中東アフリカ関連

躍進を続ける中東の防衛産業企業EDGE、TB2相当のUCAVを1.5億円で提供可能

アラブ首長国連邦のEDGEはジェーンズに対して「TB2(350万ドル~500万ドル)に相当するReach-Sを110万ドルで提供できる」と明かしており、武装可能で24時間以上の滞空性能を備えたUCAVが約1.5億円で手に入るようになるらしい。

参考:IDEX 2023: Edge reveals UAV, loitering munition prices

躍進を続けるアラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023の期間中に国から計27.8億ドルの契約を獲得

アラブ首長国連邦は防衛装備品の海外依存から脱却するため2019年に国内の防衛産業企業を再編、25を超える企業を合併させる形で巨大な防衛産業グループ「EDGE」を創設し、中東企業として初めてストックホルム国際平和研究所が発表する年間売上ランキングで22位(2020年は25位)に食い込み、欧米企業との幅広い協力関係を構築して海外需要の取り込みに挑戦している。

出典:EDGE IDEX2023で披露した無人戦闘機のJeniah

EDGEは伝統的な陸海空のプラットフォームに加え、無人化技術、ミサイル、精密誘導兵器、弾薬、電子戦、サイバー、通信といった幅広い分野をカバーしており、特に力を入れているのが今後需要が飛躍的に高まると予想されている無人プラットフォームの開発で、無人航空機や徘徊型弾薬のラインナップには非常に充実しているため海外メディアからの関心も高い。

有人機向けの精密誘導兵器ではなく小型の精密誘導兵器を開発することで無人機のサイズを小さくし、MQ-9と同等の滞空性能を安価に実現するというTB2のコンセプトに追従する企業は非常に多く、EDGEも2021年にReach-Sを発表したが、今年のIDEX2023には飛行可能なReach-Sを持ち込み「非常に大規模な商談が進んでいる」と英国のジェーンズは報じており、EDGEは「同じカテゴリーの製品に正面から勝負するためReach-Sを開発した。競合他社は350万ドル~500万ドルで機体を提供しているがReach-Sは110万ドルで提供できる」と明かしている。

EDGEが言及した350万ドル~500万ドル(地上管制システムなど関連費用を含まない無人機本体の取得コスト)の競合他社とはBAYKARのTB2のことで、これと同等のReach-Sを110万ドルで提供できるというのだから本当に驚きだ。

ただTB2には搭載可能な専用の精密誘導兵器が幾つも用意され「実戦で効果が証明されている」という点が評価されているので、未検証で運用実績もないReach-Sを本当に購入する国が現れるのかは疑問だが、スウォーム戦術に対応したチューブ収納タイプの徘徊型無人機「Hunter-S」についても「競合製品の価格は11万ドル以上(ランチャーや制御システムを除く)だが、同じスペック、同じ能力を備えたHunter-Sを2万9,000ドルで販売する」とも述べており、これだけ安価だと購入する国が現れても不思議ではない。

出典:EDGE Hunter-S

AI搭載のHunter-Sは群れで作動する他機と情報を共有し、目標を効果的に破壊できるよう飛行コースや着弾タイミングを自律的に調整することが可能で、標準的なランチャーシステムには21のチューブを装填でき60秒以内に全てを射出することが出来る。

公開されているHunter-Sのスペックを見る限り、米国のSwitchblade600を一回り小型(約2/3ぐらい)にした感じなのでパンチ力はありそうだ。

個人的に興味深いのは自爆型のジェット無人機「SHADOW50‑TJ(離陸重量120kg/航続距離240km/滞空時間40分/ペイロード50kg)」で、巡航速度は200km/hと比較的低速だが地上から10mの高さを飛行して目標に接近し、全翼機の機体デザインと機体サイズと相まって迎撃するのが相当難しそうだ。

プロペラ推進の「SHADOW50-P(離陸重量135kg/滞空時間9時間/制御範囲100km以内/ペイロード50kg)」は完全に徘徊型弾薬=サイズ的には徘徊型無人航空機と呼べるもので、SHADOW50‑TJを小型にしたSHADOW25(離陸重量80kg/航続距離250km/滞空時間40分/ペイロード25kg)もライナップされている。

出典:EDGE THUNDER

因みにUAE軍はEDGEが開発したHunter-2(Hunter-Sのこと)、Hunter-5、Hunter-10に約3億ドル、SHADOW25とSHADOW50に3.6億ドル、無誘導爆弾を精密誘導兵器に変換するTHUNDER(レーザー誘導キット=米軍のPavewayに相当)に約5.8億ドル、無誘導爆弾を滑空爆弾に変換するAL TARIQ(オーストラリア空軍が採用しているJDAM-ERに相当)に2.7億ドル、無人機向けの精密誘導兵器DS-25に12.7億ドルを投資すると発表、IDEX2023の期間中に国から計27.8億ドルの契約を獲得した。

AL TARIQはJDAM-ERに相当すると書いたが、AL TARIQは目標の種類によって最終アプローチを選択することができ、重量級の建築物を攻撃する際は主翼部分を分離し「目標に対して垂直に着弾させる=貫通力を高める」という芸当ができる。

無人機向けの精密誘導兵器DS-25はトルコ製のMAMよりも一回り大きく、どのプラットフォームで運用するつもりなのは不明だ。

関連記事:アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
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※アイキャッチ画像の出典:EDGE

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コメント

    • ななし
    • 2023年 2月 24日

    ウクライナがこれらの兵器を売ってくれと言ってきたらUAEは販売するのだろうか?
    中東諸国はロシア非難に及び腰だから断られる可能性が高い気がするけど

    1
    • 鼻毛
    • 2023年 2月 24日

    ウクライナ軍のスイッチブレードやフェニックスゴーストは一体どこへ…

    1
    • paxai
    • 2023年 2月 24日

    UAEにおけるUAE国籍は13%しかいないらしい。っという事はこれらの武器を作ってるのも恐らく外国からの出稼ぎだよね?
    で出稼ぎに来てるのはイラン人とかインド人とかまあ多種多様って感じ。
    軍事機密とか・・・大丈夫なんですかね?

    5
      • 戦略眼
      • 2023年 2月 24日

      逆にイランからの技術供与だったりして。

      2
        • ブルーピーコック
        • 2023年 2月 24日

        「イランはUAEの敵」と発言した韓国大統領の発言にイランが抗議したり、UAEがイランとの外交関係を格上げしたりしているので、あながち的外れな発言では無いのがなんとも。
        それでアメリカからの冷たい視線を感じた結果が中国からの練習機調達や、この記事に出てくる無人機郡なのかもしれませんが。

        1
    • ブルーピーコック
    • 2023年 2月 24日

    米欧中韓から兵器を購入した上で、自国もまだまだ黎明期の無人機開発に名乗りを上げるとは。産油国は羨ましいな。UAEはUAEで情勢に危機感を抱いているんだろうけど。

    3
    • 58式素人
    • 2023年 2月 24日

    SHADOW50は英国のバンシーに似ていますね。
    エンジンを選べたり、全翼機であったり。
    繋がりがあるのでしょうか。

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