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日本のテラドローン、防衛ビジネスの中東展開に向けてEDGEと提携

日本のドローン企業=テラドローンは「防衛向けのドローン事業をビジネスとして成立させられるか」「特に需要や規模で先行する海外市場において収益を上げられるかどうか」を重視しており、防衛ビジネスの中東展開において重要なアラブ首長国連邦の防衛グループ=EDGEとの提携を発表した。

参考:テラドローン、UAE防衛プライム大手EDGEグループのIGGへカウンターUAS連接用の迎撃ドローンを含む防衛アプリケーションを納品
参考:テラドローン、元三菱重工業 日本の防衛産業を支えてきた岩﨑啓一郎氏を顧問に招聘
参考:テラドローン、国産防衛機を量産へ 年数万台規模

テラドローンとEDGEの提携は斬新でもあり、国際的な防衛ビジネスの中で如何に伝統的な日本企業の動きが遅いかを象徴する出来事

ドローン事業に特化したテラドローンの動きは従来の日本企業とは完全に別もので、防衛省・自衛隊向けに依存した防衛ビジネス、日本の地理的環境を理由にした閉鎖的な思考、国産技術への過度なこだわりを一切見せておらず、必要な技術やノウハウを一から育てて積み上げるのではなく「足りないものがあれば買収や協力で補えばいい、それよりも優先すべきは防衛向けのドローン事業をビジネスとして成立させられるか、特に防衛向けのドローン需要や規模で先行する海外市場において収益を上げられるかどうか」を重視しており、この点においてテラドローンは他の日本の防衛スタートアップとは一線をかくしている。

迎撃ドローン分野においてはTerra A1を開発するウクライナ企業のアメイジング・ドローンズ、Terra A2を開発するウクライナ企業のウィニーラボを連結子会社化し、ウクライナ企業のベソマーと偵察用ドローン(Terra C1)提供を目的とした合弁会社(JV)の設立を準備中で、三菱重工や他の防衛スタートアップとは異なり「実戦を想定した環境でのテスト」ではなく「ウクライナ軍による実戦での使用と結果」という明確な強みを備えており、さらにテラドローンは日本市場ではなく海外市場での存在感の方が大きく先行しているのも特色の1つと言えるだろう。

テラドローンの子会社=ベルギー企業のユニフライが提供する国家航空向けに警戒管理システム(UTM)は同市場でNo.1のシェアを保有しており、2026年5月にMBDAと対象空域内の不審ドローンに対して警戒・識別・対処を一気通貫で行うカウンタードローンプラットフォームの実現に向けたパートナーシップ契約を締結、さらに欧州防衛事業の拠点としてエストニアにTerra Defense Europeを設立し「同社を欧州防衛事業の中核拠点と位置づけ、ウクライナ企業との連携を通じて展開するTerra A1、Terra A2、Terra C1をはじめとした防衛用途の無人アセットについて欧州域内での事業開発、供給、保守・運用支援体制の構築を進めていく」と発表。

出典:Terra Defense

“現在、欧州では安全保障環境の変化を背景に防衛能力の強化と域内防衛産業基盤の拡充に向けた取り組みが進んでいる。EUでは共同調達や防衛産業の生産能力強化を目的とした「SAFE」により最大1,500億ユーロの融資枠が設けられ、防衛産業の生産能力拡大や安定供給を目的とする「EDIP」も進められている。これらの枠組みでは欧州域内の産業基盤や現地パートナーとの連携が重要性を増している”

“一方で、防衛用途の無人航空機および関連システムを国際的に展開する上では各国・地域の制度や安全保障上の要請を踏まえた体制構築が不可欠だ。高度な防衛装備品の国際移転には各国の輸出管理制度に基づく審査・調整プロセスが伴い、実運用までに一定の時間を要するケースもある。こうした環境を踏まえ、テラドローンは日本からの直接的な供給モデルに加え、需要地に近い欧州域内に事業基盤を構築することで防衛用途の無人アセットの事業開発、供給、保守・運用支援、ロジスティクス管理を一体的に担う体制が必要であると判断した”

出典:Terra Defense

“Terra Defense Europeは欧州防衛市場における事業開発、現地パートナー連携、顧客対応を担う拠点として、欧州防衛基金(EDF)や欧州防衛産業プログラム(EDIP)をはじめとする欧州の防衛関連プログラムへの参画可能性を高めることも目的としている。EDFやEDIPでは欧州域内企業を中心としたコンソーシアム形成、研究開発、量産・供給能力の強化、ウクライナ企業との協力などが重視されており、現地法人および欧州防衛プライムとの連携が重要になる”

“こうした背景を踏まえテラドローングループは、欧州防衛プライムの中でもレーダー、防空・監視システム、電子戦(EW)、指揮統制(C4ISR)領域で高いプレゼンスを有するスペインのインドラとの提携可能性について検討を開始した”

7月7日には「テラドローンの子会社=Terra Inspectioneering BVはアラブ首長国連邦を代表する防衛グループ=EDGEとカウンタードローン分野での協力に関する覚書(MOU)を締結した」「本取り組みを通じEDGEの子会社=International Golden Group LLC(IGG)にカウンタードローンと連携可能な迎撃ドローンを含む防衛アプリケーションを有償で納品する」「これによりIGGはUAEおよび中東地域において、今後あるいは今後構築するカウンタードローンシステムにテラドローンの防衛アプリケーションを組み込み、UAE軍や政府関係機関向けのカウンタードローンソリューションとして提案・展開を進めることが可能になる」と発表。

アラブ首長国連邦の防衛グループと唐突に言われても日本人にとっては何のことか分からないかもしれないが、これは本ブログが防衛市場での躍進を何度も取り上げてきたあのEDGEで、米国のRaytheon、L3Harris、Anduril、欧州のLeonardo、Fincantieri、Indra、Naval Group、Safran、Thales、Diehl Defence、HENSOLDT、KNDS、Milrem Robotics、Baykar、Aselsan、アジアのHanwha Aerospace、Korea Aerospace Industries、Republikorp、PT Pindadなどと協力関係にあり、防衛ビジネスの中東展開において確実に名前が登場する企業だ。

さらにEDGEは買収と協力を通じて欧米を含む国際的な防衛市場に自社製品を供給しており、ここと最初に提携した日本の防衛企業がプライムではなく防衛スタートアップに近いテラドローンだったという事実は、従来の日本企業が海外防衛ビジネスに対して極めて消極的だったことを象徴している。

7月8日には「日本の防衛産業の中核企業である三菱重工業において防衛・航空宇宙領域の要職を歴任した岩﨑啓一郎氏を顧問として招聘した」「テラドローンは岩﨑氏の顧問就任で国産防衛ドローンの開発、自律型無人システムの高度化、防衛省・自衛隊との連携強化、防衛関連企業との協業拡大、海外防衛市場への展開、次世代安全保障インフラ構築の事業推進に貢献いただくことを期待している」と発表。

出典:Terra Drone

岩﨑氏もプレスリリースの中で「世界の現代戦を見ると無人システムは既に戦略上不可欠な存在となっているように思う。 今後、日本においても国産技術による無人航空システムの確立と防衛産業基盤強化が極めて重要になると考えている。テラドローンは日本発でグローバル展開する数少ない無人システム企業であり、実運用を通じた知見、高い技術力、実装力を有している。これまで培ってきた経験を活かし、日本の防衛・安全保障分野の発展に貢献していきたい」と述べた。

防衛省・自衛隊向けに依存した防衛ビジネスは三菱重工業、川崎重工業、IHI、三菱電機、日本電気、富士通、SUBARU、日本製鋼所、新明和工業、豊和工業、ジャパンマリンユナイテッドなどの伝統的な防衛企業が独占し、この閉鎖的で規模の小さな市場に新規参入する企業もほぼ存在せず、テラドローンは必要な技術やノウハウを買収や協力で補えても防衛省・自衛隊とのコネクションや伝統的な防衛企業との連携には「これを繋ぐ人間」が必要になり、そこで元三菱重工業の岩﨑啓一郎氏を招聘したのだろう。

出典:Terra Drone Terra A2

ちなみに徳重最高経営責任者は海外の主要なディフェンスメディア=Defense Newsの取材に自ら「防衛省内では迎撃ドローンへの関心が非常に高く好意的な反応だ」「ウクライナではドローン技術が急速に進化しており、迎撃ミサイルに代わる低コストの選択肢として迎撃ドローンの重要性が改めて確認されている」「私が抱いていた防衛産業のイメージは非常に伝統的で、官僚的で、対応が非常に遅いというものだったが、ウクライナを訪問した後、そして中東での戦争の影響もあり、現在では誰もがドローンの価値とドローンへの投資の価値を理解している」と言及したことがある。

時事通信の取材にも「日本国内でも迎撃ドローンを年間最大数万台規模を量産できる体制を整える」「(台湾情勢の緊迫化など日本を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえて)今から真剣に防衛用ドローンの内製化を進めるべきだ」「現在は本体だけでなく多くの部品が海外製なので有事下での供給継続性が考えられていない」「戦時を意識した工場の在り方も大事」「外部から狙われにくい場所や設備による生産体制を構築すべきだ」と述べており、恐らく年間最大数万台規模を量産できる体制とは「迎撃ドローンを含む小型無人機」のことを指している可能性が高い。

出典:Terra Drone Terra C1

1年間に数万台の小型無人機を生産するだけの需要があるのか?と思うかもしれないが、海外では年数万台の生産能力は伝統的な防衛プライムではなく防衛スタートアップレベルの数値で、これだけの需要があるのはFPVドローンクラスの小型無人機が予算・会計分類で「耐久財」から「消耗品扱い」に正式変更されているためで、小銃や砲弾と同じように演習等で大量消耗できるようになったからだ。

日本国内で小型の防衛用ドローンを年数万機~十数万機生産(2023年~2027年までの防衛力整備計画で弾薬整備費に投じられる資金は約5兆円=1年約1兆円、仮に600ドルのFPVドローンを10万機生産しても6,000万ドル=約97億円に過ぎないため、年間の弾薬整備費に占める割合は0.97%に過ぎない)できるようにするためには、概念や運用ドクトリン上の話として「小型無人機は大量に運用する消耗品だ」と叫ぶだけでなく、小型無人機を予算・会計分類で「耐久財」から「消耗品扱い」に変更する必要があり、これを一刻も早く変更しなければ日本国内での大量生産など絵に描いた餅で終わるだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Terra Drone

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コメント

  • コメント (18)

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    • 無印
    • 2026年 7月 13日

    消耗する小型ドローンは、「機体」ではなく、「弾薬」である
    と考え直さないといけない訳か

    30
    • アレ
    • 2026年 7月 13日

    いまだに空薬莢集めてるのにドローンが消耗品になるなんて夢のまた夢の話でしょうね。
    それに、自衛隊施設のドローン妨害装置ですら総務省の指導で出力下げたり、不利な位置に再配置したりしてるのに予算増大の話ばかりで、法改正の話だけは全く聞こえないのはなんなんでしょうね

    20
      • 西風
      • 2026年 7月 13日

      空薬莢集めるのは員数合わせのためでしょ
      消耗品との話と何の関係が?
      たとえドローンが消耗品として計算されるようになったとしても
      平時に飛ばして行方不明になったら大捜索されると思いますよ

      30
      • 匿名希望係
      • 2026年 7月 13日

      空薬莢は治安維持考えると割と必須よ。
      あれに火薬詰めればそのままつかえるんだし

      4
      • 中村
      • 2026年 7月 14日

       空薬莢は真鍮なので普通は回収しますよ。kg当たり1000円位かな。5円玉とか10円玉が落ちてて拾わない人いないでしょう。

       ザックリ一発その位の値段です。

      6
      • のー
      • 2026年 7月 14日

      薬莢を回数するのは横領を防止するためです。
      火薬入りの実弾なんで、紛失すると拙いからです。
      実戦を想定していない平和な訓練なんですよ。
      ただし実戦を想定した海外派遣部隊では、薬莢を拾わない練習をするとか。

      13
      • kitty
      • 2026年 7月 14日

      この文脈の「消耗品」は、「演習で壊しても良い」という意味で、行方不明は最初からダメでしょう。

      5
    • せい
    • 2026年 7月 13日

    ドローン関係は法整備もそうだけど、広大な演習場も必要だよな
    銃弾みたいな物とはいえ、射程は数km単位なわけだし
    ただの広場でいいから演習場を各地に備えて、予備役にまで消費させる余裕を作ることが取りあえず目標なのかな?

    11
      • ななしのシロウト
      • 2026年 7月 13日

      パイロット養成用のフライトシミュレーターのように、ドローンオペレーター養成用のシミュレーターも必要かも?

      10
    • 名無し
    • 2026年 7月 13日

    ガチガチの防衛産業に割って入れるんかね
    アンドゥリルなんかはパランティアの秘蔵っ子だけど
    テラドローンにバックは居る?

    7
      • SB
      • 2026年 7月 14日

      これは割と逆で、むしろドローンには伝統的な防衛産業ってあんまり興味無いと思うんですよね
      記事で「600ドルのFPVドローンを10万機生産=年間100億円」って書かれてますけど、ドローンの粗利益率は大体20%~30%くらいですから営業利益率は5~10%程度

      シェアを半数とっても50億円で利益率10%なので、リスクとか考えると正直全力で狙うメリットが無いです
      これが弾薬でなく装備品で、保守とかサポートでガッツリ稼げるなら全力で狙いますけどね

      5
    • たむごん
    • 2026年 7月 13日

    イラン戦争、まだ続いているみたいですからね。

    テラドローンはサウジアラビアが大株主(サウジアラムコ系)でしたし、湾岸諸国にとっては、取り込めそうなものは何でも使いたいでしょうね。

    4
    • 58式素人
    • 2026年 7月 13日

    ”欧州防衛事業の拠点としてエストニアにTerra Defense Europeを設立し”
    エストニアに拠点があるのならば、できれば、同地のフランケンブルグ社と
    関係ができるようになれば良いな?、と思ったり。
    同社のMk1マイクロミサイルを日本でも入手できれば良いな?、と思ったり。
    Mk1マイクロミサイルはシャヘド2/3/4/5に対応できる性能があるようだし。
    安価でもあるようだし。地上/艦載/機載のいずれもできるようだし。
    防衛省で想定している(らしい)プロペラ推進の迎撃UAVは、
    長距離自爆ドローンがジェット化されると追いつけなくなるだろうし。
    現時点で最高速のクアッドコプターは、実験段階で699km/hとのこと。
    プロペラ推進であれば、この辺りが限界と思えます。
    飛行速度が699km/hならば、対応できるUAVは、おそらく
    300kt(約556km/h)の飛行速度の物まで、だろうし。

    5
    • YF
    • 2026年 7月 14日

    テラドローンと日本の既存の防衛産業の決定的な違いは、三菱にしろ川崎にしろ事業主体は防衛安全保障じゃないところですよね。民生品で稼いで防衛・安全保障は国とのお付き合い。記事に「防衛省・自衛隊向けに依存した防衛ビジネス」と書いてありますが逆ですよね。依存してないからそこまで海外の売り込みも必死じゃない。
    逆にテラドローンはドローンを売らないと会社が立ち行かないので、出来る事は何でもやる。それこそ必死だと思います。

    5類型撤廃を機に日本の防衛産業の在り方も見直すべき時が来たんだと思います。防衛・安全保障をビジネスの柱として官民一体となって育成していくべきで、国とのお付き合いという状況は変えていかないといけないですよね。(国とのお付き合いの場合、本業がダメになったら撤退もあり得ます)

    14
      • 名無し
      • 2026年 7月 14日

      防衛企業なら中国にあらゆる制裁される時代になり
      お付き合いでは済まないよね
      下手すればNIDECなんかも製品の防衛企業への納入断るかも
      EV関連事業で中国に睨まれたくないし

      3
    • 足柄
    • 2026年 7月 14日

    ベンチャー商社に夢見過ぎなんじゃ

    8
    • リンゴ
    • 2026年 7月 14日

    >小型無人機を予算・会計分類で「耐久財」から「消耗品扱い」に変更する必要があり
    これが一番難しそうなのが本当になんつーか、今の日本を端的に表してる

    9
    • 2026年 7月 14日

    頼もしいなぁ、テラドローン

    2

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