日経新聞は今年1月「次期戦闘機の共同開発=GCAPを巡って契約締結が遅れている」「英国が拠出額を確定できないことが一因だ」と報じたが、空自の武藤茂樹元空将はDefense Newsの取材に「契約締結の遅れで試作機の製造に数か月から1年程度の影響を与えるかもしれない」と述べた。
参考:Japan shrugs off GCAP delays, fast-tracks export rules for future warplane
GIGOとEdgewing間の契約締結の遅れは財政的コミットメントの不確実性を示し、Edgewingからの大規模な投資を妨げる可能性がある
英伊日は2022年に次世代戦闘機を開発する枠組み=Global Combat Air Programを発表、3ヶ国はコア・プラットホーム=有人戦闘機の本格開発を2026年から開始予定だが「資金不足による開発契約締結の遅れ」「開発コストの高騰」「ドイツ合流の可能性」といった問題が浮上し、元航空総隊司令官の武藤茂樹元空将はDefense Newsの取材に「契約締結の遅れは計画に対する財政的コミットメントの不確実性を示しており、試作機の製造に数か月から1年程度の影響を与えるかもしれない」と明かした。

出典:UK Ministry of Defence
英国政府は資金不足で国防戦略の見直し結果を反映した防衛投資計画を策定できず、日経新聞は今年1月「日本、英国、イタリアによる次期戦闘機の共同開発を巡って官民間の契約の締結が遅れている」「トランプ政権が欧州に防衛費の急拡大を迫るなか英国が拠出額を確定できないことが一因だ」「3カ国の政府による国際機関=GIGOと3カ国を代表する防衛企業の合弁会社=Edgewingとの間で2025年末までに最初の契約を結ぶ予定だった」「この契約は2035年の配備に向けた本格開発の起点となるはずだった」「契約締結が遅れれば当初からハードルが高いとみられてきた2035年配備の目標が遠のきかねない」と指摘。
武藤元空将も「GIGOとEdgewing間の契約締結の遅れは設計および組織体制に対する財政的コミットメントの不確実性を示しており、これがEdgewingからの大規模な投資を妨げる可能性がある。この事態は構造的な危機というよりも資金調整の段階として解釈するべきで、英国側の遅れは管理可能な範囲内と思われるが、試作機の製造に数か月から1年程度の影響を与えるかもしれない」と述べ、元北部航空方面隊司令官の深澤英一郎元空将も「中国の軍事能力による圧力の高まりを考慮すると、新たな戦闘能力の導入の遅れは日本の全体的な防衛体勢に悪影響を及ぼすだろう」と言う。

出典:Edgewing
さらにイタリアでは1月、クロゼット国防相が議会で「我々がGCAP開発に支出する金額が3倍に増加した」と明かし、上院の国防委員会に提出された文書の中で「イタリアはGCAPの研究・開発フェーズ1~2(概念評価、予備設計、本格開発)の費用として60億ユーロを負担する予定だったが、現在は技術の成熟化、試験、開発、設計にかかる費用増を考慮して負担額を186億ユーロと見積もっている」「既にフェーズ1の一部をカバーする20億ユーロの資金は確保されている」「フェーズ1~2を完了させるためには、あと166億ユーロの確保が必要だ」と説明し、2037年までの負担費用として88億ユーロの支出を承認するよう要請。
残りの78億ユーロについて「将来確保する予定」とだけ説明し、五つ星運動は「このプログラムの価値に疑問を抱いてる訳では無いが、予想される負担の大幅増について詳細な説明もなく、委員会が数十億ユーロを端金のように発行するキャッシュディスペンサーとして利用されることは受け入れられない」と批判、イタリアの負担額=186億ユーロを日本円に換算すると3.4兆円となるため、3ヶ国が研究・開発フェーズ1~2で負担する開発コストの総額は約10兆円となる見込みだ。
It was an honour to welcome Maria Eagle MP at the official opening of our Edgewing headquarters in Reading, representing another important step in what will be a truly international programme to develop the next generation combat aircraft. Discover more: https://t.co/UzSzo2f7Au pic.twitter.com/3q4uxq79pt
— Edgewing (@EdgewingLtd) July 8, 2025
日本政府は昨年末、米軍再編経費などを含む2026年度防衛予算案(総額9兆353億円)を閣議決定し、この予算案にはGCAP関連予算として約1,698億円が計上されているため、これまでに日本が費やしたGCAP関連の総額は約6,739億円となるが、Defense Newsは「高市政権がGCAP関連の予算を増額するかどうかは不透明だ」「専門家は日本はGCAPの主要な運用国となり、戦闘機開発のための技術移転は国内の防衛産業を後押しし、グローバルな展開目標を推進することになるため前倒しでの資金拠出は正当化できると言う」と報じている。
武藤元空将も前倒しでの資金拠出について「初期の財政的負担を肩代わりすることは技術へのアクセス拡大を可能にし、日本により強い交渉力を与え、より大きな指導的影響力を獲得できるため将来の防衛装備輸出にとって有益となる」と説明した。

出典:首相官邸
政策研究大学院大学の岩間陽子教授もDefense Newsの取材に「GCAPは欧州とのパートナーシップに対する新しい試みであり、米国依存に対するリスク分散だ。ここではそのように見なされている」「私たちは米国と交渉してきた経験があるため、国際的な共同開発に伴う困難さは十分に承知している。それが容易でないことは分かっているが冒す価値のあるリスクだと考えている。現在のトランプ政権を見ればそれが価値のあることであったことが分かる」と述べた。
Defense Newsはドイツ合流の可能性について「ドイツの参加に対する日本の立場は様々な要素を考慮して判断されると専門家は述べているが、東京では新たな参加者を加えることで開発が遅れるのではないかという懸念が高まっている」「深澤元空将も当初スケジュールの厳守を重視しているため、日本政府は新たな参加者を好ましくはないと見なす可能性が高いと語った」「日本の専門家らは財政面および契約面の遅れが報じられる中でも、2035年という目標配備時期が遅れる可能性は低いと見ている」と指摘している。

出典:GlobalCombatAir
GCAPもようやく「夢の共同開発」を語るフェーズから、具体的な資金供給、スケジュール、各国の政治的駆け引きという厳しい現実のフェーズ=死の谷に突入しつつある。
追記:なお、ここで言う「死の谷=Valley of Death」とは、コンセプトが現実の試作・量産段階に移る際に必ず直面する資金、組織、技術の摩擦点のことを指しているため、死の谷に突入したということは「構想が単なる机上論から「実際に作る段階」へと具体化してきた証拠であり、摩擦点の登場は前進の具体的な兆候として受け止めるのが妥当だ。そのため死の谷に突入するというのを「悪い意味」で捉える必要はない。
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※アイキャッチ画像の出典:Edgewing





















厳守したい時期に間に合わないことがほぼ確定しつつあり、前の記事にもあったブルー・スカイバイアスの話もありますから、計画が見直される可能性は以前よりぐっと上がったんじゃないでしょうか。
そもそも日本には国産兵器(GCAPは共同開発ですが、日本側が開発に参加して主要なプレイヤー)に対する強烈な反対派も多数ですし、なかなか厳しい状況かと思います。
原発もそうですが、仰る通り、謎アレルギーあるなあと…。
アメリカ人が、日本防衛のために必ず先に血を流してくれるという、謎の神話を信じているんでしょうかね?
防衛力は絶対に必要なものですから、国産化できて海外に売れるくらい競争力があれば、本当にメリット大きいと思います。
アメリカ人が、日本防衛のために必ず先に血を流してくれるという、謎の神話を信じているんでしょうかね?
と言うより、むしろ
①性能厨:実戦を未経験で性能が分からないので、高性能な多国製(主にアメリカ製)を買うべきだ
②経験厨:開発費用がかかって、輸出もしない上に高額だから、経済的に無駄だ
③平和厨:兵器を開発するとは、日本は過去の戦争反省をしていない。軍靴の音ガー
のどれかでは?
①、②は、安全保障の費用対効果と自前の兵器開発・輸出の重要性を説明すれば、理解してくれる可能性があるけど、③はダメですね。
感情論の上に、考えることを拒否しているんだもの。
ただ、偉そうに書いている自分自身も、東日本大震災前に、原発の事故を真面目に考えたかと言うと・・・。
④ 武官蔑視の伝統 は無いですか?
東アジアって小国が乱立していた欧州と違い常に緊張状態って訳でも無いので戦乱が終わると武官はすぐ左遷されたり粛清されたり武官を辞めて文化人や文官に転身したりしたので伝統といえば伝統じゃないですか?
日本は鎌倉幕府以来ずっと武家政権時代が長かったのでそれはないかと
戦後民主主義の極端な平和主義が例外なだけで
それは武官から文官、文化人コースですね。一度文化人コースに行くと士官学校に来ないんですよ。と言うより欧米では将校と言えば昔は貴族が金を出して就く職業だったのに(貴族が就いてもいい職業が限定されていたのもありますが…基本お金稼ぎはダメです。投資家でギリOKくらいです)日本だと百姓と貧乏人の行くところと呼ばれましたから…(本当に立憲君主制国家の軍隊か?共産国の農労赤軍の間違いでは?)
大正時代とか酷いですよ?負けたなら兎も角勝ったのに戦後以上の扱いなので…
政治面に加えて仏教と神道的に殺生は地獄行きなのは分かりますけど…(現代の穢多かよ…とツッコミ入れたくなります。)
前の記事のブルー・スカイバイアスの件非常に興味深い内容で色々考えさせられましたが、戦闘機開発はやっぱり作っておけば良かったとなった場合、その巨額な費用と開発に必要な期間考えると取り返しがつかないんですよね。
GCAPは粛々と進めて行って欲しいなと思います。
>死の谷に入った
何だかんだ進んだのだから良し、と前向きに考えます
日本としたは腹くくって計画進める以外に満たないですしね
遅れて当然みたいな業界ですから、納期なんて言葉も使えないようなものですね…。
日本の安全保障環境を考えれば、あれもこれも必要なわけですから、優先順位つけていかないと大変だなあと。
(例えば)対中国の抑止力が海空で上手にできても、ホルムズ海峡からナフサ輸入『輸入依存度6割~7割、ホルムズ海峡経由4割程度(!)』これ止まれば大混乱が発生するわけで。
原油の備蓄だけではダメで、石油化学コンビナートで全て賄うとなれば高コストになるなど、あらゆる必要な物を100%国産化は不可能ですから安全保障は本当に大事で平和=コスト安いなあと…
高付加価値製品(半導体素材など)にも、当然のように影響してくるわけで、経済安全保障は本当に難しいですね(平和じゃないとほんとキリがないなと…)。
経済含めた戦略的防衛視点が必要ですよね。
一国で賄える時代ではないので、地域含めた武力以外の安全戦略が必要になります。
兵站としての資源や製造力等、サプライチェーン含め構築しないと。
イランのホルムズ海峡の実質的封鎖の様にチョークポイントの防衛なども必要ですし。
経済共同体として他国との協調も。
仰る通りで、本当に難しいですよね…。
台湾海峡問題として、シーレーンのリスクが言われてきましたが、こんな形で発生するとはなあと。
今後どういった形がよいのか・どう変わっていくのか見守りたいと思います、オーストラリアとの関係強化は極めて良かったなと感じています。
日本が英国から何かしら買い取れ(笑)ば良いのでは?。
例えば、HMSプリンス・オブ・ウェールズの船体とか?。
いずれ、同様のフネが日本にも必要になる、とも思えますから。
などと勝手に(笑)思います。
UAV対策はさておき、ブルースカイでの優越は必要だし。
GCAPが予定より遅れるのは良く無いのでは?。
そうでないと、低空域での対UAV戦なども自由にできるわけもないし。
予想される欧州の危機は日本のそれより数年遅くなるだろうし。
ロシアの戦力が回復するまででしょうから。
いいねぇ
ヴァンガード級核弾頭毎丸々買ってもいい
>GCAPもようやく「夢の共同開発」を語るフェーズから、具体的な資金供給、スケジュール、各国の政治的駆け引きという厳しい現実のフェーズ=死の谷に突入しつつある。
イギリスはウクライナ戦争であんだけ巨額の支援しておいて、GCAPには負担分のカネ出せないってどういう了見だよマジで
移民への援助削ってでもカネ出しやがれ
これはGCAPに出す金が無いんじゃなく、イギリスが防衛計画の見直しをしててそっちの方が予算見直してで停滞、GCAPも巻き込まれたって感じですね
一応春ぐらいには決まると言ってる
もう春なんですけどそれは
まだまだ見込みが甘い気がします。
配備まで2040年代中盤はかかるのでは?
向こうは、ユーロファイターやF-22と同じくらいはかかって当たり前と構えているでしょう。
戦闘機の共同開発で5年以上遅れるのは普通。
つなぎの代替機を考えるしかないかも。
計画が瓦解したわけではない、予定通りにいかないのが世の常
逐次修正しつつ臨機応変に対応にするだけ、悲観するようなことではない
GIGOって、ソフトウェア開発の世界では、Garbage In, Garbage Outという縁起の悪いバクロニムだと思うんですけど、誰も止めなかったのか…。
その言葉はいい結果を得るためならまず入力を疑えと言う格言であって、別に縁起の悪い言葉では無いと思うが…
そのうち、英国がGarbageとか言い出す人が出てきますよ…。
元空将って一般人と何が違うの?
圧倒的に経験と知識が違うでしょ
ズブの素人に比べれば色々ご存知でしょうが、いうて「過去の日本の空自視点の知見しかない可能性」は十分あるでしょう。
その視点ならそりゃ「年度をまたぐこのタイミングで契約しないと配備てが一年遅れるぞ」というのは大いに納得できるのですが、それにGCAPがどこまで当てはまるかは微妙に思えます。
想定の範囲内でしょ。むしろイタリアがまだイモ引いてない事に感心するレベルだわ。
ジャガイモ野郎を引っ張り込んできそうだけど。
既に遅延が発生しているのに「2035年には間に合います。大丈夫」というような態度は楽観的すぎないでしょうか。
開発の担当分野・担当箇所もロクに発表されていない状況で、「日本政府は満足している」というのもなんだかよくわかりません。
外野の図りしれぬところで話は進んでいて、それは日本の防衛省と自衛隊にとって満足できる内容だということでしょうか?
それとも単なる楽観論の産物でしょうか。
なんだか不安になってきました。
開発担当は2024~2025年に掛けて何度も発表されてた気が…
遅延自体は書類上の手続きの遅れであって、その間でも参加企業は実証実験機(試作機)作る為の設計、各部位の実証実験をどんどん進めてる状況なので、現状はスケジュール事態に大きな遅れは無いと判断してると思います。
GIGOとEdgewingと3ヶ国共同の機関を作ってますから日本の意向だけが無視される事はありませんからそこは心配ないかと。
GCAPに関しては日本側(防衛省、メーカー)の発信が少ないですから不安になるのもわかります。巨額の税金使ってるわけですからもっと情報を出して欲しいですね。
現英政権もGCAP継続の結論で、国際信用上も今更抜ける無責任な方針転換は無いでしょう。
懸念はGIGO・Edgewing間の契約遅延が開発スケジュールにどれだけの影響があるかですが、おっしゃる通り計画頓挫の危機的状況ではないわけで、集合させたスタッフを遊ばせておくわけにいかないGIGOとEdgewingは参加国政府からの資金供給を前提に、現時点でできる範囲の作業を進めるのが自然です。