防衛装備庁は10日、4つの分野(意思決定迅速化技術、総合防空用低遅延データ共有技術、協調制御ロバストネットワーク技術、スマート電波デコイ技術)に関する情報提供企業の募集を開始した。
参考:意思決定迅速化技術に関する情報提供企業の募集について
参考:総合防空用低遅延データ共有技術に関する情報提供企業の募集について
参考:協調制御ロバストネットワーク技術に関する情報提供企業の募集について
参考:スマート電波デコイ技術に関する情報提供企業の募集について
防衛装備庁は今回の情報提供から何を得てどの様に活用するつもりなのだろうか?
ただリリースされた文書は非常に簡素で内容を推測することすら難しいが意思決定迅速化技術、総合防空用低遅延データ共有技術、協調制御ロバストネットワーク技術の3つは陸海空といった従来の領域に加え宇宙やサイバーなど新領域を横断する(クロスドメイン)能力の確立に不可欠な統合型の指揮統制システムを構築するための基盤技術ではないだろうか?
従来の戦闘は各ドメインが指揮・管理=つまり陸自が陸上作戦を指揮、海自が海上作戦を指揮、空自が航空作戦を指揮していたが、将来の戦いは陸上作戦、海上作戦、航空作戦に加え宇宙作戦やサイバー作戦が同時進行で発生するため各領域で分断された指揮統制では戦いの全体像を把握するのに時間がかかるため、米軍は戦場状況の認識力を拡張して優れた判断を敵よりも早く下すのに必要な統合型の指揮統制システム「Joint All-Domain Command and Control/JADC2」や通信ネットーワークの近代化に取り組んでいる。
つまり防衛省が防衛白書などで散々主張してきたものの具体的な動きや構想が出てこなかった「クロスドメイン能力」を実現させるための動きで、遂に自衛隊も各国が取り組んでいる戦場状況の認識力拡張に乗り出すのかもしれない。
補足:米軍は研究・開発を進めて何度もフィールドテストを繰り返してきたJADC2の実装を来年度から徐々に始める予定だが、完全実装がいつになるのかは不明
4つ目のスマート電波デコイについてもリリースされた文書だけではな何なのかさっぱり分からないが、恐らく再プログラムが可能なデジタルRFメモリデコイのことかサーブが最近発表した空中発射式デコイミサイル(Air-Launched Decoy Missile system:LADM)に相当するものを考えているのかもしれないが、本当に文書の内容が簡素過ぎるので全く違うものを指している可能性は大だ。
因みにデジタルRFメモリデコイとは機上で検知した未知の電波に対して再プログラムを行ったデジタルデコイで対抗(例えば対抗する脅威が敵の観測用レーダーなら機体から曳航したデジタルデコイで位置や速度の誤認信号を積極的に発信して正確な情報が得られにくくするなど)する装置で、すでにデジタルステルスの研究で先行する欧州で実用化されている。

出典:SAAB
サーブが最近発表したLADMは高性能な使い捨てのデコイで搭載された電子妨害装置を駆使して敵防空システムに誤った標的情報をばら撒いたり、システム自体の処理能力に負荷を与えることで飽和させ攻撃を貫通させやすくするという使い方が提案されており、さらに空対空戦闘の視界外化に伴い敵戦闘機に対するデコイとしても機能するよう設計されているらしい。
果たして防衛装備庁は今回の情報提供から何を得てどの様に活用するつもりなのだろうか?
上記の内容はあくまで管理人の予想なので間違っていたらごめんなさい。
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※アイキャッチ画像の出典:航空自衛隊
とーごーうんよー(呪文)、陸自にCAS用のターゲッティング部隊作るとか海自の護衛艦に陸自部隊が載る程度の話だと思ってたけど、指揮統制システムの統合までやる気あったのね。仮に、公報ビデオで言ってたようなリアルタイムで敵味方情報を共有して誘導弾類をハンドオーバー誘導したり兵器の照準をオーバーライドできるレベルまで作るなら、野戦通信システムごと総入れ替えしなきゃだけど、果たして今の自衛隊に非正面装備にそこまで金を使う度量があるかどうか
非正面を軽んじると敗ける
というよりも、正面とはなんぞやという概念から改めないと、ただ戦車や戦闘機を並べても瞬殺されかねない時代なのだと気がつくことね
根本的に水機(西方)でしか海空連携の能力近代化いらねえし・・・いっそのこと西方を一部の海空自と編合した上で水陸自衛隊で独立してもらったほうがええわ!F35Bとか水陸航空隊配備でええやろ。
海空連携って、、、やっぱクロスドメイン能力が何なのかを本質的に理解している人が少ないよね、、、
JADC2がマルチドメインの戦術レベルの情報を扱って上の階層はGCCSのままのかなこれ?
紐付けてる論考が見つからなかったから知ってる方がいたら教えて欲しいです。
募集の文章が簡素なのは、受注先が既に決まっている.のみならず、概念自体も共同で策定しているのであろう.
こういう統合運用の基礎設計を防衛省でやらないの?
民間に丸投げすると、民間から情報が漏れるのはお約束だろう。
基礎設計くらい技研内でできないものだろうか?
上のコメントにもある通り、一緒に模索・研究してきてるからこそ募集文がくっそ簡素なんだと思うよ。
つまり民間への情報漏れは気にするだけ無駄。
問題は民間からの情報漏れ防止がどの程度改善されてるか、だけどあんまり期待はできないよねぇ。
これは4件とも防衛装備庁が行う事前の調査研究で民間企業へ情報提供の意思を問う募集。
条件に合致する応募企業との協議の上で別途情報提供依頼を行うとしてる。
基本計画策定の技術的裏付け調査で、研究開発事業の民間企業丸投げを意図したものではないよ。
そりゃまあ、表向きはそうでしょうが…
ごめんなさい
近年まで自衛隊は陸海空統合作戦していなかったよね
そういえば、防衛省はマルチスタッティックレーダーの試験してたっけ
将来的には海保も接続してほしいなぁ。
ドローンやUAVも大事だが拡張認識の方を優先してるって事かな?
こういうわけわかめの募集こそ、本当に有効でヤバめの軍事技術なんだよ。
いよいよ自衛隊、始まったな。
ゲームしてると完全統合運用って当たり前にしてる事だけど、
現実では最近まで名称すら聞かなかったんだよな