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イスラエル、防衛産業界に長距離を高速で飛行できるUCAVの開発を要請

米reakingDefenseは「イスラエルが公に存在を認める無人機はHeronとHermesだけだが、これは国防軍が保有する無人機の氷山の一角に過ぎずない」と報じており、新たに「より長距離を高速で飛行できるUCAV」を開発中らしい。

参考:Israel asks industry to develop new long-range, stealthy armed drones

イスラエルは無人機を海外に輸出したいという防衛産業界の圧力に折れて機密を解除、これまで公にしてこなった無人機が市場に出てくる可能性がある

イスラエル国防軍は「航空機運用の総飛行時間に占める無人航空機の割合は80%に達している」と明かしており、これは有人機によるミッションが無人機によるミッションに置き換わっていると言うより、無人機にしかできないミッションが急増して「航空機運用の総飛行時間自体が大幅に増加している」という意味合いが強く、国防軍の関係者は米reakingDefenseに「イスラエルが公に存在を認める無人機(小型UAVや徘徊型弾薬を除く)はHeronとHermesだけだが、これは国防軍が保有する無人機の氷山の一角に過ぎずない」と述べている。

出典:Zachi Evenor / CC BY 2.0 Hermes450

この関係者は「国防軍の無人機戦力が提供する能力は巨大で、中東全域の目標をピンポイント攻撃することができる」と主張しているが、イスラエル国防軍はイランの脅威に対抗するため自国の防衛産業界に「より長距離を高速で飛行できるUCAV」の開発を命じたと報じられており、この件に関わっている関係者はBreakingDefenseに「少なくとも3つ異なるUCAVが開発中で、長時間の飛行能力と様々なシグネチャーを抑えることに注力している」と述べ、別の関係者は空中給油への対応も選択肢の1つだと明かしているのが興味深い。

決してUCAVは万能でも無敵でもなく、一度捕捉されてしまえば有人機と同じように防空システムで対処可能だが、パイロットが必要ないため有人機より小型なので物理的にRCS値が小さく、比較的シンプルな形状や素材による低観測技術を取り入れるだけで敵に発見される確立を下げることが可能だ。

出展:彩云香江

万が一、リスクの高い作戦に投入して撃墜されても人命を失うリスクがないため使いやすく、空中給油に対応した「より長距離を高速で飛行できるUCAV」は有人機のミッションを肩代わりする可能性がある。

さらにイスラエルの電子戦技術は日々実戦で検証され改良が加えられているため「西側諸国の中で最も技術力が高い(イスラエルはF-35Iにも独自の電子装置を追加しているらしい)」と見られており、デジタル・ステルス技術と比較的シンプルなステルスタイプのUCAVを組み合わせれば敵の防空シールドを貫通したり、高度な防空システムが張り巡らされた空域での生存性を向上させることが出来るかもしれない。

出典:IAI 演習に参加したHeron TP

まぁイスラエル国防軍は秘密が多いので何をやっているのか謎だらけだが、開発した無人機を海外に輸出したいという防衛産業界の圧力に折れて政府は今年7月に「無人機に関する機密」を解除、海外の潜在的な顧客との話し合いが始まっていると報じられているので、これまで公にしてこなったHeronやHermes以外の無人機が市場に出てくる可能性がある。

関連記事:イスラエル国防軍、米英仏独伊を招待してUAVを主体とした世界初の軍事演習を実施
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※アイキャッチ画像の出典:Nehemia Gershuni/CC BY-SA 3.0

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コメント

    • HY
    • 2022年 11月 27日

     言うなれば今はUCAVの発展期のようなもので軍用機が進化した1920年から30年代のようなものかもしれません。
     軍用機の到達点は高機動ステルス超音速ジェット機でしたが、UCAVの到達点は何でしょう?

    10
      • ミリ飯食べたい
      • 2022年 11月 27日

      ウクライナでの戦闘を見ていると、低層から高層までの防空コンプレックスを貫通/浸透できる性能を求められるのではないでしょうか?
      TB-2にしても初戦の大活躍(損害を無視してでも打撃を与える必要があったにせよ)から打って変わって、最近では派手な攻撃活動は低下しているような印象を受けています。

      空対空戦闘で何が求められるのかは正直想像もできないですね。人間が乗っていないからマ○ロスの板野サーカスみたいなことができないと・・・みたいなことになるかもしれません。

      4
    • ズマ
    • 2022年 11月 27日

    昔はアクティブステルスと呼んでたが今はデジタルステルスなのか
    単純に小さいだけではRCSはあまり下げられない気がする
    F35に至ってはあの図体でレーダー上では鳥サイズに下がる上に敵イルミネーターからは曖昧に見えて捕捉しづらいらしいがRAMや素材の力が大きい
    金銭的に無人機にF35ほどのステルスに投資は出来ないだろうが、代わりに数で飽和させることも自爆任務に当てることも可能

    1
      • 航空太郎
      • 2022年 11月 27日

      ステルス性能は形状が九割、RAMや素材は飛行性能のために形状を妥協せざるを得ないところに使う、なんて話のようです。機体サイズの大小の影響は少なめなのは同意です。実際、RCSなら巨大なB2爆撃機がダントツに小さいですから。

      あと、これは現在の全金属航空機の話でして、英国面に輝くランカスター爆撃機は大半が木製なせいでレーダーに映らなかったそうです。

      その点で言えば片道特攻型ドローンで、見つからない事に全振りで淡々と飛ぶだけなら、機動性は諦めてステルスと安定飛行に寄せた形状、対人地雷のように最小限の金属部品に抑える事で材質的にも殆どレーダーを反射せず、燃費最優先エンジンで赤外線も微かとなれば、対空網で捉えるのも至難というモノになるでしょう。

      それだけ設計を割り切れば、きっとかなり安価で、そして自国領土の全てをカバーするまともな対空網を持つ軍など先進国のような極小数に過ぎないので、威力も絶大です。

      撃たれたら大半が迎撃できず被害確定、となれば歴史に習って両軍とも無人特攻ドローンを沢山抱えて睨み合う冷戦となって新たな安定となるのではないでしょうか。互いに相手の全土を射程とするドローン群を抱えるのが前提ですけど。

      7
        • 通りすがり
        • 2022年 11月 27日

        資金も技術も無限に投資できるならステルス性能に対する機体サイズの影響が少ないかもしれんけど、機体が小さければRCS値が小さいんだから、これをもっと小さくするのにかかる労力も小さいでしょ?

        >パイロットが必要ないため有人機より小型なので物理的にRCS値が小さく、比較的シンプルな形状や素材による低観測技術を取り入れるだけで敵に発見される確立を下げることが可能だ

        この記事はB2並なステルスを実現しようなんて書いててない。

        安上がりにそれなりなステルス性能を実現できると言いたいんだよ。

        何でもかんでも究極の性能が正義じゃない。

        16
          • ズマ
          • 2022年 11月 27日

          ドローンを小さくすると単純にエンジンなどの推進機構も小さくせざる得ない
          そうなると、風に弱く、ペイロードが小さくなる
          特に垂直離着陸ドローンのローターはrcsを上げてしまう
          全備離陸重量が小さいとRAMなどを厚くすると離陸できなくなる
          よって、ステルス性は一定以上下げることは出来ないと聞いた
          逆に有人機や大型ドローンにはこういった発展性がある
          個人的にはいずれスマートスキンや電子戦装備の発達であまりパッシブステルスをきにしなくなる方向に発展するのではないかと思っている

          • 名無し
          • 2022年 11月 27日

          全くその通りだと思いますね。
          例として出てるステルス機による攻撃で言えば、仮に敵のA地点にある拠点を潰そうとして対地攻撃ミッションを仕掛けたとして、見当違いのB地点やC地点に展開していた敵SAM部隊に気付かず近付き過ぎてしまったゆえに撃墜されてしまう可能性というのは素人でも充分に理解できます。

          そして、それと同様のミッションを有人機と比べて相当に安価かつパイロットという貴重な人材を失わずに済み、それでいてRCS値はそこそこに低く数も揃えられるUCAVで行えるとするなら、そりゃあ大抵の国は後者のやり方でいこうとするでしょう。

          性能が優れている装備で殴ればそれだけで勝てるという考え方は日本のミリオタの悪い癖だと思いますね。

            • 名無し2
            • 2022年 11月 28日

            「でも性能が優れているんですよ?すごくないですか?日本より低性能な兵器で日本に喧嘩売るんだ…万一負けたら末代まで大恥ですけどいいんですか?」
            マウントをとって侵略者の気持ちを挫くのが日本の防衛戦略。侵略者に恥も外聞もあるわけないのにね。

        • 1111
        • 2022年 11月 27日

        知ってる知識を披露するのは自由だけど、記事の趣旨を理解してないな。

    • kankan
    • 2022年 11月 27日

    RCS値の小さい形状で、一定以上のペイロードとスペースを確保して
    速く、遠くに飛べて、それらをなるたけシンプルで低コストな技術で実現する。
    ガワの部分だけでも早急に開発して無人機として任務ごとに最適な形状のデータ集めだけでもしておかないと
    この先致命的な遅れを生じそう

    1
    • REM
    • 2022年 11月 27日

    顧客はアゼルバイジャン、トルコ、チェコ、ポーランドなんかが想像つくけど、日本も買わせて貰ったらどうでしょうね。
    ウクライナを見るに「格安ドローンの飽和攻撃」なんてすぐに在庫切れとなりそうです。
    運用にはイーロンマスク氏のご厚意と、ある程度の電力が重要と解った訳で、ステルスだの航続距離だの高額化するオプションは参考資料で良いのではないか?

    結局は民間ドローンが溢れてて、軍事転用に対応するのと、発電所の防空が必要と思う。

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