日本関連

自衛隊が7月下旬に迎撃ドローン実証試験を実施、8月に量産契約を予定

防衛省は迎撃ドローン早期取得プログラムの実施を6月5日に発表し、この中で「攻撃型の無人航空機及びそれに対する迎撃ドローンの役割の飛躍的な向上を踏まえ、令和8年7月に迎撃ドローンを用いた実証試験を実施する」と言及し、令和8年8月下旬までに量産調達契約を締結するらしい。

参考:迎撃ドローン早期取得プログラムの実施について

迎撃ドローン早期取得プログラムが求めるGeran-3やGeran-4クラスへの対処能力にTerra A1やTerra A2が適合するのかは謎だ

防衛省は5月27日、沿岸防衛体制シールドに含まれる「レーダーサイト防衛用UAV」の情報・提案要求書を公開し、この中でレーダーサイト防衛用UAVについて「敵のUAVを探知・識別し、これを迎撃UAVにより対処することでレーダーサイト等を防護し得るシステム=迎撃UAVシステム」と定義し「製造・販売に関連する実績又は技術的な知見、能力等を有する企業等から情報・提案を広く募集し、今後、企業等から提出された情報・提案の内容を踏まえ、その早期装備化に向けて事業の具体化を行っていく」と説明。

出典:防衛省・自衛隊

迎撃UAVシステムの概要については「レーダーサイトやその付近に展開し、遠方から飛来する長射程自爆型UAVの同時多数攻撃に対し、発射した迎撃UAVにより有効に対処するために運用できるもの」と説明、そして「レーダー、指揮統制及び迎撃UAVが連接されたシステム」「迎撃UAVのカメラ映像を見ながら地上要員が迎撃UAVを操縦する仕様ではなく、地上装置から自動誘導される迎撃UAV」「システムの展開後は2名以下の要員で防空戦闘が実施できるもの」「維持整備について故障診断、部品交換、定期整備等を部外委託できるもの、それが困難な場合は専門的知見を有しない要員により維持整備し得る簡易性を有するもの」を要求。

さらに「諸外国軍隊等で既に運用され、シャヘド136等の長射程自爆型UAVを撃墜している実績を有しているもの」「他社のレーダー、エフェクター等と短期間で連接運用し得る拡張性及び適応性を有するシステム」も要求し、装備化までの望ましいスケジュールについては「令和9年度又は遅くとも令和10年度とする」と記述しており、2027年度もしくは2028年度までに迎撃UAVシステムを装備化したいらしい。

出典:Wild Hornets

ウクライナ製の迎撃ドローンも、テラドローンがウクライナ企業のアメイジング・ドローンズと共同で開発を進めている迎撃ドローン=Terra A1も「兵士による手動操縦」と「目標の自動追尾・誘導」の組み合わせで運用されており、防衛省は迎撃UAVシステムに「迎撃UAVのカメラ映像を見ながら地上要員が迎撃UAVを操縦する仕様ではなく、地上装置から自動誘導される迎撃UAV」「システムの展開後は2名以下の要員で防空戦闘が実施できるもの」を要求しているため、Terra A1は現時点において「情報提案を求める迎撃UAVシステムに該当しない」となる。

防衛省は迎撃ドローン早期取得プログラムの実施を6月5日に発表し、この中で「昨今の安全保障における攻撃型の無人航空機及びそれに対する迎撃ドローンの役割の飛躍的な向上を踏まえ、自衛隊ではより迅速に、より実効性のある迎撃ドローンを獲得し、駐屯地、基地、艦艇等の防御能力向上への寄与度等を確認するため、令和8年7月に迎撃ドローンを用いた実証試験を計画している。本事業の実施にあたり装備品等に関連する実績、知見、能力を有する民間企業者のうち、迎撃ドローンに関する提案を行う意思のある企業を広く募集し、7月の実証試験のための迎撃ドローンを調達することを想定している」と言及。

出典:防衛省・自衛隊

防衛省は迎撃ドローンについて「概ね高度18,000ft=5,486m未満、速度250kt=463km/h程度で飛行する無人航空機(重量600kg以下)、特に長射程自爆型UAV(例えばシャヘド型やHARPY型等)に対処する無人航空機=米軍基準のGroup3以下の無人機に相当」「遠隔管制装置及び搭載装置(ソフトウェア及びハードウェア)の操作指示により遠隔操縦が可能な飛行体」と定義しており、迎撃UAVシステムで要求した「地上装置から自動誘導される迎撃UAV」とは異なり「カメラ映像を見ながら地上要員が操縦する仕様」の迎撃ドローンかもしれない。

令和8年7月上旬までに実証試験に用いる迎撃ドローンを選定(複数機種を選定する可能性有り)し、令和8年7月下旬~8月上旬までに迎撃ドローンを取得して実証試験を実施、令和8年8月下旬までに量産調達契約を締結して令和8年9月の納入を予定しているが「実証試験の結果によっては量産調達契約を実施しない」とも言及している。

迎撃ドローン早期取得プログラムは「諸外国軍隊等で既に運用され、シャヘド136等の長射程自爆型UAVを撃墜している実績を有しているもの」という条件はないものの「速度250kt=463km/h程度で飛行する長射程自爆型UAVに対処する無人航空機」と定義しているため、これはロシア軍が多用しているGeran-2/Shahed-136(約185km/h)ではなくジェットエンジンを搭載したGeran-3/Shahed-238(約350km/h~500km/h)やGeran-4(約500km/h)クラスへの対処能力を示唆している可能性が高い。

テラドローンが製品化しているTerra A1の最高速度は302km/h、固定翼タイプのTerra A2の最高速度は312km/hなのでGeran-2/Shahed-136への対処は可能で、最高速度280km/hのウクライナ製迎撃ドローン=STINGでもGeran-3の迎撃例はあるのだが、Geran-3やGeran-4に対処可能なウクライナ製迎撃ドローンのP1-SUN(450km/h)よりも速度が遅く、迎撃ドローン早期取得プログラムが求めるGeran-3やGeran-4クラスへの対処能力にTerra A1やTerra A2が適合するのかは謎だ。

最高速度500km/hの自爆型ドローンを最高速度300km/hの迎撃ドローンで後方から迎撃するのは物理的に不可能だが、自爆型ドローンや迎撃ドローンも最高速度で飛行すると航続距離=滞空時間が極端に短くなるため巡航速度は最高速度よりも遅く、運用上の工夫があればTerra A1でもGeran-3やGeran-4を迎撃できると思うものの、もっと迎撃確率のよい高速な迎撃ドローンが選択肢にあるのならTerra A1を敢えて選ぶことはないだろう。

逆に迎撃ドローンを扱う日本企業=テラドローンを育てるつもりなら「速度250kt=463km/h程度で飛行する無人航空機」という定義が邪魔で、それこそ「長射程自爆型UAV(例えばシャヘド型やHARPY型等)に対処する無人航空機」と要件をぼかしておけばいいのだが、敢えて「速度250kt=463km/h程度で飛行する無人航空機」と言及したのなら何等かの意図があるのかもしれない。

関連記事:ロシア軍が投入した新型自爆無人機、特筆すべき特性は見当たらない
関連記事:防衛省、レーダーサイト防衛用に撃ち放し運用が可能な迎撃ドローンを要求
関連記事:日本企業がウクライナ企業に約16億円を出資、迎撃ドローンのグローバル展開を目指す
関連記事:ドローン戦争の実態、開発者にとってドローンの自律性獲得は聖杯のような存在
関連記事:小泉防衛相は国内生産を示唆、今の日本に攻撃型ドローンを作る企業はない
関連記事:小泉防衛相、自衛隊を無人装備品を駆使する世界一の組織に変革する
関連記事:日本がウクライナ製攻撃型無人機の自衛隊導入を検討、イスラエル製に代わる選択肢
関連記事:自衛隊初の小型攻撃ドローンにDrone40、取得コストは1機1,000万円超え
関連記事:米陸軍長官が迎撃ドローンを絶賛、Shahedを迎撃すればするほど優位になる
関連記事:ウクライナの迎撃ドローンはGeran-3の速度に対応、Geran-5も時間の問題
関連記事:米海軍が強く求める艦艇の対ドローン能力強化、迎撃ドローン搭載が拡大
関連記事:迎撃ドローンの市場形成とシェア争い、西側企業の投資スピードは強烈
関連記事:米陸軍がサーベイヤー迎撃ドローンを中東に配備、その規模は最大1万機
関連記事:軍上層部が全面的に支持するレーザー兵器、脅威と直面する兵士は信頼せず
関連記事:海上での無人機迎撃、米海軍が駆逐艦にCoyoteとRoadrunnerを導入

 

※アイキャッチ画像の出典:Terra Drone

英伊日の戦闘機開発作業、継続出来るかどうかは英国の国防投資計画次第前のページ

米下院が海軍艦艇の日韓建造を阻止する条項を可決、海外建造など言語道断次のページ

関連記事

  1. 日本関連

    完全に的外れ、SPY-7は米国ならではの図々しいやり方と批判する日メディア

    久々に結論ありきの的はずれな記事を読んでしまったので管理人もひとこと言…

  2. 日本関連

    日韓で核兵器の共有?米国、NATOを参考に日米韓で「核兵器共有協定」締結を主張

    米国防総省傘下の国防大学が提出した報告書によれば、日米韓で非戦略核兵器…

  3. 日本関連

    GCAP配備が2040年以降にずれ込む可能性、日本はF-35追加購入を検討

    赤沢経済財政・再生相は米国との関税交渉について「米国製防衛装備品の購入…

  4. 日本関連

    日本は追加でKC-46Aを9機取得、空自の導入数は計15機になる見込み

    日本政府は2013年に空中給油機の増勢を決定、米空軍が調達中のKC-4…

  5. 日本関連

    ウクライナを侵略するロシアを中国が支援、欧州はアジアで同盟国を探す

    中国がウクライナを侵略するロシアと戦略的パートナーシップを強化している…

コメント

  • コメント (15)

  • トラックバックは利用できません。

    • せい
    • 2026年 6月 08日

    迎撃用ドローンならロケットとかで無理矢理加速出来そうだけど、高くなるのかな?

    6
      • nachteule
      • 2026年 6月 10日

       「高くなる」をどんな意味で書いているのか分かりませんが、既存ドローンにどんな物であれロケット推進追加するだけでも今までの価格以上にはなるでしょう。
       空中目標に対して急加速して命中率が期待出来るのか、それを実現する為に実装図べき物、加速用にロケット搭載するなら設計変更や作動機構、増えた分のペイロードをカバーする為のモーター/機体の強化とか加速時に邪魔にならないような機体形状とか色々と手を加える必要があるでしょう。高くならない理由はありません。

    • 名無し
    • 2026年 6月 08日

    弾も相応に安いんだろうから高速無人機対策に新しいのを入れて、こなれたほうを別な部隊に…ってのは有り得そうだし

    2
    • ブルーピーコック
    • 2026年 6月 08日

    テラドローンじゃないなら、同じようにウクライナに支社があるJISDAが何か出してくるんじゃないの。知らんけど。

    7
    • AKI
    • 2026年 6月 08日

    また、存在しないので開発する事にしました……となるのでは?

    5
    • 58式素人
    • 2026年 6月 08日

    どうなのでしょうね。
    「遠隔管制装置及び搭載装置(ソフトウェア及びハードウェア)
    の操作指示により遠隔操縦が可能な飛行体」
    今現在でこれに該当するのは、Merops対ドローンシステム、かな?
    仕様は機密のようですが、飛行速度はイマイチのようでもありますが。
    シャヘド136撃墜の実績は十分に有るようだし。

    2
    • 中村
    • 2026年 6月 08日

     脚やコックピットどころかラジエーターすら無いんですから、空力的に優れたカウリングと馬力だけです。相手がシャヘドだから300km/hなだけで、500km/h出せと言われて出せない要素は無い様に思います。

    2
      • 平八郎
      • 2026年 6月 09日

      ウクライナの迎撃ドローンのような電動クアッドコプター形式のドローンの今の世界記録は時速580キロくらいだそうです。
      それも極限まで大電流を流すので時間にすると2分くらい、距離にして5キロくらい飛ぶのが限度らしいです。
      日本の材料工学でそのあたりを突破できないですかね。

      4
    •  
    • 2026年 6月 09日

    ウクライナの前線では1週間毎に新型ドローンが実戦投入され1ヶ月毎に戦術が変わり半年毎に戦場の景色が変わる。前線に軍民の研究開発施設を置いてその日の内に兵士からフィードバックを受け技官や企業の社員が改善を施し、翌日には改良型を実戦に投入する仕組みが機能している。
    もはや前線のフィードバックはキーウまで届かず、部隊内もしくは部隊と企業の中で完結した研究開発体制がある。国内のドローン工場も定期的に移動し徹底した分散ドクトリンで空襲の被害を避けている。
    そんな運用が日本で実現できるとは思わないが、少なくともウクライナから学ぼうという意思は防衛省にはある様なので、是非テラドローンの創始者のようにウクライナの現場を見てきた人々から考え方や課題を学んでほしい。

    15
      • PC好き
      • 2026年 6月 09日

      ロシアが技術革新に追い付けないのは現場の裁量に委ね意見を最大限フィードバックする部分なのでまあ日本も無理でしょうね…
      テラドローンも何かと言い訳して採用しないかもしれませんし

      6
    • たま
    • 2026年 6月 09日

    迎撃ドローンなんてどうせすぐ陳腐化するんだから一定量の在庫確保したらのこりウクライナに送って改善してもらえ。
    在庫より生産能力の方が大事。

    11
    • かかお
    • 2026年 6月 09日

    ウクライナに送るのはありだな 本質は爆薬のないラジコンなんだしここでアクセル踏むのが国益

    1
    • ヒロ
    • 2026年 6月 09日

    ドローン無人管制システムは三菱重工のCoasTitan(コースタイタン)では?

    1
    • 通りすがり
    • 2026年 6月 11日

    レーダーサイト防衛なら地上配備型CIWSとかじゃダメなの?

    • 58式素人
    • 2026年 6月 12日

    どうなのでしょうね。
    今回の公募はある意味CIWSまたはそれに代わる物の要求かな?。
    それだけでは全く足りない、と思えるのですが。
    仮に、台湾事変が起きて中共と対峙する時、ロシアは確実に中共側でしょう。
    ロシアは、現在、ゲラン2(シャヘド136)を日産200機弱生産しているようです。
    中共の生産力がそれを下回るとは思えません。
    と言うことは、毎日300〜400機のそれを相手にすることになるのかな?。
    どこを目標にするにせよ、飽和攻撃で来るのは間違い無いのでは?。
    CIWSも必要だけれど、他にもっと必要なものがあるのでは?。
    CIWSは、他の手段で撃ち漏らしたものを相手にする、とするべきでは?。

    1

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP