中東アフリカ関連

ハマスの奇襲攻撃は非常に洗練された協調作戦、海からの襲撃にも成功か

イスラム原理主義組織のハマスは8日、スマート・ウォールの監視塔や兵器システムをドローンで破壊し、パラグライダーによる侵入に合わせてロケット弾を発射し、重機で国境のフェンスを破壊してイスラエル領に侵入する様子を公開した。

参考:Hamas videos seem to show how group burst through border to start murderous invasion

もう海外の主要メディアは「ウクライナとロシア」ではなく「イスラエルとハマス」の報道で埋め尽くされている

The Times of Israel紙は8日、ハマスが公開した映像に基づき「ハマスはスマート・ウォールの監視塔や兵器システムをドローンで破壊し、パラグライダーを使用した空からの侵入に合わせて数百発のロケット弾を発射した。ハマスはロケット弾を発射後、重機を用いて国境のフェンスを破壊してイスラエル領に侵入、国境沿いの軍事拠点や入植地を次々と襲撃した。専門家によると数百人の武装したテロリストがイスラエル領内に侵入した可能性が高く、一部の戦闘員は重武装でピックアップトラックも使用しているため、この攻撃は周到に準備されたものだった」と指摘。

出典:حركة حماس

現段階で判明している情報を加味して「ハマスの奇襲攻撃」を分かりやすく再構成すると以下の通りになる。

“イスラエルは2005年にガザ地区から撤退し、約10億ドルを投じて同地区を取り囲む「スマート・ウォール=情報技術、各種センサー、警報装置、無人兵器、地上と地下の壁を組み合わせた全長40kmの国境警備システムで2021年末に完成」を建設、これにより地上だけでなく「地下トンネルからの侵入も未然に防ぐことが出来る」と期待されていたが、ハマスはスマート・ウォールの監視塔や兵器システムをドローンで破壊し、パラグライダー(40km離れたディモナ原子炉近くの軍事拠点攻撃に使用された可能性)を使用した空からの侵入に合わせて数百発のロケット弾を発射した”

出典:حركة حماس アル・カッサム旅団がエレス検問所を襲撃する様子

“ハマスはロケット弾を発射後、重機を用いて国境のフェンスを複数箇所で破壊してイスラエル領に侵入、事前の警告や予兆がなかったことに加え「空と陸からの協調攻撃」という前代未聞の攻撃に対応が遅れ、ガザ地区周辺の軍事拠点(ジキム基地、レム基地、エレス検問所など)も襲撃され、特にアル・カッサム旅団に制圧されたレム基地の被害は甚大で、エジプト国境に近いケレム・シャロームではナハル旅団(歩兵旅団)の司令官も戦闘に巻き込まれて死亡してしまう”

“イスラエル国防軍はガザ地区の危機に対応する現地拠点が機能しなくなったため初動対応が遅れ、ハマスの戦闘員はガザ国境から24kmも離れた22の街や集落に押し寄せる結果となり、国防軍が現地に到着するまで何時間も徘徊して民間人を殺害し、100人を超える市民がガザ地区に連れ去られてしまい問題が複雑化してしまった”

出典:حركة حماس ハマスが公開した固定翼の自爆型無人機

他にもハマスは「アル・カッサム旅団の特殊部隊が海から回り込んでジキム基地を襲撃する映像」「アル・カッサム旅団がエレス検問所を襲撃して寝込みを襲われた様子のイスラエル人兵士を捕虜にする映像」「襲撃に使用した固定翼の自爆型無人機」などを公開しているため、ハマスの奇襲攻撃は「統率の取れていない民兵の単調な攻撃」ではなく「使用した兵器は粗末なものでも非常に洗練された協調作戦」だった可能性が高い。

因みにキブツ・レム近郊で行われた大規模な野外パーティー(音楽フェス)の会場から「250体以上の遺体が回収された」と報じられており、もう海外の主要メディアは「ウクライナとロシア」ではなく「イスラエルとハマス」の報道で埋め尽くされている。

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※アイキャッチ画像の出典:حركة حماس ハマスが公開した固定翼の自爆型無人機

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