中東アフリカ関連

イスラエルがF-15IA購入を発表、52億ドルの支払いは米国の軍事援助

イスラエル国防省は7日「F-15IA×25機を52億ドルで購入する契約を締結した。この中には25機の追加購入オプションも含まれている。納入開始は2031年で年4機~6機のペースで引き渡される」と発表。但し、調達費用の支払いは米国の軍事援助によって賄われる見込みだ。

参考:Israel to buy 25 F-15s, with eyes on long-distance combat punch

BoeingのF-15生産ラインは2030年代も維持されることが確定

米国の対外有償軍事援助を管理する国務省は8月1日~22日までの間にノルウェーへのHIMARS売却、イスラエルへのF-15IA、F-15Iアップグレードキット、AIM-120C-8、120mm戦車砲弾、120m迫撃砲弾、M1148A1P2売却、ドイツへのPAC-3MSE売却、デンマークへのM1156売却、イタリアへのMQ-9 Block5売却、オーストラリアへのJavelin売却、韓国へのAH-64E売却、カナダへのAIM-9X売却、フィンランドへのM1156売却、デンマークへのエクスカリバー砲弾売却、ルーマニアへのAIM-120C-8売却、ノルウェーへのAMRAAM-ER売却の可能性を承認して議会に通知した。

出典:U.S. Air Force photo by Michael J. Hasenauer

議会が通知された内容に反対せず、承認された売却の可能性の最大値で取引が成立すると契約総額は318億ドル=4.6兆円以上となり、一連の対外有償軍事援助から最大の利益を得るのはBoeingで、F-15IA(50機)、F-15IをF-15I+に改修するアップグレードキット(25機分)、AH-64E(36機)の売却で200億ドル以上の受注を獲得する見込みだが、イスラエル国防省は7日「次世代F-15購入に関する巨額な契約を締結した」「F-15IA×25機を52億ドルで購入する」「この契約には25機の追加購入オプションが含まれている」「納入開始は2031年で年4機~6機のペースで引き渡される」と発表。

DefenseNewsは契約成立の背景について「F-15IAはAESAレーダー、サイル警報システム、デジタルコックピット、ヘルメットディスプレイ、フライ・バイ・ワイヤシステム等が採用される予定(F-15EX構成)だが、今回の契約で有利に働いたのは遠距離まで大量の武器を運搬する能力だ」と指摘し、イスラエル国防省も声明の中で「F-15IAには画期的な独自システムを含む最先端の兵器システムが搭載され、航続距離やペイロードの拡張、あらゆる運用状況に対応した能力向上に関するアップグレードが施される予定だ」と述べており、イスラエルだけに許された特権を再び駆使するようだ。

イスラエルの安全保障にとって「周辺国に対する軍事的優位の確保」は至上命題で、米国もイスラエルに「Qualitative Military Edge=質的軍事優位性」の維持を約束しているため、中東諸国の友好国が「最新の米国製兵器」を望んでもイスラエルの同意が必要と言われており、オイルマネーが豊富なサウジアラビアやUAEにF-35Aを売れないものQMEの影響が大きく、1期目のトランプ大統領がUAEへのF-35A輸出を実現寸前まで進めることが出来たのは「イスラエルに米軍の宇宙配備赤外線システムやF-35搭載のコンピュータシステムへのアクセス権等を認めたため」と噂されている。

結局、UAEへのF-35A輸出はバイデン政権が凍結したため実現しなかったものの、イスラエルがF-15IやF-16Iに独自システムを統合したり、Boeingに依存しないアップグレードを実行できるのはソースコードが開示されているためで、米国はF-35Iの基本ソフト上に独自ソフトウェアをインストールすることも認めているため、イスラエルは独自のC4システムをF-35Iに搭載でき、同機のレーダーが収集した情報をイスラエル全軍で共有することが可能らしい。

出典:Israel Defense Forces

要するに「F-15IAには画期的な独自システムを含む最先端の兵器システムが搭載され、航続距離やペイロードの拡張、あらゆる運用状況に対応した能力向上に関するアップグレードが施される予定だ」という言及は「オリジナルのF-15EXとF-15IAは別物になる」と強く示唆しており、このあたりが「イスラエルだけに許された特権(イスラエル空軍から退役する米国製戦闘機を売却する際“オリジナルに戻せ”と要求されるのもそのため)」と言われる部分なのだろう。

因みにイスラエルには米国から累計3,100億ドル以上(経済援助と軍事援助の合計)の援助が流れ込んでおり、さらにオバマ政権は「2028年まで年38億ドルの軍事援助を提供する」と約束、この資金の大半はイスラエルが対外有償軍事援助を通じて調達する米国製兵器の支払いに充てられている。イスラエル国防省が声明の中で「F-15IAの購入は米国の援助で実施される」と言及したのもそのためで「イスラエルは米国の援助で支払ったF-15IAを手に入れるだけ」とも言える。

関連記事:米国が8月に318億ドル以上の武器輸出を承認、Boeingは200億ドル以上を受注か
関連記事:イスラエル、F-35Iに独自のカスタマイズを施す権利を獲得か?
関連記事:トランプ政権の置土産、バイデン政権誕生1時間前にUAEとF-35A輸出契約を締結

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis

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コメント

    • どぶろく
    • 2024年 11月 08日

    どうしようもないですなぁ〜
    潜在的に敵対国家を増やしてるような増やしてないような〜
    気がしまっせ。

    28
    • どねつくぼうし
    • 2024年 11月 08日

    アップグレードされているとはいえF-15買い増し?と思ったら費用は米国持ちですか…
    ただのボーイング支援マターですね

    52
    • 無名
    • 2024年 11月 08日

    対ウクライナと対イスラエルの支援の本気度がえげつない程違う。

    21
      • 2024年 11月 08日

      イスラエルは毎年とは言え年38億ドル(+α)

      ウクライナには技術移転はなく、使用制限もかかってはいますが、3年で1500億ドルですから桁が違う

      えげつなくはないでしょう

      21
        • 無名
        • 2024年 11月 08日

        この戦闘機もイスラエルが買うんじゃなくてアメリカがオプション付けてアップグレードしたものを寄付するに等しいし、
        イスラエルに向けてドローンやミサイルが発射されるとアメリカも迎撃しようとするし、実際やってる。ウクライナがいくらお願いしてもやらないのに。

        33
          • バーナーキング
          • 2024年 11月 08日

          >イスラエルだけに許された特権

          と元記事にもある通り、アメリカがイスラエルを特別扱いしてるのは管理人さんも当たり前の様に認識している周知の事実で今更そこに議論の余地はないんですよ(是非はさておき)。「ウクライナと比べてどうこう」という話ではなく、とにかくイスラエルがアメリカにとって特別枠。
          個人の主観による「親〇〇」みたいな話ではないんです。

          4
          • 無名
          • 2024年 11月 08日

          ありがとうございます。
          そしてすみません。気を付けます。

    • 暇な人
    • 2024年 11月 08日

    実はトランプよりもオバマやバイデンのほうがよっぽどイスラエルへの軍事支援に積極的なんだよな。
    トランプはエルサレムへの移転など政治的な要求は簡単に飲むが、軍事支援などはあまりしない。
    中東のほかの国にもガンガン売る(イラン除く)
    基本的にセールスマンなんだろう。ただでイスラエルにやるのは嫌って感じがする。

    27
      • reon
      • 2024年 11月 08日

      勘違いしてる人が多いけどトランプのエルサレム移転は国内の福音派に対するアピール
      イスラエル向けでは無い
      本人も福音派の要望に答えたと言ってたはず

      ユダヤ票はほとんど民主党だからトランプ大統領になってイスラエルを甘やかすとかは希望的観測

      9
        • ヒュー
        • 2024年 11月 08日

        米国と欧州の保守派は反ユダヤ人の親イスラエルな傾向があるからなあ。

        1
          • ひたまな
          • 2024年 11月 10日

          イスラエルはユダヤ教原理主義者を閉じ込めておく役割を果たしてるからね。保守革新に関係なく、イスラエル人が自国に大量流入するのは避けたいのが本音。日本も早めにビザ免除を止めた方がいい

          2
    • 匿名希望係
    • 2024年 11月 08日

    そろそろF-15Jのソースコードも出してほしいなぁ

    12
    • 58式素人
    • 2024年 11月 08日

    米国は投資?をちゃんと回収しているのかな。
    実戦のデータは色々と持っているだろうし、参考となるデータも多いのでは?。
    素人はF/A-18E/Fについてもどこかで似たような動きを期待していたりします。
    F/A-18をこのまま廃棄の方向に向かわせるのは、勿体無さすぎる?ような。
    F-16はよく注目されているけれど。
    ウクライナに絡めて考えると、カスピ海対策の機体は必要と思うのだけど。
    上空のTu-95/160/22M3を撃墜することと、機雷戦のために。

    1
    • paxai
    • 2024年 11月 08日

    オプションとかを考えても高くない?
    F-35Aだと1億ドル切ってる数字なのだが。(初期は2億ドルしたっぽいが)
    ちょっと古いデータだから実はF-35もインフレの影響で暴騰してたりするのかな?

    2
      • kitty
      • 2024年 11月 08日

      >F-15IA×25機を52億ドルで購入する契約を締結した。この中には25機の追加購入オプションも含まれている。

      これは結局最終的に50機なのか、25機のもりもりオプション武装の話を言っているのかでも変わりますね。
      昨今の事情ではミサイルバンバン買ってたら本体価格に迫りそうな塩梅ではありますが。

      12
      • 帝国
      • 2024年 11月 08日

      >オプションとかを考えても高くない?
       昔、F-2を買い始める頃、Ⅰ機百数十億円してF-15E(米軍納入価格)よりも高いと話題になったなあ。冷戦が終わってソ連の揚陸艦隊を阻止する対艦攻撃機というコンセプト自体がナンセンス※になったことや、FCSや強度など幾多の致命的欠陥を抱えていたこともあって真面目な人々の間では論議を呼んだものだ。で、見かけの単価を下げるために高等練習機のT-2後継にも充てて!爆買い、総額を増やすという暴挙に出た。
      ※ソ連はボロボロになったんで、日本にSu-27を買わないか?仮想敵部隊ならいいじゃないですかとセールスを掛けてきた程だ。確か、40億かそれ以下での売り込みだった。で、後に韓国は借金のカタに旧ソ連兵器を買って仮想敵部隊を作ったと。
       ま、結局は税金を軍需企業に流し込み、その総額の一定の割合を政治献金他で政党や個人に戻すというスキームなのだから額が高いことは良いことでしかない。また、秘密と寡占とナショナリズムとグルに守られて実質的な競争が乏しいからいくらでも高く買う=売る関係。原価5セントのネジを200ドルで買う世界。MILスペックと言いながら、実は汎用品と同じだったりする(管理は厳格だと言うけどねえ。今時は民生品でも追跡性は結構厳格だろう)。
       F-35他を巡って米製兵器の本当の実力が問われたわけだが、イスラエルの場合はイラン侵攻でもしない限りボロも出ないからよいのではないかな。結局のところ、そこそこ信頼性があって爆弾が多く積めて航続距離が長ければいい。航法とかには今更苦労はないだろうし、爆撃精度も実は問題じゃなさそうだし。

      6
        • kitty
        • 2024年 11月 08日

        値段はともかく未だにF-2の強度問題とか、キヨvs三文字のFCS論争なんて論う人がいるとは思わなかった。

        26
          • バーナーキング
          • 2024年 11月 08日

          まあお名前からして「日本の国防力を削ぎたくてしょうがないお方」なのでは。知らんけど

          17
        • 名無し
        • 2024年 11月 10日

        民生品のボルト1本でも、4.8と12.9では軽く10倍程度の価格差がある。
        素材はもちろん精度、キズなどの仕上げまで異なれる上に少量生産となれば、それなりの価格になるのは当たり前。
        民生品だって、航空宇宙用のネジは高いんやで?

        1
    • やみと
    • 2024年 11月 08日

    イスラエルは空軍を増やしても何を変えることができるのだろうか
    ハマスとヒズボラは戦闘機を1機も持っていないが、イスラエルの絶対的な空軍優位も暗殺以外の成果を上げることはできなかった
    本当は空軍でイランに打撃を与えたかったとしても…戦闘機より優先される問題は長距離ミサイル不足ではないでしょうか

    6
      • DEEPBLUE
      • 2024年 11月 08日

      他の人も言っていますがボーイング救済政策でしょうね。

      10
      • 匿名希望係
      • 2024年 11月 08日

      作れば作るほど赤字でF404の納品が2年遅れT-7Aとかありますしな。

      1
    • 七資産
    • 2024年 11月 08日

    管理人さんの解説コメント読む限りイスラエル優遇を余り面白く思ってないのが分かる

    2
    • ななし
    • 2024年 11月 08日

    支援打ち切りが噂されてるウクライナに対してこの差よ
    これでユダヤ陰謀説を信じない方が無理があるのでは

    4
      • kitty
      • 2024年 11月 08日

      ユダヤ陰謀論って言うほど陰ですか?
      原色装束のニンジャみたいな。

      9
    • イーロンマスク
    • 2024年 11月 08日

    F15の原型初飛行が1972年、運用開始が1976年
    こう見えてもう半世紀経ってんだよなぁ

    1
    • F-15QA
    • 2024年 11月 09日

    トラブったイーグルⅡの製造ラインの強化や機体の改良改善できる資金が下りてきただけに、ボーイングは米軍向けのイーグルⅡの
    製造数を当初の機数に戻すべくロビー活動を始めたりして。
    州軍向けのF-15C/Dの後継機は現行の調達数では足らないですし。
    議会主導でスパホの追加導入を決められて海軍激おこ事件がありましたが…

      • 匿名希望係
      • 2024年 11月 09日

      スパホのIRSTとかつんだ増装はF-15にも流用出来そう

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