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三菱電機とレオナルドUKが戦闘機用レーダー技術の実証機開発で合意

三菱電機とレオナルドUKは18日に開幕したファンボロー航空ショーで「戦闘機用レーダー技術の実証機開発で協力することに合意した」と発表した。

参考:Leonardo, Mitsubishi to collaborate on radar technology demonstration

JAGUARシステムの開発が新たな段階へ、三菱電機が手を組むレオナルドは技術力が高く共同開発の経験も非常に豊富

日本と英国は世界最高水準の戦闘機用センサーを共同研究するため今年2月に基本合意書(LOA)に署名、コンセプト分析やフィージビリティスタディ(実現可能性調査)を共同で実施していた三菱電機とレオナルドUKは18日に開幕したファンボロー航空ショーで「レーダー技術の実証機開発で協力することに合意した」と発表した。

今回の合意は日本政府と英国政府がコンセプト分析やフィージビリティスタディの完了を受けて「レーダー技術の共同開発をこのまま進めることに承認を与えたという意味だ」と報じられており、従来システムと比較して1万倍以上のデータを収集することができ、この膨大なデータ量を機体搭載のシステムで処理することで前例のない戦場認識力を実現する「JAGUARシステム」の開発が新たな段階に入ったと言えるだろう。

出典:Royal Air Force Captor-E MK.2

イタリアの大手防衛産業「レオナルド」は戦闘機用レーダーだけを見てもタイフーン向け「Captor-E/MK.0」開発、株式を取得した独ヘンゾルトを通じて「Captor-E/MK.1」開発への参加、レオナルドUKを通じて英国空軍向けの「Captor-E/MK.2」開発、テンペスト向けのレーダー技術を三菱電機と共同開発する作業を同時並行で進めており、米国法人のレオナルドDRSは米企業やイスラエル企業が進めている航空機向け、艦艇向け、車載向けレーダー開発にも幅広く参加しているため、技術力が高く共同開発の経験も非常に豊富と言って良い。

因みにJAGUARシステムの設計・製造・評価工程に5年程度かかり、英国と日本はそれぞれ2台づつ実証機を自国で製造して各知識を共有する予定だ。

関連記事:英国防省、日本と世界最高水準の戦闘機用センサーを共同研究すると発表
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※アイキャッチ画像の出典:財務省 令和2年度防衛関係予算のポイント

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コメント

    • 通りすがり
    • 2022年 7月 19日

    既にEOMWSで原理的な試作試験は終わってて先行してるぶん、少なくともこの分野だと主体的に動けるだろうな
    EO-DASも相当難産だったらしいから、実用化に向けて利用できるものは利用した方が良い
    共同開発国とはいえどの程度EO-DAS開発に携われたか、どの程度の技術・ノウハウを獲得したかはわからないけど
    少なくとも0ではないだろうから

    16
      • 原点にして頂点
      • 2022年 7月 19日

      JAGUARは、EO-DASとは何の関係もありませんよ。
      JAGUAR(次世代RFセンサ)は「エレメントレベルDBF」というレーダ技術の共同開発事業です。
      そのため、EO-DASとは全く関係ないです。

      ちなみに日本の次期戦闘機の要素研究のうちEO-DAS的なものはあるかというと、分散配置されたEOセンサの映像をHMDに投影しMWS等の状況認識機能を提供する意味であるなら、「将来ミサイル警戒技術に関する研究」が該当します。
       
      本研究では以下の機能が目玉として挙げられます。

      ・分散配置された2波長IRセンサによる全周警戒

      ・頭部指向方向に応じたHMDへの統合画像の表示

      ・ミサイル等の脅威赤外線光源の長距離探知/追尾

      ・各種赤外線光源の識別/脅威度判定

      ・統合画像への追尾及び脅威度判定結果の重畳
       
      研究序盤では地上試験用のIRセンサ等が試作され、研究中盤から2021年現在まではC-2 201号機に機材1式を搭載した飛行試験を行っています。
       
      戦闘機への適用としてセンサ光学窓のRCS試験や、センサ搭載構想の検討もされています。短距離ミサイルの照準等のMWS以外の機能の実装は実機要求次第と思われます。

      ※統合画像:複数台のIRセンサからの画像を、歪み補正等をかけて1面化した画像

      ※搭載構想:一般に23-26DMUで知られるDMUを用いた、全球覆域可能なセンサ搭載位置/信号処理-電源部の搭載位置/冷却方法/消費電力及び重量 等の検討

      23
    • 新・にわかミリオタ
    • 2022年 7月 19日

    良いチャンスです。
    国際的なサプライチェーンに三菱が食い込めば、防衛産業に希望が生まれます。

    50
      • ネコ歩き
      • 2022年 7月 19日

      次期戦闘機開発に係る日英政府間防衛装備協力の深化、及びRR、レオナルド等海外企業との協業は、本邦の防衛装備海外移転事業に道を開くきっかけになりますね。
      取りあえずはその意味も含め、大いに期待しながら成果を見守りたいところです。

      34
    • 匿名希望
    • 2022年 7月 19日

    とりあえすレーダの共同開発、実証用レーダの製造・開発ってことかな。

    元ネタによると、「JAGUARは、複数のセンサー機能を統合するように設計された、テンペストの統合センシングおよび非キネティックおよび統合通信システムの開発に貢献する予定であると同社は述べた。」とされ、EO/IRまでは含まれてなさそう。

    (JAGUAR:Japan and Great Britain Universal Advanced RF system 直訳すると、日英ユニバーサル先進RFシステム って意味)

    今後、複数センサについても共同開発すればいいけど、そこまではいかないか。

    7
      • k
      • 2022年 7月 19日

      センサー類は機体と一体化しているものなのでイギリスと同一機体というのでなければ日本独自で開発しなければならない
      これが相当大変な作業になるだろう

      1
        • 原点にして頂点
        • 2022年 7月 19日

        センサーは日本の得意分野ですし、そもそも様々な研究開発を実施済みですから、そこまで心配はしなくても良いと思いますよ。

        16
        • バーナーキング
        • 2022年 7月 19日

        RF/IR/ESMの協調・統合による探知・追尾は「先進統合センサ・システムに関する研究」として所内研究までは終わってひとまず設計通りの結果を出せてる。
        RFの情報量が跳ね上がるだろうし、機体の設計が定まってからの調整とかももちろん要るだろうけど、極端に厄介な感じはしないかなぁ。

        9
        • 匿名
        • 2022年 7月 19日

        共同開発の研究成果を反映させるかはさておき
        載せるレーダーは試験用のHP-AESAをF-2 に載せて試験できたんだからできるでしょう

        3
      • 原点にして頂点
      • 2022年 7月 19日

      EO/IRセンサーの分野では明らかに日本側に技術的優越性があるので、共同開発をするかはどっちでも良いと個人的には思いますね。

      コスト面などでは、メリットがあるかもしれませんが。

      エンジンの分野のように、日本とイギリスの双方に技術的なメリットがあるなら賛成です。

      エンジンの分野では、日本はコアエンジンなどに強みを持ち、イギリスは内装式発電機などに強みを持つため、双方win-winの関係ですし。

      9
    • トクメイキボウ=サン
    • 2022年 7月 19日

    あれ?ひょっとして日本の防衛産業の中でも三菱電機ってかなりまともな方?

    8
      • 通りすがり
      • 2022年 7月 19日

      日本に限らず、宇宙・航空分野をどれだけやってるかが概ね答えになるんじゃないかと思う
      世界的には微妙かギリ及第点。でも、国内のほかの企業はもっとどうにもならない。そんなところでは
      戦後に財閥解体されたのが痛かったな

      13
        • 2022年 7月 19日

        会社規模からいえば三菱電機はレオナルドの3倍近い大きさなんですけど、防衛を専業でやってるところと比べるとどうしても見劣りしますね

        22
      • とくめいきぼう
      • 2022年 7月 19日

      「まとも」の意味がわからん。

      何が「まとも」だといっているんだい?

      5
      • 匿名
      • 2022年 7月 19日

      軍用レーダー分野に限っても、地上用・艦艇用・航空機搭載用のAESAレーダーを世界に先駆けて実用化した企業ですし、防衛装備移転三原則の閣議決定後、契約に漕ぎ着けた唯一の輸出成功案件であるJ/FPS-3MEとJTPS-P14MEの製造元でもあるので、防衛装備品メーカーとしての実力はあるでしょう。

      23
      • 2022年 7月 20日

      社員がパワハラで自サツする程度にブラック企業ですよ

      1
      • Goodman80
      • 2022年 7月 20日

      AESAエレメントはNECか東芝製、計算機は富士通製だろうからレーダー装置としてはかなりまともだと思う。FCSとなると既存の不具合満載だからそれなり。

      1
    • 原点にして頂点
    • 2022年 7月 19日

    JAGUAR(次世代RFセンサ)は「エレメントレベルDBF」というレーダ技術の共同開発であり、F-Xとテンペストの搭載レーダの共通化はまた別個の案件となります。
    JAGUARは日英の知見を集約し、両国で1台ずつ計2台のレーダ技術実証機を作成する手筈になっています。
    搭載レーダ含むサブシステムの共通化の程度は、今年度からの共同分析の結果を待つことになります。

    そしてJAGUARは、2026年度終了のためこの技術を反映したレーダは量産初号機には搭載され、ギリ試作初号機に間に合うかレベルと考えます。

    JAGUARで開発される「エレメントレベルDBF」という技術の特徴としては、従来のレーダだと瞬間瞬間では一方向しか検知できなかったのが、当技術では演算量の許す限りの方向を同時に検知できます。

    AESAレーダが位相制御で送信ビームの方向を次々に変える(電子走査)はよく知られています。
    一方、特定方向からの反射波を拾って探知情報とするには、レーダの指向性(最も感度の良い方向、受信ビーム)を任意の方向に設定する必要があります。
    従来のAESAレーダは、任意方向から最も感度よく受信するため素子アンテナ毎の信号に適切な遅延をかけて1つの波形に合成していました。この合成波を受信機に送り目標情報かノイズかを判断します。
    この方式では素子アンテナ毎の信号情報は1つの波形に埋もれ、瞬間瞬間では1方向しか受信できません。
    ただし、例えば0.01秒毎に指向性を変えることで1秒間に100方向の走査(受信)を実現していました。

    つまり従来レーダでは素子アンテナ自体は様々な方向からの信号を受信してますが、瞬間瞬間で受信機が探知情報として認識・形成できるのは一方向のみでした。

    レーダ機能のみならまだしも、ESM等を実装すると話は違います。
    四方八方からの電波を拾うためには受信ビームをその都度形成する必要があり、ビームが細い(高精度)ほど時間がかかります。瞬間瞬間で1方向しか見れない故に重要な信号を逃したり、レーダ機能での受信ビーム形成ともリソースを食い合うためレーダ走査レートが低下する懸念があります。

    そこでエレメントレベルDBFでは素子アンテナ(エレメント)毎に受信機を設け並列して重ねつけ処理をすることで瞬間瞬間で演算量が許す限りの方向を見れるようになります。

    これによってレーダとESMの同時作動や将来的な戦闘機間でのマルチスタティック探知が期待できます。
    また妨害環境を学習して妨害波到来方向に意図的に受信ビームのヌルを形成するなどECCM性の向上や、群目標に対し別個に走査せず広い送信ビームを送り受信ビームを細くして同時多数探知を行うなど様々な利点が考えられます。

    ※従来レーダでの合成波形による方式をAnalog Beam Forming、信号のデジタル並列処理方式をDigital Beam Forming(DBF)と言う。DBFでも素子アンテナ毎に受信機を備えてるとは限らず、複数の素子アンテナグループ毎に受信機を設けたものはサブアレイDBFという。

    ※送信時間(0.01秒)はあくまで例示、実際の所は知らない

    ※レーダの指向性について最も感度のよい方向をメインローブと言うが、その形成の副産物として方向が違いかつやや受信感度のあるサイドローブも発生する。サイドローブが大きい程所望方向以外(メインローブ以外)の信号がノイズとして紛れるため探知性能に悪影響が出る。

    ※妨害波も大出力であればサイドローブ程度の感度でも無理矢理ノイズとして受信させられる。これに対抗するため各ローブ間の特に感度が落ちる(ヌル)部分を向け妨害波の受信を防ぐのをAdaptive Beam Forming(ABF)という。

    27
    • 内務大臣
    • 2022年 7月 19日

    ロイターが報じた日英の機体共通化は本当だろうか
    先日発表されたテンペストの新しい模型は日本の次期戦闘機に似ていたようだが果たして

    2
    • ネトウヨ
    • 2022年 7月 20日

    三菱は日本の防衛産業の中核だから頑張ってほしい。レーダー技術は軍事技術が弱い日本の中で、数少ない世界に誇れる技術だから戦闘機レーダーで世界最先端のレオナルドとどれだけ渡り合えるか気になる。

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