中東アフリカ関連

エジプトもトルコの第5世代戦闘機計画に参加、年末までに協定締結か

アフリカやスペインのディフェンスメディアは「トルコ政府が第5世代戦闘機計画へのエジプト参入を承認した」と報じていたが、トルコメディアも「エジプトとの画期的な防衛協力について準備が進められている」「カーン開発計画へのエジプト参加に関する協定が年末までに締結されるだろう」と報じた。

参考:Egypt approved to join Turkey’s 5th-gen KAAN stealth program
参考:Turquía aprueba la entrada de Egipto a su programa de avión de combate de quinta generación Kaan
参考:Egypt sets sights on Türkiye’s Kaan fighter jet program: Report

トルコはロシアや中国よりも先に「米国のコントロールが及ばない第5世代戦闘機としての地位」を確立するかもしれない

Military.Africaは16日「トルコ政府が第5世代戦闘機=カーン開発計画へのエジプト参入を承認した」「これでエジプトは共同生産者の立場でカーン計画に参加する道が開かれた」「既にエジプト空軍はカーンの試作機を調査済みで、両国は技術協力と共同生産に関する取り決めを2025年末までに締結する予定だ」と、スペインのディフェンスメディア=Infodefensaも19日「トルコがエジプトのカーン開発計画への参入した」と報じた。

出典:Turkish Aerospace Industries

さらにDailySabahも「トルコとエジプトは画期的な防衛協力に向けて、特にトルコの第5世代戦闘機=カーン開発計画へのエジプト参加に関する準備を進めている」「この軍事協力はゴールではなく新たなスタートであり、両国は防衛産業の自立性を高めて対外依存を引き下げることで目的が一致している。こういったプロセスは極秘裏に進められるものだが、両国ともワシントンやEUとの関係を悪化させないよう注意を払いながらオープンな形式で協議を進めている」「外交筋はカーン開発計画への正式参加協定が年末まで締結されると予測している」と報じ、遂にトルコでもエジプトのカーン開発計画参入報道が確認された。

エジプトのエルシーシ大統領は2024年9月にアンカラを訪問した際、トルコ製のAIで制御される指揮統制システム、レーダーシステム、長距離迎撃ミサイル、中・低高度迎撃ミサイル、対空自走砲、携帯式防空ミサイルで構成された統合防空システム=スチールドーム(アイアンドームとも呼ばれることがある)に関心を示し、エジプト空軍代表団もトルコに何度も訪問して訓練、技術移転、情報共有などに関する協議が深まり、カーン以外にも無人機、無人機で運用可能なTRLG-230(多連装ロケットシステムで運用する精密誘導ロケット弾の空中発射バージョン)、小型の精密誘導兵器に関心を示しているらしい。

因みにF-35にアクセスするには米国務省の厳格な輸出規制をクリアする必要がある上、イスラエルに質的軍事優位性=Qualitative Military Edgeを約束しているため、米国は中東諸国に対してイスラエルの安全保障を脅かす武器システム、つまりF-35の売却を政治的に制限しており、Military.Africaは「エジプトがトルコに期待しているのは中東地域で第5世代戦闘機を唯一運用するイスラエルとの格差是正だ」と指摘している。

インドネシアもカーン購入に関する契約を正式に締結済みで、安全保障分野で緊密な関係にあるアゼルバイジャンもカーン開発計画への参加を表明しているため、ここにエジプトが加われば運用国が4ヶ国に広がり、トルコはロシアや中国よりも先に「米国のコントロールが及ばない第5世代戦闘機としての地位」を確立するかもしれない。

追記:肝心のカーンは2024年2月に初飛行したものの、この機体=P0は元々「格納庫でのロールアウト用に製造されたデモンストレーションプラットホーム」で、飛行可能なように改造され初飛行に成功したあと1度しか飛行(2024年5月)しておらず、Turkish Aerospace IndustriesはAviationWeekの取材に「現在は3機の試作機=P1、P2、P3を製造中」「P0と新しい試作機の外見上における相違点はエアインテークが超音速飛行に最適化されていること」「重量の最適化やミッションシステムの搭載など最も多くの変更は機体内部で行われる」「次の試作機=P4、P5、P6では前の3機よりも能力が先進的になる」と言及。

さらに興味深いのは「全ての試作機と最初の量産機20機にはF110が搭載される」「国産エンジンの予備設計レビューは年末までに予定されている」「2029年までに試作機への国産エンジン搭載を目指している」「国産のステルス塗料とコーティング剤の開発も進められている」「まもなく運用が始まるRCS計測施設でテストされる予定」「KAANの国産比率は80%~90%になる予定」「2023年に署名したKAANに関するアゼルバイジャンとの協力協定は正式なものではない」「それでも両国間の緊密な関係を考えればアゼルバイジャンは何れKAAN製造から利益を得るだろう」と述べている点だ。

出典:Savunma Sanayii Dergilik

まだKAANの構成要素は何一つ完成していないものの開発作業は前進しており、特に国産エンジンの具体的な開発スケジュールにも言及しているため「見通しが立っていない」という状況も脱していると思われ、仮に開発が難航して実用化が遅れたとしても計画を放棄する可能性は低い。

TAIはAviationWeekに対して「トルコの安全保障に対する脅威評価に基づき、空軍はF-35であろうとタイフーンであろうと一定レベルの能力と即応性を維持しなければならないが、50年~100年後まで独立を維持するには自前の防衛装備品をもつ必要があると誰もが知っている」「国産エンジンを開発することで米国の国際武器取引規制=ITARからKAANを出来るだけ除外することが重要だ」「同時にトルコはITAR Freeによってプラットホーム輸出における自由裁量権を獲得できる」と力説している。

出典:Turkish Aerospace Industries

トルコにとって本格的な戦闘機開発は初めて、しかも第5世代機とエンジンを同時並行で開発するため潜在的な開発リスクは非常に高く、競合するF-35Aと同等もしくは匹敵する能力を実現できるかも現段階では怪しいが、地域大国から大国になることを目指しているトルコにとって「仮にカーンの能力がF-35Aの80%に留まったとしても武器システムの主権確保の方が重要」と言いたいのだろう。

関連記事:トルコ防衛産業は絶好調、インドネシアへのフリゲート艦輸出にも成功
関連記事:インドネシアがトルコから第5世代戦闘機を購入、KAAN輸出契約を締結
関連記事:トルコの第5世代機開発、KAANは100年後まで独立を維持するに不可欠

 

※アイキャッチ画像の出典:Turkish Aerospace Industries

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コメント

  • コメント (27)

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    • たむごん
    • 2025年 8月 20日

    トルコは、ドルベースGDPで見ても、着実に成長して言ってるんですよね。

    第5世代戦闘機の話まで出てくると、基礎的な工業力が、段違いに成長しているのも感じます。

    (外国人観光客の増加で)日本が相対的に貧乏になり続けていると言われていますが、トルコとさえも格差を急速に縮めているんですよね(人口格差を考えればさらに縮まります)。

    米国1980年 2,857.33 2024年29,184.90 単位10億USドル 購買力平価
    日本1980年 1,027.57 2024年6,530.59 単位10億USドル 購買力平価
    トルコ1980年 161.32 2024年3,463.65 単位10億USドル 購買力平価

    (購買力平価GDP(USドル)の推移(1980~2025年)(アメリカ, 日本) 世界経済のネタ帳)
    (最終更新日 2025年4月24日 トルコのGDPの推移 世界経済のネタ帳)
    (トルコの購買力平価GDP(USドル)の推移(1980~2025年) 世界経済のネタ帳)

    14
      • 武田実
      • 2025年 8月 20日

      まあ今や日本の防衛大臣がドローン売ってくれとトルコに頭を下げる時代になったからなあ

      2
        • たむごん
        • 2025年 8月 22日

        考えてみれば、時代は変わったなと感じますね。

      • 特盛
      • 2025年 8月 21日

      危機感には同意しますが、購買力平価は全くあてにならない数値ですよ。
      いつを基準にするかに依っていくらでも恣意的に操作できるので。

      5
        • たむごん
        • 2025年 8月 22日

        もちろん仰る通りです。

        日本=トルコは、名目GDPで見てもキャッチアップされてるものの、購買力平価ほどではありません。

        日本=アメリカは、名目GDPで見るとさらに格差が開いていまして、7倍以上の格差という悲しい現実もあるんですよね…

        1
      • PONTA
      • 2025年 8月 22日

      トルコもだけど、中東域ではイランがイメージ以上に成長している。
      イランは経時GDPデータが信用できないので現物を見ると

      Global Note世界の自動車生産台数:台
      米国 2000年 12,799,857 2024年 10,562,188
      トルコ 2000年 430,947 2024年 1,365,296
      イラン 2000年 277,985 2024年 1,077,839

      Global Note世界の粗鋼生産量 : 千トン
      米国 1980年 101,455 2024年 79,457
      トルコ 1980年 2,536 2024年 36,893
      イラン 1980年 550 2024年 31,357

    • 匿名希望係
    • 2025年 8月 20日

    まあ・・エンジンはすでに半世紀近く前だからね>F110

    12
      • PAC3
      • 2025年 8月 20日

      スケジュール的に問題がなく新型エンジンの開発を成功させると、IHIの開発苦労話の記事を読んだことがあるだけに複雑な気分になりそうです。
      イスラム教諸国向け戦闘機の完成なるか見守りたいですね、

      7
        • バーナーキング
        • 2025年 8月 21日

        当初予定からズルズル遅れてる大きな要因の1つがエンジンで、結局試作機はともかく初期量産機までF110使う時点で「スケジュール的に問題がなく」とはほど遠い様な…

        12
    • PLANET
    • 2025年 8月 20日

    トルコは、イスラム世界の兵器廠としての道を着実に歩んでいるように見えます。
    科学技術において特に優れているという印象もなく、バイラクタルが脚光を浴びるまで兵器開発の実績もほとんど無かったように記憶しているのですが、私の認識不足だったのでしょうか。

    12
    • そら
    • 2025年 8月 20日

    第5世代機の定義が曖昧だけど、F-15やSu-34を超える性能を持ってて尚且つステルス機って認識でいいのかな?
    初国産開発機としては大冒険に見えるが、それだけUAVで積んだ経験値が大きいのかね
    UAEやパキスタン辺りも参加したら、イスラム標準機になるかもしれないね

    5
    • 折口
    • 2025年 8月 20日

    エジプトとトルコの関係は歴史的にも友好的じゃなかった時期のほうが圧倒的に長くて、しかも最近の比較的中立な関係は米国の仲立ちによるところが大きいので、この二国が米国抜きの秩序形成で合意しているところを見るのは不思議な気持ちです。米国がこの手の動きに何も言わなくなっているのもそうですし、イスラエルがパレスチナ自治区内の戦争で忙殺されて周辺諸国の現代化やアライアンス形成に対して予防的な工作や攻撃を仕掛けないというのも、両者の弱体化を感じさせますね

    21
    • hoge
    • 2025年 8月 20日

    五世代機の要件はステルスではないというのはロッキードが再三言っていることなので、これ単体ではあんまり期待しないほうが良い気がしますね。
    中国のように何世代も試行錯誤を重ねてきたら始めて期待できる感じではないでしょうか。

    10
    • 朴秀
    • 2025年 8月 20日

    作ってみないと進歩はないですからね
    新型機が見られそうなのは嬉しいです

    14
    • 神田明(仮名)
    • 2025年 8月 20日

    「トルコはイスラム教国家として初めてのステルス機保有国になる見込」という認識で正しいですか?

    1
      • Kenny
      • 2025年 8月 21日

      パキスタンがJ-35を導入するのとどちらが早いか、という感じかな

    • リンゴ
    • 2025年 8月 20日

    やはり自分達で全ての裁量を握れる、って所が何よりも重要だよな
    特にトルコの位置だと

    7
    • 2025年 8月 20日

    露中から戦闘機は買えないし、欧米の戦闘機に依存していたらギリシャとの諍いは欧米の掌の上でしか出来ないし、何故かF-35は禁輸されたし…
    というトルコ目線の事情が分かれば例えFA-50レベルであっても完全国産の戦闘機は欲しくなりますよね

    米国兵器を購入出来る我が国ですら次期戦闘機も自由度が欲しくてイギリスと組んでる位ですからね、トルコのストレスは日本人には分からんでしょう

    16
    • DEEPBLUE
    • 2025年 8月 21日

    KF-21君が涙目に

    5
      • PAC3
      • 2025年 8月 21日

      着実に実用化が進んでいるのではないでしょうか。
      後回しにしたウエポンベイ搭載型の開発も進んでいるようですし、
      涙目まで入っではいっていなっかと。

      9
        • 神田明(仮名)
        • 2025年 8月 23日

        戦闘機のウェポンベイの技術を甘く見ている人が多いように思えます。
        例えば、超音速飛行中にウェポンベイのドアを開いたらドアにどれだけの空気抵抗がかかるか想像出来ないのでしょうか?
        ドアや胴体の強度も問題ですが、ドアにかかった力により姿勢が乱れるので、ドアの開度に連動して動翼を自動制御する必要があります。
        空力というものは、コンピューターシミュレーションでは正確さが足りないので、実機を飛ばして測定する必要があるのですが、KF-21はウェポンベイが付いた機体の実機テストをまだ行なっていないですよね?

    • YF
    • 2025年 8月 21日

    どこも苦労するのはエンジンとアビニオクスですから国産エンジンの開発さえうまくいけばカーンも成功と言えるでしょうね。
    世界的に一時期停滞していた戦闘機開発が百花繚乱の様相を呈して兵器好きとしては嬉しい限り。
    見た目が似たような機体ばかりなのはちと残念ですが。

    2
      • まさし
      • 2025年 8月 21日

      なんでも最適化されると似たような形になるんですね。
      総合格闘技も柔道やボクシングやムエタイなどのベースはあってもみんな似たような動きに落ち着いてますし。

      2
        • ななし
        • 2025年 8月 21日

        車輪の再発明と一緒ですでに成功例があるのに金と時間をかけて失敗するかもしれない独自の道を歩むのは勇気がいる事なので
        中国がそれやってるけど、リソースつぎ込める余裕があるのがうらやましい

    • YF
    • 2025年 8月 21日

    どこも苦労するのはエンジンとアビニオクスですから国産エンジンの開発さえうまくいけばカーンも成功と言えるでしょうね。
    世界的に一時期停滞していた戦闘機開発が百花繚乱の様相を呈して兵器好きとしては嬉しい限り。
    見た目が似たような機体ばかりなのはちと残念ですが。

    • ななし
    • 2025年 8月 21日

    アビオニクスですね。優しい世界であれ

    3
    • ななし
    • 2025年 8月 21日

    管理人さんアビオニクスなのは指摘してあげてくださいね

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