米国務省は先月「日本にSM-6BlockIを最大4.5億ドルで売却する可能性を承認して議会に通知した」と発表したが、防衛省はジェーンズに対して「調達するSM-6はまや型護衛艦のみに搭載する」と明かした。
参考:JAPAN – STANDARD MISSILE 6 BLOCK I (SM-6 BLK I) MISSILES
参考:Japan plans SM-6 deployment from 2026
SM-6運用が確定しているのはまや型護衛艦のみ、今回のFMSにあたご型護衛艦へのSM-6搭載や改修は含まれていない
発表された対外有償軍事援助の内容はSM-6BlockI×32発(16発づつ2回に分けて引き渡し)、Mk.41VLSにSM-6BlockIを装填するためのMk.21VLSキャニスター、統合作業、試射費用、キャニスター取り扱い機器、各種スペア、訓練及び訓練機器、取り扱いに必要な技術文書、これを実施する請負企業への支払い、保守支援サービスなどが含まれており、このプログラムに掛かる総費用は最大4.5億ドル(オフセットの設定はなし)と見積もられている。

出典:U.S. Navy photo SM-6BlockI
国務省が通知する内容は飽くまで最大の見積もり内容(購入国の要望に沿ったケースもあれば購入国の要望を越えているケースもある)で、議会が承認すれば防衛省と主契約者(今回はレイセオン)が交渉を行い最終的な取引内容が決定されるため「4.5億ドル」という数字は変動する可能性(見積もり額が予算を越える場合は調達量やスペアパーツなどを削減する場合がある)があり、まだ最終的な調達額が決定された訳では無い。
ただ防衛省はジェーンズの取材に対して「調達するSM-6BlockIはまや型護衛艦に搭載する。旧型のあたご型護衛艦には(SM-6)は搭載されない」と明かしており、これを受けてジェーンズは「2018年に防衛省はあたご型護衛艦にSM-6を搭載すると示唆していたが、少なくとも(今回の契約で)この計画を前進しない」と報じている。

出典:海上自衛隊 あたご型護衛艦
因みに防衛省は「まや型護衛艦に2026年からSM-6を搭載する計画だ」とも明かしているが、2026年から搭載作業に入るのか2026年までに搭載作業を終えるのかは不明で、BlockIAを調達するのかBlockIB(2024年頃に初期能力を獲得予定)を調達するのかも明かしていないので日本のSM-6調達(完全能力の獲得=フルレート生産への移行目処がついていないBlockIBの輸出条件が2026年まで整う可能性は相当低い)は謎だらけだ。
SM-6BlockIBなら極超音速兵器を迎撃できる可能性があるものの、専用の迎撃弾GPIにはスピード、耐熱性、機動性で及ばない
SM-6は海軍の艦艇が搭載する艦対空ミサイルSM-2シリーズの後継モデルで、現在配備されているSM-6BlockIA(RIM-174 Standard ERAM)はSM-2ER BlockIVにAIM-120AMRAAMのアクティブシーカーと協調的エンゲージメント機能を追加されているのでターミナル・フェイズ(終末段階)段階での弾道ミサイル迎撃にも限定的に対応しているが最高速度がマッハ3.5止まりのため、極超音速兵器に向けてSM-6BlockIAを発射してもインターセプターコースに誤差が生じると修正して再び目標に接近するのが難しい。
しかし現在開発中のSM-6BlockIBは本体を再設計してサイズを拡張(13.5インチ→21インチ)、さらにSM-3が使用する固体ロケットブースターが統合されているため最高速度がマッハ5.0以上に向上(最大射程も240km→370kmに拡張)しており極超音速兵器を迎撃できる「可能性」を秘めている。
米ミサイル防衛局長官を務めるジョン・ヒル海軍中将は「現時点で米軍が保有する手段の中で極超音速兵器を迎撃できる可能性があるのはSM-6だけだ」と出席したシンポジウムで語ったため注目を集めているが、これは極超音速兵器を迎撃できる「初期の可能性」を示しただけで、開発が開始されたグライド・フェーズ・インターセプター/GPIが達成する迎撃速度や機動性には及ばず、恐らくヒル長官が「極超音速兵器を迎撃できる可能性ある」と述べたのはSM-6BlockIBを指している可能性が高い。

出典:Northrop Grumman
さらに言えばSM-6をイージス艦に搭載しただけで極超音速兵器の迎撃が可能になる訳ではなく、米宇宙軍が2023年にプロトタイプの打ち上げを予定している宇宙ベースの極超音速兵器追尾システム「HBTSS衛星群」や宇宙開発庁(SDA)が主導している数百基の小型衛星で構成された「分散型宇宙センサー(日本が米国と協力すると言っている衛星コンステレーション計画はSDA主導の計画)」が実用化され迎撃手段とセンサーがリンクするようになった場合の話だ。
そのため現状で極超音速兵器に対するエリア防空(着弾地点以外からの迎撃)が可能かどうかと尋ねられると「超限定的なケースを除いて非常に困難」というのが正解で、超音速兵器が狙う拠点にたまたま弾道ミサイルの下層防衛に迎撃に対応したパトリオットPAC-3が展開していれば迎撃できる可能性は残されてものの、こちらも事前情報が十分揃っていないと対処時間が短すぎて迎撃が難しいことに変わりはない。
因みにSM-6には終末段階での弾道ミサイル識別能力を向上させた「SM-6DualI/DualII」という特殊なモデルも存在する。
注意:上記の内容は素人の管理人がアクセス可能な範囲の情報でしかないので絶対ではありません。
追記:36発→32発に訂正しました。
関連記事:米ミサイル防衛局、現時点で極超音速兵器迎撃の可能性があるのはSM-6だけ
関連記事:国防総省、極超音速滑空体を迎撃するため新型ミサイル「GPI」開発を本格的に開始
関連記事:国防総省、極超音速滑空体を使用して開発中の艦対空ミサイル「SM-6 BlockIB」をテスト
※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 護衛艦まや
元からそうだろうなと思ってたから、個人的には意外感は無いかな
愛宕型に適応するとしても話がでるのはまだまだ先。摩耶型に適応する作業に目処が付いてからだろうさ
金剛型後継をどうするかも微妙に影響しそうだし
いつになるか分かりませんが、新しいBMD艦には搭載されるんじゃないですかね。
27年から運用開始という報道があった防衛省の滞空型無人機とセットで使うぶんの弾薬と統合契約ですかね。このSM-6はあくまで北朝鮮が開発中の極超音速ミサイルへの対処能力の付与を企図したものでしょうし、近々控える三文書改定から始まるBMD/CMD体制刷新や艦隊編成の改定とはまた別のお話なんでしょうね(無関係ではないけど)。
でもイージスシステム搭載艦の建造が決まった今、4,5年もすれば手が空いて艦隊防空に専念できるあたご型にまでSM-6の統合作業するんですかね。
タイトル見て、はまや型なんてあったっけ?と5秒ぐらい考えてしまった
アメリカ海軍「チチブ型大型重巡洋艦はありまぁす!」(思い込み)
「ここではきものをぬぐべし」
漢字がないと区切りを入れる場所が分かりにくいですね。
実は私も「はまや型」と読んで目をぱちくり。
日本海軍との違いを見せるためにひらがな表記になったのかと憶測しますが、
漢字表記のほうが読み間違いがないと思います。
?「翔鶴」
呼んだ?
俺もはまや型ってよんでしまった。。。
漢字で書いたら「破魔矢」でもう山・河川の名前が付きたから神仏関連の命名になったのかと
正直中途半端な存在に見えるsm6
対艦ミサイルとしても対空ミサイルとしても帯に短し襷に長し感がある
それでも、時勢は風雲急を告げる状況だから仕方ないと割り切る他ない
実用的なのかはさておき、対艦弾道ミサイルに対抗できる数が揃えられそうもないのは怖いな
とはいえ、そんなのいくら金があっても足らんし
スカッド狩りもできないし
うーん・・・
だから、HPMやレーザーを開発してるんでしょうね。
>このプログラムに掛かる総費用は最大4.5億ドル(オフセットの設定はなし)と見積もられている。
わざわざ()内の注釈をつけたあたり管理人さんの無言の圧力を感じるのは気のせいでしょうか…
就役してそんなに経っていないのにもうレーダー換装か
やはり有事は近いな…
レーダー換装?
そうなのですか?
ここの過去記事のSPY-6レーダーは2030年位にならないと日本は手に入れられないと有りますよ、SM-6はミサイルですよ‥
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米軍CM
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ミサイルの本数が合って無くないですか?
96セル全てにSM-6を装填するわけでは無いと思いますが、おかしいですかね?
確かに16発ずつ2回で引き渡しなのに計36になってるのはどういうことだろう?
そもそもまや型のVLSセル内訳って今どうなってて、SM-6も定数どんだけ積む予定なのか気になる。
SM-2の弾体にAMRAAM用のシーカーじゃあ能力も限られるというもの
アメリカがアーセナルシップだの沿海戦闘艦だのじゃなく極超音速兵器に注力した世界線を見てみたい
アメリカの極超音速ミサイル開発計画、色々有りますよ、それだけ迎撃技術が進んだという事でしょう。日本も同じ様に進んでいくのではないかと思います。
陸軍LRHW 海軍CPS 空軍HAWC, HACM, AGM-183A(ARRW), TBG 等色々です。
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ザックリ1発10億円ぐらいかな。揃えるだけでも結構なお値段できついってのはあるかもしれない。
代わりにもがみ型に積むと言われているA-SAMを広く積む可能性があるのではないか、Mk41に積めると言う事になるわけだし。A-SAMは03式ベースだし長射程化も考えられているし、03式のBMD能力付与の流れを考えるとその機能が搭載されてもおかしくはなく性能が低く安価なSM-6に近いミサイルになる可能性がある。
海自のDDクラスならMk41 Tactical-Lengthでこれに積めるなら完全な運用が可能かは別として海自のMk41搭載艦全てに載せる事が出来る。性能は限定されるが国産でのスケールメリットは生まれて性能向上がされるならトータルでは海自の戦闘能力向上に繋がる可能性があるんじゃないか。
インテグレードして貰うコストと時間考えたら、アメリカのミサイル使う方が合理的
オープンアーキテクチャ化が進んで、規格に合ってれば運用側が簡単に導入出来ます、って時代が来たら変わるかもだけど