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海上自衛隊がEP-3の後継機検討を開始、次期電子情報収集機は無人機ベースになる可能性も

防衛装備庁は海上自衛隊の次期電子情報収集機に関する情報提供企業の募集を開始、プラットフォームの対象に無人航空機も含まれているのが非常に興味深い。

参考:次期電子情報収集機の取得方法の検討に関する情報提供企業の募集について

海上自衛隊のEP-3後継機は有人機だけでなく無人航空機も検討対象に含まれている

航空自衛隊は電子情報収集機「YS-11-EB」の後継機として国産輸送機C-2ベースのRC-2を調達中(計3機調達予定)だが、防衛装備庁が情報提供企業の募集を開始したのは海上自衛隊の次期電子情報収集機(EP-3の後継機と思われる)に関するものでリリースされた文書には中々興味深いことが書かれている。

まず防衛装備庁が提供を求めている情報は次期電子情報収集機の機体と電子情報収集に関連したアビオニクスについてで、これに応じる企業は関連装備の開発・製造企業だけでなく海外装備の輸入・販売に関する権利を保有する企業と規定しているため「国産」に限定されていない点だ。

出典:防衛装備庁 次期電子情報収集機の取得方法の検討に関する情報提供企業の募集について

最も興味深いのは次期電子情報収集機の機体は有人機だけでなく「無人航空機」も対象に含めると記述している点で、国産プラットフォームベースのRC-2を選択した航空自衛隊とは異なり海上自衛隊は有人機だけでなく無人航空機も選択肢の一つにあげて後継機の検討を行うという意味だろう。

有人機ベースの後継機なら空自と共通機種(RC-2)を採用して調達・運用コストの低減を狙うか、海自が調達中のP-1ベースで次期電子情報収集機を開発して機体の共通化を図るのが無難なところとだと言える。しかし長時間に及ぶ電子情報の収集任務は有人機よりも無人機の方が適しており、十分比較して能力的に問題ないのなら無人プラットフォームを活用した次期電子情報収集機でも問題ないはずだ。

出典:航空自衛隊 RC-2 1号引き渡しの様子

米国製のMQ-9(米空軍が新規調達を打ち切る予定なので将来性については不安がある)はELINT任務に対応する外部センサーポッドが豊富に容易されており、最大45時間の滞空時間を有するイスラエル製のHeron MKIIもELINT、COMINT、ESM、戦術通信の中継等の追加ペイロードを搭載することが可能でトルコ製無人航空機にもELINTに対応した機体は複数(バイラクタルAkinci、TAI Anka、TAI Aksungurなど)あるため選択肢は非常に豊富だと言っていい。

まぁ国内の防衛産業基盤維持のため国産の有人プラットフォームを選択する可能性が高いと思うが、果たして海上自衛隊の次期電子情報収集機に何を選ぶのか注目される。

関連記事:防衛装備庁が情報提供の募集を始めた4つの技術、統合型指揮統制システムに関連?
関連記事:米メディア、中国軍の無人機は電子情報を収集しながら空自の戦闘機にダメージを与える

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 EP-3

英空軍、機体寿命を半分以上残したタイフーン×30機を2025年までに退役前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    国内の防衛産業のために割高なものを買うか、ある程度実績がある海外製を買うかのどちらですかね?
    ただ海外製だとブラックボックスの問題も有りますし、国産品も値段の問題も有るので難しいですね。

    14
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      他人に金やるより
      割高でも身内に金回した方がいいな

      22
      • 匿名
      • 2021年 9月 12日

      現時点ではEP-3後継機に海外製ELINT機を導入するという選択肢は無さそうです。
      リンク
      搭載する情報収集システムは国内開発の方針で決まっています。

      >電子情報収集技術は、機微性が高く、運用ニーズを満足する諸外国の装備品を導入は極めて困難であり、かつ、国内における現有装備品についても全てを代替するシステムは存在しないため、我が国が独自で研究を行う必要がある。

      情報提供依頼の対象は記事にある通り、搭載プラットフォームと電波環境予察システムについてです。

      4
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    P-1改造機とMQ-9と2機種採用じゃないかな?
    1機種のみなんて限定してもいないし。

    現場での人の判断が必要な場面もあるので、有人機である必要性があるけれど、
    だからと言って、あらゆる局面において有人機でなければいけないというわけでもないので。
    なので有人機と無人機の2機種採用で、貴重なパイロット等の人的資源の温存を図ることがベターかと。
    逆にこれ以外の方法が思いつかないぐらい

    14
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      有人機と無人機の2機種だと予算の都合で何方も中途半端にしか採用出来なさそう。

      8
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      海自が無人機も視野に入れてるのは人手不足の面が強いんじゃないかな。
      長期間の海上勤務や離島勤務のおかげで若者のなり手がないから・・・。
      無人機なら本土のオペレーションセンターから日帰り勤務できるしな。

      10
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    無人で置き換えることができるものは置き換えていくのが今後の世界の潮流なんだろう
    戦争の形態の大変革期なのかもしれない

    18
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    国産無人機を早く見たい。
    いつになったら出てくるのやら。

    28
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    ゼファーのようなソーラープレーンや、飛行船タイプの特殊無人機はどうだろう。週から月単位での偵察が可能になる。それともEP3のような戦術機の代わりにはならないかな?

      • 匿名
      • 2021年 9月 12日

      それは衛星の代替では?

      2
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    収集母機としてP-1改で、そこにTACOMの発展型を何機か吊り下げしてたら面白いなぁ。

    2
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    よくわからんが無人機だと捕獲されないたろうか

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      諸国ならいざ知らず、日本の場合、国内限定だからねぇ。
      盗難される可能性ならあるけど。

      4
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    UP-1(4発のP-1ベース 評価試験機?)は既に調達されてますね。
    OP-3C (5機?)画像情報収集機は無人機かもね?
    EP-3 (5機)電子情報収集 はP-1(4発)ベースでしょう。

    UP-3C(6機)評価試験機
    UP-3D(3機)電子戦訓練支援機
    もP-1(4発) ベースでしょうね 
    ※ 機数は最盛期、現在は違ってるかも?

    10
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      海自空自とも使い慣れてるP-1とC-2ベースがいいんじゃないかな、機体は出来ているから改造費はそれほどかからない。
      中身の情報収集用の電子機器やアンテナは同じものを使うようにすれば開発コストも増えない。
      両機とも運用高度が1万mを超えることが出来るから、これまでの機体に比べより遠くの電波をつかめる。
      P-1は自機が発生する電磁波が最小なとこも有利だしパイロンに自動帰還形の無人機(新規開発する)を釣ることが出来るし、C-2は燃料タンクと仮眠室を増設すれば2交代で長時間飛行が可能になる。
      こういった最先端の機密を持つ兵器は国産化した方が安心できる、輸入する場合はダウングレードされる。

      4
        • 匿名
        • 2021年 9月 11日

        >機体は出来ているから改造費はそれほどかからない。

        RC-2を開発して4機調達するのに2200億円かかってるけど?

        1
          • 匿名
          • 2021年 9月 11日

          機体価格が300憶で中身の電子機器とアンテナその他が250憶と考えれば妥当な水準かと、改造費用はそれほど大きくない。

          10
            • 匿名
            • 2021年 9月 11日

            揚げ足をとるつもりはないが、RC-2を開発して4機調達するのに2200億円かかるから1機あたりの調達コストが550億円で、30年の運用維持コストは別途3800億円かかると防衛装備庁が見積もってる。

            この費用を海外調達機と比較してみないと妥当かどうか分からないのでは?

            一体どのような根拠で妥当だと言ってるのか知らなけど、感覚で適当なことを言ってると後で恥ずかしいことになるかもよ?

            1
              • 匿名
              • 2021年 9月 11日

              内訳は分かりませんが防衛省が妥当と判断したんじゃないかな?

              7
              • 匿名
              • 2021年 9月 11日

              国防よりも財布の中身を気にしている財務省を通過しているということが何よりも妥当だと判断される根拠になりそうですがどうでしょう?

              11
            • 匿名
            • 2021年 9月 11日

            中の機器の方が高いと思うけど
            (機体のお値段より)

            14
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    国産に限定しないというのは、応じることのできる企業を必要以上に制限しないという会計検査対応を見据えて、という側面もあるかも?

    1
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    日本の軍需産業は先細りでお先真っ暗な企業も多いから…
    武器輸出を出来るようにして海外に販路を広げないと、海外との競争力もつかず
    技術向上も見込めず、価格も割高になる一方やろ
    でもそれを許さない獅子身中の虫がこの国には沢山居るからままならん

    5
    • 匿名
    • 2021年 9月 11日

    空自のRC-2選定はもろにC-2の生産数確保と製造ラインの維持のためで
    YS-11-EB後継単体として機経済的合理性の観点から言えばもっと安い母機の選択がある中でのRC-2製造はバカバカしい無駄遣いの一言でしかないけど

    一方でP-1はC-2と違ってある程度まとまった製造数を確保できて
    製造ラインと部品供給の長期維持に困らないので
    海自にしてみればEP-3その他P-3派生機の後継母機をどうしてもP-1にする必要は無いし、それ以外の安い選択肢があるなら検討する余地があるというか
    是非そうしたいんでしょ。マジで予算カッツカツの中でやり繰りしてるんだもの

    4
      • 匿名
      • 2021年 9月 11日

      自国の機体でないと、あとあと不便が発生する事もあるから机上の計算だけだと注意が必要。
      急に生産停止になり、保守費用が高騰したり、ラインが必要とかごねられたら大変。
      国産だと多少高くても内需になるからね。GDP1%って言っても、国家予算の5%だしね。5兆円はデカイ。
      全部国産じゃなくてもいいけど、半分以上は国産かがいいね。

      6
        • 匿名
        • 2021年 9月 12日

        そうそう、下手に輸入するとRQ-4Bみたいに導入が決まった後で生産国の米国が「退役させます」と宣言したせいで、未だ導入前なのに運用体制が不安定な状態に陥るケースすらあるんだよね

        3
          • 匿名
          • 2021年 9月 12日

          あのさ、これ、たかが電子収集機のベース機なんだよ
          はっきり言ってしまえばYS-11程度の性能の民間旅客機でも母機に使えちゃってたわけ
          つまり現代だと民間で大量に飛んでるビジネスジェット(機体単価はP-1の5分の1程度)の転用でも性能的に実は済む話で(そう考えると50億未満で済むベース機に約200億超のC-2、P-1使うのが如何に贅沢か判るし、そこまでしてでもC-2の生産ラインを維持したいという事情も)

          国産軍用機よりもよほど機体部品の枯渇とか心配する必要がない民間機の候補が沢山あるし
          実際、米軍でもNATOでも新興国でも今やこの手の少数運用の機種は大半がビジネスジェットベースの開発になってるものに
          RQ-4みたいな特殊事例持ち出してもしょうがないでしょ

          P-3C派生機の更新に関しては海自は割とマジでビジネスジェットベースの案を検討している可能性があると考えるのが自然なんだよ

          2
            • 匿名
            • 2021年 9月 13日

            他国がそうだから日本もマネするなんて必要はない。
            P-1は超低ノイズで大きなアンテナを搭載できるし交代要員も載せられる、装備する機器や発電能力が段違いだから、ビジネス機数機分の働きをする。
            ビジネス機を使うのは最適な機体を持っていない国の間に合わせに過ぎない。

            • 匿名
            • 2021年 9月 13日

            たかが電子情報収集機って、現代戦では最も重要な機体だぞ。
            電子情報収集機って言ってるけど、電子戦攻撃機の能力を当然持っているだろう。
            相手のレーダーを狂わせるためには大電力の発電機とその電波を放射出来るアンテナが必要になる。

            5
    • 匿名
    • 2021年 9月 12日

    電子情報収集機は高度な情報処理が必要だから有人一択でしょ
    そんなに大量のデータを一度に送信出来ない

    無人機はあくまでも偵察用

    4
    • 匿名
    • 2021年 9月 12日

    申し訳ありません↑は文章作成途中で送信してしまったので管理人様削除していただけるとありがたいです
    こちらに訂正します

    あのさ、これ、たかが電子収集機のベース機なんだよ
    はっきり言ってしまえばYS-11程度の性能の民間旅客機でも母機に使えちゃってたわけ
    つまり現代だと民間で大量に飛んでるビジネスジェット(機体単価はP-1の5分の1程度)の転用でも実は性能的には済む話で(そう考えると50億未満で済むベース機に約200億超のC-2、P-1使うのが如何に贅沢か判るし、そこまでしてでもC-2の生産ラインを維持したいという事情も)

    国産軍用機よりもよほど機体部品の枯渇とか心配する必要がない民間機の候補が沢山あるし
    実際、米軍でもNATOでも新興国でも今やこのクラスの少数運用の機種はビジネスジェットの改造で済ますのが普通になってきてるものに
    RQ-4みたいな特殊事例持ち出してもしょうがないでしょ

    P-3C派生機の更新に関しては、最有力なのはP-1だとしても、
    海自は割とマジでP-1では過剰性能で過剰コストだと判断して、より(有人無人問わず)安上がりなプラットフォームの検討をしている可能性があると考えるのが自然なんだよ

    1
    • 匿名
    • 2021年 9月 12日

    P-1ベースで造って、F-3で採用予定の無人機統合システムを先行導入すればシステムの実証研究にもなると思うけど。

    2
    • 匿名
    • 2021年 9月 23日

    RC-2というのは無いでしょうね。だったらELINT機運用を救難へリみたいに
    C-2の運用に慣れてる空自に統合してしまえば済む話。それにC-2が飛行停止になった途端、
    任務に空白ができてしまう、情報収集の機会は相手の出方次第で飛行停止解除を待ってはくれない。

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