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国防予算5億ドル未満の国に? 戦闘機F-16Vの購入国にアンゴラとエチオピアが浮上

米国のMilitary Watch Magazineは29日、ロッキード・マーティンの戦闘機F-16Vの購入国に浮上したアフリカの国はアンゴラかエチオピアではないかと予想している。

参考:Lockheed Claims Mystery African State is Planning an F-16V Purchase – Which Could it Be?

果たして年間の国防予算が500億円未満の国にF-16Vが売れるのか?

ロッキード・マーティンは投資家に対する決算説明会を開いた今月23日、同社が製造するF-16V(C/D Block70/72)の新たな顧客候補にアフリカ、南米、東南アジアの地域を国が挙がっていることを明らかにした。航空分野に詳しいティールグループのアナリストはF-16V新規購入を検討している国はアフリカのボツワナ、南米のチリ、東南アジアのインドネシアだろうと予測していたが、特にアフリカの顧客候補について別の見方がでてきた。

出典:VanderWolf Images / stock.adobe.com

Military Watch MagazineはアフリカのF-16V顧客候補についてアンゴラかエチオピアではないかと予想している。

アンゴラは独立後、一貫して社会主義政権による1党支配が続いてきた影響で旧ソ連/ロシアとの繋がりが濃く、アンゴラ空軍の戦闘機は旧ソ連/ロシアから導入したものが多い。しかし37年間も大統領として権力を奮ったドスサントス政権は終焉を迎え、国家の威信を掛けて実施されてた2017年の選挙で新しくロウレンソ大統領が誕生するなど同国にとって歴史的な転換点を迎えている。

新政権は石油輸出に依存した同国の経済構造を多角化させる方針を掲げ西側諸国への接近を試みているためF-16V購入の有力候補に挙げているのだろう。

もう一つの顧客候補であるエチオピアは、ナイル川の水利権を巡ってアフリカ随一の軍事大国であるエジプト(隣国スーダンを含む)との対立を深めており同国の空軍力強化にF-16Vが候補に挙がっても不思議ではないとMilitary Watch Magazineは見ている。

出典:yooranpark / stock.adobe.com ※ダムのイメージで大エチオピア・ルネッサンス・ダムではない

エチオピアは急速な経済発展の影響で電力需要が逼迫、これを解消するためには大規模なダム開発が避けられないとしてナイル川(青ナイル)上流に「大エチオピア・ルネッサンス・ダム」の建設を2011年に開始し、2022年までに本格稼働させる予定なのだがナイル川下流に位置するエジプトはエチオピアのダム建設に猛反対し対立が続いている。

2019年にはエチオピアのアビー首相が「この問題が仮に戦争に発展(=解決することになってもという意味)することになっても、エチオピアは数百万人を動員可能だ」と発言するなど強行な態度を示しているが、両国は陸続きに国境を接しておらず仮にエジプトがダムを破壊するため航空戦力(F-16、ラファール等)を差し向けた場合、エチオピアはMiG-23(10機)とSu-27(14機)しか保有していないため対抗するのが難しく戦闘機需要が高いと見ており、アビー政権はアンゴラと同様にロシアや中国と距離を置いて西側接近を深めているためF-16V購入の有力候補だと見ているのだろう。

出典:public domain ラファールB

確かにアンゴラとエチオピアは状況的にF-16Vの新しい顧客になる可能性はあるが、本当にF-16Vを購入するだけの予算を持っているのだろうか?

補足:ブルガリアは8機のF-16Vを導入するのに総額12.5億ドル(約1,354億円)を要求された。この費用にはF-16Vの機体だけでなく搭載兵器や消耗品、スペアパーツ等も含まれている。

まずアンゴラの場合、老朽化した旧ソ連製のMiG-21(24機)、MiG-23(22機)、Su-22(14機)、Su-25(12機)の更新が需要があるためF-16Vを購入する可能性はあるのだが、2019年4月に計13機のSu-30K導入が完了してK仕様からSM仕様へアップグレードを行ったばかりのアンゴラに果たしてF-16Vを購入するだけの資金的余裕(年間国防予算推定70億ドル)があるのか謎で、さらにエチオピアの場合は年間の国防予算が3.5億ドル(約380億円)しかないので米国よる軍事援助(装備品購入のための資金援助)でも無い限りF-16Vを購入するのは絶望的な状況だと言える。

そういった意味で言えばティールグループのアナリストが挙げたボツアナも年間国防予算が4.5億ドル(約480億円)程度しかないので、こちらも軍事援助がF-16Vの購入は無い限り難しいだろう。

このように国防予算ベースで見た場合、F-16V購入の可能性が最も高いのはアンゴラということになるが、逆を言えばロッキード・マーティンが米国政府の軍事援助とF-16Vをパッケージにして提案できればF-16の新規受注は今後も増加する余地があるという意味で、なかなか興味深い話だ。

 

※アイキャッチ画像の出典: Keith Tarrier / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    F-2はいくら金かけてアップデートしてもF-16E/Fレベルの性能なのに
    新規購入すれば安く高性能機が手に入るんだよな
    羨ましい

      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      F-16Vの新規顧客が払う金額が上に書いてあるの読めないのか??
      全く羨ましくないぞ・・・。

      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      KFXは実機すら完成せず世界一高価格なモックアップの栄誉を獲得出来ます。

      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      F-16Vの2倍の探知距離﹙ANNによる報道﹚のレーダーを開発し、F-2でも搭載試験済みだけど、F-2向けに量産する意図は無いみたい。
      J/APG-1→J/APG-2の改修予算、金額は忘れたけど、結構安価で済んだ筈なので、上記改修もそこそこ安価で済むと思うのですが。

      それどころか、スマートボムラックのような余り値の張らなさそうな代物でさえ、統合作業は済ますけど、量産配備の可能性は低いとか。
      F-2関連への開発は、結構渋くなってる感じ。
      選択と集中から、F-2が外れつつあるのかな?
      寿命が折り返しを過ぎてるから、仕方無いかもしれないけど。

      仮にF-2ではなくF-16を選択していた場合でも、重点整備の対象からは外れるのかな?

        • 匿名
        • 2020年 4月 30日

        先にF-15のレーダー改修を優先するんじゃないかなと予想

      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      所詮結果論でしかないが、F-2よりもF-16導入した方が良かった
      もちろんF-2開発で利益を得たのは間違いないが

        • 匿名
        • 2020年 4月 30日

        逆だよ。
        結果論としてF-2を(既存の外国機をライ国ではなく)開発しておいて正解だったのさ。
        あの時既存機をそのまま導入していたらF-3の開発は無かったか、もっとハードルの高い代物だったはずだ。
        F-2開発での経験や挫折が早い段階でのエンジンやレーダーの開発意欲になりF-3を実現可能な状況に導いている。
        F-16をそのままライ国した韓国は独自技術の重要性を理解できず「買ってくれば良い」と考えKFX計画を始めたが売ってもらえず七転八倒してる有様だ。
        F-2開発時にエンジンは買えば良い、売ってもらえるはずと高を括っていた当時の日本の失敗を今頃やっている。
        F-2自体は徒花だったかも知れないがその開発は多大な経験と教訓をもたらしてくれたよ。

          • 匿名
          • 2020年 4月 30日

          概ね同意だが「徒花(華やかだが実がない)」ではないな。むしろ逆。
          「純国産」や「独自戦闘機」という華は失ったが実質「新開発と変わらない開発経験」と「日本の国防に必要な戦闘機」という実はちゃんと手に入れてるんだから。

        • 匿名
        • 2020年 5月 01日

        F2で散々な目に会って、今回また米国と共同開発か。失敗の教訓が全く生かされていない。またぼったくられて終りだろう。

          • 匿名
          • 2020年 5月 01日

          「だろう」、か…

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    F-16、ほんとセールス好調だなぁ。
    こんなのだと、何故GDが軍用機部門をLMに売却したのか疑問になるくらい。
    80年台末~90年台前半のセールス状況を知らないので、酷な批判かもしれないけど。

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    戦闘機のお金の話を聞く度に「T-7A Red Hawk の軽攻撃機(COIN機)」の発売時期・価格が気になる。
    2023年・2000万ドル+α位なの?
    スレチごめんなさい。

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    F-16Vは元々E/F相当品

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    本来ならJF-17やFTC-2000辺りの顧客がF-16V購入に流れている感じ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    ボーイング「…」

      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      ボツワナってアフリカの中だと安定してるし、
      売り先としてはいいかもだけど、そもそも周辺国との
      争いとかisilみたいな過激派もいないし、f-16v必要か?
      と思ってしまう。

        • 匿名
        • 2020年 4月 30日

        より安価な、昔であればF-5ライン、戦闘機が西側(アメリカ)には無いですからね。

          • 匿名
          • 2020年 4月 30日

          本来ならグリペンがその役目なのだろうけど。

            • 匿名
            • 2020年 5月 01日

            最新のE/F型だと、別に安くも無ければ運用が楽でもない、単に小さくて弱いだけのF-16劣化コピーに成り下がったイメージ
            そもそも海外セールは、E/F型以前も大して売れていないし

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    エチオピアって確かに成長率高いけどWHOのテドロス見れば分かる通り、中国とズブズブなような、、、
    去年の外資投資の6割が中国だし例のダムも中国が絡んでるしで距離おいてるイメージが無いです
    結局J10あたり買いそう

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      トランプ政権がF-16Vを販売する条件をエチオピアは飲めないでしょうから。
      まさかのJ-31になったりして。

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    こんなところでF-2筆頭に日本製の兵器にイチャモンつけたところでKF-Xだったりそれ以外の韓国の兵器が良くなったりすることないんだがなぁ
    むしろ人を呪った言葉は自分に帰ってくるぞ

    あ、帰ってきてるからこそKF-Xがうまくいってないのか
    こりゃ失礼しました

      • 匿名
      • 2020年 5月 01日

      本当にねぇ。
      F-2のレーダー性能を叩けば叩くほど、それにすら遠く及ばないKF-Xのレーダーに流れ弾が飛ぶのに。
      まあ「自分達の幸せよりも日本の不幸が大事」な国民だから気にならないのか。

        • 匿名
        • 2020年 5月 01日

        そもそもF-2のレーダー(J/APG-2)って世界最高クラスの性能持ってるんで叩くのも頓珍漢な方向になってるしな

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    F-16V導入するよりはF-35かグリペンのほうが良い気がするが・・・
    その2機よりもF-16を選ぶ理由は何だろう?ラ国しやすいのか?

      • 匿名
      • 2020年 5月 01日

      F-35は国によっては売ってもらえない可能性もあるしグリペンEとF-16VならスペックはF-16Vの方が上だろう。

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    エチオピアとエジプトのダム建設での対立は全然知らんかったなぁ
    思わず色々調べちゃったよ
    国際河川て厄介だな…東南アジアの方でも上流を中国に抑えられて燻ってるし
    島国って恵まれてるなぁとトピックと全く関係ないネタで為になったわ

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    KF-Xは今のままま続けるとF-35より高価な4世代機になるよ。
    しかも探知距離は100km未満という有様で兵装の統合が出来ず搭載できない。

    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    そもKFXは完成すればの話
    何もかも外国技術頼み、モックアップ以外に何か作れたなら大したものだ

    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    タイトルにも文中でも一切触れられていないF-2が、なぜかトップ絵でデカデカと登場し
    コメント欄にも多数出現(7/22)する不思議

      • 匿名
      • 2020年 5月 01日

      イラストはF-16だけど何が問題なの?

        • 匿名
        • 2020年 5月 01日

        横から失礼します。
        自分もあの画像を見て『あれ?』と思ったのですが
        キャノピーがF-16の2ピースではなく3ピースになってるからF-2だと。。。
        あと、F-16と明らかに違う点で水平尾翼の形状からF-2だと判断できると思うのですが。

          • 匿名
          • 2020年 5月 01日

          画像元はAn illustration of a modern 4th generation US fighter jet as soars through the clouds with empty weapons pylons.と説明してる。まぁイメージとしては大きく間違っていないんだし良いんじゃないの?

    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    アフリカ各国は中国の借款でズブズブ、返済の代わりに資源差し押さえられてついでに兵器も買わされかねない状況なので、西側がある程度はくさびを打ち込む必要があります。
    ただ、F-16は高価すぎるし、T-7AのCOIN機版では微妙、下手に紛争起こしたら資源問題など各種経済問題も引き起こすので西側は各国の政府をコントロールできなければ売りつけにくいでしょうね。

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      むしろそんな国にF-16売っていいのか?って気もしますけどね。
      中古のF-16C/Dですらエンジンは中国的には喉から手が出るほど欲しいレベルのモノ積んでる訳で。

    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    貧乏な国は中古のF-16C/Dとかにしたほうが良いんじゃ
    高価すぎると損失が怖くてそもそも使えないっていう本末転倒パターンになりかねないし

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    どこの戦闘機を導入しているかがその国の旗色を示してる
    アメリカが売らないと結局は中国かロシアを利するだけ、すでに人口1億を越えた地域大国とどう付き合うか、トランプの商魂を眺めてよ

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