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島嶼防衛用高速滑空弾の事前発射試験、海外のディフェンスメディアも注目

防衛省は4日「島嶼防衛用高速滑空弾(HVGP)の事前発射試験を実施した」と発表、国際戦略研究所も「2024年3月と4月の予備試験で慣性航法システムを検証したのだろう」と指摘し、Defense Newsも「日本は最終的に2個大隊分のHVGPを配備する予定だ」と報じた。

参考:スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について
参考:Japan reveals test launch of its hypersonic strike missile program
参考:<独自>空自部隊で開発情報漏洩「12式向上型」か ネット上に画像投稿 防衛省調査

日本も島嶼防衛用高速滑空弾の空中発射型を作るのはどうだろうか?

日本は長距離攻撃能力を獲得するためTomahawk、JASSM、JSMの取得に加え、独自に12式地対艦誘導弾能力向上型と島嶼防衛用高速滑空弾の開発を進めており、防衛省は4日「島嶼防衛用高速滑空弾の事前発射試験を米カルフォルニアで実施した」と発表、防衛装備庁も事前発射試験の様子を収めた動画を公開した。

国際戦略研究所のティモシー・ライト氏はDefense Newsの取材に「日本は2024年3月と4月にHyper Velocity Gliding Projectile=HVGPの予備試験を実施した。開発企業によれば試験の目的は測定ユニットの検証で、恐らく慣性航法システムのことだろう。防衛装備庁は試験でブースターから弾頭部分が分離したかどうか明かしていない」「日本は対艦攻撃と対地攻撃の両方に対応したHVGPを開発している」「計画されている長距離攻撃システムが大量配備されれば日本はアジア太平洋地域で最も重要な能力を保有することになるだろう」と指摘。

Defense Newsも「防衛装備庁とLockheed MartinがJASSM取得(昨年8月に米国務省が売却の可能性を承認したJASSM-ER×50発のこと)に関する契約を締結した」「日本は最終的に2個大隊分のHVGPを配備する予定だ」と報じており、防衛省も4日の発表の中で「2026年度に島嶼防衛用高速滑空弾の取得を予定している」と述べている。

出典:Mil.ru/CC BY 4.0

島嶼防衛用高速滑空弾は早期配備型のBlock1と性能向上型のBlock2に分かれており、Block1の弾頭は迎撃を回避する能力=機動性を備え、防衛装備庁が公開した動画の中でも「ブースターから分離した滑空体(弾頭部分)が敵の迎撃を困難にさせる機動を行う」と説明しているため、乱暴な言い方をすればIskander-Mに近い。

Block2は弾頭部分を極超音速滑空体=HGVに変更することで機動性、突入速度、到達距離が向上し「2,000km以上の射程を備える」と予想されている。

因みにMiG-31Kで運用するKinzhal(Iskander-Mの空中発射版)はウクライナで効果的な働き(空中プラットフォームから戦術弾道ミサイルを運用することで影響を受ける地域を拡大させ防衛側の負担が増加するという意味)を見せており、Israel Aerospace Industriesもベルリン国際航空宇宙ショーで空中発射式の戦術弾道ミサイル「AIR LORA」を公開した。

WAR ZONEは「高度な地上配備型防空システムは破壊すべき目標に接近しようとする戦闘機をどんどん遠ざけており、このような環境下でAIR LORAは有効な選択肢の1つになるだろう」「AIR LORAの最終速度は極超音速域に近く、必要な時間内に目標の座標が確定できれば移動式の防空システムや弾道ミサイルなど『一刻を争う目標』の攻撃に適した兵器だ」「AIR LORAは厳重に守られた地域にアクセスしなければならない航空機の生存性を劇的に向上させる」と述べて「米空軍もPrSMの空中発射バージョンを検討すべきだ」と訴えている。

出典:Lockheed Martin PrSM

西側諸国がウクライナから得た教訓の中には「安価な自爆型無人機の大量投入によって対処すべき空中の脅威が飛躍的に増加した」「これを複雑で高価な防空システムのみで対処するのはコストがかかり過ぎる」「安価な迎撃手段の大量配備やシュルターを整備してある程度の攻撃を受け入れるべき」「目標までの飛行コースが異なる兵器の同時使用は防空システムの負担を増加させてシールド突破の可能性を高める」「コストはかかるものの巡航ミサイルや弾道ミサイルを運搬できるプラットフォームの生存性が高く射点を自由に選べる」があり、攻撃手段と運搬手段の多重化は戦場環境の変化に対応するため必要不可欠だ。

島嶼防衛用高速滑空弾の空中発射型を作れば運搬手段の多重化を容易に達成でき、日本の長距離攻撃能力の効果を高めることに繋がるかもしれない。

追記:12式地対艦誘導弾能力向上型の性能確認試験(第1次発射試験)も2024年9月27日~11月10日の間に設定され、この試験では12式地対艦誘導弾能力向上型の初中期弾と艦発弾の発射が予定されているが、飛行開発実験団で12式地対艦誘導弾能力向上型の情報漏えいが発生したため、予定通り性能確認試験が行われるのかは謎だ。

関連記事:イスラエル、ベルリン航空宇宙ショーで空中発射式の戦術弾道ミサイルを公開
関連記事:移動目標を弾道ミサイルで攻撃可能、PrSMが海上を移動する目標に命中

 

※アイキャッチ画像の出典:ATLA Official Channel

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コメント

    • paxai
    • 2024年 7月 11日

    長距離兵器用の国内試験施設とかないのかな?毎回カリフォルニアに行くんじゃ輸送コストも馬鹿にならんでしょうし。

    8
      • jimama
      • 2024年 7月 11日

      多分数百キロという射程がネックになるから厳しいんじゃないかなと思います
      日本国内で内陸だとどこに向けて撃っても人口密集地帯があるので撃てないし
      海沿いで海に向かってといっても今度は沿岸の漁協への補償やら主要な航路を通る船の交通整理やらでいらんコストがかかるし(種子島はそのせいで打ち上げコスト高)
      ロケットと違って着弾(着水)させないといけないのでその着弾地点の漁場やら航路やらの調整もいる
      そして試験がうまくいったかどうか弾体の調査したいなと思ったときに回収がしんどい
      太平洋側に向けて撃ったらすぐ深海ですから回収コストいくらかかるか・・・
      日本海側のほうがまだ浅いから回収は楽でしょうが仮想敵国ずらっと並んでて、そっち向けて撃ったら回収してくださいといってるようなものと
      と、できない理由なら素人でもいくらでもわいてきますからね
      弾だけ送ってアメリカで撃ってもらったほうがまあ安いんじゃないかと

      43
      • 航空
      • 2024年 7月 12日

      太平洋に向けて発射するのはダメなんかな?

    •  
    • 2024年 7月 11日

    意外と本当にイスカンデルが元ネタな可能性はあるかも?
    西側の近いミサイルにATACMSがあるけど、自衛隊がATACMSみたいなのがほしいと思ってたならMLRSを残してATACMSを調達するかそれの類似品を作ってたはず
    でも実際には自衛隊はMLRSを廃止した分で島嶼防衛用高速滑空弾を装備する部隊に置き換えようとしてる、しかも今まで作った経験もない対地ミサイルを新しく作ってまで
    そう考えるといきなりまっさらなところから作ろうとはしないと思うんだよね、必ずどこかの思想をベースに自分の色を入れて作ると思う
    じゃあ何?っていうとやっぱりイスカンデルが浮上する

    8
      • paxai
      • 2024年 7月 11日

      玄武が元ネタっぽそう。まあ玄武がイスカンデルに似てるんだけど。
      ATACMSは小さくて不都合な点が多いのでしょう。

      4
        •  
        • 2024年 7月 11日

        玄武は完全にイスカンデルのスクラップからリバースエンジニアリングしたコピー品ですしね
        韓国はATACMSを導入した後に自前で玄武を作って比較試験し後者の方が優れていると結論していますから、その影響は多分にあるでしょう
        もっとも、日本には韓国のようにイスカンデルのスクラップを入手する機会はないはずですし、玄武の設計データを提供されることもまあ間違いなくありませんから、思想を参考にした程度の話ではありますが
        しかしいくらATACMSでは基本的に射程不足という日本独特の事情はあるとはいえ、そう考えるとMLRSを廃止して自前でイスカンデルのようなミサイルを新規開発してしまおうということで話を進めるとは自衛隊も思い切ったことをしましたね

        12
      • T.T
      • 2024年 7月 11日

      以前陸自が短距離弾道弾導入に向けて比較リストを作っていた時に、書きようからして本当はイスカンデルが欲しいんだろうけど今のご時世じゃそういう訳にはいかないよねって話になった記憶がありますね。

      8
      • ネコ歩き
      • 2024年 7月 11日

      島嶼防衛用高速滑空弾はBlock2B装備化が目指す本命で、Block1は情勢に鑑み抑止力早期獲得のため2026年度に装備化し、制御技術及び運用法等の早期確立を担う過渡的なものです。
      Block1は形状からイスカンデルに似た制御の超音速機動弾道弾になるだろうと思いますが、本命はそれぞれ2029年度及び2031年度取得を予定するBlock2A及びBlock2Bです。Block2の参考元は米国の極超音速滑空体研究だと思います。

      2
      • nachteule
      • 2024年 7月 11日

       元ネタを出すならDF-17だと思う。自衛隊がATACMS導入するなら射程が長居にしろ本土の敵上陸前提で輸出は許可されるのか装軌車両と言うのがネックだったと思う。ウクライナ戦争で自衛隊のMLRS退役に関しては先行きが不透明になっているのは特科部長の陸将補だったかの発言で既知の話だしPrSMやGMLRSの射程延伸があるにしてもMLRSは展開能力的にやはり使いづらい。イメージが悪い弾道弾と射程が島嶼攻撃するには微妙な300kmは大きいのでは?

       MLRSプラットフォーム使うにしてもミサイル運用に必要な部分をアメリカに対応して貰えるのかあるし、ミサイルサイズはコンテナに縛られるのだから単純な話でもない。ちなみに長さはPrsmもATACMSも同じ4mで島嶼防衛用高速滑空弾のBlock2は10m位らしいがBlock1でも恐らく4m以上は有ると思う。
       最近になってAML(無人HIMARS)が出てきて発射機の形態も異なり、PFAL(パレット化野戦砲兵発射機)でより長いミサイル搭載も出来るような感じになってきているが、それは後出しだしね。

       島嶼防衛用高速滑空弾に関しては射程・サイズや弾頭やプラットフォームが絡んだ日本独自裁量を考えると作るしかなかったと思うけどね。他国のありものは間違いないけど独自の面は許可されないと思うし最近のアメリカの対空ミサイル輸出制限とかあるからリスクはある訳だし。

      2
    • イーロンマスク
    • 2024年 7月 11日

    空中発射式にするなら何に乗せるかという問題が…
    すぐやるならF-2ですかねぇ
    自国開発の戦闘機のメリットは自由に武器を使えること

    25
      • バーナーキング
      • 2024年 7月 11日

      サイズ大きくなりそうだからP-1 も候補になるかと。

      13
      • 765
      • 2024年 7月 11日

      12式はともかく滑空弾の方は推定3tあるらしいので重すぎて無理だと思う
      あとF-2君は数少ないAAM-4を運用できる戦闘機なので、やるなら改造したF-15PreMshipあたりに搭載されてF-2は空戦に駆り出されるんじゃないかな…

      12
        • バーナーキング
        • 2024年 7月 11日

        標的との距離を能動的に短縮できて更に高度と初速を与えられる空発型では当然地発型とはブースターを変えるのでは。

        2
          •  
          • 2024年 7月 11日

          それだとまた色々いじらないといけなくなってお金がかかるかも
          イスカンデル/キンジャールの方式でできれば整流キャップつけるだけで済みますから楽ですね

          1
          • 765
          • 2024年 7月 11日

          ブースターを変えると言っても早期配備型は1段なのでそこまでやるなら別物になるんじゃないかなぁ

          1
            • バーナーキング
            • 2024年 7月 11日

            「1段」ってもブースター1段+GVなのでブースターを変えるだけだし、固体ロケットモーターを短くするのは何も難しい事ではないかと。
            そして短めのブースターは性能向上型(2段ブースター)にも活かせます。
            また高度・速度0から加速・上昇しなければならない地発型と亜音速、数千mで発射される空発型では求められるエネルギー量だけでなく燃焼プロファイルも違ってくるでしょう(まあこれは直巻きマルチセグメントモーターの中身いじるだけで対応出来そうなので別筐体を作る理由としては弱いかもですが)。

        • ネコ歩き
        • 2024年 7月 11日

        どのBlockについてなのか分かりませんが、推定3tというのはブースター込みの重量じゃないですかね。
        空発型を開発するか現時点では全く情報が無いので何ともですが、その場合はブースター込みでも1t未満になるんじゃないでしょうか。

        1
          • バーナーキング
          • 2024年 7月 12日

          まあ管理人さんの「空中発射型を作れば〜かもしれない」にのっかった「たられば談義」ですからね。
          なおその場合のブースターのサイズ感に関しては同意します。
          軽く試算したら極超音速滑空弾として十分に機能する高度50000mでM6を得るのに必要なエネルギーが高度1万mM0.7からだと同質量でも地発型の半分以下で済み、実際はブースターの重量が減れば必要エネルギーも減るし空発型で射点を選べ射程も機動量も減っていい、距離や速度稼ぎたければF-2で遷音速で撃つ手もある事を考慮すれば1t前後、おそらくはASM-3や23式と同程度に抑えて来るものと考えます。

          2
        • 匿名
        • 2024年 7月 12日

        >やるなら改造したF-15PreMshipあたりに搭載されてF-2は空戦に駆り出されるんじゃないかな…

        問題は、他国開発機のFSCに独自の国産兵器をすんなり統合させてもらえる(してくれる)かどうかじゃないですかね…?🤔
        韓国あたりでも其の辺でだいぶ苦労してた印象ありますし、F-35でも弄り放題なイスラエル位にならないとどの国でも嵌まる穴だとは思いますが

        1
      • ミリ飯食べたい
      • 2024年 7月 11日

      C-2のような輸送機のカーゴベイから発射というのもありえるかもしれません。
      確か米軍のコンセプトでも似たようなのがあった気がします。あっちはドローンだっけ?

      12
        • ゲストさん
        • 2024年 7月 11日

        たぶんこれはC-2ですよね。
        ラピッドドラゴンをC-2に搭載する計画があり、結局こいつは頓挫したのですが、C-2の対地対艦攻撃機構想自体は着実に進行しています。

        9
        • U.N. Owen
        • 2024年 7月 11日

        ラピッドドラゴンの事を仰っているのなら、英語版ウィキペディアによると、AGM-158 シリーズの巡航ミサイルを投下するようですが、将来的には JDAM、機雷、ドローン、その他のミサイルも投下できるようにする予定のようです。

        Rapid Dragon (missile system) – Wikipedia
        リンク

        2
      • ネコ歩き
      • 2024年 7月 12日

      海自大型哨戒機はP-3Cの時代から対艦ASM運用機です。勿論P-1もその機能を持って開発されています。
      島嶼防衛用高速滑空弾は対艦型の要素研究も行われており、将来的に実用化に成功し空発型が装備化されることになればP-1が運用母機になる可能性が高いかと。
      極超音速誘導弾もそうですが長射程地対地/地対艦スタンドオフミサイルですので、現時点では空発型は予定していないと思います。

    • クラスタ弾頭
    • 2024年 7月 11日

    自衛隊はATACMSの取得を検討したけど、クラスタ弾頭がネックだったのかもという話を聞いたことがある。その時期はクラスタ弾廃絶の流れだったので。
    あとは射程も日本で対中国に使うには短いしね。それはイスカンデルも一緒。INF条約があったからだけど。

    6
      • 戦闘機
      • 2024年 7月 11日

      通常弾頭型トライデントみたいに、爆発物無しで突入体にタングステンロッドを載せて、着弾前にばら撒いて質量と速度で破砕する手もありますが、発射体の搭載質量と最終到達速度次第ですからねぇ。

        • バーナーキング
        • 2024年 7月 11日

        その用途では高密度EFP弾を開発してますよね。
        完全な代替にはならないけど基本自国内で使う我が国的には適切な代替手段ではないかと。

        5
    • kitty
    • 2024年 7月 11日

    >シュルターを整備してある程度の攻撃を受け入れるべき

    オペレーションリサーチ的には、これが最適解なんでしょう。
    だけど政治的には難しいという。
    韓国ソウルでも地下壕(室)整備を義務付けましたが、不評で止めちゃいました。
    貧民用の賃貸住居として活用され映画にまでなりましたが。

    5
    • a
    • 2024年 7月 12日

    やっと投稿したかこの記事、無視かと思った。

    2
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