ブルームバーグは15日「日本はNATOや他の同盟国に合わせて防衛費を引き上げる方向で検討している」「韓国が表明した『10年間で防衛費をGDP比3.5%まで引き上げる』という公約に合わせるシナリオも検討している」と報じ、独自基準2.0%(NATO基準で約1.5%)で誤魔化し続けるのが困難になってきたのだろう。
参考:Japan Eyes Defense Spending Worth 3.5% of GDP After US Pressure
最悪なのは曖昧な態度で時間を無駄にすること、やるならやる、やらないならやらないで議論を始めたほうがいい
トランプ大統領は2025年1月にホワイトハウス復帰を果たすとNATO加盟国にGDP比5.0%の国防支出を要求、2025年6月のNATO首脳会談で「国防支出=3.5%」と「軍事インフラとしても活用できる分野(重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤など)への投資=1.5%」を組み合わせた総額5.0%の新支出基準で合意したが、この新支出基準が分かりにくいのはトランプ政権がNATO加盟国以外に国防費増額を要求する際の目安として「総額5.0%」と「総額5.0%に含まれる国防支出分の3.5%」の数字を一貫性なく使用する点だ。

出典:NATO
現在は国防費増額の目安として3.5%を提示することが多く、ヘグセス国防長官も2026年5月のアジア安全保障会議で「トランプ大統領は絶対的な基準を設定した。我々は同盟国やパートナー国に3.5%を要求しているが、我々自身はその数字をはるかに超えて投資をしている。すべての同盟国やパートナー国がこれと同等の決意を示すことを期待している」と言及した。
韓国の李在明大統領はトランプ大統領と会談した2025年10月「可能な限り早期に国防費をGDP比3.5%まで引き上げる」と約束、2026年に国防費として65兆8,642億ウォン(GDP比2.37%)を支出し、韓国メディアは「少なくとも2035年までにGDPに占める国防費の割合を3.5%まで引き上げる意向だ」と報じている。

出典:Secretary of War Pete Hegseth
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相はトランプ政権の国防費増額要求を拒否していたものの、2026年4月に発表した国家防衛戦略と統合投資計画の中で「今後10年間に計1,170億豪ドルを追加し、計8,870億豪ドルを投資する」「GDPに占める国防支出の割合は2033年に3.0%に到達する」と明かし、すでに台湾の国防費はGDP比3.32%=9,495億台湾ドルに達しており、2030年に5.0%まで引き上げる予定だ。
日本の高市首相は所信表明演説の中で「防衛費をGDP比2.0%への引き上げを2年前倒しして今年度中に実現する」と表明し、2025年度は当初予算と補正予算を合わせて約11兆円を支出して2.0%を達成したことになっているものの、NATO加盟国と韓国、オーストラリア、台湾のGDPに占める国防支出の割合は「NATO基準=支出を行う当該年の名目GDP(予測値)で計算し、その後にGDPの実績値が確定すると数字を修正・更新するルール」で算出されたもので日本だけ独自の基準で算出している。

出典:U.S. Army photo by Cpl. David Poleski
小泉進次郎防衛相は2026年4月「今月7日に成立した2026年度予算のうち防衛関連費(防衛費が約9兆円+公共インフラ整備や海上保安など安全保障に資する関連費用が約1.6兆円)がGDP比で1.9%になった」と発表した際、記者から「2026年度のGDP見通しを基準にした場合の数字も教えてほしい」と質問され「現在の安全保障関連文書が作成された基準年が2022年度のGDPなので、2022年度のGDP(560兆円)を基準として年間防衛費を比較するのが適切だが、仮に令和8年度の見通しGDPを用いて計算をすると1.5%になる」と述べた。
つまり2025年度の防衛関連費を当該年のGDP=672兆円で計算すると約1.6%しかなく、常備軍をもたないアイスランドを除くNATO加盟国、韓国、オーストラリア、台湾の中で旧基準=2.0%を下回っているのはスロベニア(スロベニアは2.02%と主張しているもののNATO基準では1.6%程度)だけで、花田龍亮氏はオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が運営するThe Strategistへの寄稿の中で日本の防衛費について以下のように指摘している。

出典:NATO
“小泉防衛相は2026年度の防衛関係費を約560兆円だった2022年度のGDPを分母にして1.9%と計算しているに過ぎず、約690兆円と予測される2026年度のGDPを基準とした場合、実際の割合は1.5%にとどまる。つまり、分子=予算額は4年間増加しているにもかかわらず、分母=GDPは据え置かれたままなのだ。ヘグセス国防長官は2026年5月のアジア安全保障会議で3.5%を要求したが、操作された「1.9%」という数字でさえ到達点には遠く及ばず、実態としての「1.5%」に至ってはスタートラインを出たばかりの段階に等しい”
“日本がこのような数字の操作を行う理由は米国の圧力を受けても増額の確約が出来ないからで、現在の支出水準を維持するための税収基盤ですら限界に近い。数字の操作があったとしても日本の防衛力強化自体は紛れもない事実であるが、これ以上の予算拡大には強い逆風が吹いている。高市首相は法制化されていた防衛費増額のための法人付加税=防衛特別法人税を導入した。これは企業に4%の追加負担を課すものだが、日本国債の利回り上昇に伴う国債費(債務償還や利払い費)の増大が、その税収増を相殺してしまっているのが実情だ”
“こうした限界を考慮すれば、一連の計算上の操作は苦肉の策として生み出されたものだと理解できる。高市政権は防衛基盤の抜本的強化を加速させている。これは生産、販売、維持整備にかかる予算を国内経済に還流させ、高騰する輸入コストを回避する狙いがある。GDP比率を操作し管理することは防衛基盤改革を実行に移すための時間稼ぎとなっている。米国の政治的圧力をかわしつつ、防衛費の拡大軌道を現実的な範囲内に維持する上で本戦術は機能していると言える”
ブルームバーグは15日「日本は米国の圧力を受けて新たな中期防衛費の目標をNATOやその他の米同盟国と同じGDP比3.5%にすることを検討している」「日本の防衛当局者は米国のカウンターパートとの協議において防衛費を大幅に増額する意向を示唆している」「検討されているシナリオの一つは韓国が表明した『10年間で防衛費をGDP比3.5%まで引き上げる』という公約に合わせることだ」「一方で別の関係者は3%といったより低い目標となる可能性もあるという」「関係者の中には今のところ正式な公約を掲げる準備は出来ていないため防衛費増額の存在が報道されても存在を否定すると述べる者までいる」と報じた。

出典:首相官邸
国際戦略研究所(IISS)のロバート・ウォード氏は「日本の政策立案者や官僚の間で防衛費の大幅増額に向けた地ならしはすでに済んでいる」「もはや焦点はいつ3.5%に踏み切るかというタイミングの問題に絞られている」「日米同盟の重要性を鑑みれば防衛費引き上げ期間が5年であれ10年であれ、他に選択肢があるとは思えない」と指摘し、増額した防衛費を何に使うのか、その財源はどこにあるのか、その支出が持続可能なのかという正論はさておき、もう独自基準2.0%(NATO基準で約1.5%)で誤魔化し続けるのが困難になってきたのだろう。
トランプ大統領が任期切れを迎えれば防衛費増額要求や地域安全保障のリスクが消えて無くなるわけではなく、米政権が交代するまでのらりくらりかわしていくのが本当に賢い選択かどうかも不明で、防衛費をGDP比3.5%まで引き上げるなら財源に関する議論を、防衛費の引き上げが困難なら現在の支出レベルで安全保障をどう確保するのかの議論を一刻も早く始めるべきで、最悪なのは曖昧な態度で時間を無駄にすることだ。
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※アイキャッチ画像の出典:首相官邸









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防衛費GDP比3.5%にするのはまぁいいとして、予算の大半は国内に流してほしいですね。
本当にその通りです。
防衛費増やしていつ届くかも分からない米国兵器なんぞ
絶対に買わないでもらいたい。
シンプルに隊員の待遇改善とか弾薬備蓄に充てて欲しい。
幸いにも?ドローンは大増産は
民間産業の活性化には丁度いいかも
現実はほとんど、国内で還元されています
左派は軍事的な知識が無くて、盛んに「アメリカのポンコツ兵器ガー」とデマを流していますが、
現実は防衛費の増加分は、ほとんど国内に還元されているとしか言い様が無いですね
防衛関連経費として、北陸新幹線舞鶴ルートを引くくらいしか思い付かない。
防衛部門と新幹線は何も関係ありませんよ、まさか新幹線で貨物列車が運行できるとお思いでいらっしゃる???
大宮−新大阪間に入らなければ、貨物新幹線も不可能ではない。
それより、クルー制の乗組員の交替移動用に有効とは言える。
まあ、無理なこじつけだが。
それ北陸新幹線全区間じゃないですかぁ
東北新幹線で運行されてる荷物新幹線「はこビュン」とはワケが違うんですよ、ゴリゴリの貨物列車を走らせるには過去改変が必要なレベルでなにもかもが足りません、人員輸送もトラック等で事足りると思われます
ともあれ、新幹線の建設費用を防衛費3.5%の中に含んだとして、額が水増しされるだけで防衛へのリターンは一切ありません、やはりここは道路の建設がベターですね
防衛関連…ウクライナで運河や川がめちゃくちゃ防壁として役に立っているしその辺の整備費用を防衛予算に入れるかw
確かに、他の予算を防衛関連に名目変更する事により防衛費増額とするのは一手ですな。
私だったら、こども家庭庁の少子化対策予算を、自衛隊員の給与/待遇アップに使いたいですね。
若い下司官が高給取りになれば、婚姻も増えて子供も増える。うむ。こんな完璧な少子化対策は他に無いでしょう!
ちなみに、令和8年度の防衛費における人件・糧食費は2兆3,897億円。こども家庭庁の予算は7兆7436億円です。
…此処はいっそ、隊員各位の給料を倍にしてあげましょうか?w
こども家庭庁の保育園の予算とほぼ同額なので全国の保育園を閉鎖すれば可能です。
態度をはっきりさせることと国内外に説明することって
日本政府にとっては財源確保よりも難しかったりして
格納庫の掩体化は進んでるんですかね…
一番の問題は、丁寧に説明したとてそれがそのまま届くか微妙って事やね
ネットがあるから、TV新聞が情報源の全てだった時代よりはマシだけど、政府の施策の意図をきっちり一時ソースから確認する人は少ない
何ならSNSではTVとかのオールドメディアと呼ばれる物より悪質な切り抜きが、情報源として跋扈してるからね
せめて政府が伝えたいことを真っ直ぐ国民に伝えられる体制が出来ないと、防衛費3.5%に上昇は難しそう
自衛隊の施設を立て直す予算を計上するべき
特に司令部は首里城再建の様に建屋を立てて内部で工事、基礎打ちを衛星から撮影されない様にしながら建築した方がいい
この間出た令和9年度概要要求にて掩体壕の整備が明記されてましたよ。
まあ今の時代だと無いよりマシ程度なので後回しにされてたんでしょうね。
すみません返信先間違えました…
1個上のコメントに返信しようとしました
人口が毎年1%近く減り、深刻な社会保障負担が発生、
さらに国債利払い費が爆発しつつある現況下で
防衛費の大幅増代が現実的に可能とは思えない
これ「GDP比」って誤魔化してるけど実質GDPなら約591兆円で大体20兆円くらい
一般会計を120兆円と見積もるなら17%だからな単純に増額で済ますなら10兆円以上の増税等が必要だからな
消費税くらいしか収めてなかったり福祉費に寄生してそうなネット民はその金額がよくわかってないんやろな
まぁ、言うだけなら只ですからね。
利上げに圧力をかけて、歳出ジャブジャブって事はインフレ気にしないって話なので、金利で国債費がってのも口だけだと思います。金利3%でもインフレ3%なら実質0です。
取りあえず、「第一四半期 税収」で検索して時事通信の記事でも読んで下さい。
言うだけならタダです。
5類撤廃や原潜導入の話の流れから防衛費増額は既定路線ではないですかね。ただ日本の場合トータルの防衛費が20兆円以上になる増額は政治的に非常にセンシティブな話題になる為政治日程を考慮してたのでは?特に沖縄県知事選前に防衛費GDP比3.5%の公言はなかなか難しかったのだと思います。
現状沖縄県知事選に圧勝し、野党勢力も分裂し与党絶対有利になった状況で出てきたブルームバーグの報道もある種の観測気球ないし、政府側の情報発信にも思えます。
おそらく安保3文書改定前か同時期に防衛費増額についての具体的な内容が出てくるのではないかと。
防衛名目で日本中の橋や道路に補強工事出来ないかな
軍民両用の施設や工場に期したいですね。
まず、日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区の跡地。
古い港湾設備にも投資してほしい。
インフラ整備で色々と使えるのでは?。自衛隊員の待遇改善の他にも。
前にも書いたことがあるけれど。
電気の周波数を60サイクル(50より60が良いと思う、多少効率が良いそうな)
で統一したり、鉄道の軌道を標準軌で統一(非常時の鉄道貨物輸送量を増やせないかな?)
したり。青函トンネルをもう一本(笑)掘ってみたり(一本だと心許ないし)。
特定空港の整備を進めてみたり?。橋梁の補強をしてみたり。色々?では?。
OWAドローン対策の装備/組織も必要だろうし。
周波数は東西で違うので厳しいですね、交流電化の方が費用もかかる(特に大量に必要とする車両)ので態々変更する利点がないです
日本の鉄道は圧倒的に狭軌の路線が多いので今更の改軌は不可能ですね、貨物輸送量を増やすなら代わりに旅客列車を減らさねばなりません、JR貨物はJR旅客各車の線路を走らせてもらってる側なので難しいでしょう
第二青函トンネルも構想だけはありますが実現に向けた動きはありません、それより先に北海道新幹線全通が優先されるでしょうが、もう一本掘るには理由も資金も足りません
ちなみに陸自は鉄道による戦車輸送を諦めています(幅3mを超える74式以降は不可)、他の車両も制限に引っかかるものが多くほとんどが条件付き(一時的な分解など)です、鉄道を活用するなら遠方からの弾薬燃料の輸送くらいでしょうか
過去の積み重ねとはいえ、面倒なことになっていますね。
とはいえ、放置しておくわけにもいかないのでは?、と思ったり。
電気に関しては、ジーメンスとGEにしてやられた?みたいだし。
少しずつ進めるしか無いのかな。新幹線だけでも揃わないかな・・・。
東海道/山陽新幹線に関しては、さすがに全線で60Hzだそうだけれど。
一般電気器具は、現在は50/60Hzどちらでも可のものも多いようだし。
軌道に関しては、一時期、ミニ新幹線の話があったりしたので、
少し期待はしていたのですが・・・。
赤字で廃線が増えると、標準軌化の負担が減ったり(笑)しないかな(希望)。
国鉄の時代に、一度、標準軌化は考えられたそうだけれど・・・。
非常時に燃料事情などが重なると、鉄道しかないと思えるのだけれど・・・。
沿岸航路は直ぐに狙われるだろうし。いざ沈められると、損害が大きいし。
周波数は今更如何ともしがたいですねぇ、こればっかりは
ミニ新幹線とは言いましても在来線の狭軌を標準軌に敷き直しただけなのでトンネルやホーム等の建築限界はほぼ在来線サイズのままです、車体が大きくなったわけではないので輸送量は増やせません
廃線するより活用して観光列車で稼ぐ方がマシですね、安易な廃線は経路選択の余地を失くします
民間商船が撃沈され、線路道路が爆撃されようものなら、同じことを返す以上に損害へのペイはありえません、その時に人的損害が起こったのなら尚のことです
なるほど、です。
何かしら、予め考えておく必要はあるのでしょうね。きっと。
なるべく、国家/国民の抗堪力を上げておくために。
予算を増やして、インフラ補強もするべきなのかな。
有効な方策は考えないといけないでしょうが。
3.5%の件は置いておいても。
>最悪なのは曖昧な態度で時間を無駄にすること
一番実現可能性高そうで草
利上げ不可避状態なのに、それすら決断を先延ばしにしている
利上げしたらまず個人の家計じゃなくて、銀行の貸し出し金利が上昇するから中小銀行や中小企業がやられる
更に地方銀行が所有している国債も利上げによって、すでに発行された低金利の国債の価格(時価)は下がる
つまり、借り手が無くて国債を買っていた地方銀行は膨大な含み損を被り、それによる影響を中小も受ける
で、この中小には防衛関連の企業やインフラ系の下請け・孫請けなんかも含まれているから、防衛予算を増額した所で、既に企業や銀行が潰れている可能性すら、タイミングによってはあり得る
家計は最期に影響受けるけども、勤めている企業がガンガン潰れていく展開もあり得る
こういう事情があるから防衛費の基準クリアを小手先の数字操作でなんとか誤魔化したいのは分かるが、決断が遅れれば遅れるほど海外との金利差でダメージは加算されていく
というより、防衛畑と財務畑で責任押し付け合いの果てに生まれた妥協案にも見える