Breaking Defenseは2日「日本がもがみ型護衛艦のオーストラリア売却を事前承認し、この中で日本とオーストラリアの関係が如何に重要かを強調した」と報じ、日本が受注を獲得できるかどうかは「オーストラリアが何を重視するかにかかっている」と指摘した。
参考:Japan OKs potential sale of Mogami frigate to Australia, in first of its kind move
勧告された検討候補を見る限り「通常の入札」を意識しているように見えるが、政治的な判断は軍の勧告を超越するため何が起こるかは予測不可能
アルバニージー政権は海軍再編に関する分析結果を今年2月に発表、この報告書は政府に「水上艦戦力を2倍に増やせ」と求めており、具体的にはハンター級フリゲートの取得数を9隻→6隻、アラフラ級哨戒艦の取得数を12隻から6隻に削減し、有人運用も可能な大型無人艦(6隻)と汎用フリゲート(11隻)を取得するよう勧告。
アンザック級フリゲートの後継艦を想定した汎用フリゲート取得ははProject Sea 3000と呼ばれており、ドイツのMEKO A-200、スペインのAlfa3000、日本のもがみ型、韓国の大邱級BatchIIもしくはBatchIIIが検討候補に挙げられたが、Australian Financial Reviewは今月7日「安全保障委員会が政府にNavantia、現代重工業、Hanwha Oceaの入札除外を勧告した」「TKMSと三菱重工業の提案は最終決定までに追加の分析が行われる」「100億豪ドル(プログラム総コストの見通しが70億豪ドル~100億豪ドル)の受注競争はドイツと日本の間で争われる」と報じた。
オーストラリアのマールズ国防相も17日、ダーウィンで行われた米豪日国防相会談後の記者会見で「(汎用フリゲートの調達候補が)ドイツと日本に絞られた」と述べていたが、防衛省は28日「豪政府はもがみ型護衛艦を含む次期汎用フリゲート候補の評価を実施し、最終候補を2ヶ国の艦艇に絞り込んだ」「その1つにもがみ型護衛艦の能力向上型=令和6年度型護衛艦(06FFM)が選定された」「我が国が次期汎用フリゲートの共同開発・生産に選ばれば防衛装備移転三原則に従い完成品、部品、技術情報の移転を認める」と発表。
Breaking Defenseは2日「日本がもがみ型護衛艦のオーストラリア売却を事前承認し、この中で日本とオーストラリアの関係が如何に重要かを強調した」「Strategic Analysis Australiaのマイケル・シューブリッジ氏はオーストラリアがMEKO A-200ではなくもがみ型を選択する場合、これは豪日の共同作戦能力と防衛産業基盤の強化に役立つと述べた」と報じ、日本がProject Sea 3000を受注できるかどうかは「汎用フリゲートの調達に何が重視されるか」にかかっている。
シューブリッジ氏は「豪州が幅広い技術的パートナーシップの価値を理解していれば日本は成功するかもしれないが、ドイツは防衛装備品の輸出に慣れているため、豪州が通常の入札で選定を行えば日本は不利になるだろう。豪州がProject Sea 3000を政府と産業界の共同プログラムとして捉えるかどうかが重要で、豪州が日本を選択すればAUKUS Tier2のような最先端技術分野で両国は提携することになり、同分野における日本の強みは明らかだ」「日本が潜水艦の売却に失敗しても戦略的・技術的パートナーシップを提案していることは注目に値する」「この真剣かつ前向きな日本の提案の目的を理解すべきだ」と指摘しているのが興味深い。
つまり通常の入札=現地建造の経験や豪産業界への直接・関節投資といった部分で日本とドイツが争えば「日本受注の可能は低くなる」ものの、AUKUSのような安全保障分野における関係強化、汎用フリゲートの調達・運用を通じた最先端技術分野での提携といった部分を重視して選定すれば「日本受注の可能性が高くなる」という意味で、軍が比較検討した防衛装備品の評価=実質的な導入機種を政治的な判断で変更することは珍しくなく、最近で言えばノルウェーのLeopard2A8調達がそうだ。
ノルウェー陸軍はLeopard2A4の後継としてLeopard2A7ベースの車輌とのK2を比較検討し、海外メディアはK2のテスト結果やオフセットの内容が優れていたため「ノルウェーは韓国の手を挙げる」と予想、軍の調達部門(FMA)も「Leopard2はK2より約10トン重いものの(両者の性能に)大きな違いはない。最終交渉の内容、テスト結果、提示された納期や価格、これら要素を加味したコストパーフォーマンスを検討した結果、次期主力戦車の供給者に現代ロテムを推奨する」と政府に勧告。
さらに調達数削減を受けてFMAは勧告を改定し「KMWはLeopard2A8の単価を値上げしたが現代ロテムはK2の単価を維持した」「現代ロテムが提出した納品スケジュールはK2NOの最終バージョンを検証後に生産を開始するが、KMWの納品スケジュールは検証前に生産を開始するため納品後に改修が発生する可能性がある」と付け加えていたが、政府は勧告に逆らってLeopard2A8調達を選択して大きな波紋を引き起こしたことがある。
ストーレ首相は選定結果について「品質や能力だけで選択したのではなく、今後欧州で重要な役割を果たすであろう同盟国ドイツと協力し、北欧隣国と同じタイプの戦車を手に入れるという安全保障政策面での意味合いが含まれている」と、K2は現実的な選択肢だったのかという質問に「ロシアのウクライナ侵攻が北欧とドイツの協力関係を強化するという決定に影響を与えた」と、ウクライナ侵攻がなければ結果は変わっていたかという質問に「そのようなことを考えている暇はない」と回答し、現代ロテム側は「調達部門の客観的な評価より戦略的パートナーからの調達を優先させるなら先に言っておいてほしい」と苦言を呈していた。
AUKUSのような安全保障分野における関係強化、汎用フリゲートの調達・運用を通じた最先端技術分野での提携といった部分を重視するなら入札自体が不要(公平が選定が行われない場合は訴訟リスクになる/カナダ海軍は次期フリゲート選定でNavantiaから訴訟を起こされている)で、勧告された検討候補=MEKO A-200、Alfa3000、もがみ型、大邱級BatchIIもしくはBatchIIIを見る限り「通常の入札」を意識しているように見えるが、政治的な判断は軍の勧告を超越するため最終結果で何が起こるかは予測不可能だ。
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※アイキャッチ画像の出典:防衛省 海上自衛隊
我が国はどうしても売りたいわけではないのが
最後の最後に足を引っ張りそうな気がしますね…
もがみ型は船としては結構いいものなのでしょうか
売りたい物、売りたい相手によって熱意は異なるようです。豪州は防衛協力を深化させたい観点からも売りたい相手であり、売りたい物の幅は広いんじゃないでしょうか。
「もがみ型」FFMはともかく、「06FFM」以降は「あきづき型」や「あさひ型」DDに匹敵するかそれ以上の兵装システムを搭載すると推定されます。機動運用部隊に配属されても全く遜色ない護衛艦と言えるのでは。
>もがみ型は船としては結構いいものなのでしょうか
もがみ型の一番優れている点は、建造速度ではないかと。
起工から就役まで2年半ですから。
MEKO A-200型は4年半ぐらいかかってますね。
1番艦は2029年引き渡しみたいなので、納期を考えるともがみ型は有利です。
艦の性能というより建造技術の問題な気がしますが、オーストラリア国内で建造する4番艦以降についても、建造技術の移転が十分にできるなら、優位を取れるかと。
兵器にとって、量産性や納期の早さは重要な要素ですし。
個人的には、もがみ型、ではなく、令和6年度型か、改もがみ型と表記してほしい。
正確な意味でのもがみ型の輸出は現状では不可能。。。
割と可能性高そうですね
ミリオタは性能(と見た目)しか見ませんが、為政者はもう少しマクロに見ますから
マクロに見るというか、考慮すべきしがらみが多いというか……
運用者の視点から見てもいいと思いますけどね
太平洋の南北で整備できたら使いやすい
ドイツは遠すぎる
有事を見据えたら全然アリ
あんまり高額機器の入札の実務に関わったことが無い方は入札が値段だけで決まるようなイメージを持っているかもしれませんが、実際には、現場側もまず欲しい機器を選定し、一件だけではマズいので調整して当て馬も選択肢に上がるような加点のできる入札評価項目を現場が設定します。
入札する側も入札条件見て、これは取れるとか、ああ当て馬かと自然とわかるのですが、手を抜くと色々マズいので出来レースとわかっていても真面目に頑張った値段の入札をします。
しかし、落選予定のメーカーが見積もりの6割とか出してきてひっくり返してくれたこともありましたっけ…。最初から頑張れば、端からそっちを選んだわって思いました。
あるあるですな。
KYTNがよく自衛隊の入札がおかしいとか批判するの見て、いつも実情がわかっていないなあと思っていました。
付き合いで入札したら担当者が数字間違えて金額書いて落札したことがある
間違いでしたとも言えず赤字でやったけど担当者と上司は減給処分ですわ
まるで日本に決まったら政治案件とでもいいたげ
価格、納期、運用実績で西側装備なら日韓以外ありえん
俺は朝鮮半島嫌いだけど
マーケティング力と売り込む熱意は素晴らしいとと思うわ
韓国は発射した対地誘導弾を自軍基地に落下させるような国なのに中東の数カ国に防空誘導弾を売ることに成功してますからね、素晴らしい熱意
どうなのでしょうね。
豪州にとって、TKMSが自国に定着してくれるなら、
TKMSを選ぶ意味はあると思えます。
いずれ、潜水艦の自国建造も予定しているのでしょうし。
実際に受注するとなると色々難しいとは分かる。
ただオージー海軍は対地攻撃重視だから、
高速滑空弾や12式改を搭載すればワンチャン有りそうだけど。
ちゃんと後付けでそういうオプションを提示してるんだろうか。
日本としても後方に整備基地があるのはメリットなんですよね
なるほど、有事などで国内の造船所の手が回らない際に、改もがみ型の修理・メンテを豪州に依頼できる可能性があるという視点は確かに面白いですね。日本側にも一定のメリットはありそう。
政治的な問題だけでなく、省人化と言う明確な強みもあります
上手くアピールして受注につなげられればいいですね
海外製防衛装備品導入の選定理由に関し「総合的に判断し」は防衛省も常套句ですが、そこは各国も其々の事情で普通だと思います。
近年、日豪間の安全保障協力は極めて順調に進展しており、防衛技術分野でも協力体制が深化しつつあるのが現状です。
2021年;共同研究開始
・船舶の流体性能及び流体音響性能に係る日豪共同研究
・複数無人車両の自律化技術に係る日豪共同研究
2023年6月;覚書署名
・研究、開発、試験及び評価プロジェクトに関する取決め
(手続きを簡素にし、迅速な研究・開発や実用化につなげるための取決め)
2023年10月;共同開発事業契約締結
・オーストラリア国防省-三菱電機オーストラリア間「レーザー技術を活用した共同開発事業」
2024年;共同研究開始
・水中自律型無人機に関する日豪共同研究
(日豪の水中音響通信試験評価シミュレータを連接し、水中音響通信の評価指標を確立)
このように良好な日豪防衛協力関係の中で、日本側の防衛装備品海外移転事業の経験不足は実地を経て今後乗り越えていくべき課題として捉えるべきかと思います。
安全保障体制の日米豪協力深化も加味し、豪政府が所謂総合的判断というやつで「06FFM」ベース艦を「次期汎用フリゲート」に選定する可能性は大いにあるでしょう。
日本のもがみ型の最大の魅力は、乗員数の削減が魅力的かなぁ。
もがみ型が90名の乗員で運用出来るけど、MEKO A-200が最低110名でフル運用で160人以上かかるの考えると人員不足になる軍としてはかなり大きい。
オーストラリアに提案しているのは、もがみ型じゃないよ。
防衛省の発表では、「もがみ型の能力向上型である令和6年度型護衛艦」と記載されているので、いわゆる新型FFM(06FFM)だそうだ。
豪州の対中政策も当然絡むだろうしな
日本からの採用となれば、中国との軋轢も考慮しないといけないだろうし
それを込みで採用するかどうかは、現政権の意向が大きく絡むだろうしなぁ
兵器の輸出入はどうやっても政治的判断は絡みますわな
いざという時に修理・補給ができない兵器を買ってもしょうがないし、提供する側も赤字垂れ流しでやる訳にもいかない
防衛装備品の海外展開は、政治家によるトップアプローチありきなとこがあるんで、そう言う意味だと政治的混乱が発生してるドイツよりは、日本の方がトップアプローチをかけやすいかもしれない(まあ混乱具合は五十歩百歩だけど)。
石破政権は防衛大臣経験者を要職に就けまくったんだから、防衛の知識と、政治のシナジーっていうのを見せて欲しいですね。
> 「Leopard2はK2より約10トン重いものの(両者の性能に)大きな違いはない
大きな違いは無い。。。だと?
10tってかなり違うんですが。。。
あと自動装填装置の有無も。操作人員が4->3に減るし、発射速度も違うでしょう。
どちらのスペックが高いかではなく「ノルウェーの要求要件をどちらも満たしている」という意味合いだと思いますよ。
なるほど。
性能に差が無いというより、どちらも十分な性能だという意味ですかね。
現行もがみ型ではなく新FFM(6200トン)の方を選んだとなるとMEKO A-200(4000トン未満)と比べて排水量で5割以上大きいわけで、その船体の大きさを必要としたならこの時点で決まりじゃないですかね?
最初は現行アンザック級と同程度の3000トン台後半のサイズを考えてたけど、もがみ型の省人設計と航洋性を見て考えを変えたかも。
あとは豪州側がコンステレーションのグダグダぶりを他山の石として共通性を損なうレベルの変更を要求したりして来なければ大丈夫そう。
ただ、06FFMの要求額見たときちょっと驚いたのでそこが心配の種ではあるかな・・・。
豪州が計画しているのは、ハンター級フリゲート及びアラフラ級哨戒艦の取得数を削減し代替調達する「汎用フリゲート」なので、「もがみ型」や「新型FFM」で搭載している機雷掃討設備や機雷敷設設備は要求外でしょう。
概算要求の内訳が不明なので確実なことは言えませんが、USVやUUVの別途計上記載が無いので込み込みと思われます。管制システム含め、その分の価格低減は確実かと。
ざっとの計算ですが、11隻取得のプログラム総コスト70億豪ドル~100億豪ドルの範囲に収まりそうな。
「売れない」に5000ガバス
豪州にとって日本はさほど重要な国でもないし、関係性を構築する必要もない
後々を考えるなら独に恩を売った方が国益になるだろうから
日本はオーストラリアにとって第2位の輸出先で超重要ですよ。(1位は中国)
「(スペック外の)国家関係等の面では日本が有利」という記事なんですが…
>豪州にとって日本はさほど重要な国でもないし、関係性を構築する必要もない
どこを見て言ってるんだ…(呆れ)
このレーダーアンテナ、全国にある頌徳碑や忠魂碑のように見えてしまうんですよね。私だけなのかな。
これUNICRONって言い張っているんですぜw。
1本にまとめたのは良いけど、なんというかかなり肥満体のユニコーンの角なイメージ。
UNICRON→UNICORN
一応、頌徳碑や忠魂碑の画像を再確認しましたが、レーダーでなくて、統合通信アンテナの方でいいんですよね?
横からですが、
アレーアンテナとその土台が、何となく石碑っぽいと思っていたので、
統合通信アンテナではなく、レーダーの方に一票。
身も蓋も無い事言うと
国によって性能差無いから最後は政治的事情で決まっただけでは
性能差以前に排水量からして全然違うんですが…
アルトとカローラで悩んでサイズや排気量の違いよりディーラーの対応がいいからカローラにします、なんて家はあんまりないのでは。
ついでに原潜までの繋ぎとなる潜水艦はどうですか?となる可能性は無いだろうか
ドイツも軍艦は売り慣れてるし、実績も信頼性も十分とは言うが、、これ以上MEKOを弄って大丈夫なのか、今のアンザックでさえ違法建築なのにまだやるのかと言う問題はあるんじゃないかと。
A-200は基本コンセプトが同じなだけで200とは全然別設計なので…
K2戦車の自動標的認識能力は控えめに言っても一世代分の格差を生みそうだけど
欧州のコンペであんまり注目されないのは、現場とマニアの視点の違いなのか、それともレオ2との格差を強調しちゃうから忖度して言及を控えてるのか
k2は、韓国で親北親中・反米な左派が政権とった場合、対露などではK2の使用や販売などにあれこれ制限かけてくる可能性もあるから……