です。
ましてやSAFE活用しての輸出であれば欧州域内での部品調達が必須、ということは状況によっては欧州の生産リソースを自国の継戦能力の一部として活用できる可能性すらある訳です(できればあんまり想定したくない状況ではありますが)。
その理屈では、自動車を売るのも無駄ということになってしまいますよ。
人材、資金、資源など取り合う関係であるのは、他の産業も同じです。
もちろん自衛隊の装備を引っ剥がして売るとかなら別ですが。
そうでない限りは、普通の商売と同じです。
調べたところ、
・融資を受けられるのは、加盟国のみだが、共通調達には加盟候補国、加盟申請国や、日本をはじめ、EUと安全保障・防衛パートナーシップを締結した国も参加できる
・調達契約では、最終製品の部品の推定コストに対し、EU、EEA (欧州自由貿易連合)/EFTA (欧州経済領域)加盟国およびウクライナ以外の地域から供給される部品コストは、35%を超えてはならない。
なので、この融資計画に参加しようと、35%ルールは存在するので、あまり変化がない。
> 装備品の設計権限がEU域内にあるか移転されること
がどの程度の移転なのかは分かりませんが(豪のFFMの4番艦以降は豪が改良するので、その程度でいいのだろうか?)、日本製を導入してもらう為には、現地生産が基本となる。
日本が加盟国と共同で日本製を導入しようとすると、逆輸入のような形になるのか?(日本が国内のラインを一朝一夕に増やせないとなると、メリットはなくはない)
EU債を利用できることが大きな変化だが、日本にとってそれほど重要ではない気がする。
加盟国に入ることで、加盟国の間で日本製がより意識されるようになれば、少しは得かもしれない。
総じて、莫大なメリットがあるわけではないが、日本製導入の足掛かりになるなら、十分なメリットかもしれない。(日本製が見向きもされないのなら意味はない)
上手く参入できても、市場保護の名目で蹴り出されたりむちゃくちゃな条件を後付けされそうなのがなー
英がこのまま完全な「域外」扱いになるなら、伊分のGCAPは欧州域内メインで調達・運用する前提で再設計した方がいいかもね。
開発設計費は余分に掛かるけど、むしろ日英分への雑音は減ってありがたいまである。
一昔前の日本では、あり得なかった選択肢だったかもしれない。世界の軍事市場に食い込める最後の機会、このビジネスチャンスを逃せば、日本製兵器は輸出する機会を半世紀は失うかもしれない。誰からも見向きもされなくなる。韓国製兵器や中国製兵器のシェアを奪いとるような意気込みで、政府も企業も取り組んでほしい。
欧州での導入実績が得られれば大きいのは分かるし、SAFEに参加できるかどうかでそれが大きく左右されるのは分かるけど、
EU自体がまだ30年、ECの名がついたとこから数えても60年、ごく最近もブレグジットという激震の走った若い不安定な組織ですからね。その中の極一部でまだ本格的に機能してもいないSAFEの初期に参加できるかどうか「最後の機会」だの「半世紀失う」だのは大袈裟でしょう。
そして欧州は小さくはないけど世界のこれまた極一部でしかない。
最近では近場のオーストラリアにはフリゲートが売れ、インド・フィリピンにはレーダーが売れ、アメリカにはPAC-3の逆輸出が成立してますし、中東各国とも成立はせずとも商談はありました。来年5類や紛争当事国等の縛りが外れれば輸出の機会はもっと増えるでしょう。
EUのSAFEという「1経済ブロック」に潜り込み損ねただけで「誰からも見向きもされなくなる」というのもこれまた大袈裟過ぎます。