中東アフリカ関連

エジプト陸軍の戦車M1A1がリビア国境沿いに集結、トルコ軍と一戦交える可能性も

エジプトがリビア内戦に正規軍を投入する可能性が高まっている。仮に正規軍を投入すればリビアでトルコ軍とエジプト軍が戦火を交えることになり、リビアの状況はより一層複雑になるかもしれない。

参考:Египет отправил в Ливию огромный вертолётоносец, укомплектованный ударными вертолётами Ми-24 и “Apache”

エジプトがリビア国境沿いに戦車M1A1エイブラムスや装甲車両を多数集結させる

リビアのシラージュ暫定政権が率いる政府軍側を支援するため軍事介入したトルコは、首都トリポリに迫った反政府組織「リビア国民軍」を打ち破ることに成功、その後も首都周辺の空港や港など主要施設の奪還して現在は首都トリポリから約400km東に位置する石油積出基地「シルト」奪還に向けて進軍中だ。

トルコが支援する政府軍によればシテル奪還は時間の問題と説明しており、反政府組織側にすればシテルを奪われるとリビア内陸部にある油田地帯を政府軍側に奪回される恐れが出てくるため非常にまずいことになる。これは反政府組織「リビア国民軍」を支援するロシアやエジプトなどの国にとっても深刻な問題で、先日(6日)エジプトのシーシー大統領がリビアのシラージュ暫定政権側に停戦を持ちかけたのもシルトや内陸部の油田地帯を守るための時間稼ぎに過ぎない。

出典:NordNordWest、YUG / CC BY-SA 3.0 リビアの油田分布図

シラージュ暫定政権側が停戦に応じるかは不明だが、仮にエジプトの要請に応じて停戦を行えばロシアやエジプトが軍事支援を通じて反政府組織「リビア国民軍」を立て直すための時間を与えるだけなので恐らく停戦に応じることはないと見られるが、エジプトはもし暫定政権側が停戦に応じない場合に備えてリビア国境沿いに正規軍のエジプト陸軍を集結させているのが確認された。

まだエジプトとリビアの国境を越えてはいないが、エジプト陸軍の戦車M1A1エイブラムスや装甲車両を多数集結させており暫定政権とトルコに停戦を受け入れるよう圧力をかけている。さらに未確認情報だがエジプトは攻撃ヘリAH-64アパッチとMi-24ハインド(恐らくMi-24は間違いでKa-52アリゲーターだと思われる※1)を搭載したミストラル級強襲揚陸艦をリビアに向けて派遣したとロシア系メディアが報じており、場合によってはリビアでトルコ軍とエジプト軍が衝突する可能性もある。

※1補足:最近、エジプト海軍はミストラル級強襲揚陸艦にAH-64とKa-52を搭載して同時運用を行う訓練をおこなっていたのでまず間違いない

もしそうなればトルコ軍や政府軍側は圧倒的に不利で瞬く間に駆逐される可能性が高い。

出典:Alex Beltyukov / CC BY-SA 3.0 Ka-52

トルコ軍はリビアに軍事介入しているが、無人航空機や自走砲などによる間接的な支援と旧式の戦車M60A1などしか持ち込んでいないためエジプト陸軍のM1A1が前線に現れればピンチだ。AH-64アパッチやKa-52アリゲーターなどによる近接航空支援も脅威だが、イタリア海軍の報告ではトルコはリビア沿岸にトルコ海軍の艦対空ミサイルSM-1MRを装填したフリゲート艦を配備して政府軍を守っていると言っているため、何の考えもなしに攻撃ヘリを作戦に投入すれば返り討ちにあうかもしれない。

しかしエジプト陸軍が介入すれば確実にトルコ軍や政府軍側は首都トリポリ方向へ押し返されるはずなので停戦を受け入れるのか、トルコがさらなる軍事支援(レオパルト2等を持ち込むか)を行うか注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Michael Battles エジプト陸軍の戦車M1A1エイブラムス

韓国、極超音速兵器を開発中で2023年までにHGVを試射予定前のページ

順調に開発日程を消化する韓国の戦闘機KF-X、試作機の年内完成を発表次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    国益を見極めるイスラエル、防空システムのウクライナ提供はロシア次第

    ウクライナのゼレンスキー大統領は「イスラエルが誰と共に歩むのか決める時…

  2. 中東アフリカ関連

    ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエル、前例のない代償を支払わせると約束

    イスラム原理主義組織のハマスが開始した軍事作戦は「ロケット弾と地上侵攻…

  3. 中東アフリカ関連

    イスラエルがウクライナへの防空システム提供を拒否、非殺傷装備なら幾らでも

    イスラエルのヘルツォーク大統領は防空システムをウクライナに提供できない…

  4. 中東アフリカ関連

    対決姿勢のリビア国民統一政府、エジプトの脅しは事実上の宣戦布告

    リビアの国民統一政府(GNA)は21日、エジプトのシシ大統領が明らかに…

  5. 中東アフリカ関連

    ECOWASが参謀総長会議をキャンセル、ニジェールへの軍事介入を先送りか

    ECOWASは10日「ニジェールの秩序を回復させるため待機部隊の配備を…

  6. 中東アフリカ関連

    イスラエルが開発した「異次元」の戦闘システム、開発中の装甲戦闘車「カルメル」公開

    イスラエルは現在、主力戦車「メルカバ Mk 4」にも応用可能な技術を搭…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    トルコにはレオパルト2A4が有るからエジプトのM1A1と史上初の西側第三世代戦車同士の激突なるか?

    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    トルコ先輩は敵対してる国家多すぎませんかね
    別に全方位平和外交しろとは言わんが
    敵をもうちょっと絞らないと後で地獄見ることになりそう

      • 匿名
      • 2020年 6月 11日

      全方位外交ならぬ、全方位戦線と化しつつありますね。
      かつてのドイツ第三帝国より、ある意味ひどい状況かも。

    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    お互いに原油目当ての行動だからわかりやすいと言えばわかりやすいよね
    しかしトルコはアグレッシブだな
    国際的な評価なんか我関せずといったところか

      • 匿名
      • 2020年 6月 11日

      やけくそというか火事場泥棒というか。国際協調してやってく路線を放棄してやりたい放題やっているようにみえます。

    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    レオパルドVSエイブラムス、実現すれば胸熱です。(オタク目線では)

      • 匿名
      • 2020年 6月 11日

      エジプトのM1A1が劣化ウラン弾と劣化ウラン装甲をオミットした輸出型ならトルコの初期型レオパルト2A4とどっこいどっこいのスペックだと思う。

      遠距離ならお互いの主砲では相手の正面装甲は抜けないのでは無かろうか?

        • 匿名
        • 2020年 6月 11日

        M1系統、120mmのAPFSDSに耐えられるようになったのはM1A1HAから。
        湾岸戦争の直前に、改造用キットを大量調達したのも、それ故かと。
        従来のM1のセラミック装甲は、対HEATの古いタイプですし、
        またお役所仕事で重金属系装甲に注力し過ぎて、セラミック装甲の技術が十年単位で停滞していた様です。

      • 匿名
      • 2020年 6月 11日

      正直ロマンはあるよねえ。傍から見てるぶんには。

      1
    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    管理人様、日本のメディアが新型コロナ一辺倒の報道で貴重な海外記事で助かりました。

    >現在は首都トリポリから約400km東に位置する石油積出基地「シテル」奪還に向けて進軍中だ。

    地名ですが、Sirteを指しているのであれば「シルト」が正しいかと思います。
    ご参考までに。
    リンク

    • 匿名
    • 2020年 6月 11日

    地図見た限りだと反政府軍のが油田地帯抑えてるから金はあるんかな?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
PAGE TOP